紫苑に誓う   作:みーごれん

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一週間前には、‘‘お気に入りがもうすぐ二桁行きそう!やった!‘‘とスクリーンショットしてました。
それが今では、本当にたくさんの方に支持していただけているという事実に頬がほころびます。

ありがとうございます!

ちなみに、今回、現実逃避シリーズ第二弾です。
早く冬季休暇になってほしいです……



演習

(しまったああぁぁぁぁぁァッッ!まずいまずいまずいまずい)

 

薫と藍染は斬魄刀を抜き、向かい合っている。薫はその内心を晒すことなく、藍染の動きを注視していた。

 

(どう来る…ッ?)

 

 

 

 

 

 

 

…この状況を説明するには、三日前まで遡る必要がある。

事の始まりは浮竹隊長の好意だった。

 

「やぁ、薫君!元気にしてたかい?」

「お陰様で。浮竹隊長はいかがでしたか?」

「俺もまぁ、ぼちぼちかな!」

 

明らかに顔色の悪い浮竹を見て、薫が突っ込む前に昴が飛び出してきた。

 

「そんなことないでしょ隊長。卯ノ花隊長に‘‘ちゃんと薬飲まないと死にますよ、にこっ‘‘てされてたじゃないですか。いい加減子供みたいに薬飲み損ねるのやめて下さい」

「あちゃぁ、橘も来てたのかい?」

 

苦笑する浮竹に、ただでさえ切れやすい昴の堪忍袋の緒が切れた。

 

「何ですか?その反応は!隊長が全然反省してないって卯ノ花隊長に言いつけますよ?」

「まァまァ昴、その辺で。ところで浮竹隊長、お話というのは、三日後の合同演習の件ですか?」

 

昨日一番隊から、鬼道衆と十三番隊で行う合同演習の打診が来た。十二番隊の技術で疑似虚を作り、それを殲滅するという内容だ。もちろん受け、昨日のうちに参加する隊員を選出していた。

 

「あぁ、そうなんだ。実はその話題が今日副隊長会議に出た時、藍染副隊長が五番隊も参加したいと言ってくれてね!」

「…はァ」

 

(これはまさか…いや絶対…)

 

「それで、折角だから五番隊も一緒にやろうということになったんだ!」

 

(やっぱり~~~!)

 

「…演習場はギリギリの大きさではありませんでしたか?今から変更というのは難しいのでは?」

「大丈夫!元柳斎先生に伺ったら、その日は偶々一回り大きい場所が空いていてね。そこで行うことになったんだ」

「もう決定事項なんですね…」

 

薫の声のトーンが少し下がったのは浮竹にとって予想外だったようだ。

 

「あれ、もしかして駄目だったかい?」

「いえ、決定前に一言聞いておきたかっただけです」

「それは済まないことをしたね…」

「いえ、良いんです。なるべく多くの隊員同士が触れ合う機会にしたいですから」

 

へらッと薫は笑顔を作った。

 

 

 

昴はソレに少し眉をひそめた。薫の反応に違和感を覚えたからだ。

 

(また何か隠し事?この胸騒ぎは何?)

 

 

崩壊の予兆は始まっている――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

『……………』

 

今、薫は自身の精神世界にいる。目の前では、〈彼女〉が手に持った横笛を吹くこともせず弄っていた。

(沈黙が辛い…何て話しかけたらいいんだ…)

 

浮竹に予定変更を告げられてから二日後、演習前日。薫は意を決して〈彼女〉に会いに行った。演習に行くなと言われれば、病欠でもなんでもするつもりだった。しかし―――――

 

『…薫様』

 

「ハイ」

 

『参加なさいませ』

 

「…良いのかい?僕ァ君が行くなと言えば行かない。誓約通りに」

 

『立場上、避けられないこともあると仰ったのは薫様ですよ?今下手に避ければ怪しまれます。ただし、くれぐれもお気を付けて』

 

「ありがとう。わかっているさ」

 

『もぅ、本当でしょうか?』

 

困ったように笑った〈彼女〉は笛を吹き始めた。この水面のように、どこまでもどこまでも澄んだ音色だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今日、演習は予定通り進んでいた。虚出現地点近隣に流魂街があり、逃げ遅れた者がいる設定だ。鬼道衆が結界を張りつつ住民を保護し、中で護廷隊士が疑似虚を殲滅するのだが、これが中々難しい。鬼道衆が結界を張るタイミングを誤ると、早ければ隊士が中に入りそこない、遅いと街に被害が出てしまう。隊士が虚を誘導しそこなうと、鬼道衆は結界を張れない。他にも様々な問題点が発覚し、皆が積極的に動いてくれた。

 

 

 

「百目鬼副隊長」

 

藍染の声だ。薫は、やっぱり来たかと思いながら振り返った。ただ、薫に近づいてくる足音が複数なことが引っ掛かった。

 

「どうも、藍染副隊長…あァ、浮竹隊長と海燕副隊長も!」

 

浮竹と海燕が各々片手を上げて薫に答えると、長身の二人の後ろから更に二人の影が動いた。

 

「私もいるぞ!」「僕もおるよ」

「昴…やっぱりな。「どういう意味だ⁉」…そっちの君は確か、市丸三席?あの日はどうも、迷惑をかけてすまなかったね」

「ええんですよ。待ってたのは副隊長の命令やったし」

 

昴が文句を言っているのを無視して薫は話を続けた。

 

「ありがとう。ところで藍染副隊長は何か僕に御用だったんですか?」

「ええ。急に五番隊も参加させていただいてありがとうございました。直接申し上げねばと思っているうちに今日を迎えたものですから」

 

藍染がにっこりと柔和な笑みを薫に向けてくる。一体彼の腹の中ではどう思っていることやら…

 

「良いんですよ。隊士同士の交流は多いほうが良い。寧ろ、今後の為にも五番隊が名乗りを上げてくださったことには感謝しているんです」

「そうですか。そう言っていただけると、こちらとしてもありがたいです。…交流、か。こういう遊びを入れてみませんか?」

 

 

――――各隊のトップが模擬戦を行う――――

 

 

(ん?何だかおかしな流れになってきたな)

 

「あはは、面白そうですが、急にそんなプログラムを入れられる時間はありませんよ?」

「そんなことはありません。皆良い動きをしてくれたおかげで予想以上に進行が速いんです。この調子だと、かなり時間ができるようなんです」

 

藍染の提案に食いついたのは、何と浮竹だった。

 

「そうなのかい?確かに面白そうだ!俺も参加しッ、ゴホッゴホッ!」

「浮竹隊長!……隊長は無理ッすよ。代わりに俺が出ます」

 

海燕は出る気満々のようだ。しまった、このために藍染は彼らを連れてきたのか。この流れで無理に反対したら不自然だ。してやられた。

 

「どうですか、百目鬼副鬼道長。やってみませんか?」

「…やりましょうか」

 

……表情が引き攣らなかった自分を褒めたい。

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

(しまったああぁぁぁぁぁァッッ!まずいまずいまずいまずい)

 

薫と藍染は斬魄刀を抜き、向かい合っている。薫はその内心を晒すことなく、藍染の動きを注視していた。

 

(どう来る…ッ?)

 

 

ここに至るのである。

 

 

 

 

 

薫は内心、気が気ではなかった。藍染の斬魄刀は、恐らく幻術系の何かだ。問題は、発動条件…少しも油断できない。

 

「水天逆巻け、〈捩花〉!」

「砕けろ、〈鏡花す―――〉」

 

『駄目ですッ、薫様ッ!』

 

精神世界でもないのに彼女の姿が藍染を隠して見える。これは一体?

 

『藍染の様子がおかしいのです!きっとこれは見てはいけない!』

 

「しかし―――」

 

『わたくしが駄目だと判断したのです。何か文句がおありですか?』

 

凛と言い放った〈彼女〉に、薫は薄く笑いかけた。

 

「いや、無いよ。君がいいと判断したら見せてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

志波海燕は、高揚していた。それは別に、この模擬戦の雰囲気に当てられたからではない。実のところ彼は、百目鬼の――薫の斬魄刀が解放されるところを見たことが無かった。

今まで見せてほしいと言っても、のらりくらりと躱されてきたのだ。

 

(今日こそは、見せてもらうぜ!)

 

「水天逆巻け、〈捩花〉!」

「砕けろ、〈鏡花水月〉」

「――――」

 

百目鬼が解放しない。というか、何かぶつぶつ喋っている?こんな場所で放心状態とは、良い度胸じゃねぇか。

 

「ボーッとしてんなよ、百目鬼ぃッ!」

 

斬魄刀を薙ぐように払うと、突然現れた大量の水がうねりながら百目鬼へ向かっていく。

少しきつすぎたか…?

百目鬼は、彼が飲み込まれる一瞬前に迫ってくる水に気付いたが、すぐに全身が飲み込まれた。

 

 

水から彼の姿が現れる。死覇装は全く濡れていなかった。

百目鬼を中心として、半球状に風で結界のようなものが張られている。

 

「海燕副隊長、ちょっと水量多すぎですよ」

「なんだその、‘‘海燕副隊長は困った人だな~!‘‘みたいな顔は!お前がボーっとしてたのが悪いんだろうが!」

 

全く、心配して損したぜ。しかもあれが直撃して一滴も濡れてないとか……手加減して撃ったことは確かだが、ちょっとへこむ。余裕かましてにこにこしやがって…

 

「あァ、バレてましたか。参りましたね~、‘‘海燕副隊長の恥は十三番隊の中だけに留めておきたい‘‘って都三席が仰ってたのに」

「そっちかよ!俺が困った奴だって言いてえのかお前は!というか、都がそんなこと言ってたってのは本当か⁉」

「嘘に決まってるじゃないですかァ~」

「本当だな⁉信じて良いんだな⁉おいッ!」

 

あははははー、と百目鬼が笑う。くそう、適当ばっか…だよな?百目鬼は後で()める。

 

「僕もそろそろ、参加してもいいかな?」

 

藍染副隊長のことすっかり忘れてた。すみません、と一言謝り、海燕は〈捩花〉を握りなおした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(彼の斬魄刀は風を操る能力を有しているようだ)

 

藍染は、薫の戦闘を見て感じた。普通の隊士なら、目に見えない何か長い刃が鞭のようにあちこちを切り裂いているように見えるだろう。だが、切り裂く程度やタイミングが、ほんの少しだけ不自然だ。そして、期せずして志波海燕が放った流水。あれを防いでいたのは、間違いなく風圧だ。鬼道ではあんな芸当はできない。

 

(鬼道に加えてリーチを無視した攻撃は確かに強力だが、脅威と言えるほどではない。〈鏡花水月〉の開放直前、不自然な動きをしていたのが気になったが、()()()()()()()()()()()()()何の問題もない。僕の手の上で踊ってもらうよ、百目鬼薫)

 

〈鏡花水月〉を使い、()()()()()()()()()藍染は模擬戦を終えた。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、皆お疲れ様!隊長格があんなに派手な立ち回りを見せたんだ。他の隊士の士気も上がっているよ!藍染副隊長の提案は大成功だったね」

 

浮竹隊長も一緒になって興奮していたのだろう。いつもは白い肌が、ほんの少しだけ赤みを帯びていた。

 

「十二分に効果があったようで良かったです。こういう企画は、鬼道衆とだけでなく護廷十三隊内同士でやっても良いかもしれませんね」

「そうだね。元柳斎先生に進言してみるよ!薫君も、合同演習のいいスタートを切れて良かったね」

「えェ。ご協力ありがとうございました」

 

 

 

 

他の隊長格から離れてから、薫はどっと冷や汗を噴き出した。彼の斬魄刀が、心配そうに彼の背中に手を置く。

 

『薫様、大丈夫ですか?』

 

「あァ、大丈夫。初めてしたことが多かったから疲れただけだよ。ところで、君ァ何でこっちに出てきているんだ…?」

 

『緊急事態でしたから、抜け出して来てしまいました。…というのは冗談です。薫様、具象化(ぐしょうか)、という修行の過程をご存知ですか?』

 

「君も冗談何て言うんだねェ。具象化を知っているか、だったね。勿論知っているさ。斬魄刀の最終奥義―――卍解(ばんかい)に至るためのものだろう?成程、今の君の状態がそうだということか。具象化した本体は他の死神の目には見えないものなのかい?」

 

『場合によります。今は、わたくしだけが具象化するという意思を持っていたために人目に付きませんでした。しかし、わたくしと薫様が同時に具象化の意思を持てば、わたくしの姿が他の方々の目にも映るようになります』

 

「それなら、僕ァ具象化したいなんて思えなくなるじゃァないか」

 

『まあ、どうしてですか?』

 

「だって君の美しさは、女性をも釘付けにしてしまうだろうからねェ」

 

お上手ですこと、と〈彼女〉は笑った。

薫からすればそれは正直な気持ちをただ述べただけに過ぎなかったから、何がどう上手なのか分からずきょとんとしていると、

 

『まあ!……困った方!』

 

そう言って〈彼女〉は困ったようにまた笑った。

 

 

 

 

 

合同演習が恙無(つつがな)く終わった後、海燕が薫を呼び出し、‘‘百目鬼後で(しご)く‘‘という彼の誓い通り夜中まで鍛錬に付き合わせていたのは、当人たち以外には都と昴だけが知るところである。

 

 

 

 

 

 




今回も最後までお読みいただきありがとうございます!

具象化のくだりは独自設定です。
本編を見てみても、他の人に本体が見えていたり見えていなかったり……
これが後の話に生きてくるかは謎です。


話を進めたくてどんどん投稿していますが、分量的にみて、今のペースは如何程なのでしょうか…
作者はガンガン読みたい派なのですが、一気に沢山読むのは嫌だという方もいらっしゃるはず。
そういった調整も、余裕が出来ればしていきたいなと思います。
まあ、それ以前にストックが無くなるという可能性もありますが…


何かありましたら、メッセージや活動報告にお願いします!
……といっても、作者が使い方を分かっていないという…勉強します。

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