幻想郷の「ヤミ」を払う物語   作:フラスカ

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ご鑑賞中の皆様、お待たせいたしました。
当一座の準備が完了致しましたので、これより物語の続きを紡がせていただきます。
最近は、寒さが厳しい季節でございます。
老いぼれの関節には辛い季節となって参りました……。
今のは韻を踏んだわけではございません。決して。
お客様も体調にはお気をつけ下さい。
第九話、開幕でございます。存分にお楽しみ下さい。


第九話「どんな気持ち?ねぇどんな気持ち?」

「……ん」

 

 気がつくと、ベッドで寝ていた。

 目は覚めているけれど、頭がぼーっとして働かず、

 何があったか断片的にしか思い出す事が出来ない。

 

「次会った時どんな顔すれば良いのかしら……」

 

 思い出したのは暴走し、破壊し、そして助けられた事。

 肥料肥料と言ってはいたけれど流石に言い辛くなってしまう。

 とはいえ、名前を知らない以上他に呼び名が無いのだが。

 

「喉が渇いたわね、水でも飲もうかしら」

 

 起きてからずっと喉が渇いていた事に気付く。

 水を飲んだら水浴びでもして思考をまとめる事にしよう。

 あいつの事を考えると頭が痛くなってきた……

 余計な考え事をかき消し、扉を開けると

 

「顔色が悪いな。水でも飲むか?」

 

 一番会いたくない奴が家にいた。

 

 

 

 

 

「……何故、あなたが?」

 

 返答は分かっているのに、間抜けな質問をしてしまう。

 

「それは、ここに居る理由か? それとも助けた理由か?」

 

 返す言葉が出てこなかったのを隠すために、半ば水を奪うような形で受け取る。

 

「返答は無しか、全く女王サマは気難しい事で」

「それで、何の用? まさか本当に看病しに来ただけでは無いでしょう?」

「察しが早くて助かる、ポン」

「だーかーらー! そのポンって呼び方やめてよ! 狸みたいじゃん!」

 

 二人しか居ない空間から他の声が聞こえる。魔法か何かの類かしら? 

 

「良いじゃないか、可愛いぞ? タヌキは」

「本当!? それなら別に……」

「俺は動物もカップ麺も狐の方が好きだけど」

「フシャー!」

 

 狸よりも猫と言った方が合ってる気がするのだけれど……

 

「人の目の前で漫才を繰り広げるのは勝手だけど、話を進めてもらえるかしら?」

 

 観てる分にはいつまでも飽きないけれど。

 

「すまん、少し脱線した。こいつはお前も勘付いていたと思うが……っと、その前に聞きたいんだがどこまで覚えてる?」

「割と、しっかりと、断片的には」

「それはほとんど覚えてないっていうんじゃ無いのかなぁ……」

「今話してる部分は覚えていると仮定して、こいつは──」

 

 それからは彼の話を聞いた。

 自分と彼(彼女?)の目的、私に起きた異変の内容、細かい事については言葉を濁して躱されたが大体の内容は理解できた。

 

「と、そういう事だ」

「ごめんなさい幽香さん。事が事だけに話せなかったんだ」

「……助けてくれた事には礼を言うわ、ありがとう」

「おっ、流石の女王サマも礼くらいは言えるんだな。驚いた」

「また君はそういう事言う!」

 

 これはこれで良い凸凹コンビね、だけど悔しく感じるのは何故かしら? 

 

「でも、その程度の異変なら放置しても良かった気もするけれど?」

 

 話を聞いた限りでは、感染した者が暴走する程度の脅威。その程度ならば博麗の巫女が駆け付け、封印なり何なりで解決するように思える。

 

「幽香さん、それは──」

 

「おっと、そういえば女王サマに聞きたい事が有ったんだ」

 

 話を遮られる。少し気に障ったけどそのまま続ける事にした。

 

「何かしら?」

「肥料だなんだと随分と好き勝手に言ってくれたが」

 

 そこを言われると今の状況としては少し痛い。

 

「そんな奴に助けられた今の状況、どんな気持ち? ねぇどんな気持ち?」

 

 瞬間、脊髄反射で拳を振りかぶっていた。

 

「NDKっ!?」

「うわー……振りかぶって体重が乗った全力パンチとか痛そー……」

「何か言ったかしら? 主に体重とか」

「いや、別にー? 今のは完全にこっちが悪いし」

「いたたた……普通助けてもらった相手にグーでいくかねグーで」

「感謝よりも苛立ちの方が上回ったので殴った。後悔も反省もしてないわ」

「少しは丸くなると思ったけどそこまで行くと尊敬するわ」

「あら、やっと私の事を尊敬する気になったかしら?」

「君達って仲が良いんだか悪いんだか良く分からないね」

「それだけ元気ならよく眠れたようだな、良かった」

「そうね、珍しくよく寝られ……」

 

 そこでふと、自分の服が寝巻きに変わっている事に気付く。

 

「この服は誰が……」

 

 そこまで言ったところで、二人が黙り込む。

 

「その、だな」

「僕もしっかり注意したし、多分大丈夫! だと思う!」

「えーと、つまり、そういう事よね?」

 

 二人の様子を見てある程度察した。

 

「目隠ししました!」

「案内しました!」

 

 ここに居るのが一人しか居ない事で、容易に想像は出来たけど……

 

「それで、その、どうだったかしら?」

 

 つい聞いてもどうしようもない事を聞いてしまった。

 

「可愛いパジャマ持ってるなとか」

「ふむふむ」

「下着が凄いなとか」

「ほうほう……ん?」

「その、胸が凄いなと……あだだだだ!」

「やっぱり! 途中から動きが止まったりぎこちないと思ってたら! すけべ! 変態! おっぱい星人!」

 

 聞いたこちらも悪いのだが、あまりに正直すぎて顔を鷲掴みにしてしまった。

 

 五分後

 

「まぁ、何はともあれ調子が戻ったなら万々歳だ。何かあったら力借りるかもしれないって事だけ覚えておいてくれ」

「急に真面目になってもさっきのことは忘れないから」

「やかましい! 見るのも言うのも恥ずかしかったんだぞこっちは!」

「恥ずかしそうにしても、僕は今日の事忘れないから」

「違うからな! その……違うからな!」

「はいはい、分かった分かった。今日は帰ってくれないかしら? まだ体調が悪いの」

 

 言いたい事はあったけれど、実際に体調が悪かったので、丁重に帰ってもらう事にした。

 

 二人が、正確には一人と一ポンが帰ってから時間が経った。もう一度寝ようかとベッドに入り、目を閉じようとした時───

 

「ゆゆゆゆかさん、幽香さん! 助けて!」

 

 一ポンの方の声で、眠気が覚めた。

 

 

 

 

 

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