紫苑に誓う   作:みーごれん

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短いです。凄く短いです。
すみません…


明日は

翌日の朝、四つの話題で護廷十三隊は持ちきりだった。一つ目は、三番隊隊長市丸ギンと十番隊隊長日番谷冬獅郎が斬魄刀を開放してまで斬り合ったこと。二つ目は十二番隊隊長涅マユリが倒されたこと。三つ目は、旅禍がもう一人、九番隊隊長東仙要に捕らえられたこと。そして最後に、隊舎牢に囚われていた三、五、六番隊副隊長が脱獄し、六番隊副隊長が未だに姿を現していない事。

 

しかし、最終的に廷内を最も大きく揺るがしたのは、中央四十六室から飛んできた地獄蝶が伝えた、朽木ルキアの処刑日程の最終通知だった―――――

 

―――隊長、並び副隊長各位にご報告申し上げます。極囚、朽木ルキアの処刑の日程について変更がありました。刑の執行は現在より二十九時間後です。これは、最終決定です。これ以後変更はありません。以上―――

 

 

 

 

 

 

伝令が伝わってきたとき、森田のほかには既に昴と日下も揃っていた。

 

「明日の、正午だと⁉何の冗談だ」

 

昴が驚愕の余り呟いた。いや、昴だけではない。殆どの者が驚愕し、動揺し、理解できなかった。

 

―――何が起ころうとしているんだ?

 

勿論、朽木ルキアの処刑なわけだが、それにしても今回は異例過ぎる。既に五日も短くなっている刑期を更に七日も縮めるというのだ。旅禍の侵入で刑期を縮めたにしては、些か急ぎ過ぎている。確かに隊長格三名の敗北は誰も予想しなかったが、旅禍だって人間だ。既に三人捕まっているところをとっても、全員が縄につくのは時間の問題であることは火を見るより明らかなはず。上の真意を測りかねるのは仕方のないことだった。

 

こうなると、真面な感性のある者なら誰だってルキアに同情する。

自分の命の残高がいきなり抉り取られたのだ。処刑は明日に変更になった、など、自分がその状況になって平静を保っていられるものなど皆無に等しい。

それは日下と森田も同じだった。

 

「中央四十六室は俺らを何だと思ってんすかね?意のままに動く人形だとでも?俺らにだって感情ってもんがあるってのに!」

「そうですね。いくら何でもこれはひどい。命を軽んじています。四十六室はいい加減刷新されるべきでは?」

「二人とも落ち着け。特に森田、言葉が過ぎるぞ。誰がどこで聞いてるか分からないんだ。ルキアを案じてくれているのは嬉しいけどな」

 

ぐらり

 

森田の耳は確かにその音を聞いた。

これは…傾く音だ。

森田の天秤が、理性から感情へ―――命令から昴の心情へ傾いた音だ。

 

昴の言に、森田は少しためらってから口を開いた。

 

「すみません、橘四席……本当は貴方が一番お辛いはずなのに」

「良いんだ。事態はとっくに私がどうこうできる範疇を超えている。森田が気を遣う必要などないよ」

 

そんなこと無いんじゃないのか?本当は、貴女は―――

 

「………本当に良いんですか?何もしなくて」

 

言ってしまった。

 

「良いも何も、さっき言っただろ?もう私じゃ止められない。どうしようもないことだってある」

「旅禍を手伝いに行ったらいいじゃないですか」

 

思わず、と言った風に昴が書類仕事の手を止めて森田の顔を見た。

そんなことを言われる日が来ようとは夢にも思わなかったとでも言いたげだ。

 

「皆知ってるんです。旅禍は朽木ルキアを助けに来たんだって。手段こそ良くないと最初は思いましたけど、こうでもしないと止められないのがわかりました。でも、彼らじゃ足りないんです。違いますか?瀞霊廷から、尸魂界から、彼女を逃がして上の人間が頭を冷やす時間が必要だと僕は思うんです。そのために、僕は彼らに協力したい。でも、僕じゃ無理なのも分かってるんです。だから……僕はここにいるしかない。でも、貴女は違う」

 

分かっている。森田自身だって驚いている。

彼は‘‘超‘‘が付くほど真面目で規則に厳格な男だ。

融通が利かないともよく言われる。

 

「貴女には彼らを助ける力も理由もあるじゃないですか!それなのにこのままここで明日も過ごすおつもりですか⁉」

 

あることないこと全部言ってしまった。

 

昴は森田をしばらく見つめた後、目を閉じ、開いた。ゆっくりとした(まばた)きの後には、昴に強気な笑みが浮かんでいた。

 

「ありがとう、森田。私は行くよ。ただし、明日の朝にあちらへ向かう。今日は書類地獄を抜け出さないとな。明日からはサボることになるから」

「マジすか~~⁉」

 

折角の空気は、日下の悲鳴で台無しになった。だが、森田も昴もそれを咎めたりはしなかった。焚きつけた側と焚きつけられた側だったというのもあるが、彼のいつも通りさが和ませてくれた雰囲気が二人には心地よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、奴らが動き出すまでどうとも出来なかったなァ…」

 

『落ち込んでいらっしゃるようには見えませんね』

 

「いいや。正直ここまで上手くいかないとは思わなかったよ」

 

『あら、その場合も想定していらっしゃったはずでは?』

 

「まァね。でも、ツライものはツライ。処刑は明日、周りは敵だらけ、本丸はいつ逃げるか分からない、か。想定しうる最悪の状況だよ」

 

『ええ。流石は藍染、といったところでしょう。何があっても想定済み―――わたくしたち以外については。そうでしょう?』

 

「あァ。僕の考えが正しいなら、出来る限り藍染の手から朽木ルキアを守らなければならない。そのためには、使えるものは何でも使わなければね」

 

『旅禍の皆様のことですか?それとも――』

 

「何でも、といったら何でもだよ。選り好みしている余裕は無い。勿論、君もだよ」

 

『構いません。貴方にならいくらでも力添えいたします』

 

「ありがとう。感謝の語彙が少ない自分に腹が立つよ」

 

『ふふふっ!心からのお言葉に、数も種類も関係ありません。どうか、御武運を』

 

「あァ」

 

 

刑の執行まで後十四時間。

彼は双極の丘を見上げると、祈りを捧げるかのように目を閉じた。

 

 

 

 




早く話を進めたいのですが、そうは問屋が卸さない。
次回も一悶着あります。(無かったことはあるのかという突っ込みは無しの方向でお願いします)


なにはともあれ今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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