深夜。
みんなテントで寝静まっている時間帯。
ぼくは交代制で決めた見張りの、自分の番を全うしていた。
月明かりが暗く染まった空を照らす。
ぼくはその夜空を展望していた。
テントから、誰かが出てくる音と気配。
首を少し動かし目線だけで後ろを見ると、千景さんだった。
ぼくを見つけて、こちらへ歩いてくる。
武谷「見張りの交代には早いはずだけど」
千景「寝つけなかっただけだから大丈夫……」
それは大丈夫なのだろうか。
無言での、しばらくの間。月だけが光で有言している。
千景「聖陵院くん――」
武谷「あのさ」
千景さんが何か言いかけて、同時に喋ったせいで遮ってしまった。
千景さんから話してもらおうと黙っていたが、一向に次の言葉がない。
もう言う気を無くしてしまったと判断してぼくは口を開いた。
武谷「前はさ、人が死ぬと天に召されるとかいう話があったけど、今はどう言うんだろうね。大地に召される? 神樹様の下で眠る?」
千景「……安らかでいればいいと思うけど、わからないわ……でも、天はないと思う……きっと神樹様の方に行っているのではないかしら」
武谷「そうかな……」
千景「そうであればいいと思うわ」
武谷「そうだね」
千景「……聖陵院くんは、人が沢山死んでしまっているのが悲しいの……?」
武谷「ぼくは、そんな優しいやつじゃないよ」
千景「聖陵院くんは、優しいわ」
武谷「どうして」
千景「私を、救ってくれたから」
武谷「…………」
救ったと言えるほどのことをやっただろうか。
ぼくは少しでも良い方向に行けばと、言いたいことを言っただけだ。
確かに少しは変えられたのだろう。一緒にプリシーを撮った時、そんなふうに思えた。
けれど、それを維持するには守り続ける必要がある。そして力が無ければ守れない。
結局、力。
ぼくはいつもそんなことばかり考えている。
千景「ねえ……聖陵院くん」
武谷「なんだい?」
千景「聖陵院くん、みんなの裸、忘れた……?」
その言葉には、威圧感が込められていた。
武谷「忘れたよ」
覚えてるけど。
千景「そう……」
千景「なら……私の裸は……?」
照れているのか、頬が淡く赤く染まり、顔はうつむきがちに上目遣いになっていた。
武谷「忘れたよ」
覚えてるけど。
千景「そう……」
千景さんは、なぜか不機嫌な様子になり、唇を少しとがらせて目を逸らす。
ぼくは空を見上げた。
深夜の空はやはり暗く、月と星だけが支配していた。
いよいよ明日には、諏訪に着くだろう。
白鳥さんは、どうしているだろう。どうなっているだろう。
……確かめれば、分かることだ。
次の日は、梅田に向かった。
みんなで話した結果、梅田駅と大阪駅の地下街を探索することに。
駅周辺は無残に破壊されていたが、地下道へ入る階段は残っていた。
階段には、破壊されたバリケードがあった。
つまり、誰か人が立て籠もっていたということ。
そしてバリケードが破壊されているということは、それを破壊した存在がいるということ。
武谷「…………」
皆足を止め表情を曇らせている。
若葉「――いや、確かめてみないと、何もわからない」
若葉さんの言う通りだ。
ぼくたちは、階段へと足を踏み出した。
暗く荒れた地下街を、懐中電灯を点けながら進んでいく。
武谷「おーーーーーい!!」
若葉「誰かいないかーーーーーッ!?」
通路を歩きながら何度も呼び掛けたが、ぼくたちの声と足音以外音は聞こえなかった。
ひなた「人がいた痕跡はあるのですけどね……」
ゴミ箱が倒れ散乱していた。生活ゴミが見える。
さまよい歩き、円形の広場にいつしか辿り着いた。
中央に、水を吹き出していない噴水設備がある。
球子「な……なんだよ、これっ!?」
武谷「…………」
白い塊が、まるで乱雑に捨てられた玩具のように山と積まれていた。
簡単に言えば骨だ。人骨だ。
人の死体だ。
大量の、死体。
杏さんが悲鳴を上げた。
ひなたさんは力が抜けたのかその場に座り込んでしまった。
他のみんなも、呆然と立ち尽くしている。
千景「……ひどい……地上は、ボロボロになって、地下も、こんな……」
いったい、何人死んでいる?
数えるのも馬鹿らしいほどの死が、この空間には充満していた。
うつむいていたら、床に落ちている一冊のノートに気がついた。
おもむろにぼくはそれを手に取る。
開いてみると、この地下街に避難していた少女の日記だった。
ぼくと同い年くらいの、女の子。
読み進めると、壮絶で凄惨な内容だった。
少女の悲痛と絶望が
手が震えそうになる、息が荒くなりそうになる。歯を全力で食いしばりそうになる。
すべて捻じ伏せた。
ぼくは無言で読み続けた。少女の思いを残すように記憶し刻んだ。
日記が途切れている最後のページまで読み終わった瞬間、ぼくの手からノートは落下した。
千景「聖陵院くん……何を読んでいたの?」
顔を上げると、千景さんが目の前にいた。
武谷「なんでもないさ」
ぼくは背を向け歩き出す。
武谷「少し休むね」
千景「聖陵院くん、どこに行くの……? 一人だと危ないわ……」
後ろから千景さんがついてくる足音。
ぼくは少し歩いた先、通路の隅の壁に背を預けた。
上を見上げる。
空はなく、無機質な
息を吐く。
吐いて、吸った。
今は千景さんが近くにいる。表に出すな。歯を食いしばるな。拳を握るな。力を入れるな。胸が苦しい。頭がおかしくなりそうなくらいぐわんぐわんとする。
手に感触。隣にいる千景さんに、手を握られた。
暖かくて、柔らかくて、女の子の小さな手。
千景「聖陵院くん……私たちで、バーテックスを倒しましょう……」
武谷「うん……」
千景「悩みがあったら、いつでも言ってね……」
ぼくは、黙って天井を見つめていた。
その後バーテックスの襲撃がありながらも、雑魚ばかりだったためみんなで蹴散らしながら進んだ。
大阪の街を一通り探索し、さらに先へ。
跳んで、皆無言で移動。
皆、あの人骨の山を見てしまった事の精神的影響を引き摺っていた。ぼくは日記の内容が頭から離れなかった。
名古屋へと着く。
名古屋駅の前に立つ大型ビルの屋上に降り立った。
周辺を一望できる高さ。
今まで見てきた崩壊した町の光景。
しかし、今まで見なかったものがあった。
球子「おいおい……なんだ、あれ?」
異様な光景。
無数の巨大な卵のようなものが大地に根付いている。
卵型の火の塊と氷の塊も点在していた。火の塊はどこにも燃え移っておらず、氷の塊は一切溶けていない。
生理的嫌悪感を催す。吐き気がする。反吐が出る。死ね。
恐らく、バーテックスが生み出される卵なのだろう。
化け物が、我が物顔で人が住んでいた町に居座っている。
占領。侵略。化け物共が何もかもを奪っていく。
世界が浸食されている。それを体現する光景。こんな
あの子たちは、こんなものに殺されたのか。
杏「……う、ぅ……」
ショックからか杏さんが膝を突いた。
球子「大丈夫かっ、あんず!?」
即座にタマさんが杏さんの体を支える。
ぼくは支えようと動かしかけていた体を元の位置に戻した。
杏「だ……大丈夫……。ちょっと、びっくりしちゃって……」
杏さんの声は震え、深緑の瞳には涙が滲んでいた。
杏「……私たちの四国も……いつかこんなふうに……」
球子「そんなこと、タマが絶対にさせないっ!」
球子「そのためにタマたち勇者がいるんだっ! こんなふうに、させてたまるかっ! 人間が……わけのわからない化け物なんかに、負けてたまるかっ!」
その言葉は、ぼくの思いを外部から叩き付けられているようだった。
けれど、どこか違った。
当然だ、それはタマさんの言葉なのだから。
けれどそういう意味ではなく、ぼくの思いとは違って、タマさんの思いは輝きを持つものだと思えた。
ぼくには、眩しく思えたんだ。
杏「そう、ですよね……私たちが頑張らないと……」
その証拠に、タマさんの輝きを持つ言葉は杏さんに影響を及ぼした。
杏さんは涙を拭い、自分の力で立つ。
ひなた「皆さん! まずい状況です、囲まれています……!」
ひなたさんの言葉に周囲を見渡すと、バーテックスが浮かんでいた。さらにどこからともなく次々に現れ、凄まじい勢いで数を増やしていく。
よく見る白いやつの他に、火を宿したバーテックス、氷を宿したバーテックスも点在する。
その中で、一際目立つ、一目でこの中で一番の脅威だと解る敵。
全身が溶岩で出来ているように見える、無機物と生物の中間の如き姿をしているバーテックス。
全身が氷で出来ているように見える、内部が蠢き尖ったフォルムをしたバーテックス。
あの子たちは、こんな奴らに殺された。
こんな奴らに。
球子「……タマは今、腹が立ってんだ……」
化け物共が。
球子「この世界は、お前たちなんかには奪わせないっ! そのためなら、どんなことだってやってやるっ!」
殺してやる。
スマホの画面、その中心に存在する魔方陣を上にスワイプ。
若葉「球子、待て――」
画面上の歯車型魔方陣と噛み合い、高速回転、綺麗な音色と光を放つ。
旋刃盤が巨大化する。
巨大な魔方陣が前方に出現。
全身を使い身体を捻り、旋刃盤を投擲。
武谷「『グングニル』」
力の意思。言霊、詠唱。
巨大魔方陣の中心からせり出していた槍の切っ先が、放たれる。
球子「行っけえええええええっ!!」
巨大旋刃盤は周囲の刃をチェーンソーのように回転させながら 炎を纏い宿す。
轟音。
轟雷。
周辺のバーテックスや卵を巻き込みながら、溶岩のバーテックスを黄金槍が貫いた。
炎纏う巨大旋刃盤が氷のバーテックスを削り溶かし、粉砕した。そのまま旋刃盤は止まらず、他のバーテックスや卵群をも薙ぎ払っていく。
若葉「球子、軽々しく切り札を使うな!」
球子「悪い、若葉。ついカッとなった……まぁ、後悔はしてないけど」
ぼくは若葉さんの言葉にハッとなった。
タマさんが切り札を使うのを止められなかった。
周りが見えてなかった。
守ることじゃなくて、殺すことを考えていた。
――駄目だ。こんなんじゃ。
目的を見失うな。
バーテックスを殲滅した後、タマさんの巨大旋刃盤にみんなで乗って名古屋の街を見て回った。
けれど探索空しく、何も見つけることは叶わなかった。
そうして先に進んで、もうすぐ諏訪に着く。
白鳥さんが守っていた諏訪に。
……白鳥さんを、見つける。
ぼくは絶対に、白鳥さんを見つける。
ひなた「目を背けたら駄目です」
ひなた「きっと白鳥さんも若葉ちゃんと武谷さんに、諏訪の結末を知ってほしいはずです。たとえその結末が、どんなものだったとしても……。彼女も、若葉ちゃんと武谷さんのことを友達だと思っていたはずですから」
ひなたさんは、ぼくが白鳥さんのことを気にしてたのを察してでもいたのだろうか。
それより――結末がどんなものってなんだ。
どんなものって、なんだよ。
諏訪へ着いた。
視界は、何も無かった。
まともな建物が、無かった。
白鳥さんが守っていた町は跡形も無かった。
瓦礫、瓦礫、野原とほとんど変わらない。
食い荒らされた街。
化け物共の、蹂躙のあと。
白鳥さんは、視界内にはいない。
若葉「く……っ!」
若葉さんが悔しげな声を漏らした。
彼女も白鳥さんの思いが踏みにじられた光景を見て心に傷を負っているのだろう。
だって、ぼくたちの中で若葉さんが一番白鳥さんと仲が良かったのだから。
話したことがあるのがぼくと若葉さんだけというのもあるけれど。
若葉「探そう……生き残りがいないかを」
そうだ。まだ白鳥さんが生きている可能性はある。
どこかに、いるはずだ。
――いてくれ。
ぼくたちは探し回った。
ぼくは走り回った。
血眼になって、目を皿のようにして、白鳥さんの、みんなと同じ年代の少女を探し続けた。
姿は知らないけど、少女を見つけたらまず白鳥さんだろう。
こんな状況で生き残れるのは、勇者だけだろうから。
千景さんは、走り回るぼくをずっと追いかけて来ていた。
見つからない。
見つかれ。
武谷「はあっ……はあっ……」
息が上がる。それでも足は止めない。棒のようになった足を、無理矢理動かす。
日が暮れ、空が赤くなってきた頃――。
ぼくは未だに、夏でもないのに汗だくになりながら捜していた。
友奈「あれ?」
急に友奈さんが畑の脇の方に駆けていき、地面を手で掘り始める。
みんなで近づいていくと、友奈さんが人の身長ほどの大きさがある木製の箱を掘り出した。
若葉「誰かが残したのか……?」
若葉さんが蓋を開けると、中には一本の
若葉さんが開いた紙に書いてあった文面を、みんなで覗き込んだ。
――初めまして。
いえ、もしかしたらこれを読んでいるのは乃木さんか聖陵院さんかもしれませんから、初めましてというのは変ですね。
いえいえ、実際に乃木さんと聖陵院さんに会ったことはありませんから、やっぱり初めましてでしょうか――
ぼくは、その書き出しから続く内容を読んだ。文字の意味を理解していった。
白鳥さんの手紙を、最後まで読んだ。
瞬間。ぼくは走り出していた。
みんなに今のぼくを見られたくなかったから。
やはり白鳥さんは他の人とは違った。顔も見たこともないのに、失いたくない大切な一人だった。
もしかしたら、六人と同じくらい失いたくない人だったかもしれない。
だからぼくは、みんなの前で取り繕うことができそうになかった。
平気な顔なんて、到底無理だった。
ぼくは走る。走る。
知ってたよ。生きてないってことくらい。
心の底ではわかっていた。
わかっていたんだ。
ぼくは、また守れなかったということを。
認めたくなかっただけだ。
白鳥さんは生きていると、自分へ無様に言い聞かせていただけだ。
武谷「神様……神様……神様ぁ……」
――ふと。
視界の隅に、少女の姿が映った気がした。
武谷「白鳥、さん……?」
もしかして、生きていたのか……?
手紙だけ一応残して戦いに行ったが、勝ってしまえて、実際は生き残っている。
なんてことが、起きたのか……?
――それとも幻覚か。
ぼくは、その少女を追いかけた。
肩まである黒髪の少女の背を、導かれるようについていく。
そうして、現れた時と同じように、ふとした瞬間に少女は消えた。
周囲を見ると、そこは諏訪大社上社本宮だった。
いや、上社本宮跡だ。
バーテックスに破壊し尽くされているから。
少女はいない。
つまり、幻覚だったのか。
ぼくの頭が、おかしくなっただけか。
膝を突いた。
跪いた。
這い蹲った。
すると目下、目の前に、黄緑色の五枚の大きな花弁がある髪飾りのようなものが落ちていた。
それを無視できなくて、思わず手に取った。
そして
つまり、これは、白鳥さんの勇者装束の一部。
しかし、白鳥さんはここにいない。
ここで、死んだ。
死体も残さず、失われた。
武谷「――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!」
慟哭。
自然と、全身から溢れた。喉が今までにないほどあり得ないくらい震えた。
頭を掻き毟る。のたうち回る。
ぼくは守れなかったまたなにもできなかった無様に無残に奪われて力のない木偶壊れてしまえばいい助けに行くことすらできなかった遠かったから近くにいなかったから力が足りなかったからできるのは周りのために足掻くだけ終わった終わった終わったやってられるかもう無理だ動けない動け白鳥さんを助けろもういない遅かった惨状惨劇悲劇クソくらえ喜劇無い悲哀ばかり絶望この世界は喜楽無い終末世界白鳥さんいない無い亡い内ないナイナイィィ白鳥さんはここで死んだ残酷に陰惨に理不尽に蹂躙された肉体を潰され喰われたかもしれない引き裂かれたかもしれないぐちゃぐちゃに磨り潰されたかもしれないバラバラになってしまったかもしれない最大の苦痛を感じたかもしれない苦痛を感じる余裕すらなかったかもしれない悲しみの中で散ったのか苦しみの中で散ったのか憎悪の中で散ったのか安らかに散ったのか諦観の中で散ったのかけれど彼女は勇敢に最後まで戦って正しく勇者で輝いている尊く強い人間でされどその白鳥さんは不条理に潰されて呆気なく簡単に輝きが失われて亡くなって無くされてサレテサレs――――
『聖陵院さん』
『もういいの』
『いいんだよ』
『私のために、苦しまないで』
聞いたことがある声が、聞こえた気がした。
通信機越しでしか聞いたことのない声だ。
幻聴か、そうでないのか、もう何もわからない。
それより、もういいってなんだよ。
よくないよ。
全然、何も、よくなんてない。
噛み締め過ぎて歯が欠けた。
何かが、ぼくを包んだ。後ろからだ。
暖かい。
千景「聖陵院くん……」
千景さんが、ぼくを後ろから抱きしめていた。
千景「私、味方だから……聖陵院くんが言ってくれたように、私も聖陵院くんの味方だから……」
千景「だから、そんなに苦しまないで……」
大切な人の言葉には耳を傾けるべきだ。
それは、わかっていた。
友奈さんにも白鳥さんにも千景さんにも、色々言われてきた。
それに耳を傾けて、その通りにして、みんなと立ち向かっていく。
それが正しいのだろう。
でも無理だ。
そうして力が無いのを認めて甘んじてみんなに甘えて進んでいった先で、誰か一人でも死んでしまったら。
そう考えただけでみんなの言葉を聞き入れることはできなかった。
そもそも協力して戦うことなら既にしている。それでも足りないんだ。
楽になった瞬間、どこかが
そして誰かが死ぬ可能性が高くなる。
ぼくが楽になることは許されない。
人は簡単に死んでしまう。
人は案外頑丈にできているなんて言葉もあるけど、ぼくはそんなの信じない。
だって、本当に簡単に死んでしまうんだ。ぼくは見てきた、知ってきた。
千景さんたちも、いつ死んでしまってもおかしくない。死と隣り合わせの戦場に身を置いているのだから。
幾ら強くても、みんなの力を合わせても、少し間違えただけで、呆気なく命は潰える。
ぼくはそれが怖くて。怖くて恐くて堪らない。
千景さんを見る。
記憶に残り続けてるあの子と白鳥さんが、千景さんの姿に幻視、重なった。
絶対にこの子は死んではならない。
だから必ず守らなければならないんだ。
そのためには力がいる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
――ああ、わかった。
わかったよ。
どん底まで落ちて、理解した。
ぼくには、きっと、まだ覚悟が足りていなかったんだ。
なんでも、差し出す覚悟が。
――――神様……。
ぼくは落ちていた白鳥さんの髪飾りをポケットに仕舞った。
友奈「ぐんちゃん……たけくん……」
友奈さんが、
それからぼくたちは、白鳥さんの手紙と一緒に入っていた鍬を使って、本宮境内を探索中に社殿後から見つけたソバや他多数の種を畑に植えることにした。
白鳥さんの証を、この地に刻むんだ。
畑を鍬で耕しながら、ぼくは祈っていた。
神様に。
どうか力を下さいと、祈っていた。
作業が終わり、皆で少し休息を取った後、ひなたさんが神託を受けた。
四国が再び危機に晒されていると。
調査遠征は中断となった。
ぼくたちは、四国へと帰る。
白鳥さんが守護していた地を背にして。