デストロイヤー討伐の報酬が出るまで、俺はスキットル――強い酒やポーション等を入れる携帯用の水筒――を作るアルバイトをして時間を潰していた。
「なんで普通の生産スキルのはずなのに
和真がツッコんだように、サリスと一体化しながらの作業――――傍目には悪魔の様な翼を出現させながらの作業である。
別にスキットルに闇系の力を
この姿の俺は、普段より格段に強い力を発揮する・・・と思っていた。
だが実際には、筋力や敏捷性などの身体能力は見た目のインパクトほど大きく上昇せず、大きく強化される数値は魔力量くらいだ。
しかし、増加した魔力で放たれる魔法、スキルのレパートリーはしっかりと増えていた。まず目につくだけでも《チャーム》や《潜伏》、『ダークネス』などのスキル、魔法のいくつかが合体中のみ使用可能になった。また、増えた技能の多くはサリスが習得していたのであろうものだが、『エクソシズム』や『ターンアンデッド』など、どうして使えるのかさっぱり分からないものもいくつかある。
そして、大半の魔法は神聖属性や闇属性の魔力を利用することで強化可能なのだが、今までできなかったそれが合体中のみ可能になったのだ。
ただ、その「大半」に含まれない組み合わせでの魔法の強化もいくつか可能なようだ。例えば、アクアも使う『ターンアンデッド』は神聖属性が根幹にあり、闇属性で強化しようとしても
戦闘関係のスキルは、近いうちにモンスター討伐にでも行って使い勝手を把握する必要が・・・あ、今は冬だからそんな簡単な依頼も無いな。
おっと、俺の魔力もそろそろ尽きかける頃か。スキットルの納品もする必要があるし、数もちょうど六十個でキリがいい・・・筈だ。一度外に出ることにしよう。
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「おおっ!こりゃまたすごい数だなぁ・・・いくつ作ったんだ?」
「六十・・・の筈」
スキットルの作成を依頼した魔道具店が、その数を確認する。出来高制だから多すぎて困る訳でもないが、俺のイメージの中の
そしてその対価として払われた金はおよそ一万エリス。小遣い稼ぎ程度の依頼にしてはかなり多い金額だ。
「大抵の生産職は、小遣い稼ぎだったらガラスの瓶を作るからな・・・・そっちの方が一般的だし作りやすい。スキットルを安定して生産できる奴らは、数の必要なガラス瓶を大量生産してまとめて売る方が儲けになるってのもある」
その方が手数料なんかが安上がりで喜ばれるからな。スキットルの大量生産なんて王都とかで生産職を専門にしている人達くらいしかやらないという話だ。
「そんな訳で、今回の報酬はちょっとばかし割り増ししてる。お前さんには今後も頑張って欲しいしな」
こうやって感謝されるというのは実に嬉しいものだ。これが人助けってものですよ。
ついでなので、棚に並んでいるポーションを物色する。俺のポーション作成のセンスは、まあ0とまでは言われない程度といったところか。荷物として持ち歩くのなら店売りのものを選ぶ。
そうして購入した回復用のポーションを家に持ち帰っていると、通りで噂話が聞こえた。
「なあ、知ってるか?氷の城の話」
「名前だけはな。どういう話なんだ?」
「隣町の方に小さな丘があるだろ?あそこはこれまで大した話題もなかったんだが、そこに氷でできた見慣れない城みたいなのが出現したって話だ」
「城ぉ?誰がいつ建てたんだよ」
「それが分からねえんだ・・・聞いた話によると、ここ数日は妙に霧が濃くて、丘の方に行く奴がいなかったんだが、その霧が晴れてみれば以前は無かった建物が現れてた・・・って話よ」
「へえー・・・・・・中の調査とかはやったのか?」
「隣町で隠居生活している元勇者候補がいるんだが、そいつにも攻略は無理そうって話だ・・・」
「それって、手から火を出すとかいう爺さんの事か!?氷の城だったら火で溶けそうなもんだが・・・」
「それが全然溶けなかったらしい。内部にいるモンスターもえらく強くて、その爺さんも匙を投げたらしい」
「年取ってたとはいえ、相当ヤバいダンジョンみたいだな・・・王都から調査隊の一つも来そうだな」
「違えねえ」
ほう、ほうほう、俺の建てた城はなかなか話題になってるようだ。話の内容的に、城の完成度より内部のモンスターの強さの方が注目されてるみたいだが。
しかし、せっかく俺が一から建てた城だからな・・・それが王都のエリート達に容易く攻略され、最悪なら破壊される、というのはいい気はしない。しかし、あの冬将軍に加勢するのは、俺が足手まといにならなければ良い方だと思う。
俺が建てたあの城に住んでいるのは冬将軍で強敵です、とでもギルドに伝えるか?それは
・・・・・・まあ、なるようになるか。
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それから二、三日後。
冒険者ギルドには多くの冒険者が集まっていた。私服の者も多くいるが、おそらくこの街の冒険者が文字通りに全員集合しているのだろう。
俺達五人はその一ヶ所に集まって立ち話をしていた。
「皆。今更私が言う筋合いじゃないかも知れないが、改めて礼を言う。この街を守ってくれて・・・本当に、ありがとう・・・!」
―――半泣きじゃないか。そんなにこの街が好きなのか?
「ここで話すことでもないから、家に帰ってからになるが・・・ちゃんと私の事を話そうと思う。それを聞けば、多分分かってくれるだろうからな」
そうダクネスが涙ながらに語る。
「そういやお前、今回やたらと格好良かったな」
和真の言う通り、彼女はデストロイヤーを前に一歩も引かず、まるでクルセイダーの鑑のような立ち姿を・・・・
「一番何もしなかったけどな」「!?」「そういえば、ダクネスは今回、街の前で立ってただけねー」
―――そういえば立ち姿しか見てない!
和真、アクア、俺の表情にまだ続く。
「私はもちろん、日に二発も爆裂魔法を撃って大活躍でしたからね」「そういえば、カズマさんこそ大活躍だったじゃないですか!」「いやいや、ウィズだって爆裂魔法を・・・」
めぐみん、いつの間にかいたウィズ、二言目の和真と、それぞれの活躍を褒め称える。
「・・・で、街を守るって駄々こねてた、お前の活躍は?」
「こっ、こんなっ!こんな新感覚はっ!・・・わあああああーっ!!」
とうとうダクネスは顔を真っ赤にしてその場にしゃがみこんでしまった。流石は和真さんですわぁ・・・
そうこうしていると、周りの冒険者達がおおっ、と声を上げる。何事かと辺りを見回すと、彼らの視線はギルドのカウンター―――正確にはその奥から出てきたルナさんと、その後ろにある札束の載った手押し車に向けられていた。すると、あれが今回の報酬金か?
「冒険者の皆様!デストロイヤー討伐の報酬金を支払う準備が整いました!順番に支払うために、一度整列していただく必要があるのですが、その前に皆様に支払われる金額を説明します!」
全員の視線がルナさんに向いたのを見計らい、その金額が発表される。
「今回の緊急クエストに参加した皆さんに、三千万エリスが支払われます!大金を持ち歩くのが不安という方は、ギルドで一時的にお金を預かるサービスもありますのでそちらもどうぞ!」
わずかな沈黙の後、冒険者達は一様に歓喜する。建物が震えたのではないかと思う程の大歓声が響いた。
これだけあれば、借金を完済しても全然余裕がある。
「ですが、今のうちにこれだけは言っておきます。確かに大金が手に入りますが、しばらく何もしなくてもいい、とは考えないで下さい」
困惑する冒険者達。その中で、俺は嫌な予感を感じていた。見れば和真もそんな表情をしている。
「ここから西、位置的には隣町の方が近いのですが、謎の城が突然出現しました」
あっ・・・(察し)
「その城は氷で出来ておりますが、火属性の魔法、スキルで溶ける様子はありません。中のモンスターは総じて強力で、レベル30以上の冒険者のみ、かつ四人以上のパーティーでないと基本的に探索の許可は出せません。現在は王都からの調査チームを待っています」
俺らには許可が出ないな。
「中のモンスターが外に出てくる様子はありませんが、今後も状況が変わらないという保証はありません。その城に何かしらの影響を受けるモンスターがいない、という保証もです」
わ、わぁ。お、おそ、怖ろしいハナシダナー・・・
「この街ですとレベル30以上の冒険者は数えるほどしかいませんが、場合によっては皆さまの活躍に期待せざるを得ない事態にもなるかもしれません。注意をお願いします」
しんと静まり返るギルド。そんな空気を吹き飛ばすように、またルナさんが口を開く。
「・・・とはいえ、皆様がこの街を救ったのは事実です!これから報酬金の受け渡しを行いますので、カウンターに一列に並んで下さい!」
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報酬金を受け取り、自宅へと帰った俺達。今回の報酬で借金も返したのだが、
「なあ、お前が城を建てたっていう丘はどこだ?」
和真が俺に聞く。
「アクセルから西・・・隣町に近い・・・・・・」
「・・・念のために確認するけど、その城は冬将軍が住むためのものか?」
「・・・その筈」
「冬将軍はどこかに攻め込むつもりとかありそうだったか?」
「なかった」
「「・・・・・・・・」」
―――何か責任とか取るべきか?
「・・・俺達だけの秘密にしとこう」
―――うん・・・・・・
この後オリジナル展開を少々挟んでから3巻の話に入ろうと思います。