キリが悪かったがために…すみません。
何はともあれ、読んでくださってありがとうございます!
この調子でストックを放出し続けられるかは分かりません。あ、平日は流石に無理ですね。
こんなに書きたいのに…悩ましいところです。
長くなってすみません。本編始まります!
ゴクリ、と息を呑む。ここからは感情を、思考を、顔に出さないようにしなければ。
五番隊の隊舎前に来た薫は、緊張した体が解れるようにゆっくりと深呼吸しながら目を閉じた。
(六番隊はシロらしい。四大貴族の一角、朽木家の現当主と次期当主に朝から会うなんて、心臓に悪いことだ…しかし、ここが一番よりは良かったかもしれない)
五番隊―――藍染惣右介が副隊長を務めている隊だ。
ヘタに動揺すると彼がクロだろうがシロだろうが不審がられる。落ち着いてから入らないと…
「そこで何しとるん?」
いきなり耳元で声がした。
「うわあああぁぁぁぁぁぁァッッ!!?」
閉じていた目が反射的に開く。さっきあれ程動揺するなと教えた体は突然の出来事に全然対応できずに声の主から距離をとった。
そこにいたのは伊勢七緒よりもう少し大きい銀髪細目の少年死神だった。
(最近は小さい死神を育てるのが流行りなんだろうか?)と薫が呆然としていると、少年死神が笑いながら言った。
「あははっ!そない驚かんでも、取って食うたりしいひんよ。五番隊に
ニコニコしているのに、彼の笑顔は京楽のような柔らかさが微塵も感じられなかった。
「あァ、取り乱してすまない。君の言う通り、僕ァ百目鬼薫。副鬼道長をやっている。君は?」
「ボク?ボクはギン、市丸ギンや。ここの三席を任されてる。初めまして」
「あ、あァ、はじめまして。藍染副隊長に用があるんだが、中に入れてはもらえないだろうか」
それを聞くと、彼は一層笑みを深めた。
「残念やけど、副隊長は今居らへんよ。“言伝有ったら聞くように”て言われて待っててん」
「そうか。でも、直接会って話がしてみたいんだ。…特に彼には。今じゃなくてもいい、彼がいつ空いているか知らないだろうか」
ギンは、一呼吸おいてから怪訝そうな顔をした。
「…何で直接やないとあかんのん?」
「…彼が今回の事件の一番の被害者だからだよ。隊長を失い、罪を着せられかけた。そんな彼のことを心配するのはおかしいことかな?」
一瞬の間の後、彼はまた笑みを浮かべた。
「……次の予定はボクから聞いとくわ。後日遣いを送る」
「ありがとう。助かるよ」
薫もまた笑顔を向けると、ではまた、と立ち去った。
薫の姿が見えなくなった後、ギンは五番隊の壁に寄りかかった。
壁の反対側には、同じように寄りかかる人物の気配がある。
「君はあの男をどう思った?ギン」
「どうもこうも、あら完全に副隊長が黒幕やて確信してますわ」
「……」
「どうしはります?きっとあの人はほっといてもまた会いに来ますよ」
「浦原喜助…
壁の向こうで人が遠ざかっていくのを聞きながら、ギンは笑みを消し、壁の向こうを透かし見る様にその瞳を薄く開いた。
「いくら副鬼道長みたいにエライ人でも、あのヒトには勝てへんよ。そのやり方では相手にならん」
やっと聞こえるような声で彼はそう言うと、隊舎に引き返した。
「久しぶりだね、薫くん」
「お久しぶりです、山田副隊長。初めまして、卯の花隊長」
「ええ、初めまして。あなたと清之介がお知り合いだったとは、知りませんでした」
薫の現在地は総合救護詰め所、四番隊隊舎である。
「知り合いといえるほどではありませんが…家同士の付き合いです。副隊長の弟さんとは長い付き合いなのですが」
「そうなのですか。清之介の弟とはどんな子なのでしょうね?確か、清之介と入れ替わりで護廷隊に入隊するんでしたね」
意外な発言に薫は思わず訊き返した。
「入れ替わり?山田副隊長は護廷隊から除隊でもされるのですか」
「ああ。父上に家に帰るように言われてしまってね」
そうだったのか、知らなかった。副隊長にまでなったのに家に呼び戻すなんて…花太郎の父さんは変わった人だ。
それはともかく、例のごとく話を進めると卯の花隊長も協力してくれることになった。ただ、
「無理に事を進めようとして怪我人を出したりしても治しませんよ?」
とニコニコしながら言われてしまった。確かに、焦って皆を誘導すれば余計な喧嘩や騒動を起こしかねない。気をつけねば。
五番隊に行きそびれたため、まだ明るい時間帯だ。久しぶりに隊舎に戻ると、客が来ていると客間に通された。
(昴か?いや、今は仕事中のはずだ。伊勢殿の本読み…も、すぐにという話ではなかったし)
客間に入ると、一人の男性死神が椅子に腰かけていた。優し気な目が眼鏡の奥に見える。焦げ茶色の髪は少し長めでウェーブがかかっている。
会った記憶がない、と焦っていると、向こうもこちらに気付いて立ち上がった。
「どうも、初めまして、百目鬼副隊長。僕は五番隊副隊長、藍染惣右介です」
「あ、藍染副隊長⁉今日は予定があったと伺ったんですが」
「えぇ、すみませんでした。実は、予定が大幅にズレて、この時間から今日は空いてしまったんですよ。市丸三席は何か粗相をしなかったでしょうか?」
そうやって部下を心配する様子は、いかにも好青年という感じだ。
「そうだったんですか。いえ、市丸殿にそんなものはありませんでしたよ」
「そうですか。それは良かった。ところで市丸三席に仰っていたお話というのは、鬼道衆と護廷隊の結束を強めたいというお話ですね?」
「えェ。もう御存知だったんですね。その通りです。貴方には少し受け入れがたいでしょうが」
「そんなことはありませんよ。今後の尸魂界の為にも大切なことでしょう。協力しますよ」
お互いにニコニコと笑いかけたが、薫はそのまま薄く目を開いた。
「…ありがとうございます。…ところで、藍染副隊長―――」
声が震えないよう一呼吸置く。
「―――今回の事件、本当の犯人は貴方なのでしょう?」
(⁉この男は何を言っている?)
藍染惣右介は一瞬、薫が言っていることが理解できなかった。もちろんそれは言葉通りの意味ではない。五番隊でのギンと薫の邂逅の後、彼もギンと同様に薫が自分を疑っていると感じた。だから彼は、きっと薫は遠回しに事件のことを聞いてくるのだろうと思っていた。そうだったなら、どう誘導されてもいなせる自信があった。だが現実には、ストレートにその問いを投げかけている。普通は幾ら怪しんでいたとしてもそんなことをしない。薫のやっていることは、殺人犯に向かって‘‘お前は殺人者だろう?‘‘と訊いているようなものだ。そんなこと、本当にやったら薫自身が刺されかねない。
それを分かってやっているなら、それは…
(揺動か―――)
「何を仰っているんですか!冗談にしては度が過ぎています‼」
一瞬の逡巡があったが、許容範囲だろう。激昂するというのも自然な流れだ。同様を誘うということは、私が犯人であるという証拠が無いということだ。これ以上の追及はできまい。
「ありゃァ、これはどうもすみません…お疲れが取れるようなジョークをと思ったのですが、その通りですね。申し訳ありません」
申し訳なさそうな顔の薫はしかし、藍染から
「…っ。いいえ。今日はもう失礼します。」
「折角来ていただいたのに、本当にすみません。今日はありがとうございました」
廊下に出た藍染の目は、いつものような笑みを湛てはいなかった。
やっちゃった~……
はい。主人公はやっぱり大丈夫ではなかったです。
未熟な作者と主人公ですが、温かく見守ってください。