Fate/chaos 作:逸環
今の光景に、その場に居合わせた誰もが息を呑む。
当たり前だろう。
人体から獣が現れ、飛来した剣を叩き落としたのだから。
その獣は今、バーサーカーの内に戻っている。
と言うかアーチャーよ。
お前当然のように宝具ぶちかましたけど、それ凄い贅沢な使い方だからな?
肉体そのものが宝具の俺が言えた義理じゃないけど。
さて、状況を整理しよう。
まずこの場には、うちの陣営ことキャスター(三分の二)とマスター、セイバーとマスター、ライダーとマスター、ランサーとマスター(奴らの会話から判断)、アーチャー、バーサーカーがいるわけだ。
そしてさらに、それぞれの真名で判っているものが、
セイバー:アーサー王
ライダー:イスカンダル
ランサー:ディルムッド
ということだ。
アーチャーはわけが分からん。
バーサーカーは、先程見せた『獣王の巣』(確証はないけど確実)、そしてかの『混沌の教授』とは明らかに違う格好から考えると、なぁ?
「我が宝物を、その汚らわしい畜生の脚で叩きつけるとは」
考え事をしている間に、何かを言い出した金ぴか。
その顔は、
「そこまで死に急ぐか、狗!」
今まで見た表情の中で、最も怒った顔だった。
「そんな、バカな………」
誰かが呟く。
金ぴかの背後に展開された、実に16もの宝具が金ぴかの怒りを如実に表している。
その光景は、確かに圧巻だ。
だが、俺の考えが正しければ、
「俺ハ一度モ、死ニ急イダコトハネェヨ」
あれは、その程度では死なない。
「分体300解放」
「「「「「「「「ガアアァァァァアアァァアッッッ!!!!!!」」」」」」」
倉庫街だけでなく、冬樹一帯に轟く咆哮。
それは、金ぴかに張り合うかのようにバーサーカーが解放した、300もの獣たちのものだった。
「う、嘘だろぉっ?!こんなのってありかよ?!」
「落ち着け。案ずるな坊主」
ライダーのマスターが叫ぶ。
まあ、だろうなぁ。
しかしライダーよ、ずいぶんと豪胆だな。
見ろ。
セイバーとランサーなんて、警戒しまくってるぞ。
「ふん。狂犬如きが、小癪な真似を。ならば」
さらに増える、宝具の群れ。
すげぇ。
光り過ぎて、夜が明けたみたいになってる。
「どうやらあの金色は、宝具の数が自慢らしいが、あのヘルメットの奴相手では意味がないのぉ」
ライダーが、冷静に考察している。
それはそうだろう。
どれだけ宝具を出しても、その数のアドバンテージを生かしきれないのだから。
まあ、そんなことはどうでもよく、今は正直ジャンヌが心配で仕方がない。
俺の予想が当たっているならば、奴がジャンヌに手を出すことはないはずだが、それでもだ。
一触即発の空気が流れる中、急に金ぴかがあらぬところを見る。
「貴様ごときの諫言で、王たる我の怒りを鎮めろと?大きく出たな、時臣」
吐き捨てるように言い、展開していた宝具を収める。
あれか、令呪使われたのか。
「……命拾いをしたな、狂犬」
その眼から殺意は消え失せてはいるが、表情は明らかに不服そうだ。
まあ、あれだけの俺様キャラなのに、自分がノッているところを水刺されたらなぁ。
「雑種ども。次までに有象無象を間引いておけ。我とまみえるのは真の英雄のみで良い」
それだけ言い残し、霊体化する金ぴか。
どんだけ自分勝手だ、お前は。
「ふむ。どうやらアレのマスターは、アーチャー自身ほど剛毅なタチではなかったようだな」
「の、ようだな」
ライダーに同意する。
さて、残った問題といえば、
「「「「「……………………………」」」」」
動くに動けない、この状況のことか。
何人も集まって全員が敵なんだからしょうがない。