聖陵院武谷は勇者である   作:ソウブ

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4話 リーダーと副リーダー

 バーテックスが減ってきた。もうすぐ戦いが終わる、そんな時。

 バーテックスたちの動きに変化が生じた。

 奴らは寄り集まって一体のバーテックスと成っていく。

 

 バーテックスの進化。

 授業で聞いた、バーテックスは融合して強力な進化体に成ることがあると。

 進化体は、通常のバーテックスよりかなり強力な力を持った化け物だと。

 

球子「なんだ、あいつ……?」

 

 巨大な棒状の一個体へと完成する。

 進化体の棒状バーテックス。

 その異様は、見る者を不安にさせる。

 

 されどただの敵だ。(たお)せばいいだけの存在。

 

杏「まずは私が……!」

 

 杏さんがクロスボウの照準を棒状バーテックスへと向け、発射する。

 連射された金色の軌跡が進化体バーテックスへと迫った。

 

 次の瞬間、棒状バーテックスの体から赤く透明な板状組織が発生。

 

杏「!?」

 

 矢は板状組織に命中、しかしその矢が、火に包まれる。

 火に包まれた矢は焼失せず、矢を放った杏さんの元へと正確に跳ね返ってきた。

 何本もの神の力が宿った火矢が襲い来る。

 

武谷「――っ」

 

 その矢は高速、避けるのも何も、間に合わない。

 杏さんの後ろにいるぼくも、何も反応出来なかった。

 

球子「危ねえっ!」

 

 タマさんが杏さんの前に降り立ち、旋刃盤を楯状に変形させる。

 火矢は楯に正面から衝突した。

 

球子「やばっ――」

 

 弾き返す事は出来なかった。踏ん張る事すら出来なかった。威力を殺せず叩き飛ばされる。かなりの威力だったのか、勢い強く。

 その後ろには杏さん、そしてそのまた後ろにはぼくがいた。

 

杏「きゃあっ!」

 

 衝撃。肺から空気が吐き出される。

 三人でもみくちゃになりながら吹き飛ばされた。

 

杏「聖陵院さん!?」

 

 視界が滅茶苦茶に流転(るてん)する中、誰かに抱えられる感触。

 

 飛んだり転がったりし、ようやく止まる。特に痛みはなかった。

 顔を上げると、至近距離に杏さんの顔。どうやら彼女がぼくを抱えて護ってくれたみたいだ。

 

球子「あんず、武谷、無事かー……」

 

杏「私は大丈夫です、それよりタマっち先輩と聖陵院さんは」

 

球子「私は無事だ」

 

武谷「ぼくも怪我ないよ」

 

 タマさんが楯で護ってくれたから三人とも直接攻撃を受けたわけではなく、ぼくは杏さんに庇われたので大した怪我はなく済んだ。身体能力が強化されていないぼくが庇われていなければ、あのまま大怪我を負っていただろう。

 

 あの棒状バーテックスの板状組織、攻撃を反射してきたから反射板だろう物。

 危険な能力だ。

 安易に攻撃しても反射され、それを防御するか躱すか出来なければ終わりだ。

 少しでも間違えば死ぬ。細心の注意を払わなければ。

 矢は効かなかった。なら投擲武器は使わない方がいいだろう。相性が悪い。斬撃も矢が通らなかった時点であまり効果的とは思えない。

 

杏「あ、あの、どいてもらえると嬉しいんですけど……」

 

 ぼくは杏さんに抱えられたまま、地面に叩き付けられるのを庇われていたので、杏さんの上に乗っている体勢だった。

 ぼくが離れないと杏さんが立てない。

 もちろん今の身体能力差なら杏さんがぼくをどかすことは容易なのだろうけど、優しい彼女は力に任せて無理にどかすという思考に至っていないのだろう。

 

武谷「あ、ごめんね」

 なので速やかに離れた。

 

球子「おい武谷、そんなことじゃ郡さんに嫌われちゃうぞ」

 

 ジト目なタマさん。

 

武谷「なんで?」

 

杏「あ、あはは……」

 

球子「はあ~……」

 

 苦笑とため息、なぜそんな反応。心当たりが一切ない。

 

武谷「それより、とにかく今はバーテックスを倒さないと」

 

球子「まあそうだな」

 

杏「そうですね」

 

 三人で気を引き締めた。

 まだ戦いは終わっていないのだから。

 

 

 友奈さんが拳一つで敵に突っ込む姿が見えた。

 

友奈「勇者パーーンチっ!!」

 

 進化体バーテックスの反射板に友奈さんの拳が叩きつけられる。

 しかし、通常のバーテックスなら一撃で粉砕する拳が、この進化体には一切傷つけられない。

 そのうえ、棒状バーテックスの周囲が吹雪(ふぶ)いた。

 ただの吹雪ではない、勇者でさえも氷結させる神の吹雪だ。

 友奈さんの拳が徐々に白く凍っていく。

 

 焦燥感が積もった、スマホのゲージはまだ溜まらない。遅過ぎる。

 

 ――ぼくは、気配を感じた。友奈さんが切り札を使う気配を。

 

 咄嗟に叫んだ。

 

武谷「待って! 早まらないでくれ! 切り札は使うな!」

 

 あれは体に負担を掛けると聞いた。ならばそんなものを使わせるわけにはいかない。

 友奈さんは一旦敵から距離を取り、言葉を返してくる。

 

友奈「だけど、そうしないとあいつを倒せない!」

武谷「できる限り使わないようにって、大社からも言われてるだろ!」

 

友奈「でも……」

武谷「ぼくの力が溜まるまで持ちこたえてくれ。そちらの方がリスクは少ないはずだ」

 

 友奈さんは少し考えるそぶりを見せた後。

 

友奈「……わかった!」

 

 力強く受諾してくれた。

 

千景「私も、加勢するわ……」

 

若葉「たとえ刃が通らなくとも、複数人がかりなら時間稼ぎぐらい出来るだろう」

 

球子「それじゃあ雑魚はタマたちに任せタマえ!」

 

杏「通常のバーテックスなら、私たちの攻撃は通りますからね」

 

 それぞれ行動を開始する。

 

 ぼくはスマホの画面を見た。ゲージは七割くらい溜まっている、あと少しだ。

 

 友奈さんの拳が反射板に衝突、傷は付けられないが、動きは止められる。

 若葉さんの刀が奔り、剣線の軌跡が幾重も踊る。

 千景さんの大葉刈が振り下ろされ、振り切られ、振り回され刃の猛攻。

 

 旋刃盤が白い通常バーテックスを断裂させていく。クロスボウから放たれた矢が敵を針山にし、貫く。

 

 進化体バーテックスから吹雪が発せられた。友奈さんの拳の凍結をさらに加速させ、若葉さんの生太刀、千景さんの大葉刈、腕や足が氷結されかける。

 

若葉「くっ! 一旦下がれ」

 

 三人とも進化体バーテックスから跳び下がって距離を取った。

 

友奈「これは、あれだね。ヒット&ウェイ? だっけ? にした方がいいね」

 

千景「……高嶋さん、それを言うならヒット&アウェイ」

 

友奈「あ、そうだったね、あははっ」

 

若葉「ならば、その戦法で行くぞ」

 

 スマホの画面を確認する。

 ゲージは八割溜まった。

 遅い。早くしろ。

 

 若葉さんたち三人は、一撃浴びせては即座に退いて、発生した吹雪を避ける。 

 動きが大きく鈍るほどまだ氷結させられてはいない。

 まだ持ってくれている。  

 

 白い通常バーテックスは、ほとんど残っていない。

 残っている僅かなバーテックスに向けて矢や旋刃盤が迫る。

 

 スマホの画面を見た。ゲージは九割。もうすぐ。もうすぐだ。

 焦燥感を抑えながら待つ。

 

 その間も剣撃と拳撃の嵐が舞い、バーテックスを足止めする。

 

 ――瞬刻(しゅんこく)

 

 千景さんと友奈さんが同時に跳び肉薄し、鎌の刃を、手甲の拳を放とうとした瞬間。

 進化体バーテックスが、神の吹雪を現出させた。

 

千景「しまっ……」

 

友奈「あわっ――」

 

 二人は今、攻撃する間際。避けられない。

 直撃。

 吹雪が千景さんと友奈さんの体を氷結させかける。全身の何割かが凍り付いた。

 動けない。白い彫像のなり掛け。

 

 ――もう一度、吹雪が発生する気配。

 

 千景さんと友奈さんは今動けない。もう一度喰らったら、二人は完全に氷の彫像と化すだろう。

 

 まずい。だめだ。そんなことは。

 ぼくはゲージが溜まっていないにもかかわらず、走り出そうとした。

 されど。すぐに足を止めることになる。

 

 若葉さんが千景さんと友奈さんの腕を鷲掴み、後方に投げ飛ばしたからだ。

 二人はそれで、吹雪の範囲から外れて助かった。

 しかし、吹雪が発生するまでに、若葉さんの離脱は間に合わない。

 

 若葉さんは反射板を足場に、強く蹴った。後方に飛び下がる。

 それでも吹雪は追うように発生。

 このままでは氷結を免れ得ない。

 

 若葉さんは跳び下がったと同時に、刀を鞘に納めていた。

 瞬速の居合が放たれる。

 

 若葉さんの生太刀は、迫り来る吹雪を"斬った"。

 刹那の間に一閃された居合は、剣風を巻き起こし、吹雪を、全部とは言わずとも何割か()し散らせた。結果"斬った"ように見えたのだ。

 

 それでも凄まじい技量だ。

 

 僅かに腕が凍り付いたが、若葉さんは氷結させられることなく、離脱した。 

 

球子「ひゅ~っ、すげえ」

 

 流石だ若葉さん。ぼくたちのリーダーは普通じゃない。

 

 ぼくはスマホの画面を確認。

 黄色いゲージは右の隅まで完全に溜まっている。

 コンプリート、オールグリーンってやつだ。

 

武谷「もういける。みんな離れててくれ」

 

 そう伝えると、さらに後方に退く若葉さん、千景さん、友奈さん。

 

 後はぼくに任せてくれ。

 

 スマホの中心にある黄金色の魔方陣を、上にスワイプ。

 上端にある歯車上の魔方陣と噛み合う。噛み合ったまま回転し、徐々にその速度を上げていく。

 高速まで達し、綺麗な回転音を発しだす。

 画面から、光が瞬いた。

 

 数十メートルの巨大な魔方陣が、黄金色の輝きを舞わせながら目の前の虚空に出現。

  

 黄金槍の突先が魔方陣の中心からせり出してくる。

 

 準備完了。これで終わりだ。

 

武谷「『グングニル』」

 

 言霊による詠唱。

 北欧神の力の(めい)を呼ぶ特別な言の葉は、現象に影響を及ぼした。

 北欧の勇者システム、神の御業の一つ、グングニルが起動する。

 

 魔方陣の中心から、黄金槍が解き放たれた。

 

 飛翔、飛来、刹那の間に進化体バーテックスに到達。 

 反射板に衝突する。

 

 雷纏う極大破壊力の黄金槍の前では、反射板などただの板切れでしかない。

 一瞬にして焼き尽くした。

 

 そのまま槍は突き進み、進化体バーテックスを貫き雷を迸らせ、彼方へと跳んで消えていく。

 黄金槍の軌跡には何も残らない。

 棒状の進化体バーテックスは、跡形も無く消滅していた。

 

 

 

 

 

 バーテックスを殲滅、防衛に成功した、その日の夜。

 

 ぼくは食堂で若葉さんと隣り合って座り、そばを食べている。

 

 食堂にあるテレビではバーテックスの侵攻、撃退のニュースがやっていた。

 

 テレビからキャスターの声が聞こえる。

 

 勇者たちは素晴らしい。

 目覚ましい活躍だと。

 

 ――どこがだ。

 確かにみんなは頑張ってたし、みんなには何の問題もない。 

 だがぼくは駄目だ。全然駄目だ。

 

 今回の戦いで解ったことがある。

 勝利を勝ち取りはした。誰にも切り札を使わせず、ほとんど怪我人もいないと言っていい結果。

 氷結させられたりはしていたが、その氷もバーテックスを倒したら消えたし、軽い凍傷程度で済んだ。

 

 けれど、ぼくひとりでは何にも出来ないと解った。みんながいたから勝てたのだから。

 ぼくがもし殊勝な心を持っていたら、これからは戦闘はみんなにも頼ろう、で終わることだっただろう。

 

 でも、救えないのは嫌だ。狂おしいほどに嫌だ。力が足りない。今回は勝てて、何も問題はないはずなのに、満足できない。狂いそうだ。もっと、強くならないと。

 こんなんじゃ宣言したこと何一つ達成できないだろうから。

 みんなにいつか普通の女の子としても生活をさせてやるのも、夢のまた夢だ。

 あの時はそれぐらいの気持ちでいるってこと、なんて言ったけど、本当は実現させるつもりだった。

 無理だ。

 狂い死にそうだ。

 渇望が膨大に増幅していく。

 もっと、もっともっと、強い力が欲しい。

 手に入るのなら、どうなってもいいから。

 そう、どうなっても。

 ――――神様……。

 

 報道では、同時に諏訪との通信記録も公表された。諏訪との通信が途絶えてしまった事は報道されなかったが。

 

武谷「…………」

 

 つゆにわさびを大量に入れたざるそばを啜る。

 若葉さんも隣で蕎麦を啜っていた。

 心地よい辛さが舌を襲う。

 

武谷「蕎麦美味しいな……」

 

 視界が滲んだ。

 

若葉「……やはり蕎麦よりもうどんの方が美味いと思うぞ。私には……蕎麦は少しだけ塩辛い」

 

 それは、誰に向けての言葉か。

 今ここにいない誰かか。今ここにいるぼくか。それともどちらにもか。

 

武谷「そうかい?」

 

 どちらでもいい。ぼくは返答した。

 

若葉「ああ……」

 

武谷「ぼくは好きだよ。美味い。最高だ」

 

若葉「そうか……」

 

 二人同時に、蕎麦を啜った。

 やっぱり、美味かった。

 

 そう思い、言葉に出すことで白鳥さんの存在を確かに感じたかったんだ。

 

 

 

 翌日の昼休み。

 食堂でみんな一緒に食事を取っている。

 

球子「なあ、みんなで話したんだけどさ」

 

球子「今までは大社に言われたから若葉をリーダーだとしてきたけど、やっぱり若葉がリーダーでいいなって今回の戦いでわかったよ」

 

若葉「……どうしたんだ、急に?」

 

球子「いやさ、色々とすごかったしさ。性格的に、纏めてくれるっていうの? そんな感じもあるから。実際若葉がいなければ危なかったところあったし」

 

若葉「そう、か」

 

杏「私も、若葉さんがリーダーやるのがいいと思います!」

 

友奈「うんうん。若葉ちゃんって、いかにもリーダーって雰囲気あるしね」

 

千景「……反論はないわ。あなたの活躍は確かだったし……高嶋さんも、あなたがリーダーに的確っていうから」

 

武谷「ぼくは最初から異存ないよ。この中で一番リーダーに向いてると思うし」

 

若葉「…………」

 

若葉「……ありがとう」

 

ひなた「良かったですね、若葉ちゃん」

 

 

 

友奈「そういえば、たけくんもリーダーっぽかったよね! ドガーンッ! ってすごい技使っていっぱい倒してたし、強いやつも倒したよね!」

 

武谷「ぼくはリーダーに向いていない」

 

若葉「私もそれには同意だ。聖陵院は独断専行のきらいがある。今回の戦闘ではそうでもなかったが……普段がな」

 

千景「……でも一番活躍してた……やったことでいえば、リーダーっぽいとも言えるかもしれない……」

 

友奈「引っ張っていけるってところは若葉ちゃんと一緒だよね」

 

千景「それに、一番年上……」

 

 沈黙。この場に少しの間が過ぎった。

 

友奈「そういえばそうだったね!」

 

球子「タマも忘れてたよ」

 

杏「私もです」

 

若葉「……失礼だが私もだ」

 

武谷「えぇ……」

 

 忘れられてたんだ。ぼくは十六歳。彼女たちは十四歳だ。今まで対等に接してきたとはいえまさか忘れられていたとは。

 

ひなた「私はちゃんと覚えてましたよ?」

 

武谷「ありがとう、ひなたさん、千景さん」 

 

 全員に忘れられてたわけじゃなかった。覚えていたのは千景さんとひなたさんだけだ。ひなたさんの微笑みは女神かなんかのよう。巫女だけど。千景さんの無表情も女神のよう。無表情だけど。

 

球子「なら、どっちもリーダーでいいんじゃねーの?」

 

杏「聖陵院さんは、副リーダーとか」

 

球子「それだ!」

 

若葉「まあ、妥当だろう。実際聖陵院の活躍は確かだったしな」

 

友奈「いいね! 副リーダー」

 

千景「……高嶋さんが言うのなら……いいのではないかしら」

 

 なんだかなし崩し的に副リーダーにされてしまった。

 

 

球子「ところで……そうと決まれば若葉。一つ言いたかったことがあるんだけどよ」

 

球子「なーんーで、お前はタマのことを名字で呼ぶんだ? 友奈とかは『友奈』って言うのに」

 

武谷「あ、それぼくも少し気になってた。正直聖陵院って呼びにくくない?」

 

友奈「私は名前で呼んでって、前に言ってたからね!」

 

球子「むぅ~……だったら私も『球子』とか、もっと親しみを込めて『タマっち』でもいいから」

 

武谷「ならぼくも名前で呼んでほしいな」

 

杏「実はタマっち先輩、若葉さんに名前で呼ばれないこと、実は気にしてるんですよ」

 

球子「はぁ!? そそそ、そんなことねーしっ! 別に気にしてないしっ!」

 

武谷「ぼくは気になってたかな。もっと仲良くなりたいし」

 

杏「あと、私のことも名前で呼んでください」

 

球子「あんず! お前、都合よくタマの言葉に乗っかったな! それとさっきから武谷も便乗しすぎだろ!」

 

千景「……私も……名前で呼んでいいわ……」

 

武谷・若葉・球子・杏「「「「!?」」」」

 

 あの千景さんが、みんなに心を開いてくれた……?

 

千景「何よ……その顔……?」

 

若葉「いや、少し意外だったと言いますか……」

 

 ムッとしたように千景さんはそっぽを向いた。頬が少し桜色に染まっている。可愛い。

 

 ニヤニヤしてたら千景さんに睨まれた。

 

千景「他のみんなが名前で呼ばれてるのに……私だけ名字なんて……変だから。あと、敬語使って話すのもやめてほしいわ……むずがゆい」

 

若葉「分かった、今後はそうさせてもらう。千景、球子、杏、武谷」

 

杏「私も、武谷さんって呼ばせてもらいますね」

 

 これでみんなの仲が深まったのだろう。良い方に物事が転がってくれている。

 それは歓喜できることで、心は弾んだ。

 いつも(こご)って離れない蝕みは、この時ばかりは無視した。

 

ひなた「それじゃあ、みんなで記念撮影をしましょう!」

 

 ひなたさんは満面の笑顔でスマホを取り出す。

 

ひなた「今日は四国勇者の再出発記念日、そして若葉ちゃんと武谷さんのリーダー副リーダー着任記念日ということで。……ふふふ、私の若葉ちゃん秘蔵画像コレクションが増えます」

 

若葉「ひなた! お前はまだそんな収集などしていたのか! いつか絶対消して――」

 

 若葉さんたちがわいのわいのと騒ぎだした。

 ぼくは千景さんに近づく。

 

武谷「千景さん、となりとなり」

 

千景「…………」

 

 顔を上げるが、答えあぐねている様子。

 

友奈「じゃあ私とたけくんの真ん中に!」

 

千景「……うん」

 

 友奈さんのフォローがあり、答えてくれた。嫌がってるわけじゃない、よね?

 

 友奈さんと千景さんを挟んで並ぶと、みんなもすでに集まっていた。

 

 ひなたさんの持つスマホから、パシャリと、シャッター音が鳴った。

 

 

 

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