Fate/chaos 作:逸環
「あの人たちと、また会えるの?」
「ああ、きっと会える。それはおじさんが約束してあげる………」
これは、エゴに固まりきった、されどどこまでも想い人のためにな願いを抱いた男と、そのサーヴァントの邂逅の話。
「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし!汝、狂乱の檻に囚われし者!我はその鎖を手繰る者!!」
『始まりの御三家』の一つ、間桐の邸宅の地下に当たる蟲蔵では、今まさに、サーヴァントを喚び出さんとしていた。
召喚者の名は、『間桐 雁夜』。
その半身は、魔術師として出来損ないのその身を、魔術師として仕立て上げるために刻印虫による改造を施した結果、人目に触れさせられないほどの有様となっていた。
召喚のための呪文を一小節唱えるたび、その顔の内を刻印虫が這いずり回る。
「汝三大の言霊を纏う七天!抑止の輪より来たれ!天秤の守り手よ!!」
呪文を全て唱えた時、膨大な魔力が召喚陣から吹き荒れ、それは顕れた。
「………や、やった」
そのことを確認した時、無事にサーヴァントを召喚できたことに雁夜は安堵した。
本来ならば、ここで名前の交換をすることで契約が完了するのだが、雁夜が召喚したのはバーサーカー。
理性無き狂戦士として召喚された者に、言葉は話せない。
だから、雁夜もそのまま疲労に任せ倒れるくらいのつもりでいた。
しかし、
「バーサーカー、ココニ召喚サレタ。オ前ガ俺ノマスターカ?」
「「?!」」
口を利くはずのないバーサーカーが、はっきりと喋ったのだ。
これには雁夜と、その父『間桐 臓硯』も驚いた。
「あ、ああ。そうだ。雁夜っていうんだ。よろしくな」
驚きながらも、雁夜が返答する。
すると、
「ヨシ、コレデ契約ハナサレタッ、トォッ!!」
バーサーカーの拳が、召喚者である雁夜に振るわれた。
~Sideバーサーカー~
「ふぐぅっ!?」
と、殴った雁夜が吹き飛んでく。
が、そんなことでは済まさない。
なぜなら、
「600年ブリニ、ヨウヤク嫁ト会エタト思ッタノニ。テメェノセイデナァッ!」
『座』で再開を果たした直後に召喚しやがって!
召喚される瞬間に、召喚者をぶん殴るって決めちまったろうが。
「オ前ノ罪ヲ悔イナガラ死ネェッ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!今そやつに死なれるのはまずいっ!」
小さい爺が、俺を制止する。
だが、
「ソンナコトハ知ルカァッ!」
その制止を振り切り、召喚者に追撃をかけようとする。
その拳が、弱りきった男に当たろうというとき、
「おじさんに、酷いことしないで!」
一人の少女が、召喚者の前に立った。
むう、これでは殴れん。
で、ちょっとした後リビングに集まった。
「「本当に、すまなかった」」
召喚者と俺が、同時に頭を下げる。
いや、こんな小さい子のために、ねぇ。
お兄さん、泣いちゃいそうだよ。
「ジャ、アラタメテ自己紹介ダ。バーサーカーノサーヴァント、『水無月 六禄』ダ」
「お前のマスターになる、『間桐 雁夜』だ」
「その父の、『間桐 臓硯』じゃ」
「…『間桐 桜』、です」
はいはい。
間桐さん一家ね。
「ところで、なんでバーサーカーなのに、喋れるんだ?」
雁夜が訊いてくる。
まあ、当然の疑問だな。
「マスターノ透視力ヲ使エ、ト言イタイトコロダガ、 ソウモイカナイ人間モイルコトダシ、俺カラ説明シテシマオウ」
そう、前置きしておいてから、
「俺ノ伝承ニヨリ、スキル『狂化』ハ『段階狂化』ニ変ワッテイルカラダ」
サクッと真実を告げた。
徐々に自我を失い、ただの混沌になったという俺の伝承が、スキル『段階狂化』として現れたのだ。
「『段階狂化』とは、どんなスキルなんじゃ?」
「早イ話ガ、マスターノ任意ニヨリ、ランクE~Aマデ狂化ヲ進行サセルスキルダ。マア、一度狂化ノランクヲ上ゲタラ、ソレ以下ニハデキナイトイウ、デメリットハアルガナ」
「それは、また………」
つまり、今はまだ狂化のランクがEだから喋れるというだけの話だ。
「トコロデ、雁夜カラノ魔力供給量ガ少ナクテ、ドウシヨウモナインダガ」
この量だと、俺の肉体の維持でいっぱいいっぱいではないだろうか。
ただでさえ、俺は他のサーヴァントに比べて燃費が悪いってのに。
「それに関しては、どうしようもないのぉ」
「………不甲斐ないマスターですまない」
「ンー、マア、気ニスルナ。手ナラアル」
「「え?」」
俺だからできる手ではあるがな。
「生前ノ俺ハ、封印術ニ長ケテイタ。ソノ封印ヲ維持スルタメノ手段トシテ、土地カラ魔力ヲ汲ミ上ゲルタメノ術式ヲ作ッテイル。ソレヲ応用スレバ、俺ヲ動カス上デノ支障ハナクナル。ドコカニ、丁度良イ霊地ハナイノカ?」
『
「それならば、柳洞寺はどうじゃろうか。あそこは、この冬木でも最高の霊地じゃし」
「ジャア、ソレデ」
さて、術式の準備と、出かける準備をするか。
と、あれは。
「雁夜」
「なんだ?バーサーカー」
「アレ、貰ッテモイイカ?」
「…俺はもう使わないから別にいいが、何に使うんだ?」
「今時ノ格好ヲシテ、真名ヲ判リ辛クスル」
俺が雁夜から貰った物、それはフルフェイスのヘルメットだった。
………後でライダージャケットでも買うか。
段階狂化:E~A
徐々に自我を失っていったという伝承から、『狂化』のスキルが変化したもの。
マスターの任意により、E~Aまで『狂化』のランクを上げられる。
なお、一度上げたランクを下げることはできない。
本文中でもバーサーカーが説明しましたが、読みやすくするとこんな感じですね。