流星のファイナライズ 作:ブラック
ほんま頼りにしてます。
もうすぐアンドロメダがやってくる。
もうすぐだ…。
粗方全てのミステリーウェーブを取ってから、ステーションの電脳4に飛び込む。
もうかなり見慣れた床と道が広がる空間に降り立つ。だが、見慣れたこの景色もこれで最後だ。
次に広がっているのは、あの空間が捻れたような異質な世界のはず。
一目散に星座を確認して、次のFM星人が待っている空間へと急ぐ。
円を描くようなくねくねとした星々、蛇遣い座のオヒュカスが待ち受けているはずだ。
おっとスバルくん、そこ左行くとHPメモリ20があるからちゃんと取っておくように!
先ほどまでの何やら深刻な雰囲気はどこへやら、迫り来るウィルスをサーチアンドデストロイ。
流石に終盤の電脳世界だけに中々に面倒くさいウィルスが出てきているはずなのだが、スバルは苦労することもなく撃破している。
どうやって撃破してるかだって?
これがまた凄いのなんの。
俺たちは振り返ることなく駆け抜けていってるわけだから基本正面にしか向いてない。
そしてこの宇宙空間の電脳というものはダッシュパネルが設置されていて、中心の星座を取り囲むように四角形になっている。
本来ゲームならば、中心の星座を確かめる為にダッシュパネルに乗る。
仕様上の設定として、この中心を何度も交差するように進んでいくわけだ。
しかし、もう俺たちは星座の確認は済んでいる。
星座を気にする必要はない。
しかもゲームとは違って電波ウィルスは視覚かされており、ランダムエンカウントではなくシンボルエンカウント制となっている。
ここで今まで道中については語ることが少なかったから、今回は我らがロックマンことスバルくんの活躍をここに語っておこう。
前方と左右からジャイアントフェイスくんとホタリッガちゃん。
モジャゲンスイ先輩もいるぞ。
この数は中々に多いぞ。一体どうするんだスバルくん。
ここでスバルくん、ウォーロックの頭を前方に構えた!
ウォーロックの口から夥しい数の泡が飛び出してくる。
まるでシャボン玉を振り撒く子どものようだ。
多分、さっきの電脳でゲットしたチェインバブル3だろう。
あーーっと、ほとんどのウィルスたちが閉じ込められてしまったぞ!
ジャイアントフェイスくん、頭が上手く動かせない!
手足あるのか知らんけど!
モジャゲンスイ先輩と槍と身体が離れてしまったー!
ホタリッガちゃんはニッコリしているー!
いや、お前はもっと焦れ。
スバルは止まることなく駆け抜ける。
俺は何もせず、イソギンチャクのようにスバルの後ろをついていく。
おっとスバルか何かをウォーロックの頭から吐き捨てた。
これは真っ黒い雲だ。
モクモクと漂うように、後ろの俺を追い越していってチェインバブルによって閉じ込められたウィルスたちの中心へと向かう。
うん、これもさっきの電脳でゲットしたクラウドシュート3だ。
動けないウィルスくんたち、どうすることもできないぞーー!
あーーっと、ここでクラウドシュート3が炸裂ーー!
チェインバブルで閉じ込めてたやつはもちろん、後方から追ってきてたやつも全員感電。
HPが低いものは消滅する。
そうしてダッシュパネルを降り、別のダッシュパネルに乗るとスバルは同じことを繰り返した。
これを何度か繰り返して、目に見えていた電波ウィルスはその姿を消した。
「…新手のボムヘイくんテロかな?」
「???」
うーん、レースゲームで範囲技は正義。
はっきりわかんだね。
友情破壊に繋がるからご利用は計画的にね。
毎回スバルくんの成長を感じながらボス部屋と辿り着いていたのでした。
そんなことはさておき、今回も禍々しい髑髏マークのエリアまでやってきた。
『セキュリティコード入力画面を起動します。セキュリティコードを入力してください』
他の宇宙ステーションの電脳と同様、有刺鉄線を思わせるギザギザの電流が行手を遮っており、小さなモニターが星を思わせる形をしたカラフルな点を表示させた。
「今回は蛇遣い座だよね」
俺が特に指示をするわけでもなく、スバルは躊躇うことなく蛇遣い座を描く。
流石、宇宙大好き少年。
『コード確認中…セキュリティを解除します』
行手を遮っていた電流が消える。
アイコンタクトをしてゆっくりと先へと歩く。
ボス部屋の証である髑髏マークを踏み締め、その先へ。
『やっぱり次はお前かヘビオンナ!』
『随分なご挨拶だわね、ウォーロック』
「ところで聞きたいんだが、ジェミニはどうした? 俺たちの侵攻が余りにも早かったから、復活できなかったか?」
『明星黒夜…!! 貴様ッ!!』
ということは、ジェミニくんが復活できなかったことは確定した。
ドリームアイランドで纏めてフルボッコにした甲斐があったというもの。
『たとえ貴様がいようとも、このオヒュカス…FM王の命を受け最後の門番となったからには、この命果てるまで蟻一匹たりともこの先へは通さないわ!!!』
眩い光と共に、オヒュカスがオヒュカス・クイーンへと電波変換。
俺とスバルも戦闘モードへと移行する。
『ジェミニがいねぇとわかった以上、お前さえ倒しちまえば残るはFM王のみってこった! やるぞスバルッ!』
「うん!」
「流星サーバー、アクセス」
『我が毒牙に倒れるがいいわ!!』
同時にオヒュカスの瞳から極太の光線が放たれる。
地面を焼くように走る光線をお互いに持つ翼をはためかせ、左右に分かれるように回避する。
光線はそのまま消えることなく、持続した状態でスバルの方へと曲がっていく。
ゴルゴンアイ。
2本のピンク色の光線を放つ。オヒュカスの必殺技のようなもの。
本来のゲームならば何度か行動してからではないと放ってこないはずなのだが。
どうやらそれだけ必死ということらしい。
しかも、あのビームって持続できるんか。
曲げられるか。
「ビームが、曲がるっ!?」
旋回しながら回避をとるスバルを横目に俺は自分の不調と戦っていた。
いつもボス戦の際にはノイズ率を反映させる為、一度流星サーバーの接続を切り、再接続させる。
その為、『Ryusei Server Access』という機械音声と共に再接続されるはずのだが、流星サーバーからの応答がない。
接続を切った為、バトルカードが送信されてこない。
「…どうなってんだこれ」
光線を放ちながら片手を振ってこちらに放たれたスネークレギオンへとエースバスターを乱射する。
たが混乱はしていても問題はない。
エースバスター自体、正直この世界ではぶっ壊れパラメーター。
バスターMAXは伊達じゃない。
高速で乱射されるバスターによってオヒュカス・クイーンから放たれた蛇たちは霧散していく。
そのままエースバスターはオヒュカス・クイーンを撃ち続ける。
さらに、クリムゾンレギュレーターによって圧縮されたクリムゾン製のソードを構えてオヒュカス・クイーンへと特攻をかける。
『明星黒夜ぁぁぁぁッ!』
スバルに向けていた光線がこちらへと向きかけるが、スバルのアイススラッシュによって遮られる。
不意のアイススラッシュによって凍らされたオヒュカス・クイーンにクリムゾンソードが襲いかかる。
ヒットアンドアウェイ。
袈裟に切り抜けてスバルの下へと合流する。
『オヒュカスのヤロウ、オマエに相当恨みがあると見えるぜ』
「ルナの精神でも乗り移ったか…?」
「あ、あはは」
『Ryusei Server Access』
いや、遅えよ。
返事するようにしれっと接続すんな。
何はともあれ、これで本調子。
これ以上時間を浪費するわけにもいかない。
「黒夜くん、大丈夫?」
「あぁ、やっぱ流星サーバーの調子がおかしいみたいだ。けど、繋がったからもう大丈夫」
「そっか。黒夜くんに無理させない為にも一撃で仕留める!!」
そう言って腕に取り付けられた青いトランサーをこちらへと見せつけるスバル。
「いや、それ誘導しないと…えぇ…」
ほんのちょっとの困惑。
だが、確かに当たれば一撃で仕留められる。
眼下にはアイススラッシュの束縛から漸く解放され、クリムゾンソードで斬られた箇所をさすりながら体勢を立て直すオヒュカス・クイーンの姿。
キッとこちらを睨みつける眼光には、未だに諦めの色はない。
あの俺を睨む目…本当にルナの精神でも宿っているかのようだ。
「とっとと終わらせるぞ」
「うん!」
『ケッ』
再び放たれるゴルゴアイ。
クリムゾンレギュレーターを操作して、ノイズシールドで防ぐ。
数秒間、耐え凌いでスバルが背後へと回り込むであろう時間を稼ぐと俺もバレルロールをして緊急回避行動。
そのまま花弁の形に似た手裏剣を2枚取り出し、オヒュカス・クイーンに投げつける。
高速で回転しながら迫る2枚の手裏剣は、途中で左右に分かれて挟撃するような陣形を組む。
手裏剣の位置を把握しながら、ノイズドウィングバーニアを吹かせて急速接近。
エレキスラッシュを手に持ち、斬り込まんと退路を絞る。
残った退路は、背後のみ。
堪らずオヒュカス・クイーンは飛び退くようにして背後へと身体を揺らしながら後退。
それこそが、罠だった。
「黒夜くん、退避っ!!!」
「おうよ!!!」
俺はエレキスラッシュを振りかぶりもせず、脱兎のごとく踵を返して飛び去る。
既にスバルも俺を追うようにして飛び立っている。
残されたのは、意味が理解できずにその場で戸惑うことしかできないオヒュカス・クイーンただ一人。
あれだけ必殺の場を整えたのだ、仕留めにいくならば理解はできる。
だが、敢えて後退するなどバトルカードという俺たちが扱う力の概念を知らなければ理解は出来まい。
これこそが、戦略。
これこそがダブルプレー。
俺とスバルが遠くに退避したところで、『カチッ!』と乾いた音が響く。
両手で両耳を塞ぐ仕草をとったのは、同時だった。
一瞬、小さくなったオヒュカス・クイーンのあたりが光ったかと思えば、次に巻き起こったのは巨大な爆発音だった。
『ギャァァァァァァァァ−−−』
爆発の大きさを物語るように、爆風が俺たちのいる場所まで届く。
ギガクラスカード、ブレイクカウントボム。
ガード不可の前方2マスの相手に大ダメージを与えるこのバトルカード…威力はなんと600。
しかも炎属性。
何が言いたいかわかるかね。
オヒュカス・クイーンは絶対に喰らってはいけないカードなのだ。
最初に敢えてゴルゴンアイをノイズシールドで受けたのも、スバルが気づかれずに背後に回るのをサポートするため。
俺がバトルカード、シュリシュリケンXを2枚放ったときには、既にスバルが『よっこいしょ』とブレイクカウントボムを置いているところだった。
そして俺がエレキスラッシュを持って突進した時には『ヨシっ!』と最終確認をスバルがしている時だった。
一連の行動、全てがオヒュカス・クイーンにブレイクカウントボムをぶち当たるための作戦だった。
ここで更に大事なことはこのカードの範囲が前方2マスというところ。
後方にあるコンソールにダメージが及ばないようにする為の配慮まである。
んーー、なんというかスバルくん、痺れるぅ。
でも無理させないために俺を誘導に使うというのは、これ如何に?
とにかく、最小限の動きでなんとかなったので『ヨシっ』としよう。
俺とスバルは軽くハイタッチをして、爆心地へと戻る。
そこに、オヒュカス・クイーンの姿はない。
恐らく立っていたであろう電脳空間の床が粉々に砕け散っていた。
コンソールをスバルが触り始めている。
問題なくロックを解除できた。
俺はそれを遠くから見守る。
そして、スバルが戻ってきた。
げんなりとしたウォーロックと共に。
『…これが本当に血湧き肉躍るぶつかり合いなのか?』
何故かウォーロックが一人ポツリと呟いた。
お前は一体戦いに何を求めているんだ。
ウォーロックン
完全にバトルジャンキーに目覚めてきた模様。
同時に黒夜とスバルの戦い方に違和感を覚えてきたらしい。
もっとこう…激しくぶつかり合いてぇんだ!!