分かりにくくてすみません…
そして今話の題名がいかにも最終回っぽいのに最終回ではありません。流石にこれで終わるのは投げすぎですので…
「縛道の二十六、曲光!」
薫の詠唱破棄された鬼道で彼の斬魄刀の刀身が見えなくなった。
藍染はそれを嘲笑を以て対した。
「斬り合いでもするつもりか?その程度で間合いが読めなくなるとでも?」
「やってみるか?」
薫が斬魄刀を構えたのを見て、藍染は剣戟を
それは不自然に何かにぶつかって掻き消えた。
恐らく、百年前にもやっていた風を操る技だろう。
「安い挑発だ。君の斬魄刀の能力を考えれば、間合いなど有って無いようなものだろう」
次の瞬間、藍染の首元に風を感じ、其処が出血した。
大した事は無いのだが。
「大したことない、か。落ち込むなァ…もう2、3センチは斬ったと思ったんだけどねェ」
「当然の結果だよ。私の霊圧が君のモノを遥かに上回っているのだから」
「困ったなァ…縛道の二十一、赤煙遁!」
薫と藍染の間に赤い煙幕が張られる。
目くらましのつもりなら、お粗末なことだ。
敢えて煙幕に突っ込み、薫に急接近する。
わざわざ彼に付き合って遊ぶ必要は無い。
斬魄刀で斬りかかろうとして、鎖条鎖縛が腕に巻き付いた。
ちょっと力を籠めればすぐにそれは取れたが、その一瞬の隙に薫が再び縛道を放つ。
「縛道の六十一、六杖光牢――縛道の七十九、九曜縛」
六筋の光と九つの黒点が藍染の動きを縛る。
更にできた時間で、薫は詠唱を開始した。
「
薫の周りに赤い光がじりじりと出現した。
藍染が縛道を解いた直後、薫が一言、呟いた。
「
次の瞬間、藍染の
崩玉による再生によって回復した藍染は、素直に感嘆した。
まさか霊王宮に辿り着く前に自らの頭が割られる事態になるとは思わなかった。
周りを見渡しても薫の姿はない。
「凄まじい威力だ。流石は元副鬼道長、と言ったところだね」
砕け散った石の下を見ると、鬼道で生じた布やら杭やらが尚も消えきることなく残っている。どうやら自分は“縛道の九十九第二番、卍禁”を食らったのだと理解した。
これは薫を馬鹿にしているわけではない。
碑石が見えるまで、薫が何をしたか藍染には分からなかった。
卍禁は通常、三段階に分かれている。
初曲〈
藍染に聞こえたのはそれとは全く無関係の破道の詠唱。
しかしそれでは状況が一致しない。明らかに自分は”卍禁”の初曲から終曲まで全てを食らっていた。
「――――成程、ここでその斬魄刀か」
九曜縛を放った後、薫は千手皎天汰炮の詠唱をしていたのではない。
そう言う風に幻影を見せていた。
本当に詠唱していたのは卍禁。
藍染が食らったのは、完全詠唱したソレだったということだ。
「姿を偽装し、詠唱を誤認させ、私の注意を攻撃からその内容そのものに引き付けさせた。つい先ほど浦原喜助にされたのと同じ内容だとね」
尸魂界に進行してくる直前まで藍染を足止めしていたのは浦原喜助、四楓院夜一、志波一心の三人だ。
そして浦原喜助は藍染との戦闘に入ってすぐ、六杖光牢、鎖条鎖縛、九曜縛を用いて藍染の動きを封じ、千手皎天汰炮を放った。
その時さえ無傷だったのだ。だが同じ油断にしても、誘導されたとなれば多少藍染も苛立つ。
僅かな薫の霊圧を感じて振り返りかけて、身体が一瞬止まる。
その間に薫が一閃を入れた。
「今度は六杖光牢か」
「御明察。見えていない筈なんだけどなァ?」
反鬼相殺するまでもなく六杖光牢から脱し、斬魄刀を振るう。
「その程度の事、分からないわけがないだろう。しかし、さっきの発言まで嘘だったとはね」
「さっきの?」
一合、二合、斬り合うたびに薫が下がる。
「現世の状況が分からないと言っていたことだよ。よくよく考えれば分かることだ。浦原喜助がそんな手抜かりをするはずがない」
「まァね」
不敵に笑う薫に余裕が無いのがよく分かる。
「君のことだ、何か考えがあったんだろう?例えば―――ギンかな」
「君が見捨てた、ねェ」
僅かにできた薫の隙に斬りかかるのを止めて、一歩後ろに下がる。
藍染がいるはずだった場所で大きな爆発が生じた。
「雷吼炮か。鬼道は苦手だと聞いていたが違ったかな?―――破道の九十、黒棺」
「――――ッ‼」
闘っていた二人の二階分上に黒棺が出現した。
その隣には、ギリギリでそれから逃れた薫が片膝をついている。
先程まで藍染に斬りかかっていたのは偽物だったらしい。
「素晴らしい瞬歩だ。隠密機動に勝るとも劣らない」
「お褒めに預かり光栄だよ。反吐が出そうだ」
藍染が踏み込んだ。
薫が咄嗟に右手を構える。
「円閘扇!」
円形の盾が現れた。
―――――その程度の鬼道の、それも詠唱破棄で私の斬撃が防げるとでも?
さらに加速しようとした瞬間、藍染の体は何かに衝突して大きく勢いを削がれた。
砕けたソレは断空だった。
薫の姿が目の前に現れる。
「
瞬きの後、其処は空座町から離れた森の上だった。
同時に飛ばされた断空の破片がキラキラと小さくなりながら散ってゆく。
「それは禁術ではなかったのかい」
「君が斬ったせいで今は四十六室が不在だ。いないものに裁かれてやるほど僕ァ寛大じゃァないんでね」
幾分か彼は余裕を取り戻したようだ。
空座町から離れたのはきっと…卍解を使うためだろう。
薫の卍解は使い勝手が悪すぎる。
発動と同時に生じるのは全方位への無差別攻撃。
防ぐことが出来ないのが困ったところだが、それ以上に敵味方の区別を付けない性質はその主人たる薫にとって最大の枷となったはずだ。
薫は―――甘い。
尸魂界で藍染を絶好の機会で取り逃がしたのも、卍解をあの場の黒崎一護、阿散井恋次、狛村左陣が浴びれば即死だったのを分かっていたからだろう。
それを藍染は重々承知していた。
薫が何処までかは分からないが劣勢を装いつつ町の外へ外へ藍染を誘導していたことも分かっていた。
彼はそれに敢えて乗った。
これは決して、“薫の卍解に受けて立つ!”といった少年漫画みたいな幼稚な動機ではない。
薫の戦意を完全に削ぐためだ。
幾ら藍染でも、そう簡単に薫の卍解を食らいたくはなかった。霊王宮での戦闘前に消耗するには割に合わない。
アレがどれほどの威力を持つのかは、実際に体験した薫と藍染にしか理解できないだろう。
「残念だよ、百目鬼薫」
「―――!」
藍染は薫の首を掴むと、瞬歩で空座町の真ん中に辿り着いた。
たったの一回で、だ。
「なッ――――‼」
「今の私にはこれくらいのこと、造作もない。君がどれほど策を弄して私に歯向かおうが、私には些末事なのだ。諦め給え」
どれだけ止めをさすために藍染をここから遠ざけたところで、藍染にその距離は大したものではないのだ。
並みの精神の者なら、これで心が折れるだろう。
「くッ!」
薫の首を掴んでいた藍染の手に薫が斬りかかった。
そこそこ切れたため手が拘束を緩めた。
薫が距離を取り、斬魄刀を構え直す。
「足掻くか。いいだろう」
余裕のある笑みで藍染は薫の刀に応えた。
ギイィィィンン…
鈍い音と共に衝撃が腕を痺れさせる。やはり、打ち合いで藍染と真っ向勝負するのは分が悪い。
先程から薫は〈波枝垂〉や剣術を駆使して藍染と対峙していたが、時間が過ぎるほどに劣勢になっていた。それもそのはず、既に崩玉と一体化したらしい藍染は、斬っても斬っても怪我が元通りになる上に霊力が減る兆候もない。
『何も、絶対やれって言ってるわけじゃ無いっス。そうさせないよう、アタシらも全力を尽くします』
浦原さん、申し訳ない。
これ以上時間を稼ぐことは出来そうにありません。
『でも万が一、その全てが届かなかったとき…藍染の息の根を止めるにはこれしか無いんス』
分かっています。
最早避けては通れないなんてことは。
薫は斬魄刀を持った手を掲げた。
「卍解、〈演舞・波枝垂尽帰じ――〉「させると思うかい?」―――ッ、ゴフッ…」
薫は片手を添えることもせず大量の血を口から吐き出した。それが数滴、目の前の藍染の頬に落ちて紅い楕円を作る。藍染の手に握られた斬魄刀は、的確に薫の心臓を貫いていた。
「驚いたな。まさか君が
藍染の心臓もまた、後ろから貫かれた。薫が斬魄刀を逆手に持ちなおし、自分の心臓諸共藍染を串刺しにしたのだ。
二本の刃で貫かれた薫の心臓は、すぐにでも止まる筈だった。
「卍解、〈演舞、波枝垂尽帰塵〉」
二人の視界に入る範囲全てに〈波枝垂〉の刀身が現れた。その数は一か月前の比ではなく、尚も増え続けている。
「何故死なないんだと、そう思っているんだろうねェ」
薫の笑みが藍染にも伝わったのか、重なった二人の体を離そうと藍染がもがいた。その動きを、薫は〈波枝垂〉の型の一つ、枷鎖で止めた。直接〈彼女〉が触れて発動しているのだ。十分に時間を稼げるだろう。
追記しておくと、卍解中でも薫の手には始解状態の〈波枝垂〉が握られている。そしてこの一振りこそが薫の卍解を有効範囲内で逃れる唯一の鍵だ。
この刀でできることは二つ。
一つは始解時と同様の能力の使用。もう一つは
この刀に触れている者に与えられた波と逆位相の波を生じさせ相殺することが出来る。
さればこそ術者である薫は本来卍解を放ったとしても傷つくことはなく、ごくごく少数の者ならば護ることもできる。
またそうであったからこそ藍染の逃走時、反膜の中で薫は自身を護らなかった。もし藍染が刀に触れれば卍解までした意味が無に帰していたからだ。
「心臓の役割は血液を流すこと。血液の流れが止まらなければ、心臓など破れていても良いんだ。そうだろう?」
息のかかるほど接近した二人の顔が互いの視界に入った。
「〈彼女〉が居れば血流など幾らでも作れる。残念だったねェ」
「残念、だと?それはこちらの台詞だ。私の心臓を破壊したところで、私を殺すことなどできはしない」
「知っている。崩玉と融合した時点でどうやっても君を殺すことは出来ないだろうと浦原さんは言っていた。だからこその、卍解だ」
矛盾だ、と笑おうとして、藍染は薫の目に違和感を覚えて止まった。
その黒い瞳の奥は、藍染を見てはいなかった。藍染をどうこうといったことなど、最早考えてすらいないという風だった。
「藍染、君はここで僕と一緒に
「百目鬼、貴様、まさか…!」
薫の卍解は範囲を絞るのが困難だ。それは
水面しかない精神世界くらいでしか試したことはないのでよく分からないが、その有効範囲は最大半径五霊里にもなるのだということを〈彼女〉は言っていた。
そして薫はこの数週間でその上限を引き出すことが出来る様にと喜助に依頼され、修行していた。
『百目鬼サン、貴方に本当にやってもらいたいのは――万策尽きた際に
最大出力で半径一霊里の範囲で卍解すれば、地上の人間や建物だけでなく、地面すらもここ
これが、喜助の言っていた”薫にしかできない”の意味だ。
炎熱系最強の斬魄刀と言われる〈流刃若火〉といえども、燃やし尽くせるのは地面の上まで。炎に土は燃やせない。他にも攻撃力の高い斬魄刀は存在するが、半径一霊里もの土地ごと消し去る威力のものは無い。
加えて、この力を持っているのが薫だということも喜助が薫にこの指示を出した理由の一つだった。
薫が持つ他者の生への執着は飛びぬけている。それを藍染も知っている筈だ。だからこそ薫が他者の命を奪う行為をするなどという発想は出もしない。
彼の卍解を持つのが或いは喜助だったなら、藍染もその発想に至っていただろう。しかし事実そうはならなかった。
そして塵と化し、滅された空座町を修復するのは何者にも不可能だ。
いや、正確に言うなら織姫の”事象の拒絶”をもってすれば可能かもしれないが、どれだけ膨大な時間を掛ければいいのかは想像すらできない。
そう、破壊と修復は掛かる時間が違い過ぎる。
「これは、大いなる時間稼ぎだよ」
この戦いの最も重大な目的は”藍染を倒すこと”ではない。
何故藍染を倒すのか?――王鍵を作らせぬため。
何故王鍵を作らせないのか?――空座町を護るため?…違う。
つまり空座町を護る行為自体は目的への手段の一つに過ぎない。
薫は呻くように言った。
「重霊地は―――空座町は塵に還る。次の重霊地は何処になるだろうねェ?まァ何処だろうが、それが生じるには何十何百もの年月が必要だ」
『準備、整いましてございます』
〈彼女〉が囁いた。
「それまでに君は必ず打ち倒される。誰がどうするかなんて僕の知った事じゃァないが、王鍵も作れず霊王宮にすら辿り着けない君が霊王を討つことは有り得ない」
薫は斬魄刀を持たない方の手を掲げた。
二人の胸を貫く刃は今度こそ本来の能力を発揮する。
全てが終わった後、この場所にはたった二つの影しか残らない。
笑えないことに、本当の”影”が落ちるはずの大地すら消え失せて。
一言だ。後一言発すれば終わる。
喜助の”お願い”も、藍染の思惑も、この町の人々の営みも―――――
町が消えゆく様から、目を逸らすまい。
人々の叫びを、聞き逃すまい。
今日己のしたことを、忘れまい。
僕がこれから背負っていく新たな罪だ。
頬を暖かい水が伝うのが分かる。
緊張しているのだろうか?これ程汗をかいていたとは思わなかった。
「さざめ―――」
振り下ろしかけた薫の手を、後ろから誰かが掴んだ。
「泣くくらいならそんなことすんなよ、薫さん」
「一護――――?」
一護に言われて初めて、頬を濡らしたのが涙だと自覚した。左腕の力が緩んだのを感じたのか、彼もまた薫の腕から手を離した。
「薫さん、藍染と片を付けさせてくれねえか」
薫が一護の方を目だけで見ると、少し雰囲気が変わっていた。
背も髪も伸び、その眼はより強い光を宿したものになった。
何より、彼の姿を五感で把握しなければ見失いそうになるほど、彼は希薄な存在感しか無くなった。
なのに、何故だか彼に託したいと思った。彼なら藍染を止めてくれる、そんな気がするのだ。
薫は無言で〈波枝垂〉を自身と藍染から抜き、藍染の枷鎖を解いた。
藍染が距離を取ろうと薫から斬魄刀を抜いた途端、一護は”この町では戦えない”と藍染を連れて遠くへ離れていった。
暫くして、衝撃波だけが伝わってきていた彼らの戦いは静まった。途中から一護だけでなく藍染の霊圧まで感じられなくなったが、二人がいるらしい位置に喜助の霊圧を感じて薫は卍解を解いた。彼が出張ってきているのなら、もう戦いは終わったのだろう。
心臓を失い、斬魄刀の力で長らえている彼の体は、彼の命を縮め続けている。
しかし彼は歩み始めた。
南流魂街で待つ、少女のために。
「なに、余命は元々一年と少しあったんだ。寿命が倍の速度で縮んでも、存外命を留められそうだよ。大丈夫、すぐに帰るとも」
誰にも見咎められることなく、彼は一歩、また一歩とその地へ歩き続けた。
数か月後、一護は自室のベットの上で目を覚ました。
藍染を倒すために〈最後の月牙天衝・無月〉を用いた一護は、力を失う過程として眠り続けていたのだそうだ。そしてこれから後僅かな時間で、一護の最後の力が消えていくらしい。
「あの後、藍染はどうなった?」
複雑な心境のまま一護がルキアに訊くと、ルキアもまた神妙な顔つきで応えた。
「真央地下大監獄最下層 第8監獄、無間にて二万年の投獄刑に処されることが決まった。奴はもう何もできぬ」
「そうか……」
ふと何かが足りない感じがして一護は顔を上げた。
ルキア、チャド、石田、井上――――そうだ、後二人は…
「なあ、恋次と薫さんはどうしたんだよ?」
その言葉に、皆が動揺した。一護が不安になっていると、ルキアが再び口を開いた。
「
「お前、サラッと恋次のこと
グッと言葉を飲んだルキアは、目を伏せながら言った。
「……薫殿は、行方不明だ」
「なんだよ、ソレ…」
一護の声に、ルキアは苦しそうに首を振った。
「護廷隊が全力で捜索しておるのだが、見つからぬのだ。遺体どころか、斬魄刀の一振りさえも出てこぬ…生きているのか、亡くなったのかすらも確認がとれておらん。恐らく薫殿の姿を最後に見たのは一護、貴様だ。何か手掛かりになるようなことは覚えておらぬか」
一護は目をつぶってその時のことを思い出した。
「あの時、薫さんは泣いていた。あの様子だと、自分の卍解で町が破壊されるのが嫌だったって感じだった。それと、薫さんの胸に刀が二本刺さっていた」
「胸に二本だと⁉致命傷ではないか!」
「ああ。でも薫さんは普通だったな…刀なんか刺さってなかったんじゃないかってくらい意識がはっきりしてた」
「――――――そうか…分かった」
俯いたルキアに、一護は笑いかけた。
「そんな顔すんなって!きっと薫さんは生きてる。ひょっこり帰ってきて、冬獅郎にキレられたりしてよ。想像できるだろ?」
本当に想像したらしく、ルキアは噴き出した。
「ふふ!確かに想像に
そう言うルキアの存在感が、段々薄くなっていくように感じる。
本当に、俺の力は消えるんだな。
それは、ルキアにも伝わったらしい。
「お別れだ、一護」
「そうみてえだな」
一護が返すと、ルキアは意地悪そうな顔になった。
「ふっ!そう寂しそうな顔をするな。貴様に私が見えなくなっても、私からは貴様が見えているのだぞ?」
「何だ、ソレ。全然嬉しくねえよ。あと、寂しそうな顔もしてねえ」
ふ、とルキアは薄く笑った後、俯いた。その足元から、ルキアが一護の世界から欠けていくのが分かった。
「皆に、宜しく伝えておいてくれ」
「ああ」
俯いたままのルキアに、一護は語りかけた。
いざ最後となると、話したいことも出てこなくなるものだ。
「じゃあな、ルキア」
最後の一呼吸で、ルキアは顔を上げた。何かを言おうとしたのか、短く息を吸った音だけが聞こえたが、その先が一護に届くことはなかった。
「――――――ありがとう」
既に虚空になってしまった場所に一護は囁いた。
もう会う事のない仲間に届くことを願って――――――
第三幕、閉幕です。
次話から主人公代理がメインになります。
誰って、それはもう彼女でしょう。
もう主人公はボロボロですのでどうか勘弁してやってください。
加えて、説明が助長だと思って省略したことについて
・早々に戦線離脱して、薫は何処に行って何をしていたのか
――尸魂界の本物の空座町で、一人でも多くの町民を安全なところに移してました。といってもそういう事をやるには時間が無さ過ぎたので殆どの町民は残ったままでしたが。戦いに備えてトラップを仕掛けまくるのもアリかと思ったのですが、書けなかったので諦めました。
・浦原氏の作戦は何処まで護廷隊に伝わっていたのか
――総隊長には伝わってました。霊王が討たれれば世界ごとおじゃんですので、最終手段として了承していました。といっても最重要機密事項ですので隊長格でも殆ど話されてはいませんでした。その為、薫は空座町で孤立無援状態…下手に加勢しても意味無いので…
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!