シュバルツバースでシヴィライゼーション   作:ヘルシェイク三郎

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シュバルツバースで苗作りと極小宇宙

 小生が発見したドクターと看護師――。新たに救出された医療班の二人には、幸運なことに大きな負傷は見受けられなかった。

 あるのは極度の疲労のみで、それも彼らを匿っていた女悪魔に精神エネルギーなるものを捧げたせいであるようだから、おおよそ必要経費と割り切っても差し支えはないだろう。いかなるコストも、生命と天秤に計って高くつくものはないのである。

 隠し部屋から女悪魔の肩を借りてロビーへと出た彼らは、早速他の隊員たちから熱い祝福を受け、涙ながらに抱擁された腕の中で微笑んでいた。

 

「先生方、良くあの地獄から逃げ延びることができたなあ!」

「ははは……、巡り合わせが良かったみたいで……」

 資材班やインフラ班にもみくちゃにされながらも、ドクターは傍らにふよふよと浮かぶ女悪魔を見ながら言う。

 すると、「私役に立ったでしょ」と言わんばかりに童貞を殺すジャケットを着こなす彼女は嬉しそうにはにかんだ。

 二人の目のやり取りを見てつまらなそうにしている女性看護師も、巡り合せに感謝していることに変わりはないようだ。

 ゼレーニン中尉の介抱を受けながら、自分たちはただ運が良かったのだと身震いしている。

 

 窓際の門番に戻った小生は、ドクターたちと女悪魔の微妙な距離感を遠巻きに眺め、

「……友好的な"悪魔"なんていうのも存在するんですねえ」

 と声を出す。"悪魔"の存在を感知した瞬間に予期した荒事の気配は、既に的を外したものとなっている。

 胸を撫でおろす小生に、トラちゃんさんが呆れた声を投げかけた。

 

「そりゃ、そうでしょ。アクマにだって色んなのがいるし、皆違った価値観を持っているもの」

「何処ぞの女神様のようにな?」

「うっさい、カンバリ!」

 確かに彼女の言う通りだ。カンバリ様が言うにはトラちゃんさんらもアクマの一部であるらしく、つまるところ小生らの味方をしてくれているのはあくまでも彼女らのパーソナリティや倫理観が人間に近しかったからに過ぎない。小生らが生き残ったのは、奇跡の出会いに奇跡が重なった結果なのである。

 彼らのやりとりからもたらされる知見は、実に多くの困難を示唆していた。

 例えば、敵性の"神"がいるかもしれないという可能性。

 そして、人間の中にも「色んな」ものがいるという客観的事実。

 小生はちらりと隊員たちの一角を窺った。

 

 言うまでもなく、小生らにとって新たな生き残りの知らせは慶事であったが、恐らくこのニュースを一番喜んでいるのはドクターたちに直接助けられた者たちのはずだ。自然と、小生の目が動力班の青年へと向けられる。

 彼は恩人の生存を知り、明らかな喜びを見せていたが、それと同時に屋内で羽ばたく異分子の存在に眉をも顰めていた。

 ドクターの傍を片時も離れない女悪魔の姿が、彼らに警戒心を抱かせているのだろう。

 この際、先方に敵対する意志があるのか、それとも好意的であるのかは関係あるまい。

 我々と人ならざる存在は、既に理不尽な暴力を介した最悪の出会い方をしてしまっているのだ。

 ファーストインプレッションは早々拭い取れるものではなく、下手をすればトラウマになっている可能性すらある。

 故に彼の警戒も理解できなくはないのだが……。

 

 と考えを巡らせている内に、外回りの機動班が帰ってくるのが窓越しに見えた。

「皆さん。機動班、帰還しましたよお」

 小生手ずから建物の正面扉をそっと開け、駆け込む彼らをサポートする。

 リーダー、野球好き、強面、小生を嫌う一人の順番に屋内へと飛び込んだところで、間髪入れずに扉を閉めた。窓際から周囲の様子を窺い見る。

 ……多分、大丈夫だ。付近に"悪魔"の気配はないと思いたい。

 

 無事の帰還を果たした機動班は、まず野球好きと小生を嫌う一人がドクターのもとへと急行した。

 強面はこのまま警戒任務に移るようだ。リーダーと目配せした後、こちらにも目をやって、窓辺を背にしてマシンガンを抱えながら座り込む。ん? んー……?

「交代だ。お前は休憩して良いぞ」

「あ、成る程。ありがとうございます」

 そういうことかとぺこりとやったところで、強面が傷だらけの頬を緩ませ、からかい混じりに言ってくる。

 

「嬉しいか? お前は生き残り発見の功労者だ。リーダーに色々と"報告"して来い」

 自然と頬がひきつってしまった。

 先刻小生が"休憩"を"調査"と言い換えたことを彼は揶揄しているのだ。こちらに悪気があっての発言ではないと思うが、正直こういう蒸し返され方は胃腸に宜しくない。

 が、リーダーはもう小生の"報告"を待っているようであった。

 故に小走りでリーダーのもとへと駆け寄って、まずは無事の帰還を労っておく。

 

「お帰りなさい。良くご無事で」

「何、外は存外と静かなものだった。さて、ヤマダ隊員。君の口から発見に至る経緯を聞かせてくれ」

 といっても経緯自体はリーダーも大まかには察している。最も聞きたいことは、童貞を殺すジャケットを着る彼女の安全性に関してであろう。

 ただ、これは当事者に直接聞いた方が早そうであった。

 とりあえず、ドクターたちが何らかの異能で洗脳されていないことはトラちゃんさんを通して確認済みだ。また、女悪魔の実力もカンバリ様を超えるものではないらしく、人質さえ取られなければ致命的な事態に陥ることは無いと思われる。そもそも、初見で敵対に至らなかったという彼女の取った対応は、彼女が交流を持つに足る存在であることを示しているだろう。

 

「……以上のような根拠から、リスクのある存在ではないと思われます」

「フム、論理的で明快な見解をありがとう。私は君の見解を信じるよ。しかし、となると繋がりを持つに至った経緯については……」

「直接お聞きになった方がよろしいかと」

 言って小生は、ドクターを豪快に抱擁する野球好きにこそこそとハンドサインでドクターを遣すよう要求した。

 

「ん? ああ、分かった」

 むさ苦しい大男から解放されたドクターは、一同の拝聴する中で自分たちが女悪魔に匿われることになった経緯について話し出す。

 

「……僕らが医務室を出たのは、負傷者を運び出す人手を探していたからなんだ。ストレッチャーがあれば一人で一人か二人までは運び出すことはできるけど、何せ数が数だったからね……」

 ドクターは"エルブス"号が"悪魔"の襲撃を受けている最中にあって、負傷者の治療にあたっていたそうだ。

 医務室に担ぎ込まれ、または逃げ込んできた人員は20人を超えており、ドクターらは彼らに識別救急(トリアージ)を施していったのだという。

 飛んだ地獄絵図だと目を丸くしながら、小生は問いかける。

 

「"黄色"以上はどれくらいいたんです?」

 時間との勝負である救急医療において、重軽傷者のタッグ付けは重要だ。

 これは正直どれほど困難な状況だったのかという知的好奇心による問いかけだったが、今後を見据えての発問でもあった。

 例えば、危機的状況を示す"赤"タッグを付けられた者が少ない場合は、行方不明の隊員に関しても生存の期待が持てることだろう。無論、その逆もまた然りだ。

 隊の皆やドクターが自然とそうした発想へと行き着いてくれれば、小生もブリーフィングの矢面に立つリスクを避けることができるかもしれない。

 小生の問いかけにドクターは気落ちして答える。 

 

「8割がカテゴリーⅡ――、"黄色"以上だったよ……。その半数が"赤色"で……、本当に大変だったんだ。司令室を"悪魔"に占拠された艦長や機動班、観測班の班長らも医務室へと逃げ込んできてね。彼女らがパニックを起こしていたのも拙かった」

「それは……、ドクターの責任じゃあないと思いますが」

 小生は彼が助けられなかった命を悔やんでいるのだと想像して擁護に回った。

 そもそも"赤色"は心停止一歩手前か、その真っ只中にあるような患者ばかりだ。そんな患者が半数も混ざった面々が医務室へと運び込まれて、少数の医療班だけで回せるわけがない。

 これは大規模な事故現場や、テロの発生地点、内戦中の市街地でも多々見られる悲劇なのだが、救命救急は100パーセントの命を拾い取れるわけではないのである。

 だが、こうした小生の想像は気の回しすぎであったようだ。

 

「いや、責任というよりは心配、かな。患者はとりあえず全員バイタルの安定にまでは持っていけたんだ。ただ、医務室に置いてきてしまったから……」

「え、全員処置できたんですか?」

「……寿命が縮む思いだったよ」

 苦笑いを浮かべるドクターの言葉に、小生は言葉を失う。

 とんでもない医療技術だ。

 彼もまた、このシュバルツバース調査隊に選出されてしかるべき、第一線級のエリートということなのだろう。

 

「そう、ドクターはほんとすごいんだからっ!」

 と傍で話を聞いていた女悪魔も嬉しそうに声をあげる。ジャケットに隠れた豊満な部分がばるんと鞠のように跳ね上がり、全く目の毒以外の何者でもない。

 更に、じとりとした女性看護師の視線も感じられた。

 小生は察する。

 彼ら彼女らの関係に深く立ち入ってはならない、と。

 "バケツ頭"越しに見えるドクターの額の後退具合が、彼の苦労を如実に語っているかのようであった。

 さて、女難の相が色濃く見える彼であったが、気づかぬ様子で更に話を進めていく。

 

 まず、一通りの治療を終えたドクターたちは患者を安全な場所へ移すべく、艦長たちに艦外への脱出を掛け合ったが、「戦力が足りない」と一蹴されたらしい。

 どうやらドクターたちと違い、"悪魔"の恐ろしさを肌で感じ取った彼女らは"悪魔"のやってきた外部へと逃げる事をナンセンスだと考えていたようだ。

 そうして両者の意見は決裂し、ドクターと看護師は人手をかき集めるべく医務室を出た。そこを"悪魔"たちに襲われ、艦外へと連れ出されたのだという。

 

「先生、大丈夫だったのかよ?」

「大丈夫かどうかといえば、大丈夫ではありませんでした。彼女らは……、"この子"と同じ種族で"リリム"というのですが、僕たちが医者だと気づくや否や人体解剖という名目で僕たちの身体を弄ぼうとしていましたから」

「はあっ!?」

 隊員たちが女悪魔に向かって、敵意を浴びせかける。"リリム"なる女悪魔は「わっ、わっ」とドクターに抱きついて焦り始めた。

 その仕草の全てが一々童貞を煽る魅力に満ちており、実にけしからんと小生は天井を仰ぎ、自らの首後ろを手刀で叩く。

 

「あ、"この子"は僕たちを助けてくれたんです。いや、最初は助けようというつもりはなかったのかもしれませんが……。どうやら普段から相手方とは仲が悪かったらしく、彼女は僕たちそっちのけで殺し合いを始めました。正直、恐ろしくてたまらなかったですよ。目の前で血の吹き飛ぶ取っ組み合いや、宙を走る電撃のぶつけ合いが始まったんですから。結果として僕たちは生き残り、負傷したこの子だけが僕たちの前に残りました」

 その後の展開は小生にも予想がついた。

 要するに、ドクターが彼女を治療したことで友好関係が結ばれた――、有り体に言えば懐かれたのだろう。

 ドクターの腕に絡みつくリリムの様子を見れば一目瞭然だ。それもこれ見よがしに、彼女の腕には派手に血の滲んだ包帯が巻かれていた。

 

「"悪魔"が味方につくこともあるのか……」

 リーダーが思案深げな顔をしてそう呟く。ドクターとリリムの関係は、特に機動班に所属する隊員へ大きな衝撃を与えている風に見て取れた。

 その理由は小生にも容易に理解できる。

 "悪魔"を味方につけられるということは即ち、現状の戦力不足を解消できる可能性が存在するということ――。

 それはつまり、この絶望に満ちた異界の地で我々が生存できるという一筋の可能性をも示しているのである。

 

 

 

 

 "土"と"緑"が匂い立ち、小生の鼻をくすぐる中で、トラちゃんさんが上ずった歌声を屋内の一室に響かせている。

「双子葉、単子葉ー、飛び出せ、槍出せ、平行脈!」

 ちょっと何言ってるか分からないが、上機嫌なことだけは理解できる。

 トラちゃんさんは窓際の月明かりが室内へ届けられる箇所に座り込み、頭を揺らしながら即席で作られた植木鉢を見つめていた。

 植木鉢からは既にイネ科特有のまっすぐした芽が伸びてきている。

 彼女曰く、あれはただのトウモロコシだそうだが……、まだ種を植えて一日も経っていないのに、この成長速度はありえないんじゃなかろうか?

 

 小生は咳払いと共に、開けた扉をコツンとノックした。

「カンバリ様が生み出した"土"のお代わり、持ってきました。入り口に置いておけばいいですか?」

「あら、ありがとう! 折角追加の植木鉢を資材班の子に作ってもらえたのに、肝心の"土"がなかったのよね。ここいらの地面を掘り返しても塩しか出ないんだもの!」

 言って、トラちゃんさんが口を尖らせる。

 話題に出たカンバリ様はといえば、今も周辺の建物を回ってカワヤのチェックに勤しんでおられるようであった。

 本当は小生もトイレ掃除を付き合うと約束をした以上は付き従うべきなのだが、今は別件が立て込んでいて単独行動を許されている。

 時折「土産じゃ」と言って渡してくる紫色の"土"が何を原料にしているのかは、怖くて聞く勇気が持てそうにない。

 とりあえず折角の貰い物を腐らせておくわけにもいかないため、こうしてトラちゃんさんへと献上して、当初の約束の一端を果たしているわけである。

 

「育ってるみたいですね。トウモロコシの苗」

 植木鉢を覗いて小生が感嘆すると、トラちゃんさんが鼻を高くした。

「フフン、まあね。何たって女神様の加護を受けたトウモロコシだもの! 本当はもっとゆっくり成長させてあげたいんだけど、今はこの地に合った種を作ることが先だしね。この"子"たちにはちょっと無理をしてもらうことになるわ」

 と申し訳なさそうに目を落とす彼女の表情は、まこと慈愛に満ちていた。普段の天真爛漫さやパンチ力と比較すると、こちらの方がよっぽど女神"らしく"感じられる。

 流石豊穣の女神と自称するだけのことはあるのだろう。

 

「それにしても、ヤマダたちの技術ってすごいのね」

 こちらが感心しているところに、トラちゃんさんから別の感心をかぶせかけられた。

 少し、複雑そうな表情を浮かべているようにも思える。

 

「どれのことでしょうか?」

 小生が問うと、彼女は細く白い両の人差し指を階下へと向けた。

「アレから一日で、もう屋内の空気を"浄化"しちゃったじゃない」

「あー」

 どうやら、"トカマク型起電機"を介してエネルギーを供給された複数のデモニカスーツが、屋内の大気組成を地球に近似したものへと作り変えてしまった事を指しているようだ。

 例えば、今の小生は"バケツ頭"を外して平気でトラちゃんさんと向かい合っている。

 今までは掻きたくとも掻けなかった頭をぽりぽりと掻きながら、小生は「確かにそうかもしれませんなあ」と同意した。

 

 確かに人の住めぬ環境であったはずのこの歓楽街の中に、曲がりなりにも人が住める環境を自ら作り出してしまっているというのはよくよく考えてみるとそら恐ろしいことのようにも思える。

 この滅びの大地にあって我々は尚も自分たちの領域を広げようとしているわけで、もうこれは堅忍不抜だの、傲岸不遜だのという言葉で表現できるしぶとさではないんじゃなかろうか。

 ふと、小生の脳内を黒光りした昆虫がカサカサと駆け回っていったが、この想像は危険である。

 何というか、誰も幸せになれない予感さえした。

 愛想笑いを浮かべている小生を見てトラちゃんさんは首をかしげ、やがて手に持つ即席の掃除用具やら背中に背負ったバックパックやらへと目を向ける。

 

「ん、それ使って何するつもりなの?」

「ああ、ちょっと水回りの整備しようと思いまして。ついでにトイレも水洗式にと……」

 水回り、の一言にトラちゃんさんは特に大きな反応を示した。

 

「へえ、水も用意できちゃうんだ。この辺りに湧き水なんて無かったのに。……それってアタシが見に行っても良いの? 興味ある」

「勿論、構いませんよ」

 そう答えると、トラちゃんさんは立ち上がってファッショナブルなスカートをぱんぱんと整えた。

 まだ出会って3日しか経っていないが、彼女のフットワークの軽さにもそろそろ慣れてきたところだ。

 

「じゃ、行きましょ?」

 後ろ手に組んだトラちゃんさんが横に並び、小生らは家庭菜園と化した一室を出た。

 廊下では隊員たちが各々与えられた仕事に従事している。

 例えば、資材班はあちらこちらで資材の整理をおこなっていた。

 未だ"エルブス"号から持ち出せていない資材も多々あるとは言え、魔王の監視領域への執拗な潜入は、隊全体の安全保障リスクを跳ね上げてしまうことにも繋がりかねない。

 となれば、限りある物資を有効に使うため、今後は彼らの創意工夫が必要不可欠となってくるはずだ。

「あ、女神様。どうも!」

「やっほ。皆、仕事はマジメにやらなきゃ駄目よ」

「植木鉢、どうでした?」

「最高よ! あれなら、良い苗が育つはずだわ」

 小生とトラちゃんさんは彼らと挨拶を交わしながら、突き当たりの螺旋階段を下っていく。

 階段を下ったすぐ脇には、放射能マークと「KEEP OUT」の張り紙がされた一室が控えていた。

 重々しい振動が扉越しでも伝わってくる。

 この中では小生を好いていない動力班の青年が、黙々と"トカマク型起電機"の管理を続けているはずだ。

 彼の形相を思い浮かべて、じわりと胃が痛くなる。

 先だって放射線遮断処理を施すために小生があの部屋に入室した時には、彼は一言も口を聞いてくれなかった。

 理由は恐らく……、トラちゃんさんの存在にある。

 これは偶然通りがかった際に耳にしてしまったのだが、何やらゼレーニン中尉と口論している最中に「異教の神なんて……」と彼は口走っていたのだ。

 小生、思わず「あっ」と察してしまった。

 我々の世界には他人の信じる宗教を認められない手合いも少なからずいる。彼も恐らくその一人に違いあるまい。

 面と向かって罵倒してこないのは、トラちゃんさんの価値と隊内での扱いを重々承知しているからだと思われる。

 それに、曲がりなりにも彼女は人外の存在だ。下手につついて手痛い反撃を食らっては元も子もないし、何よりも未知の恐怖にただ慄いている可能性もあった。

 その証拠に、青年はあれだけ感謝していたドクターたちとも、リリムの存在が楔となって距離を置いてしまっているのだ。

 

「まずい兆候なんだよなあ」

「何が?」

「いや、こちらの話で……」

 ごまかしながらも、小生はハンドヘルドコンピュータを操り、隊共有のタスクボードをモニター上に浮かび上がらせた。

 大目標として「調査隊の建て直し」が設けられており、その下には班ごとのミッションリストが羅列されている。

 

 例えば、機動班と観測班ならば「当該セクターの探索」と「生き残り隊員の捜索」、「暫定拠点の防衛」がメインミッションとして提示されていた。

 これが資材班ならば、「戦闘用装備の補充」と「生活用品の管理」になり、インフラ班ならば「暫定拠点の構築」と「各種インフラ整備」となる。

 その傍ら、ヤマダと別記された項目に「偵察防衛」と「情報収集」、「資材調達」と「生き残り隊員の捜索」、「協力者を増やす」があるのは洒落か冗談のようなものだろう。インフラ班としての仕事以外にこれらのミッションまでこなせと言われたら、流石に身体が持ちそうにない。

 思わずため息をついてしまうが、その反面やれる範囲でこれらの追加ミッションをもこなしていこうとは思っていた。

 特に資材調達は重要だ。

 人は衣食住足りて礼節を知ることができる。だが、その逆に衣食住が足りていない時は一体どうなるのか――?

 ある人は力を頼みに野蛮に帰り、またある人は神を信仰し盲従に縋る。人の理性は足らざるを無くしてこそ輝くのである。

 隊内に要らぬ厄介ごとを抱え込まぬためにも、今は足らざるが足りるようになるべく現状の改善に努めていくしかない。

 

 そうこうしている内に目的地であるこの建物のトイレらしき区画が見えてきた。

 男女に分かれているわけでもないから、入り口に「使用中」の立て看板でも立てておく必要がありそうだ。

 資材班にタスクボードを介して看板の発注をかけつつ、トイレ内へと足を踏み入れる。

 中には古代ギリシャかローマ様式を思わせる、石造りの便座が並んでいた。一応洋式のように腰を下ろせる形状をしてはいるが、ひんやりとしていて冷たそうだ。

 その手前では、何故かドクターが難しい顔で唸っている。

 

「……どうしたんです?」

 便器に座っているわけでもなく、まさか使用中というわけでもないだろう。"バケツ頭"を被っていることから、私用というわけでもなさそうだ。

 小生が声をかけると、ドクターは助かったとばかりに表情を和らげた。

 

「ああ、いや。今のところ医療関係で仕事もなかったので何かお手伝いをと思いまして。こうしてトイレ掃除にやってきたんですが……」

 言って、彼は便座の中を覗き込む。

 

「これ、使えそうにありませんね。モニター越しに見てみてください」

 小生も釣られて"バケツ頭"を被りなおし、中を見てそして後悔する。

 便座の中には一面にモザイクが広がっていた。

 グロ画像か何かか。

 

「スキャンデータ送りますよ」

 とドクターからデータを送信されて、モザイクが実像を成していく。

 血と臓物をこねくり回したような膿のような物体にだ。やっぱりグロ画像じゃねーか! しかも蠢いているときたもんだ。

 最早水洗だなんだと言っている場合ではなかった。まずはこのどう考えても公衆衛生的にやばそうな物体の処分を考えなくてはならないだろう。

 

「どうしますかねえ……」

 ドクターが困った顔で言った。

 というか、そもそもこの排水部が外に繋がっているとしたら、それはそれでまずい。

 折角デモニカスーツで整えた空気も密閉性が保たれていないという状況では配水管を通って外へと散っていってしまう。

 血膿状の謎物体で便器が詰まっているのは、ある意味でラッキーだったのかもしれない。さらに、

 

「トラちゃんさん、この蠢いている物体って……、やっぱり"悪魔"なんですか?」

 この汚物が"悪魔"でないという保証が得られないのも問題であった。少なくとも小生の知る汚物は決して脈動などしたりしないし、デモニカを通さずとも視認できるのである。

 トラちゃんさんは便座をどれどれと覗き込み、「うわあ」と蛾眉を逆への字に歪めた。

 

「これ、"スライム"ね」

「"スライム"ですか?」

 脳裏に某有名大作RPGに登場する玉ねぎ型の怪物が思い浮かぶ。が、そんな可愛げのあるような存在には思えない。だって、グロ画像だ。

 トラちゃんさんは続ける。

「要するにアクマのなりそこないよ。ここではない何処かの異界から滅びの地に呼び出されたのは良いんだけれど、上手く本来の形を作れなかったのね。ほら、このあたりなんて肉と皮こそないもののアクマの生きたはらわたじゃない」

「いや、じゃないと言われましても……」

 そんなもんただの人間は見たことがないわけで。

 トラちゃんさんの言葉を裏付けるかのように、"スライム"が大きく脈打った。もしかすると、血管なんかも内部に張り巡らされているんだろうか。

 グロテスクな想像を強いられ、小生の食欲がどんどん失せていく。

 今朝方、宇宙食を流用した栄養ペーストをチューブから搾り出したきりの空きっ腹のはずなのに、この満腹感は不思議であった。血の臭いがしないものが見たい。自身の深層心理に、「野菜食えよ」と姿なきベジタリアンが働きかけているような心地さえ覚える。

 小生はたまらず、呻くようにして問いかけた。

 

「これ、駆除できますか?」

「一体一体は大したことないんだけど、多分これって下にもっといっぱいいるわよ。数え切れないほど。そういう気配してる」

「うげっ」

 即座に排水管の清掃という選択肢を脳内から排除する。こうなった以上は、臭い物に蓋をするしかない。

 小生は決断した。

 

「床と排水溝を繊維補強コンクリート(エフ・アール・シー)で充填してしまいましょう。トイレは便座や周りの石壁を頂いて、専用の個室を作っちゃいます」

 壁は間仕切りのような薄いもので問題ないだろう。水槽と汚物槽は強度の面からプラスチック整形の小型タンクと石材の補強でこれを賄い、別個に水の生成機構と水洗機構を取り付ける。複雑な加工でなければ、インフラ班総出で半日もあれば済む作業であった。タンク交換時の汚物リサイクル方法に関しては、また後日考え直せばよい。

 早速、タスクボードにレポートの提示と次なるミッションの発注をかける。

 かけた途端、資材班とインフラ班から「忙しい(・3・)」という顔文字や「今は仕事を増やすな」と文句のメールが殺到した。

 拠点ができて心理的余裕をもできたことは実にめでたいが、トラちゃんさん用の植木鉢は快く作っていたというのに、何て奴らだ。

 邪悪な閃きに染まった小生は、トラちゃんさんに耳打ちする。

「もしもし。貴女のお名前借りていいですか?」

「ん、アンタには"土"ももらったし、別に良いけど? 何に使うの?」

「この拠点の穴を塞いでトイレを作るのに必要なんです」

「へえー」

 分かったのか分かってないのか良く分からない彼女の返事を肯定と捉え、小生は発注の備考欄に「女神様の神託により」との一言を付け足した。

 すると即座にミッション受領の返事が殺到する。おい。

 今は外で観測任務に励んでいるはずのゼレーニン中尉まで『大恩ある女神様への奉仕とあらば参加したいのですが』と手伝いを申し出てきているのはちょっとびっくりだ。いや、貴女は専門の仕事をしてくださいと返しておく。彼女は信心深いというか、律儀というか。何かの拍子に騒動をしでかさないか、動力班の青年とは別の意味で心配である。

 殺到する通信の中にはリーダーのものも含まれていた。

 便所の排水溝に潜む"悪魔"の脅威度について、更に詳細なレポートが欲しいらしい。

 これにはトラちゃんさんとの質疑応答で新たに得た「物理攻撃以外が有効」などの弱点特性も添えて、個人的な見解を提出する。

 正直、脅威度はあまり高く無いと思われる。

 放置して良い手合いでないことは勿論だが、積極的に人間を襲うような存在ならば、小生やドクターがこうして観察できたことのつじつまが合わない。

 歓楽街に出没する悪魔や"エルブス"号で出くわした"マカーブル"程の威圧感を感じないのも理由の一つであった。それに最強戦力の一角たるトラちゃんさんも全く焦っていないではないか。

 故に、こうして即座に後方人員の応援を募ったわけでもあるのだが。

 

 小走りの足音がトイレの外側から聞こえてきた。

 最初にやってきたのはヒスパニックの資材班だ。続いてインフラ班の同僚。

 彼らは肩で息を切らせており、全力疾走してきたことが一見して読み取れる。

 信心深いってことなのかなあ、これ。

「女神様、ご用事ですかっ?」

「えっ、アタシ? アタシじゃなくてヤマダが――」

「――は?」

「ああ、いやいや」

 生命の危機を感じた小生は、慌てて彼女らの会話に割り込んでいく。

 大正時代に総スカンを食らった内閣総理大臣じゃあるまいし、神託を恣意的に利用したと気づかれれば大惨事である。

 

「この建物の下に"スライム"という悪魔がたくさんいるとトラちゃんさんが仰ったんですよ。それってそのままにしておけないってことですよね?」

「ん? まあ"スライム"はちゃんとした身体を求めて、自分より弱い存在に襲い掛かる傾向があるから、人の子にとっては危険よね」

「……え、危険なの?」

 何でそういう大事なこと先に話してくれなかったのという顔つきになる。

 

「でも差し迫った危険では無いと思うわよ? アタシもいるし、カンバリもリリムもいるし。アンタらも火か何かを使えば簡単に倒せるだろうしね。動きも鈍い奴だから、ヤバイとしたら皆が寝静まった後くらい」

 要するに小生の脅威度判定は、ツキノワグマを見て「フン、グリズリーよりはウンコだな……」と言っていたようなものであった。小学生的節穴過ぎる。

「と、と、とにかくこの悪魔たちが屋内に侵入し始めると大変まずいと思われますので、トラちゃんさんのお手を煩わせることなく、排水溝を塞いでしまおうということなのです」

 声を上ずらせながらも話を合わせていくと、続々と集まってきた後方人員の面々も合点した表情を見せてくれた。

 

「んー、便器の切り離しはダイヤモンドカッターでいけるな。30分もあれば、切り離せそうだ」

「充填するコンクリートは"エルブス"号の備品にありましたから、さくっと持ってきますわ。元々ダメコン用の備品ですけど、あっちはもうダメコンで何とかなるレベルじゃなさそうですし」

「ここばっかりにかかずらってもいられないしなあ。ヤマダの見積もりどおり、工期半日でまあ仕上げて見るべい」

 えいえいおーと皆が職人の顔になったところで、トラちゃんさんをちょちょいと引き寄せる。

 

「何よ、ヤマダ」

「あ、いえ。"スライム"が危険だということもそうなのですが、これから小生らに危険なものはどんな細かいことでも伝えてくださいませんか?」

 自分の油断を棚に上げるわけじゃないが、正直今回の脅威度誤認は下手をすると事件にまで発展した恐れがあった。

 故にこういう提案をしたのだが、トラちゃんさんには変な顔をされてしまう。

 

「……それって面倒じゃない?」

「いや、面倒って……」

「だって、アンタたちにとって"危険じゃないもの"なんてこの世界には滅多にないもの。だから"ディース"やカンバリみたいな危なくないものをこの世界の例外として教えてあげてたつもりだったのよ。その方が早いもの」

「あっ……、成る程」

 ぐうの音も出ない正論であった。

 彼女らと一緒に行動し、こうして無事に暫定拠点の構築にまでこぎつけたことで誤解してしまっていたが、人間がこのシュバルツバースにおける最底辺の住人であることに変わりはないのである。

 

「つまり、全てに警戒して回れと」

「ええ。プレーリードッグみたいに、人の子は弱いから群れるんでしょ? こうして巣を作ったのもホリネズミみたいに弱いから。間違ってないと思う。正しい事をしていたから、これまで生き残ることができたのよ。これまで見た感じ、ヤマダの霊は間違いなく良い霊ね。これからも胸を張って生きなさい。この女神様も見守ってあげるんだから」

「はあ」

 良く分からない太鼓判を押されてしまった。

 一瞬ぽかんとした後、

「それより、水はどうするの?」

 というトラちゃんさんの言葉に、自らがやるべき事を思い出す。

 

「水用意するんでしょ? どうやって?」

「いや、そんなに難しいことじゃあないんですよ。実際」

 職人が溢れて手持ち無沙汰になったドクターを交えて、小生は水の安定供給に至るまでのプロセスをざっと説明する。

 

「手っ取り早いのは大気中の水分を取り出す方法です。吸水性の高い多孔質金属とヒーター、それにクーラーさえあればすぐにでも純水が取り出せますよ」

「ああ。純水は医療でも必須ですから、安定供給ができるなら助かりますね」

 喜ぶドクターとは対照的に、何のことだか分からないといった様子のトラちゃんさん。

 多分、実際にやって見せたほうが早いかもしれない。

 小生は工具箱とバックパックを開き、必要な素材を取り出していく。

「ちょっと、動力引っ張ってきますね」

「あ、手伝いますよ。ヤマダさん」

「ありがとうございます。じゃあ、そこの箱を組み立てて置いてください」

「ハイ、ハイ。アタシはー?」

「トラちゃんさんも一緒にどうぞ」

 と言って、動力室からタコ足に伸びているケーブルハブから新たなケーブルを引いていく。

 ドクターとトラちゃんさんは、好奇心に満ちた表情で小生が用意した箱型の水分抽出機を組み立てていた。

 

「携帯心電図チェッカーとかは組み立てたことあるんですが……。こういうのって子どものころに組み立てたプラモデルを思い出しますよね」

「ネジってぐるぐる回すと刺さっていくのよね。どっちに回すの?」

「トラちゃんさん、ドライバー使わないと」

「あれ、難しくて嫌い!」

 ぶうぶう言いながらもトラちゃんさんは、組み立て用のネジを差し込んでいる。一応確認してみたが、どれもギチギチに締まっていた。流石の馬鹿力である。

 作業自体はすぐに完了した。

 出来上がった装置に通電すると、すぐに生成口から水滴がぽたり、ぽたりと落ちてくる。

 

「わ、わ。本当に水が落ちてきた。ハイカラね!」

「それ、ハイテクですよね。多分」

 トラちゃんさんが滴り落ちる水の粒を掌で迎えて、溜まったそれを舐め取った。

 そして、すぐに渋い表情を見せる。

 

「……これ、美味しくないわ」

「え、本当ですか?」

 言われて、"バケツ頭"を外して自分でも舐め取ってみる。

 無味無臭。

 純水らしい、味であった。

 

「何の味もしない、ただの水だと思うんですが……」

「"本物"の水は違うわよ!」

「んー?」

 どうやら両者の認識に違いがあるらしい。

 3人で首を傾げていると、ドクターがぽんと手を叩いた。

 

「ああ。多分、女神様は水に溶け込む不純物の有無を言ってるんじゃないかと。自然界に存在する水は二酸化炭素や窒素、複数のミネラルが溶け込んでおりますからね」

 彼の説明に小生も得心する。

 トラちゃんさんは豊穣の女神だ。ならば、自然を司っているわけであり、自然界にない水を"本物"と認めることはできないのかもしれない。

 しかし、言われてみればと口元に手を当てる。

 ミネラル分の調達も喫緊の課題だ。人は循環機能の調整に多くのミネラル分を利用している。

 最悪は排泄物からリサイクルするしかないのだろうが、新たな調達経路が必要なことは確かであった。

 試しにタスクボードに「ミネラル分の調達」を起案してみると、他の隊員たちから「後にしろ(・3・)」やら「次から次へと仕事を作るな。今は無理だコノヤロー」やらのありがたい反応が返ってくる。

 

「……うーん、まあそうなるよな」

「あはは、皆さん忙しそうですからね」

 ドクターも彼らの反応に苦笑いであった。今回は目撃者もいるために神託を濫用することも出来ないだろう。

 さて、どうするべいと腕を組んだところにリーダーから個別の通信が送られてきた。

 

『ハロー、ヤマダ隊員。タスクボードを見る限り、後方のインフラ整備が順調のようで何よりだ』

「お恥ずかしい限りで」

『そろそろ我々も暫定拠点に帰還する。"良いニュース"と"悪いニュース"があるので、皆をロビーに招集しておいて欲しい。その際に、君には新たなミッションが課せられることになるだろう』

「あの小生専用のミッション欄に付け足されるんですか?」

 通信越しにリーダーの含み笑いが聞こえてきた。止めてくれよ、怖いじゃないか……。

『安心してくれ。あの愉快なミッション欄はシェイプアップされることになるだろう。ポジティブに捉えるなら、君に課せられるミッションは一つになる』

 全然安心できないお言葉であった。

 彼の言葉を言い換えるなら、あの大量のミッション群よりも優先されるミッションが小生には課せられるということになる。

 にわかに胃腸がぎゅるると唸りをあげた。が、未だトイレは完成していない。

 戦々恐々しながらも各員のもとへロビー集合の連絡をもたらすために駆け回る。

 

「あ、お疲れ様です。ヤマダ隊員」

「さっきのニンゲン? ねえ、あんた仲間から女子トイレマンって呼ばれてるんだって? 何したのさ」

「や、止むに止まれぬ事情がありまして……」

 動力室や各階の廊下、医務室を巡って連絡を終えたところで、

 

「皆、喜べ。戦力拡充の目処が立った!」

 正面玄関からリーダーの勇ましい声が聞こえてきた。

 ロビーに集まった者たちや、ロビーに向かおうとしていた面々はわあっと希望に沸きあがり、機動班の面々を暖かく迎え入れる。

 そして、ぎょっと息を呑んだ。

 てっきり、他艦の援軍か生き残りの隊員がやってきたかと思ったのだが、

 

「ここが、リーダーのシマかよ。良い感じに寛げそうじゃねえか」

 リーダーや強面、ゼレーニン中尉と共に屋内へと入ってきたのは、明らかに人外の存在であった。

 赤黒い肌に大きな鉤鼻を持つ小人が数体、まず前に進み出て屋内をぐるりと見渡していく。

 

「思ったより、ニンゲンが居やがんなあ。こっちきてから初めて見たわ」

「おお! ナオンもいるじゃねーか。ナオンも! ま、ニンゲンのナオンにゃ興味ねーけどさ。ねえ、カノジョ。後でお茶しない? あ、ゼレちゃん、これ浮気じゃないから!」

「なあ、アンタ。シクヨロ。シクヨロって分かるか? シクヨロだぜ?」

 口汚いが、赤黒い小人から敵意は感じない。

 呆然とする小生らの傍らでトラちゃんさんが、へえと声を漏らす。

 

「"ゴブリン"じゃない。悪戯好きの妖精ね。仲魔にできたんだ」

「いや、あの口調はどう考えても悪戯好きというより、昭和の暴走族では……」

 ある意味同じバッドボーイなのは確かだが、伝承にある"ゴブリン"のイメージとは少しかけ離れている気がする。

 更に、羽根の生えた女悪魔が野球好きの背中に留まりながら運ばれてくる。 

 何で野球好きの人は女悪魔を背負っているんだろう……。あれはどう見てもセクハラなのでは。

 

「お腹空いた……」

「おい、"ハーピー"! 行動食だったら少し分けてやれるから、もうちょい頑張れよ……」

「ええ……。少しって。はあ、マジはあ……」

「俺たちも今、懐事情やばいの!」

 お腹が減って動く気が起きないらしい。野球好きの気苦労も、"ハーピー"という女悪魔の気持ちも同様に理解できるため、小生は複雑な表情でそれを見つめた。

 更に後ろで二つにまとめた青い髪と青白い肌を持つ女悪魔がふわりと屋内で浮き上がり、小生らのもとへとやってくる。

 羽衣を纏った彼女はトラちゃんさんの目の前にまで飛んでくると、そのまま優雅に一礼した。

 

「……偉大なる豊穣の女神様。ご拝謁を賜り光栄の次第です」

「"アプサラス"ね。神族も違うんだし、畏まらなくてもいいのに」

「我が契約者、ゼレーニンも貴女様を偉大なる女神だと敬っておりましたのよ」

「え、人の子が私をっ?」

 トラちゃんさんの目の色が変わった。

 

「ふ、ふーん。そっかあ。それならそれなりの対応をされてもおかしくはないわよね!」

 見るからに嬉しそうなトラちゃんさんをしり目に正面玄関の中尉へと目をやると、彼女は両の手を握ってトラちゃんさんに祈りを捧げていた。

 余程信心深い家庭に生まれたに違いあるまい。この調子では動力班の青年と口論になった際に発した言葉も容易に予想ができる。

 青年の事を思い出し、そこで慌てて彼がいるであろう方向を見る。

 動力室の前に陣取っていた彼は、顔面蒼白で悪魔たちを凝視していた。

 あー、これ、まずい……。

 小生がフォローに入ろうとするよりも早く、リーダーが皆に呼びかける。

 

「諸君! 諸君らの中には人ならざるものの姿に警戒する者も勿論居るかもしれない。その警戒心は当然あるべきものだ。この異界で生き延びるためにも、是非大事にしてもらいたい」

 ならば、何故という眼差しに答えるようにリーダーは身振りを交えて更に続ける。

 

「だが、彼らを仲魔に迎え入れたのには止むに止まれぬ事情があるのだ。先刻このセクターの中心部に、生き残り隊員が大量に集まっている事を観測班が感知したっ!」

「え、中心部って……」

 小生は思わず声をあげた。中心部にあるものなどアレしかない。

 この世界の"魔王"ミトラスが鎮座しているという宮殿だ。

 

「……捕らえられているのですか?」

「そうだ」

「通信は繋がったのですか?」

「逆探知を恐れて、短距離での通信を行った。艦長も各班の班長も無事らしい。だが、予断を許さぬ状況だ」

 ここでリーダーは言葉を切って、重々しく次を吐き出す。

 

「仲間が実験体に、されているらしい」

「じっ――!?」

 小生が絶句したように、周囲の隊員たちにも動揺が広がる。その動揺を断ち切るように、リーダーは強い口調で宣言した。

「最早一刻の猶予も許されない! 我々はこれから、敵宮殿への潜入救出を試みるッ! 拠点の防衛はゼレーニン中尉の仲魔である"ゴブリン"と"アプサラス"、それにドクターの"リリム"に要請したい。戦力が足りないのだ。故にヤマダ隊員には……」

 そこでリーダーは小生を見る。

 

「独立遊撃戦力として、外部での活動を要請する。女神様や秘神とともに、潜入に適した経路を見つけ出してもらいたいのだ。無論、その過程で見つけた資材は今後のインフラ整備に役立ててもらって構わない。また、隊に有用と判断した場合は機動班と同格の権限を持って調査隊の保有している資材を利用することも許可する」

「あの、小生は後方人員で……」

「――限りなく前線に近い、後方で任務に励んでもらいたい。無理を承知で頼む」

 リーダーに頭まで下げられてしまった。

 ああ、これは駄目だ。断れない。

 きりきりと胃腸が締め付けられていく。

 多分、傍から見た小生の顔面は土気色だろう。鉄火場は大嫌いなのである。

 そんな小生の具合を見かねたのか、トラちゃんさんが腰をコツンと小突いてきた。

 

「別段、アンタに直接戦えといってるわけじゃないんだし。でんと構えてなさいよ。この女神様が守ってあげてるんだから心配しないの」

「いや、そうは言ってもですね」

 先程、この世界に危険でないものなどほとんど無いといったのは彼女ではないかと。

 恨めしげに訴えかけたが、割と能天気な気質のある彼女にそんな無言の圧力など通じるべくもなかった。

「ほんとに無理なら逃げてきちゃえばいいじゃない。それより、貰えるもんは貰っときましょ。アタシ、貰いたいものがあったのよ」

 トラちゃんさんが挙手すると、リーダーが「何か」と問いかけてくる。

 

「この隣の部屋にぶわって集まってる大きなエネルギーって何に使ってるの? 空気の浄化に使ったのはヤマダから聞いたけど……」

「現状、使い道があるわけではないな。"トカマク型起電機"は出力の調整ができないから、どうしてもエネルギーを大量に余らせてしまうんだ」

「じゃあ、ちょっとアタシにくれない?」

 隊員一同が何を言ってるんだという顔になった。

 その中でも特に動力班の青年は、

「反対です! 起電機が壊れたらどうするんですか!」

 と猛反対の立場を取る。

 そんな彼の発言にゼレーニン中尉が不快感を示した。

 

「その壊れないぎりぎりのラインを見極めるのが、私たち人間の役目ではないの? 私たちには技術があるのだから」

「アンタは俺と同じメシア教徒だっただろうが! 自己紹介の時に言っていたじゃないか!」

 いきり立つ彼に対し、中尉は真顔で諭していく。

「勿論、今だって信じているわ。でも、私は恩知らずになりたくない。少なくとも、自身の命を救ってくれた神に対する敬意を忘れるべきでは無いと思う。後、蛇足になるかもしれないけど、私は同じ神を信じていると言っただけで、元からロシア正教の信者よ」

 この二人の立ち位置の違いは、直接トラちゃんさんに救われたか否か、または"悪魔"にトラウマを植えつけられたか否かの違いに端を発するのかもしれない。

 要するにどちらも感情の根幹に肯定と否定が根ざしており、和解の道は容易ではないのだ。

 それに感づいたリーダーが、二人の口論がヒートアップする前に割って入ろうとする。

 

「ストップだ、二人とも。まずは女神様の意見を聞こう。何のためにエネルギーが必要なのか。我々にも納得できる範囲ならば、受け入れることも吝かではないだろう」

「んっと、アンタたちのためにも絶対なると思うのよね」

「フム……、それはどんな風に役に立つんだ?」

「アンタたちだって、巣は頑丈な方が良いでしょ? アタシはこの建物の中を、というかこの近辺の"空間"を作り変えたいのよ」

 ん? と隊員たちの脳裏に疑問符が湧き上がり、トラちゃんさんは更に続ける。

 

「今のままだとアクマからちょっとの攻撃を受けただけで、こんな建物吹き飛ばされちゃうわよ。高位悪魔って尋常でない力を持っているから」

「実際、ブラズマシールド展開中の"エルブス"号は正体不明の攻撃で撃沈されてしまったな。貴女の指摘には信憑性がある。それで、作り変えるとは?」

「この"遊びふける国"程の規模にはできないけど……、世界の中に小さな世界を生み出す感じかしら。小宇宙の中にもっと小さな宇宙を作る感じかも。近い感覚としては、カンバリが作ってた"隠れ場"の規模を大きくした感じね」

 リーダーはしばし考え込み、

「それは外部からの攻撃を遮断することができるようになるのか?」

「入り口を作る以上、そこからの侵入までは防げないけど。まあ大抵の攻撃は防げるようになると思う」

 おお、と隊員たちから声が上がった。

 拠点の防御力が上がるというのは確かに大きなメリットだ。機動班の強面や野球好きが前のめりに彼女の言葉に耳を傾けている。

 

「……俺は信じられない。そういって騙して俺たちを皆殺しにするつもりじゃないのか?」

 だが、小生に敵意を抱いていた機動班の一人が頑なに彼女の言葉を否定した。その否定に背中を押された動力班の青年も声を大にして否定に回る。

 小生はちらりとトラちゃんさんを窺う。

 気分を害しないだろうかと心配になったのだ。

 

「……っ」

 何と彼女は俯いて、目を下に落としていた。

 いつもの能天気さは影を潜め、何かに耐えるように口元を固く結んでいる。

 何だ。何で彼女はこんな表情を浮かべているのだろう。初めて出会ったときに見た、自信満々の佇まいとの落差に小生は目を丸くし、気づいたときには咄嗟に言葉を発していた。

 

「それでは、間を取って"お試し期間"を設けましょう」

 は? と賛否両端に回っていた面々が目を点にした。

 

「かつてジョン・F・ケネディは言いました。消費者には権利があると。契約にはそれが正しい契約なのか、監査する期間が必要だと思います」

「だが、そんなことができるのか?」

「小生の機動班同格としての権限を行使して、デモニカ用の緊急バッテリーをいくつか拝借したいと思います。そこに貯めこんだエネルギーを使って、今トラちゃんさんに管理してもらっている家庭菜園……、じゃなかった。一室だけを試しに作り変えてみれば良いと思うんですが、どうでしょう? 足りるかは分かりませんけど」

 リーダーが低く唸った。小生は更に畳み掛ける。

 

「これはトラちゃんさん直接の要請ではなく、小生の責任で借用しますから。何かあったら、小生の責任ということで処理してください。これなら、否定派のお二人にも少しは受け入れやすくなるかと……」

 反対に回っていた二人がたじろいだ。もう一息というところだろう。

 

「……そもそも女神様には、艦長たちの救出を手伝ってもらわなきゃならんのだ。お前ら、艦長を見捨てるつもりか?」

 強面の恫喝が決め手となった。そもそも彼らは、艦長と同じ合同計画直属の人間だ。

 ここで艦長を見捨てるといってしまえば、寄るべき立場すらも失ってしまう。

 果たして、二人は無言のままにトラちゃんさんへのエネルギー供与を認めることになる。

 

「ヤマダ――」

 トラちゃんさんは小生を見て何か言いたそうにしていた。

 妙に照れ臭くなりながら、小生は言う。

「トラちゃんさんの目標に繋がることなんですよね?」

「え?」

 目を丸くするトラちゃんさん。小生は言い訳がましく、更に続けた。

「だって、さっき『アンタたちのためにも』って言ってたじゃないですか。それって自分のために必要だったんですよね? 多分、先日に言っていた豊穣の大地がー、に繋がるのではないかと」

「あ、うん」

「だったら、約束しましたからお手伝いしますよ」

 トラちゃんさんは驚くほど素直に頷いた。話に聞く限りにおいて、彼女は何百年も何千年も生きているはずなのだが、こういう素振りを見る限りだとただの少女にしか思えない。だからこそ、小生はつい大人の目線で彼女に手を差し伸べてしまったのかもしれない。

 実質的に守られているのはこちらだというのに、である。

 

 かくして、エネルギーの供与は黙認2名と圧倒的多数によって、民主的で平和的な可決がなされた。

 勿論、わだかまり自体を完全に消すことはできないだろうが、その影響を現状出来得る限り小さくまとめることはできたのではないかと思われる。

 また、供与自体もすぐに行われた。

 これは賛成多数によってフットワークが軽かったことも影響しているのだろうが、直近に大きなミッションを控えているせいもあった。

 要するにリーダーから「さっさと終わらせてくれ」と暗に言われているようなものなのである。迷惑をかけて本当に申し訳ない。

 

「うっし、運び終えました。これで良いですか、女神様!」

「ありがとう、皆!」

「いえ、俺たちは女神様の味方ですよ! なあっ」

 と数人がかりで抱え込んだ緊急バッテリーが、どさりと家庭菜園の中心に積み上げられる。

 容量にして1億Ah(アンペアアワー)程のエネルギーがあれらには詰まっているはずだが、果たしてトラちゃんさんのご希望に沿うことができるのだろうか?

 小生らエネルギー供与賛成派や仲魔――仲間になった悪魔をこう呼ぶらしい――たちは固唾を呑んでトラちゃんさんの動向を見守る。

 

「……うん、短時間なら多分行けそう」

 トラちゃんさんは片膝をついてバッテリーに指を這わせて、静かに目を瞑った。

 

「面白そうなことやっておるの」

「カンバリ様」

 どうやらカワヤ探しの旅が一段落着いたようで、大足の秘神様が小生の傍らへと戻ってこられた。

 

「何か、世界だか宇宙を作るらしいです。"隠れ場"みたいな、とも。カンバリ様もそうですが、神様……、いやアクマというのは皆そういうものが作れるのですか?」

「作れるわけないじゃろ。"神格"が違うわい」

 えっと振り返ろうとした瞬間、室内が暗黒に包まれる。

 隊員たちが目を見開く中、バッテリーから吸いだされたであろう不定形の眩いエネルギーがトラちゃんさんに抱かれて球体を形作っていく。

 小生は目を擦った。

 エネルギーの眩さもそうであったが、トラちゃんさんが一瞬少女ではなく妙齢の女性に見えたのである。

 

「何か勘違いしておるようじゃが、あれは分霊とは言っても、本来指折りの"高位悪魔"なんじゃ。何せ、死と再生という宇宙の根幹を司っておるんじゃぞ? そんな存在が"飼い主"の居ない状態で顕現しておればあんなことだって容易にできる。ミトラスが警戒するのは当然なんじゃよ」

 球体は肥大化を始め、小生らを部屋の中を呑み込んでいく。

 あまりの眩しさに一瞬目を閉じて、再び開いた時には――、

 

「へ?」

 綺麗に部屋の扉と床、そして植木鉢や雑多な荷物だけが残されて、その周囲に地平線まで緑が続く大平原が広がっていた。

 植物の穂が風に揺れ、鳥が空を飛び、小動物を獣が追いかける。そんな光景が小生らの周りを取り囲んでいるのだ。

 これは夢か幻であろうか?

 幻の中には人らしきものすら見えていた。半裸でくたびれた一枚布をまとい、収穫したトウモロコシを籠に収める男や女たちの姿である。

 

「うん、こんな感じ!」

 トラちゃんさんは満足げに頷いていたが、どう考えても尋常の技ではない。

 現に、隊員たちの一部は跪いて祈りを捧げるものすら見受けられる。

 

「ヤマダ、どう?」

「どう、とは」

「アンタや皆が信じてくれた結果よ。凄いでしょ」

 そりゃあ、すごい。凄すぎて何と言っていいものか分からないほどには。

 小生は何度も周りを見回して、震える声で言葉を返した。

 

「これが"世界"を作るってことなんですね」

「ん? いや、もしかして勘違いしてる? 周りのこれは"紛い物"よ」

 言って、トラちゃんさんは部屋床の隅へ移動してその先の空間をコツンと叩く。

 大平原が続いているように見える空間を、である。

 

「この先の風景はアタシの記憶にあるアタシの箱庭。今やったのは、この部屋の中を扉の向こう側から切り離しただけよ。それも多分二日三日で元に戻っちゃうんじゃないかしら」

「エネルギーが足りないんですか?」

「そうよ。だからこれからいっぱい集めるの。水や土の精霊を呼び込んだり、生き物を飼ったり、それでこんな空間をずっと先まで広めていって、本当の世界を作っていきましょう。一緒にね!」

 そう言って満面の笑みを浮かべる彼女の様子を見て、小生は彼女のパーソナリティにある推測を立てることができた。

 恐らく、彼女は人から信じられなくなる事を恐怖しており、逆に信じられることに心の拠り所を求めているのだろう。

 そして、今一番頼られているのは恐らく小生である。

 責任感に、胃が重たくなった。が、約束をした以上やらねばなるまい。

 小生は頷く。

 

「そうですね。信じてくれなかったあの二人の信頼を勝ち取ることができれば、安定してエネルギーの供与を受けられるようになりますし」

「うん。それに外に出るんなら、自分たちでも調達だってできるのよ!」

「調達、ですか?」

 トラちゃんさんが人差し指と親指で円を作り、ふひひと笑う。

 

「"マッカ"があれば、エネルギーなんていくらでも集まるんだから」

 はてなと首を傾げる小生。他の隊員たちも同じ面持ちをしていた。

 

「魔界の宰相"ルキフグス"が作った悪魔の貨幣よ。高純度のエネルギー体としての使い道もあるから、エネルギーが欲しかったら周囲の悪魔をしばき倒して、"マッカ"をかき集めてくればいいのよ!」

「そんな便利なものが……、ん?」

 だが待って欲しい。彼女は今、"悪魔"をしばき倒すと言った。

 しかし、小生らはこの世界において最底辺の存在である。少なくとも機動班以外は確実にそうだ。

 そんな面々に、と言うか文脈的に小生に、侵略的外来生物のような所業ができるものなのだろうか?

 小生の懸念を、含み笑いを浮かべたトラちゃんさんがかき消した。

 

「できるわよ! もう狙いは定めてあるの。この"遊びふける国"で最も手頃にしばき倒せる"悪魔"……」

「"ガキ"ですか?」

「あれは絶対駄目。マッカビームは許されないスキルよ」

「は、はあ」

 良く分からないが、頷いておく。

 その内、集っていた仲魔たちから「あー」と納得の声が上がっていった。

 

「あれか」

「まあ、あれなら余裕よね」

「餌だしな」

「お腹空いた」

 どうやら"ハーピー"にお腹空いたとまで言わしめる餌がこの界隈には生息しているらしい。

 トラちゃんさんがずびしっと人差し指を立てて宣言する。

 

「魔獣"カタキラウワ"。古来から、文明の開始地点としては豚が近くにいる場所こそ好立地と言われていたのよ。ヤマダ。リーダーに頼まれた仕事ついでに、片っ端から豚を狩っていくわよ!」

「え? あ、はあ……」

 このとき安請け合いした事を後になって振り返ってみると、小生と豚との浅からぬ因縁はこの時をきっかけに始まったのかもしれない。

 

 

 

 

「ムドだこの野郎」

「ぐわああああ!?」

「あ、やば。リカーム!」

 トラちゃんさんに連れ出されて憎き黒豚と初邂逅を遂げた際、小生は初めての臨死体験をも遂げることになった。

 人を呪い殺せる豚なんて反則だよ……。

 




【悪魔全書】
名前  はぐれリリム
種族 夜魔
属性 NEUTRAL―NEUTRAL
Lv 10
HP 102
MP 80
力 8
体 9
魔 12
速 6
運 2

耐性
氷結 弱
電撃 耐

スキル
ジオ マハジオ 魅了突き
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