幻想郷の「ヤミ」を払う物語   作:フラスカ

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ロード完了……時間軸再構成……肉体復元完了……記憶の処理完了しました
これはこれは皆様、失礼致しました。
あの方から面倒事を押し付けられたもので・・・
この老いぼれには最近のですくわあくなどという仕事はどうにも難しいものです……
さて、察しのいいお客様はもうお分かりでしょうがこの物語。
選択肢を間違えた場合、主人公となる方がお亡くなりになります。
本日はこの老いぼれのご無礼、お許し下さい。
お詫びといってはなんですが・・・この物語の「終わり」を決めるのはお客様ご自身でございます。何卒、お忘れなき様・・・
第八話、開幕でございます。存分にお楽しみ下さい。


第八話「取り敢えず、一件落着?」

 意識が暗闇に落ちる。

 深く、暗く、静かで寂しい空間に声が響く。優しく、温かい声……とはお世辞にも言えない喧しく、頭が痛くなる様で、安心する声が響いて目の前が明るく、はっきりとして来る──。

 

「……え! ねえ! 起きてよ! 目を開けてよ!」

 

 慌てて理解しようとする、が、頭が追いつかない。

 

「何とか成功したみたいで良かった……本当に」

 

 こいつは目の前で涙ぐんでるし、

 

「ぐゥ……殺す……私の物にならないならコロス!」

 

 幽香は幽香で苦しんでるしで状況が全く掴めない。

 

「色々詰めて後9回って所かな。もう無いのが1番良いんだけどね」

「何が起こった、状況は、説明を!」

「それは後、取り敢えず僕の言う通りにして!」

「ああ分かった!」

 

 体の周りに文字が浮かび、少しだけ昂ぶった男の浪漫的なものを抑える。

 

「『外なる世界より出でし醜悪なる、『美麗なる』、軽蔑すべき、『愛すべき』モノよ』」

「『我は汝の正体を知る者、我はヤミを祓う者、我は汝を受け止める者』」

 

 厨二心をくすぐられる呪文で更にテンションが上がる。

 

『汝のあるべき姿に戻れ! クロウk』

「こう言う時ぐらいまともにやれ」

「ヒエッ、目が笑ってない……」

 

 何でこいつはこういう大事な時も真面目に出来ないんだろう。

 そう思いつつ、詠唱を続ける事にした。

 

「『汝は恨み、憎悪を主食とするモノ。汝は支配欲を糧とするモノ』」

「はいっ! ここで決め台詞!」

 

 何を言い出しやがるんですかねこのバカは。

 決め台詞を自分で考える事の恥ずかしさを分かっているんだろうか。

 

「早く!」

「そげぶ!」

「こういう時ぐらい真面目にやってね?」

 

 とんでもないブーメランである。結構真面目に考えたんだけどなぁ……

 さっきまでのテンション上がった状態ならまだしも、クロウカードの突っ込みで下がった今では格好良い決め台詞なんて思い付きもしない。

 

「さ、さぁお前のヤミを数えろ! 俺が全て祓ってやる!」

 

 咄嗟で少し噛んだが中々良いんじゃないだろうか。これなら文句も言われないだろう。

 

「ぷっ、くくっ……かなり……良いと思ぶふっ!」

 

 こいつ後で泣かそう。

 

『汝の正体……魔性型、表裏一体型也!』

 

 しかも大事な所までかっさらって行きやがった! 

 

「さぁっ! 大詰めのハグだよ!」

 

 さぁっ! じゃない。

 

「これも手順の内だから、手順の内だから!」

「じゃあその手に持ってるカメラを下ろせ」

「ちぇー、バレたかー」

 

 さて……

 

 ハグって何ぎゅっとすれば良いんだっけ前からだっけ後ろからだっけそういえばシャワー浴びたよな歯は磨いたよな顔はどの位置にすれば向きは真っ直ぐなのか少し傾け

 

「分かりやすくテンパって無いで早く!」

 

 幽香をなるべく優しく抱き締める。

 凄い良い匂いする柔らかいというか細いというかなんだろう生きてて良かったなっておもうなんでだろうごいりょくがだんだんなくなっていくふわふわでねむく……

 

「はい離れる! いつまで抱き締めてるの!」

 

 脳が溶けるような体験の最中、後ろから引き剥がされる。

 ……もう少しだけ味わっていたかったのは内緒にしておこう。

 

「あああ゛ア゛アア゛!!」

 

 離れた瞬間、幽香が悲鳴を上げる。悲鳴というより獣の咆哮に近い声が空気を震わせる。

 

「ほら、出て来たよ!」

 

 幽香の背中からずるりとヤミが抜け落ちる。

 まだ陽の出ている昼間だというのに。そこだけぽっかりとくり抜かれたかの様に。

 光を飲み込み、向こうには何も見えず、太陽が食べられた様な───

 その姿を視認しただけで恐怖を呼び起こす様な漆黒が目の前にあった。

 

「う゛っ……!」

 

 ついでに吐き気、体調不良も呼び起こされたようだ。

 

「あっちが頑張って吐かなかったんだから、君も吐かないで!」

 

 何それ、頑張らなかったら口からあれが出るの? 

 

「女の子的にそこは譲れないからねー……取り敢えず、一件落着?」

 

 そこ拘るのかと言いたくなったが、小言を聞かされそうなので止めておいた。

 

「さて、と……その女の子を安静な所に連れて行こうか」

「え、これ放置するのか? 隙を見せた瞬間感染しそうな気がするんだが」

「そこら辺は大丈夫だよ〜。一応この問題の担当者なんだから!」

 

 その割には情報不足だったりと、頼りがいが無いんですが

 

「……何さその文句を言いたげな視線は」

「いいや別に? 頼りになるアドバイザーさんならきっと安心だろうなぁって思っただけだ」

 

 そんな事は爪の垢程度にしか思ってないが。全く思ってないわけでは無いので嘘ではない。

 

「なら良いけど……ヤミは捕獲しておいて、幽香さんが起きてから話を聞こっか」

 

 そういえばさっきは何が起きたのかよく分からなかったが……

 倒れてる奴を放っておくわけにもいかないし、幽香を小屋まで運んでから聞くとしよう。

 

「あ、先に行っといてくれる? ちょっと時間かかるからー」

 

 後の事はポン(コツアドバイザー)に任せて小屋に向かう事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、予想以上に暴れてくれたね?」

 

 捕獲したヤミに語りかけてみる。勿論この状態だと会話も何も出来ないんだけど。

 

「何とか捕獲できたから良いけどさー……」

 

 瓶に詰め込まれたヤミはこっちを見ている……様な気がする。目が無いのでいまいち判別出来ない。

 

「確か、君達は自己学習能力が有るんだっけ」

 

 もう一度、瓶に語りかける。

 

「なら、僕が今どんな感情なのかは分かるのかな?」

 

 感情を抑えながら、静かに語りかける。

 

「君達に情報共有なんて事が出来るなら覚えておくと良い。彼がもし死んでしまったら……僕は君達をこの世界ごと消すよ」

 

 言い終わった後、瓶が震え出した。もう感情を持ち出したのかな? 

 ……まさかね

 

「それにしても君達はどうすれば良いかなー」

 

 そんな事を考えながら、彼の元に向かった。

 

 

 

 残機、残り9

 

 




いっえーい!皆大好き世界一可愛くて超天才のアドバイザーちゃんだよー!
お爺ちゃんは今回忙しそうだから変わってもらったのさー!
とと……今回はお知らせだよー。
えーっと、カンペカンペ……
「観客の皆様、ご贔屓の程有難うございます。今回は初死亡達成と言う事で、新しい物語を解放させて頂きました。この物語は『もしも』の物語となります。準備に1週間程頂きますが、お楽しみの程お待ち下さいませ」だってさ!
後はー……そうだ!残機無くなったら終わるらしいから気をつけてねー!
じゃあまた会おうねー!バイバーイ!

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