『自称神(笑)』と『転生者(笑)』を赤屍さんに皆殺しにしてもらうだけの話   作:世紀末ドクター

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第二話 『リリカルなのは』の世界で その1

 ―――結論から言おう。

 

 アーカイバのコアを拾ったことで力を得ただけの「自称・神」など、赤屍の前では所詮はただの雑魚だった。

 あっさりと「自称・神」たちを始末した赤屍と間久部博士であったが、今度は残りの「転生者」達を始末するべく、二人は別のセカイへの転移を繰り返していた。

 いくつかの次元を渡り歩いた後、二人が新たに転移した今度の世界。新たに訪れたその世界は彼らが元々いた世界と殆ど変わらない世界だった。セカイは違えども同じ日本。

 そして、二人の死神が降り立ったその土地の名前は―――

 

 

「ここが海鳴市、ですか」

 

 

 海と山が近くにあり、空気も程良く澄んでいる。

 田舎過ぎず、都会過ぎないという印象の街だった。

 しかし、間久部博士の話によると、この街はある意味『転生者』たちの魔都になっているのだという。

 ようするに、特定の女の子とイチャコラしたいという欲望丸出しの連中たちの巣窟となっているらしい。

 

 

「全く…話を聞いただけで頭が痛くなってくるような連中ですね…」

 

「そうだな。私もそう思うよ」

 

 

 赤屍の隣りに立つ間久部博士もヤレヤレと同意の言葉を返す。

 最初は今回の依頼に乗り気だった赤屍であったが、『ウサギ狩り』の獲物の実態が知れるにつれ、明らかに態度が不機嫌になって行った。

 一番最初に始末した5人の『自称・神』のこともそうだが、これまでに始末してきた『転生者』の連中の大半はどいつもこいつも頓珍漢な独善を振り回すアホばかりだった。

 

 

「自称・神の方々も大したことは無かったですし、思っていたよりも遥かに期待外れな仕事ですね。今回は」

 

「フッ、そう言ってくれるな。せめて報酬分の仕事はしてくれたまえよ?」

 

「余り気は進みませんがね。引き受けてしまった以上は報酬分の仕事はキッチリしますよ」

 

 

 赤屍はそう言うが、それはつまり、報酬分以外のことは一切しないということである。

 これまでにも数多くの『転生者』をあの世に運んできたが、どいつもこいつも変わり映えのしない連中ばかりでいい加減に飽きて来たのだ。

 たとえば―――

 

 

「『私は自分の剣の骨です』だとか、意味不明な呪文を使う人が最低でも50人くらいは居ましたよねぇ…」

 

「確か『無限の剣製』だったか。ひょっとしてああいう能力が流行っているのかな?」

 

 

 いくつもの剣や武器を持っていようが、使いこなせなければ意味が無い。

 何本もの剣を作って投擲武器のように射出してこようが、所詮はただの直線攻撃。

 360度全包囲する形で攻撃して来ようが、赤屍からしてみれば多少厄介な程度で十分対処可能なレベルだ。

 攻撃される側の状況としては、重火器で武装した集団に取り囲まれて一斉に攻撃されているのと状況的には似たようなモノであり、代用が効くということは所詮そこまでの技術・能力である。

 別に『無限の剣製』という能力自体をディスるつもりは無いが、適切な運用がされずに闇雲に使うだけの能力など赤屍にとってみれば何の役にも立たない。自己鍛錬を怠り、与えられた能力に頼りきった戦い方しか出来ない者など、どのような能力を持っていたところで所詮は宝の持ち腐れである。

 

 

「彼らの力の『オリジナル』の方々が、ああいうのを見たらどんな感想を抱くんでしょうねえ…」

 

 

 オリジナルの人物が死にもの狂いの努力、命を賭けての戦いの果てに身に着けた技術。

 それらを何の苦労もなく、ただ神様に与えられたというだけで、いい気になって無暗矢鱈に振り回すだけの連中。

 彼らの能力の『オリジナル』の人物が、ああいう劣化コピーな連中を見たら、「ふざけるな!」と怒り狂っても不思議はない気がする。

 呆れの混じった赤屍の言葉にウサギの人形を抱いた少女は愉快そうに笑う。

 

 

「ククッ、君がそれを言うのかね? 君の方も相手からしてみれば大概だよ。むしろ君に殺された相手からすれば、君の存在こそ『ふざけるな』だろうさ」

 

 

 並のチートなど相手にもならない圧倒的な赤屍の実力。

 それだけの実力を持っていながら格下相手でも紙クズのように切り刻む冷酷さをみせ、人を殺すことを愉しむ殺人嗜好者。

 真っ当な法律に照らし合わせるなら、赤屍蔵人という人物こそ確実に死刑待ったなしの極悪人であろう。そんな極悪人である赤屍が他人を非難する資格など在る筈がない。

 

 

「まあ、確かにそうなんですけどね。実際、私自身、自分が最低の極悪人だという自覚はありますよ」

 

 

 間久部博士の指摘に対して、赤屍は少し苦笑しながら返答する。

 

 

「私が極悪人だということは否定しません。ですが、そんな私の目から見ても相当に不快な連中が多かったのも事実ですよ。たとえば、殺す覚悟だとか殺される覚悟だとか、やたらと『覚悟』なんて言葉を使いたがる転生者も居ましたが、アレなんかも相当に的外れの意見だと思うんですよねぇ…」

 

「ほう? 的外れとはどういう意味かな?」

 

 

 興味深そうに間久部博士は赤屍に聞き返した。

 聞き返された赤屍は少し言葉を選ぶように考えたあと、こう答えることにした。

 

 

「ようするに、殺す側がどんな覚悟や信念を持っていようと、殺される側にとっては何も関係ないってことですよ」

 

 

 赤屍に言わせれば、『殺される覚悟』や『殺す覚悟』なんて何の価値もないものだった。

 そういう覚悟の有無が何らかの違いをもたらすとしたら、それはせいぜい死の間際での潔さぐらいのものだろう。

 覚悟を持っていなかった場合は、『死にたくない』と喚きながら見苦しく死んでいく。そして、覚悟を持っていた場合は、せいぜい死の間際に『仕方ない』と受け入れて、潔く死んでいくだけだ。覚悟の有無が何か違いをもたらすとしたら、せいぜいこの程度でしかない。そんな些細な違いしかもたらさないものなど、赤屍にとってはどうでもいい物でしかなかった。

 

 

「覚悟や信念を持っていることが、殺すことへの免罪符だと勘違いしているんですかね? しかも、そういう連中に限って、いざ自分が殺されそうになった途端に命乞いをするような者ばかりなんですから、全く以って救えませんよ」

 

 

 そもそも、自分には殺される覚悟があるから何をしても許されるという理屈が通用する訳がない。

 赤屍にとって重要なことはただ一つ。それは覚悟の有無などではなく、単純に強いかどうかの一点のみ。

 

 

「覚悟というのが個人の価値観と意思の在り様を指す言葉である以上、当然その在り方は個人によって違うものです。そんなものは義務でもなければ、ましてや他人に押し付けるものでもない。結局、覚悟や信念なんてのは自分の内にだけ秘めていればいいんですよ。戦闘中の相手に覚悟の有無を問うなんてナンセンスです」

 

 

 いかにも不機嫌そうに語る赤屍。

 どうも話し振りから察するに、実際にそういう類の問いを赤屍に投げた転生者(笑)が居たらしい。

 一方、赤屍の話を聞いた間久部博士は、口の端に皮肉気な笑みを浮かべて言った。

 

 

「覚悟や信念は他人に押し付けるものではなく、ただ己の内に秘めるもの―――か。フフッ、なるほど。つまり、それが君にとっての『信念』な訳だな」

 

「……」

 

 

 からかわれるように言われ、不機嫌そうに押し黙ってしまう赤屍。

 そんな赤屍に苦笑すると、博士は少しだけ自分の意見を述べることにした。

 

 

「まあ、君の信念については少し興味はあるが、今はどうでも良い。私達の今回の仕事は『自称・神』がバラ撒いた転生者の連中を問答無用に皆殺しにすることだからな。確かにこれまで君に始末してもらった転生者は君にとっては期待外れだったかもしれないが、実は私にとってはそうでもないよ」

 

「……あんな紙屑みたいな雑魚にどんな見込みがあると?」

 

 

 間久部博士の言っていることが理解できないという風な赤屍の表情。

 そんな赤屍に博士は一つ頷いて言葉を続けた。

 

 

「確かにこれまで出会った転生者の連中は、君にとっては紙屑みたいな連中ばかりだったかもしれないな。だが、それでも私は今回の始末対象である転生者たちに期待しているんだよ。一人くらいは絶望に抗い抜く人間の姿を魅せてくれる者が居てくれるのではないか…、とな。諦めず戦い抜く人間はたとえ敗れようとも美しい。真田幸村を見ろ。関ヶ原の敗軍の将にも関わらず、あれほど世の人々に讃えられているだろう」

 

 

 敗軍の将・真田幸村を引き合いに出して、間久部博士は語る。

 今回の仕事で始末しなければならない転生者たちに抱いている期待を。

 

 

「絶望に真っ向から立ち向かう勇気と諦めない心こそ人の持つ最大の輝きだ。君のお気に入りの好敵手である『奪還屋』の二人組がまさにそうだ。……きっとこのセカイにも居る。絶望に屈せず、不屈の意思を魅せてくれる英雄がな。『Dr.ジャッカル』という最大の障害。その絶望の中で必死に足掻く者の魂の輝き。私はそれを見たいんだよ」

 

 

 もっとも、完全に心が折れて絶望に染まった顔というのもそれなりに味があるがな、と博士は口元を残酷に歪ませながら付け加える。

 まるでどこぞの愉悦部員のようなドS発言をサラリとかますあたり、やはり、この間久部博士という人物も頭のネジが1本や2本ではないレベルで吹っ飛んでいる。

 

 

「なるほど。つまり、他人の不幸は蜜の味、という奴ですか」

 

「悪趣味だと思うかね?」

 

「いいえ? 私の趣味よりはずっとマシだと思いますよ」

 

 

 言いながら、正気のままで狂っている二人は不敵に笑った。

 それは見た者の背筋がゾワリと沸き立つような禍々しさに満ちた悪魔の笑みだった。

 

 

「さて、それはそうと、もうすぐ昼食時だ。まずはどこかで食事を摂らないか?」

 

「ええ、お付き合いしましょう」

 

 

 そう言って、二人は並んで歩き出した。

 この街に血の雨が降るまで、もはや幾許の猶予もない。

 しかし、このセカイの転生者たちは、自分達が最強最悪の死神に命を狙われていることなど、まだ知る由もなかったのだった。

 

 

 

 




あとがき:

 この後、海鳴市に史上最悪レベルの『連続児童殺害事件』が発生します。「リリカルなのは」のSSの転生オリ主って、ほとんどの場合、フェイトやなのはと同年齢だから、こいつらを問答無用で殺していくとなると、赤屍は間違いなく歴史上最悪の凶悪殺人犯として全国ニュースの話題を掻っ攫うことになりますわ。
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