Fate/chaos 作:逸環
Summons.
明かりの点いていない、とあるマンションの一室。
そこで、一人の若い男が足を動かし、何かをしていた。
「満たせ、満たせ、満たして満たせ。繰り返す都度に四度……あれ?五度?ただ満たされる時を破却する、だよなぁ?」
その手にある、一冊の本。
それを見ながら、その続きを確認する。
「うん。満たせ、満たせ、満たして満たして満たせっと。はいー、今度こそ五度ね。えい!」
本来ならば、至極真面目にするべきことなのだろうが、いたって適当にそれを続ける。
「………うん?」
点けっぱなしのテレビから流れる、ニュースに意識を向ける。
それは、最近犯行を続ける連続殺人犯のことを報道するものだった。
「ちょーっと、ハメを外し過ぎちゃったかなぁ?」
男性が座るソファーに、後ろから体重をかける。
すると、男性の身体が横に倒れ、ソファーから落ちる。
そう、男性は既に事切れていた。
「悪魔って、本当にいると思うかい?坊や?」
男は、部屋の隅で縛られて転がされている少年に声をかける。
少年の瞳は、恐怖に染まっていた。
「新聞や雑誌だとさぁ、よく俺のこと悪魔呼ばわりしてんだよね」
「でもそれってさぁ、もし本当に悪魔がいたら、ちょっとばかし失礼な話だよね?そこんとこすっきりしなくてさぁ」
「ちゅーす!『雨生 龍之介』は、悪魔でありまーす!なーんて、名乗っちゃって良いものか」
「そしたらこんな物見つけちゃってさ」
「うちの土蔵にあった、古文書?見たいなやつなんだけどさ、どーも、うちのご先祖様、悪魔を呼び出す研究をしてたみたいなんだよねぇ」
「そしたらさぁ、本物の悪魔がいるか、試すしかないじゃぁん?」
「でもねぇ、もし万が一、本当に悪魔が出てきたらさぁ、何の準備も無く茶飲み話だけってのも間抜けな話じゃぁん?」
そこまで一気にまくし立て、謝る様に片手で拝みながら言う。
「だからねぇ、坊や。もし悪魔さんがお出まししたらさぁ、一つ殺されてみてくれなぁい?」
「ッ?!んんんーーっっ!!!!んん~~っっっ!!!!!!」
少年が、恐怖に叫ぶ。
それを見た雨生は、盛大に座っていた椅子をがたがたと揺らし、笑い出す。
「アハハハハハハハ!!!!悪魔に殺されるって、どんな気分なんだろうね!?貴重な体験…イッテ」
その手に現れた、模様のように見える痣。
「………何だ?これ?」
その時、突如魔方陣が輝く。
放電と発光が収まる頃、現れた人影は、
「「「サーヴァント、キャスターがここに現界した。問おう。お前(貴殿)(貴方)が俺(私)のマスター(召喚者)か?て、え?」」」
黒髪に東洋系の容貌をした男に、金髪の可愛いとも言える美女。
そして、
「………デメキン?」
「とうとうギョロ目どころかデメキンとは?!」
怪しい風貌の、大柄なギョロ目の男だった。
「え?三人?」
「………どういうことでしょうか?」
黒髪の男がと、女が疑問を口にする。
「マスターの召喚の呪文が、適当だったのでは?」
「………………うん、すごく適当にやった。何回か間違えたし」
ギョロ目がそれに対しての考察を述べ、龍之介がそれを認めた。
「うぉう。マジかよマスター」
「………不安しかないです」
「「同意」」
「て言うか何コレ?!全然COOLじゃないよ!?」
呆れる三人と、何がなんだか分からない龍之介。
まあ、当たり前だろう。
これは、一人の快楽殺人者なマスターと、三人のキャスターたちのお話。
詠唱が『閉じよ。』ではなく、『満たせ』なのは、龍之介の言い方をルビにあてることが難しかったからだったりもします。