幻想郷の「ヤミ」を払う物語   作:フラスカ

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花の章
第四話 「こんにちは、貴方は良い肥料になりそうね?」


 目の前に広がるのは一面の向日葵。

 

「成程、確かに太陽の畑だ」

 

 向日葵、ひまわり、ヒマワリ───。

 

「向日葵以外なんもねぇ!」

「あら? 私の花畑なのだから貴方が口出しする権利は無いと思うけど?」

「確かにそうなんだが、余りに向日葵しか無いもんだから……」

「いいじゃない、向日葵。太陽に当たらずにカビの生えてそうな貴方よりマシだと思うけど?」

 

 物凄く失礼な事を言われた気がする。というよりも。

 

「誰だお前⁉︎」

 

 そう言って背後に立っている人の神経逆撫で女に問いかける。

 

「誰だ、とは失礼ね。勝手に人の花畑に入って来た癖に」

 

 一理あるなと納得し、逆撫で女に向き直る。

 

「失礼、俺の名は」

 

 そこまで言った所で逆撫で女を見た。

 新緑の葉のような髪、襟元に黄色いリボンのついた白いブラウス、赤いチェックの上着とスカート。たわわに弾む胸、手に持った日傘。花畑に映える儚さと美しさに言葉を奪われた。

 

「俺の名は、何かしら?」

 

 目の前の美女にそう言われ、我に返った。

 口が裂けても「貴女に見惚れていました」なんて事は言えないが。

 

「え、ああ。俺の名は」

 

「いえ、言わなくてもいいわ」

 

 俺の名前が分かっている? もしかしてこいつは協力者側の人間か? 

 

「貴方の名前は……」

 

 もしそうなら有り難い。性格は少し難有りだが、そこさえ我慢すれば美人のお姉さんだ。

 

「肥料ね?」

 

 驚いた、愕然とした。驚愕だ。

 会って数分そこらで肥料扱いされるのは生まれて初めてだったからだ、普通無いと思うが。

 

「すまん、もう一度言ってもらっていいか?」

 

 恐らく聞き間違いだろう、そうだきっとそうに違いない。

 

「肥料ね?」

 

 聞き間違いでは無かった事を確認できた。自分の見る目は大間違いだった事も確認できた。

 しかし幻想郷の女性は碌なのが居ないな……。

 

「けど困ったわ、このままだと大きすぎるし……小さくした方が良いかしら……」

 

 目の前の逆撫で女は物騒な事を呟いている、もうやだ逃げたい。

 

「けど肥料でも会話が可能なら挨拶をしておくのが礼儀よね」

 

 そもそも肥料扱いをやめて欲しいんですが。

 

「こほん、こんにちは。貴方は良い肥料になりそうね?」

 

 そんな訴えも聞こえなかったかようで、目の前の逆撫で女は最大級の笑顔で挨拶した。

 

 

 

 ~少年口論中~

 

 

 

「冗談よ」

 

 冗談に聞こえなかったんですが。

 

「まぁ、花が嫌いとかお花達を踏みつけたりしてたらその可能性もあったけどね?」

 

 やっぱり冗談で言ってなかったよこの女! 

 

「さっきからいい加減にその呼び方はやめてくれないかしら?」

「名前を教えてくれないから性別で呼んでるんですけどね? それとも男だったか?」

 

 向日葵の花弁が舞い散る。明らかに空気の流れが変わった。

 

「そう……冗談にしては余り面白くないわね」

 

 目の前の女は笑っていない。表情自体は笑っているが雰囲気が笑っていない。緊急で脳内会議を開始し、満場一致で勝てませんとの決議が出た。

 

「酷く、不愉快だわ」

「すいませんっしたぁ!」

 

 ひとまずDOGEZAしておいた。幻想郷にきて数時間、初DOGEZAである。だって勝てないんだもの。

 

「今日は機嫌が良いから許してあげましょう」

 

 機嫌が良い? あれで? 花に甚大な被害いってるんですが。

 

「機嫌が良いついでに私の名前も教えてあげる」

 

 やっぱり話聞いちゃいねぇよこの女! 

 

「風見幽香よ」

 

 こうして花の番人、第一感染者の風見幽香と出会ってしまったのだった。

 

 

 

「覚えたかしら? えーっと……肥料さん?」

「肥料じゃねぇっつってんだろ!」

 

 この後滅茶苦茶傘で殴られた。

 

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