傘にあんな使い方が有ったんだと衝撃を受けています。
「で、結局何の用なの?」
それは、と話しかけた所でふと考えた。この女に話しても良いのか? ……状況が悪化しそうだ。止めておこう。
「それは、何?」
「太陽の畑に行けって言われた。花が綺麗なので立ち寄った」
嘘は言ってない。
「感想言った。肥料呼ばれた。オマエ、オレサマフルボッコ」
真実しか言ってない。
「お前?」
「幽香さんでしたぁ!」
一応さんは付けておいた、礼儀として。決してこいつが怖いからでは無い。勝てないからである。
「良いわ、今のは無かった事にしてあげる」
知らぬ間に上下関係を仕込まれている……どうにかしなくては。
「貸し一つね」
「無かった事になってないんですが⁉︎」
「買い物に付き合いなさい。丁度肥料が切れた事だし」
「断るという選択肢は」
「貴方が代わりに肥料になるのなら許してあげてもいいわよ?」
それは実質選択肢が無いのでは。
「喜んでお供させて頂きます」
そんな流れで人里へ行く事になった。
~少年少女移動中~
何の問題も無く人里に着いた。だがしかし、ここで問題が浮上した。
「おう兄ちゃん! 見ない顔だな!」
「おっ、姉ちゃんが人連れて歩くなんて珍しいな! 恋人かい?」
「恋人? 違うわ奴隷よ」
「ははは! 相変わらず口の悪い姉ちゃんだ!」
問題その一、どうにもこの女は人里では猫を被っているらしく、結構人が話しかけてくる。
問題その二、単純に俺が新参者という理由で里の人が近寄って話し掛けてくる。上の二つ自体は悪い事では無い。むしろ馴染めているようで嬉しかったりする。
問題その三、この女買い物の量が頭おかしい! 以上の問題を合わせるとあら不思議。荷物が大量にあって死にそうなのに話し掛けてくるせいで全然進まねぇ!
この問題が出来て、四つに増えるのである。
「余り頻繁に何度も買い物に来たくないし、買う時は大目に買うようにしてるの」
どうでも良い話を流しつつ、一旦荷物を置こうとしゃがみこむ。
「私の物を汚したら殺すわよ?」
笑顔のまま言われたので、急いで背筋を伸ばした。ギックリ腰になりそうだったのは秘密。
「次は……あの店ね」
こちらの状況などお構いなしとでも言わんばかりに無慈悲に買い物を続ける。そんな言葉など耳に入らず、俺は正面から目を逸らせずにいた。
そう、こちらにはアレが向かっていた。元気盛りの子供達が!
この女に子供がぶつかったら……! 急いで荷物を投げ出して衝突を回避しようとした。
が、しかし現実は非情である。
「あうっ」
何という事だ、俺は運命を変えられなかったのか……。
「ご、ごめんなさいお姉さん」
そんな声も届いていないのか無言で立っている。
まずい、これはまずい。こいつがキレてる事もまずいが、ここで騒ぎを起こされたら確実に色々と支障が出てしまう!
そんな心配をしつつ、子供に手を伸ばす。
「待っ───」
「大丈夫よ、あなたの方こそ怪我は無かったかしら?」
にっこりと、微笑みながらそう言った。
「は、はい」
「元気に満ち溢れてるのは良い事だけど、周りに注意しなさい」
誰この人、私の知ってる幽香さんじゃない。
「あ、あの怒ってないんですか?」
「少し怒ったけど、子供のする事だから許してあげるわ。次からは気をつけなさい、良いわね?」
もしやこれが本当の幽香さんで、さっきまでのは恥ずかしくて、所謂ツンデレという奴なのでは?
「あ、ありがとうございました!」
そんな微笑ましいワンシーンは。
「何か落ちてくるぞ!」
「弾幕か⁉︎」
「妖怪か⁉︎」
「いや……あれは!」
「肥料袋だ!」
幽香さんの頭に鈍い音を響かせた肥料袋によって砕かれた。
場が凍り付く、だが俺は確信を持っていた。許してもらえると。
「ご、ごめんなさい」
俺がそう言うと幽香さんは微笑み、担ぎ上げ、そして───。
「まだ昼間だけど星が見られるかしら?」
俺を投げ飛ばした。