紫苑に誓う   作:みーごれん

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ガンガン時間が進んでおります。
早く原作主人公一行出てこないかな~。


理由を

「森田三席、おはようございます!」

「雛森副隊長!おはようございます」

 

‘‘副隊長‘‘という言葉の響きに胸が高まる。今日から、私は憧れのあの人の力になれるんだ!

腕に付けた副官章の重みを確かめながら、雛森桃は五番隊の執務室へ向かっていた。

 

「失礼します!」

 

言いながら入ると、憧れの藍染隊長と、先輩である橘昴が目に入った。

 

「ああ、おはよう、雛森君」

「おはよう、桃!今日も元気いっぱいだな。おっ、そうか、今日から副隊長になるんだったな」

 

おはようございます、と返しながら、桃は驚いていた。こんな朝早くに、隊長はともかく昴まで隊長室にいるとは思わなかったのだ。

 

「このお話はここまでです、藍染隊長。浮竹隊長には私の方からお断りしておきます」

「…わかったよ。宜しく頼む。だけど、浮竹隊長の気持ちを考えてみてからにしてはくれないかい?」

「ここまでと申し上げたはずです。それでは、失礼します」

 

 

 

さっさと帰ってしまった昴に何も聞けなかった桃は、気まずそうに藍染に尋ねてみた。

 

「あの、昴さんに何かあったんですか?」

「実は橘君に、十三番隊副隊長のお誘いが来ているんだよ」

「そうだったんですか…」

 

あの剣幕なら、昴が断るのだろうことは容易に想像できた。

それはそうだ。十数年前、彼女は入隊以来の付き合いだった先輩二人を失ってしまっていた。しかも、そのうちの一人は自身が教えている後輩が止めをさしたらしい。今でも教えに行っているらしいが、桃には彼女の心境を推し量ることなどできなかった。

 

「志波副隊長を失ってからの浮竹隊長の傷心ぶりは、僕はとても見ていられないほどだったんだ。それ以来ずっと決めていなかった副隊長を橘君にしたいと言われたとき、嬉しかったんだよ。彼も進もうとしているんだとね。彼女の気持ちも分からなくはないんだけど…」

「昴さんがそのお話を受けないのは、その事件のせいだけじゃ無いと思いますよ」

「雛森君は何か知っているのかい?」

 

少しためらってから、桃は口を開いた。

 

「はい…これは、本当は隊長には内緒にするように言われてたんですけど、昴さんは隊長への恩を返したいんだそうです」

「恩?何のだろう」

「‘‘以前、自分が立ち直れないほど心を疲弊していた時に、手を差し伸べて自分を救ってくれた‘‘と仰ってました。詳しくは教えて貰えませんでしたけど…それなら副隊長になればいいのにって私は思うんです。そしたら、‘‘老害は大人しく程々の位置にいるさ‘‘って…私より昴さんの方が実力あるのに!」

 

両手を握りしめて肘から先をブンブンと振りながら言う桃の言葉に、隊長は意外そうに右手を顎に当てた。

 

「そうか、彼女がそんなことを…」

「あのっ、絶対私が言ったこと秘密にしてくださいね⁉」

「ははは!分かったよ。ところで雛森君、初めての副隊長会議、行かなくて良いのかい?」

「あっ!もうこんな時間⁉すみません、行ってきます!」

 

 

 

 

 

 

 

パタパタと桃が会議室へ走っていると、後ろから声がした。

 

「こらっ!廊下は走らない!」

 

振り返ると、八番隊副隊長の伊勢七緒が立っていた。眼鏡を上げながら指摘する様は、学級委員長のようだ。

 

「す、すみません…初めての副隊長会議で浮かれてしまって…」

「あら、貴女、五番隊の新しい副隊長?ということは、雛森桃さん?」

「はい!これからよろしくお願いします!伊勢副隊長!」

「ええ。宜しく。貴女のことは昴さん、いえ、橘四席から伺ってますよ。とても努力家で一生懸命だと」

 

時間が時間なので、会議室に向かって歩きながら話す。意外な名前が出てきて驚いた。

 

「昴さんがですか⁉そんなことないのに…ところで、伊勢副隊長はすば――じゃなくて、橘四席とお知り合いだったんですね」

「ええ。かなり前からの鍛錬仲間なんです。彼女、実力は既に副隊長クラスなのに何故四席に留まっているのかしら…」

 

その言葉に桃は顔を伏せた。

 

「そうですよね…本来なら私じゃなくて昴さんが副隊長になるべきなのに」

「そういう意味で捉えてしまったならごめんなさい。違うの、彼女はずっと前からそういうお誘いを断ってきたのよ」

 

申し訳なさそうに七緒が言った。

気にしないで、とも。

 

「そうなんですか?知りませんでした」

 

ここで会議室に着いた。会議では、新しい副隊長については桃と、半年先に就任するイヅルの話だけしか取り扱われなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昴は、十三番隊にある浮竹の病室までの廊下を、今までで一番長く感じながら歩いていた。

 

(参ったなァ…)

 

これから、副隊長任命のお断りをしに行くのだ。気が重くないわけはない。

 

「五番隊所属、橘四席、入ります」

「どうぞ」

 

襖を開けると、懐かしい人物が目に入った。

 

「おはようございます、浮竹隊長…に花⁉うわァ、久しぶり!」

 

そこにいたのは花太郎だった。浮竹隊長の経過観察に派遣されてきたらしい。

元々健康優良児で任務でも怪我をほとんどせず帰還する昴は、人一倍四番隊との関りが薄かった。そのため、わざわざ花に会いに行く、ということを面倒だと思ってしまうことも相まって、あまり花と会う機会が無かった。花の方は積極的に話しに来ようとしてくれるのだが、昼間に仕事がある昴に対して夜のシフトが多い花太郎は中々会う予定がないままだった。それにお互い、隊内での地位が上がって自由度は下がっていた。

 

「わあ、奇遇ですね、昴さん!も~、昴さんってば、会いに行っても全然隊舎にいないんですから~!」

「いや、それはホントにいつもいつも悪いと思ってるんだ。普段はそんなことも無いんだが、何か花が来る時に限って書類届けたり伝言預かったり…不可効力なんだって!」

「いいですよ。わかってますって。今日もこうして元気な顔を見られたわけですし」

 

いつも通りの人当たりの良い笑顔だ。花太郎のお蔭で少し気分が上向いた。

 

「ありがとう。浮竹隊長の方はどんな具合?」

「俺の調子は良いぞ!」

 

そう言いながらも、浮竹隊長はちょっと顔色が悪そうに見える。花太郎も、困ったように笑っていた。

 

「花、君の意見を聞いていいかな」

「え?えぇっと、悪くはないんですけど、良くもない…ですね。今日は安静にしててください」

「ああ。分かったよ。ありがとう」

 

安静に、か。これから浮竹に精神的にダメージを与えるかもしれない昴は、罪悪感を感じつつも切り出した。

 

「隊長、副隊長の件ですけど―――お断りさせていただきます」

 

一瞬寂しそうな顔をした後、わかった、と彼は言った。

 

「そうだろうなとは思っていたんだ。もう橘が離れて大分面子も変わってしまったし、五番隊でやっていこうとしていることは分かっていた。ただ、やっぱり海燕の後を任せられる人材となるとそう居なくてね。また暫く空席になってしまうが、仕方ない」

「そこまで言っていただけて、本当に嬉しいです。副隊長は出来ませんが、話し相手にならいくらでもなりますから!」

「ああ。これに懲りず、また遊びに来てくれ!」

「はい!」

 

 

 

 

気まずそうにしていた花太郎と共に、昴は病室を後にした。

 

「何故、副隊長にならないんですか?昴さんなら、十二分にこなせると思うんですけど…」

「……私には、()()()()やるべきことがあるから」

 

そう言った昴の目を見た花太郎は、その決意の固さに何かただならぬものを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉を開く音がして昴が振りかえると、桃が副隊長会議から帰ってきたところだった。

 

「お帰り、桃。初めての会議はどうだった?」

「た…大変なことになりました…」

 

ニヤニヤと訊いてみた昴は、桃の思わぬ反応に驚いた。

 

昴がそう訊いてみたのには理由がある。

イヅルが半年先に副隊長になるという事を聞いていたからだ。

誰から?―――勿論、三番隊の隊長殿からである。

 

『機密事項やから、他には漏らさんといてな~!』

 

そういうことをさらっと他隊の四席に教えてしまうあたり、三番隊の情報管理がどうなっているのか心配になる。ギンに限ってへまをやらかすという事は無いのだろうが………

 

兎も角、イヅルも副隊長になるという事にきっと桃は興奮してやってくると思っていたのだが、それにしては様子がおかしい。

 

「何だ?何かあったのか」

「十番隊の志波一心隊長が、失踪したそうです」

 

 

――――――失踪?

 

正直に言えば、最初に昴が思ったのは‘‘いい加減にしてほしい‘‘、ということだった。

 

()()か…なァ、桃。隊長にもなって仕事をサボってフラフラどっか行く輩には、厳重注意とか仕事増やすとかじゃなく、減俸とかもういっそ食事抜きとかにした方が部下の負担が減るとは思わないか?」

 

七緒からの紹介で十番隊副隊長、松本乱菊と話をするようになってから、毎度聞くのはその隊長の脱走話だった。七緒と乱菊の性格からして意外な取り合わせだと最初は思っていたが、放浪癖のある上司を持つ者同士、水が合ったのかもしれない。

 

余りにも大変そうだったので昴が斬魄刀を解放してまで彼の脱走を阻止したのは、一度や二度の話ではない。

上位席官の廷内での解放は厳罰処分が下るが、一瞬だったからバレてない筈だ。

……きっとそうだ。

 

そして先日、現世にて任務中の隊員が何名も亡くなる事件があった。原因は一体の虚だったそうだ。

被害状況を聞いた志波隊長は無許可に出撃。これを撃退するも負傷し、治療を受けていた…筈だった。現世にまで逃げる様になったら乱菊も大変だなァ、などと昴が思っていると、桃が首を横に振った。

 

「違うんです!志波隊長の霊圧が、現世で消失したとの報告が入ったそうです…」

「消失⁉理由―――が分かってたら、‘‘失踪‘‘なんて言わないな。そうか……あの人に限って死んだってことは無いだろうが…」

 

誰に言うでもなく呟いてみる。

 

死神は死と隣り合わせの仕事だ。死傷者は珍しくない。だがそれは一般隊員に限っての話だ。

席官や隊長格は、そうでないからこそその地位にいる。よっぽどのことが無い限り、怪我は兎も角死ぬなどという事は無い。いや、許されない。

戦場で上司は部下の命を預かっている。それを担う席官以上が、指揮官として真っ先に死ぬなどあってはならないという事もあるが、何よりその死の意味が違う。

 

勿論、命自体に価値の優劣が有るなどという話ではない。

もし隊長の死などが戦闘中に発覚でもしようものなら、そこに隊長自身が居ようが居まいが関係なくその隊は動揺し内部から自滅するだろう。

それ程、上官は隊士たちの心の拠り所となっている。

 

その事実を自覚し、背負うと覚悟を決めた者のみが席次を名乗り、或いはその背に自身の冠する文字を背負って白い羽織に手を通すことを許されるのだ。

 

志波隊長は普段はよくセクハラするし行動が子供だが、そういう事が分からないような人物ではなかった。自隊を残して死ぬはずなど無い。

 

「桃、ちょっと十番隊に行ってくる。この書類の束、森田に渡しておいてくれないか」

「わ、わかりました…」

 

今日分の仕事を森田に押し付けて昴は十番隊舎に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

隊舎に着くと、案の定隊は混沌に満ちていた。情報が錯綜し、何をすべきか分からない隊員がそれでも何かしようと走り回っている。

 

 

こういう状況を、昴はもう何度も見てきた。

隊長格虚化の時も、海燕副隊長が亡くなった時も、新副鬼道長が突然死んでしまった時も…

 

 

見知った姿を捉えて、昴はそれを呼び止めた。

 

「乱菊ッ!」

「昴…!」

「話は聞いてる。捜索隊の指揮は誰が執ってる?」

「今、田沼に行かせてるわ」

 

相当動揺している乱菊に、昴は優しく微笑みながら言った。

 

「四席か。うん、良い判断だ。今は乱菊と冬獅郎の二人一緒に十番隊舎に残って(ここで)隊を回した方が良い」

 

わしゃわしゃっと乱菊の髪を撫でると、強張っていた彼女の体が少し弛緩した。ずっと気を張っていたのだろう。

 

「馬鹿ね、アタシの方がここでは上官よ?」

「そんだけ取り乱しといてよく言うよ。ったく、あのツンツン頭は何処(ドコ)をほっつき歩いてるのか」

 

二人でクスリと笑うと、何処からか‘‘副隊長は何処(いづこ)~⁉‘‘という絶叫が聞こえてきた。

 

「私は邪魔になりそうだな。帰るとしよう。乱菊、いつもみたいに仕事を他に割り振って無茶しないようにしないと体を壊すぞ」

「‘‘いつもみたいに‘‘ってのは余計よ。でもありがと、昴」

 

互いに笑い合うと、それぞれの向かう方へ走り出した。

どちらも振り返らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、志波隊長は生死不明なまま、志波の分家からも護廷十三隊からも追放された。

数年後、十番隊隊長の任を授かったのは、その頃卍解を修得した冬獅郎だった。

 

 

 

(隊長、何で…………?)

 

その問いに答えてくれるものはいない。

 

 

 




何をどう間違えたのか、結構書き進んでいた先の一話あたりの文字数が今の半分くらいです。
もう、いっそのことこのままでいこうかな、なんて思っています。
下手に繋げるとややこしいことになりそうですし…

原作の流れがあるとあまり好き勝手出来ないので進み辛いところがありますが、展開をあまり考えないでいいというのはちょっと楽で嬉しいです。


……という、二次創作とはいえ作者の発言として微妙な事を言ってしまう今日この頃です。
いや、これ、読者の皆様が反応に困るヤツだ。すみません、読み流してください!


何はともあれ、今回も最後まで読んでくださってありがとうございました!
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