Fate/chaos 作:逸環
「………あ、そういえば言い忘れてましたけど」
「ん?何だ?」
セイバーとランサーが決闘をライダーに邪魔され、なんか言い争ってる中、ジャンヌが何かを伝えてくる。
「………私、先程からずっと、ランサーから魅了(チャーム)の魔術をかけられています。おそらく、あの泣き黒子の効果でしょうね。………まあ、スキルで打ち消しましたけど」
……………ほう?
なるほど。
それはつまり、
「うわ?!兄貴が消えた?!」
「………あそこです」
「え?」
ジャンヌが指差したのは、ライダーが間に入ったため休戦中のセイバーとランサーのもとだった。
しかし、龍之介の目には分からない。
「いやいや、いないじゃんか姐さん」
「………見ていてください」
ぽんっ
と、突然現れ、後ろからランサーの肩に置かれた手。
それはもちろん、
「つまりお前は、今すぐ死にたいわけだな?前髪ワカメ」
「「「「前髪ワカメ?!」」」」
俺の手だった。
「と言うか、何で俺が死なないといけない?!」
ほう?
自分の罪に、覚えがないと?
「だったら、そのまま死ね」
すぐに刺せるよう、短く持っていた槍をランサーに向ける。
「だああ!ちょっと待てそこの黒いの!」
「………なんだ?赤いの」
手に持っていた槍を、前髪野郎に突き刺そうとした時、ライダーに呼び止められる。
しかし、その程度で刺すのを中断するとは、俺も丸くなったと言うかなんと言うか。
「お前さん、見たとこサーヴァントらしいが、何でそこなランサーをいきなり殺そうとする?それに、クラスは?」
「前の質問に答えるなら、こいつが俺の嫁に魅了をかけたからだ。後者の答えは、俺の獲物から察しろと言いたい」
「なに?では、お主はランサーだとでも言うのか?ここには、ホレ。そこな前髪がランサーと名乗っており、それに相応しい槍捌きを見せていたのだが?」
「そうだ。この二槍と新たな主君に誓い、この俺は間違いなくランサーとして現界している。そして前髪は止めてくれ」
うん。
そりゃあ俺はキャスター×3の内の一体だからね。
お前がランサーで当然だよ。
そして前髪呼ばわりは止めない。
「まあ、俺のクラスはどうでも良くないか?重要なのは、俺がこの前髪をぶっ殺すことだ」
「おい、槍使い。ランサーは私と尋常なる決闘をしているのだ。横から手を出すな」
セイバーが何か言ってくるが、
「小娘は黙ってろ」
「な!?こ、小娘だと!?」
「俺は嫁に手を出されたんだぞ?対魔力が高いから無効化したが、俺の嫁に魅了をかけた罪は、死以外では雪がせん」
本当はスキルによるものだが、対魔力と偽っておく。
嘘に嘘を重ねて、相手に思い込みを与えるのが目的だ。
「し、しかし!」
「まあ、待て待て。お互いに、そう熱くなるな」
ヒートアップしてきた俺とセイバーを、ライダーが諌める。
まあ、実際のところ熱くなっているのはセイバーだけで、俺は嘘を吐ける程度には冷静なのだが。
ちなみに、ずっとほっとかれているセイバーのマスターっぽい女は、なんとなく腐臭がするのは気のせいか。
もしかしたら、貴腐人なのかもしれない。
「それにしても、セイバー、それにランサーよ。うぬらの真っ向切っての競い合い、まことに見事であった。あれほどに清澄な剣戟を響かせては、惹かれて出てきた英霊が、よもや余とこやつだけとはあるまい」
「確かに、さっきまで見物していたけどな」
俺がでてきた理由は違うぞ?
あくまでもランサーの抹殺が目的だからな?
「情けない。情けないのぅ!冬木に集った英雄豪傑どもよ。このセイバーとランサーが見せつけた気概に、何も感じるところがないと抜かすか?誇るべき真名を持ち合わせておきながら、コソコソと覗き見に徹するとは、英霊が聞いて呆れるわなぁ。んん!?」
しかしデカイ声。
これが、覇王の軍団に向けられていた声か。
「聖杯に招かれし英霊は、今!ここに集うがいい。なおも顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮辱を免れぬものと知れ!」
「うおぉぉぉっっ?!耳がああぁぁぁぁっっ!!!!??」
クソ!
久しぶりに吸血鬼の聴力があだになった!
しかし、そんな呼び声でわざわざ敵が現れてくれるとでも、こいつは思っているのか?
ん?
街灯の上に、金色の霊体化を解除した時のキラキラが?
「我(オレ)を差し置いて“王”を称する不埒者が、一夜の内に二匹も涌くとはな」
………なんか、金ぴかの阿呆が来た。
はい。
旦那がランサー抹殺に動きました。
ちなみに、ランサーの魅了を無効にしたジャンヌのスキルですが、こんな感じです。
不二の愛:A
ただ一人を愛し続けた者のみに与えられるスキル。
Aランクならば、全ての魅了などの誘惑を打ち消せる。
スキルを得る理由となった者以外に恋慕の情を抱いた瞬間に、このスキルは消滅する。
といった感じのものです。
ちなみに、このスキルは主人公も持っています。