幻想郷の「ヤミ」を払う物語   作:フラスカ

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第三話 「ここが幻想郷か」

 至る所に目がある空間をくぐり、幻想郷へ辿り着いた。

 

「ここが幻想郷か」

 

 目の前には鳥居、桜並木、そして……。

 

「ああ、やっと来た。あんたが紫の言っていた人間?」

 

 紅白カラーの脇を出した巫女さんが一人。

 

「腋巫女か……」

 

 つい、口からそんな言葉が出た。

 

「うっさい!」

「んがっ!?」

 

 何かで頭を叩き割られた。

 

 

 

「全く、初対面の人間に何言ってんのよ……」

 

 そっちも初対面の人間に何やってんだよお前は、と言い返した。

 

「それは……お互い様って事でチャラにしましょ?」

「出来るかこの腋巫女が!」

「もっかい頭を叩き割られたいのかしら?」

「よし分かった、その祓串を下ろすんだ」

 

 巫女さんって優しいものじゃなかったか? と心の中で悪態を吐く。

 

「まだ何か言いたそうな顔だけど?」

「滅相もございません」

 

 よし、こいつの前では隠し事は出来なさそうだな。覚えておこう。

 

「まず、あんたに行ってもらう所は太陽の畑よ」

「太陽の畑? また随分と呑気そうというか暖かそうな所だな」

「そんな事をいつまで言ってられるかしらね」

 

 あ、つまり危険なんだな。察した。

 

「良い? 危険だと思ったらすぐに帰ってきなさい。只の人間にどうにか出来る筈が無いんだから」

 

 恐らく心配して言ってくれてるのだろうが、少しカチンときた。

 

「私が行った方が早いに決まってるのに……紫さえ邪魔しなければ」

 

 成る程、こいつは何でもできるから他人を頼る事をしないんだな。そうかそうか。

 

「というか、私としてはここで帰って貰った方が有り難いんだけど? 手間も省けるし」

 

 言葉を遮り頭にチョップを食らわせた。

 

「あったぁっ!? 何すんのよ⁉︎」

 

「目の前の腋巫女にチョップしただけだが?」

「腋巫女言うな! そうじゃなくて何でそんな事するのかって聞いてんのよ!」

「やかましいわ小娘が!」

「こむっ……! あんたと歳はそう変わらないと思うんだけど⁉︎」

「そういう事を言いたいんじゃないんだよ!」

「何であたしが怒られてんのよ!」

「良いか? お前は異変解決の専門家だか何だか知らんが、女の子だろうが!」

「はあ?」

「いくらお前が何でも出来ようが強かろうが傷付く理由にはならないんだよ」

「つまり、何が言いたいわけ?」

「俺を信頼しろ。一人で何でも抱え込もうとするな」

「残念だけど、会ったばかりの貴方を信頼する理由が無いわ」

「信頼しない理由もないだろう? お前は神社の中で茶でも飲んで待ってろ。俺が全部解決してやる」

「そう、じゃあ精々死なないようにね」

「大丈夫大丈夫、只の人間でも案外しぶといもんだ」

「ま、本当に解決したらお茶の葉ぐらいは信頼してあげるわ」

「覚悟しろよ? 人間はしぶとさがウリだからな」

 

 そんな事を笑いながら言いつつ、神社を出て太陽の畑とやらに向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を信頼しろ、ね」

 

 さっき交わした会話を思い出す。

 

 俺を信頼しろ、至って普通の言葉なのに何故か頭から離れなかった。

 

「さすが博麗の巫女さんだ! また異変を解決したんだってよ!」

(やっぱり普通の人間とは違うんだ、あの人は)

 

「聞いたか? 妖怪になったあいつを霊夢さんが退治したんだってよ」

(敵とあらば知り合いでも容赦なく手を下すのか)

 

 私は気づいた時から博麗の巫女として生きていた。母親の顔はあまりよく覚えていない。母も先代の巫女だったと紫から聞いた。

 博麗の巫女。異変解決の専門家。幻想郷の守護者。楽園の素敵な巫女さん。聞こえはいいが結局の所、人間でありながら人間から外れたものである。

 

 幻想郷を乱す者は退治する。

 

 幻想郷を壊す者は駆逐する。

 

 幻想郷を守るためなら誰だって×××××、それが.家族の様に大切な人だったとしても。そんな風に妖怪を倒し、幻想郷を守る日々を続けていた。

 いつからだっただろう、里の人達が私を「博麗霊夢」ではなく「博麗の巫女」として見るようになったのは。

 

「信頼……か」

 

 あの人なら信じても良いのかもしれない。あの人ならまだ私を知らない。あの人なら───。

 

「何ッ⁉︎」

 

 何かの気配を感じ、祓串を振り下ろした。すると黒い何かが煙となって消えた。

 ああ、これが紫の言っていたヤミという奴だろう。

 

「───いえ、きっと今のは気の迷いね。こいつのせいで変な事を考えちゃったんでしょ」

 

 そう、私は博麗の巫女。妖怪から恨まれ人間からも疎まれる存在。

 彼はまだ知らないだけ。私の正体を知ってしまえばきっと離れて行くだろう。

 だから、今のは勘違いだ。

 私を見てくれる人なんて、博麗霊夢を見てくれる人なんて、居る筈が無いんだから。

 そんな事を期待しても、きっとまた裏切られるだけだ。私はいつも通り、博麗の巫女としていよう。

 そして私はいつもと同じように心を閉ざした、冷たく暗いモノが広がった。

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