『自称神(笑)』と『転生者(笑)』を赤屍さんに皆殺しにしてもらうだけの話   作:世紀末ドクター

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※今回は、ある転生者の視点での話です。


第三話 『リリカルなのは』の世界で その2

 ―――突然だが、俺は転生者だ。

 

 トラックに轢かれて死んだ俺に神様が与えてくれたのは二度目の人生だった。

 何やら神の暇潰しというか娯楽の為に、都合良く死んだ俺を別の世界に飛ばすらしい。

 正直、そんな転生とかどうでも良いから普通に元の状態に生き返らせてくれればそれで良いというのに、何でわざわざそんなことをするのか分からない。

 何となく思ったことだが、転生の神様という奴は本当は神様の皮を被った悪魔なんじゃないだろうか。そう思った理由? そんなの周囲の状況をみれば一目瞭然だ。

 転生してから6年が経ち、今は小学校の入学式。

 

 

「えー、君達はこれから---」

 

 

 よくある校長先生の長話を聞き流しつつ、俺は周囲の状況に頭を抱えたくなっていた。

 銀髪オッドアイの男子小学生。炎髪灼眼の女子小学生。果ては某錬鉄の男や金ぴか英雄王の小学生版。

 はっきり言ってこんなのはまだまだ序の口である。きっとコイツらの全員が魔力Sランクを超えていたり、レアスキル持ちだったり骨子が捩れ狂ったりするんだろう。

 正直、俺自身は原作介入とかには興味は無かった。だから、俺は神様がくれると言った転生特典とやらは本当に何も貰っていない。

 

 

『貰えるもの貰わないとかwwwwバカスwwww』

 

 

 転生の際、神様だとか言う奴はそんなことを言って嗤っていた。

 だが、結果的に見るならば、俺のあの時の選択は間違いなく最適解であったことを、この時の俺はまだ知らない。

 今から数年後――つまりは『原作』の開始と同じ時期、海鳴市に存在する『特典持ちの転生者』が揃って皆殺しにされることになるなど、この時の俺達には知る由も無かった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 小学校に入学してから数年の月日が経つのは意外に速かった。

 最初の入学式で、あからさまに転生者だらけだったのを見た時はどうなることかと不安だったが、意外にもそれほど大きなトラブルは無かったみたいだ。

 もっとも、「ハーレム」だの「原作介入」だのとほざく転生者同士の多少の小競り合いなんかはあったみたいだが、死人が出るようなことは無かったみたいだし、ある程度の無難なところに収まったらしい。

 らしい、というのは目の前の『コイツ』に聞いたからだ。

 

 

「けど、びっくりしたよ。キミも転生者だったんだ?」

 

「ああ、アンタもそうだったんだな」

 

 

 さよならの挨拶が終わった放課後の教室。

 教室の掃除をしながら、俺はクラスメイトの少女に対してぶっきらぼうに答える。

 相手の名前は佐倉未来。黒い髪をポニーテールに纏めた凛とした感じの少女で、率直に言って中々の美少女だ。

 容姿的なイメージとしては『ToL○VEる』のサブキャラである九条凛に近い。ひょんなことからお互いに転生者だとバレてからは、一応は友人同士の関係を続けている。

 

 

「まあ、私の場合は『原作』に関わるつもりなんてさらさら無かったからねー」

 

「俺もだよ。原作介入だとかハーレムだとか、本気で言ってるんだとしたら頭が沸いてるとしか思えねえ」

 

「あー…、確かにそういう奴も実際に居たんだけどねえ…。けど、そういう余りにも痛い奴は普通に原作メンバーからも嫌われて、勝手に不登校の引きこもりになったみたいだよ?」

 

「小学生のうちから引きこもりって……」

 

 

 正直、呆れて物も言えない。

 小学生のうちから引きこもりとは、はっきり言って人生を棒に振るに等しいと思う。

 まあ、他人がどんな人生を送ろうと俺の知ったことではないので、そいつの好きにすれば良いとは思うが―――

 

 

「フフッ、確かにねえ。小学生からそんなんじゃ、将来は絶対に苦労するよね。あ、そうだ。ふと思ったことだけど、いわゆる『ADHD(注意欠陥多動性障害)』とか『自閉症』とかの周囲に溶け込めない発達障害扱いされてる子どもの中には、私達みたいな転生者って居たりしないのかな?」

 

「さあ? 実際、何人かは居るんじゃね? まあ、そういう視点で考えれば、いわゆる『性同一性障害』の奴の中にも、TS転生した転生者ってのが居るのかもな」

 

 

 3割くらいの思考で適当に答える。

 そして、そんな適当な発言に返って来た言葉はこうだった。

 

 

「あ、うん、それは間違いなく、居ると思うよ。だって、私自身がそうだしさ」

 

「…は?」

 

 

 余りにも唐突過ぎるカミングアウトに俺は固まってしまった。

 だが、突然にこんなことをカミングアウトされたら、たとえ平静で居られなかったとしても許されると思う。

 数秒の停止の後、俺はどうにか平静を装いながら訊いてみた。

 

 

「よ、ようするに、アンタの前世は男ってことか?」

 

 

 明らかに動揺を隠せていない俺。

 そして、彼女はそんな俺の動揺を完全に見透かしており、ニヤニヤと愉快そうな笑みを浮かべている。

 

 

「クス、まあね。…とは言っても、私の場合、もう女性として生きていくこと自体は納得してるんだけどね。でも、最初はホント大変だったよ。性別って自分のアイデンティティとも結びついてるから、最初は中々納得できなくてさー」

 

 

 サバサバと軽い口調で言う佐倉。

 話し振りを見る限り、どうやら本人の中ではある程度の折り合いがついている問題らしい。

 もっとも―――

 

 

「ただ、今のところ、男と恋愛する気は全く無いけどね。それよりも可愛い女の子とキャッキャウフフしたい」

 

 

 佐倉の返答を聞いた俺は何だか力が抜けてしまった。

 まあ、本人が納得してるなら別にどうだって良いけどさ。

 俺は頭の後ろをガシガシと掻きながら、思ったことを佐倉に言った。

 

 

「ふーん…、レズだか百合だか知らねえけど、本人が納得してるならそれでいいんじゃねえの?」

 

「キミ、結構ドライだよねえ…。特に教師からそう言われない?」

 

「ああ、良く言われる」

 

「やっぱり」

 

 

 納得したという感じの表情。

 しかし、改めて目の前の少女を観察してみると、仕草とか表情とかは完全に女性である。

 これで前世が男でなくて、精神的BLというのがネックにならないのなら、割とタイプの少女なのだが…。

 俺がそんなことを考えていると、ふと佐倉が訊いてきた。

 

 

「あ、そうだ。ところで、キミも転生者ってことは、神様から何か特典を貰ったの?」

 

 

 なるほど。転生特典についての話題か。

 だが、この問いに対して、俺が返す答えは一つしかない。

 

 

「いや、俺は何も貰ってない」

 

「え、本当に?」

 

 

 意外そうな表情。

 そんな彼女に俺は頷いて答える。

 

 

「ああ、前世の記憶を引き継いでいること以外は本当に何も貰ってない」

 

「けど、折角なら貰っとけば良かったんじゃないの? 持ってて困る物じゃないと思うんだけど?」

 

「いいんだよ。確かに少し勿体ないと思うことはあったけど、他人からの『借り物』で粋がっても滑稽なだけだろ」

 

「それはひょっとして私に喧嘩を売ってる?」

 

「何で?」

 

 

 何でも聞いた話によると彼女自身は、どこぞの農民剣士の秘剣『燕返し』や、どこぞの新撰組一番隊の『無明三段突き』なんかを転生特典として貰っているらしい。

 もっとも無暗に対人で振り回すような技でもないため、彼女が通っている道場での一人稽古のとき、誰にも見られていないときに使って、ニヤニヤと悦に入るという使い方をしているという。

 何というか「なり切り遊び」や「ごっこ遊び」をして喜ぶ子供そのものである。いや、実際、今の彼女は外見的には子供なんだけども。

 

 

「や…やっぱり厨二病っぽいかな?」

 

「いや、他人に迷惑を掛けてないのなら別に良いだろ。俺みたいな拗らせ気味の高二病に比べたら―――いや、どっちもどっちか?」

 

 

 結局のところ、何事もバランスが一番大事だと思う。

 不登校の引きこもりになったという転生者は、その辺りのバランス感覚が壊滅的だったということだろう。

 

 

「バランス感覚かぁ。確かにそうかも」

 

 

 そう言って彼女はクスクスと笑う。

 その後、彼女はふと思い出したように言った。

 

 

「ああ、そうだ。けど、気を付けた方が良いよ」

 

「何を?」

 

「そろそろ『原作』の開始時期だからさ。原作へ介入する気の転生者がまだ存在するかもしれない。不登校になった転生者だって、まだ諦めていないかもしれないし、原作の開始時期のタイミングに介入して逆転を狙ってきても不思議じゃない」

 

 

 以前みたいな転生者同士の小競り合いで済めばいい。

 だが、原作の事件の発端になったジュエルシード自体が、次元震を起こす可能性を秘めた最大級の危険物だ。

 下手をしたら海鳴市自体が地図から消える可能性すらあるだけに、注意をするに越したことはない。

 もっとも転生特典を持たない俺にとっては、たとえ注意したところで何の対策も取りようがない訳だが。

 

 

(まあ、俺には関係ないから、アンタらだけで勝手にしてくれ)

 

 

 誰がハーレムを作ろうが、誰が原作キャラを嫁にした所で俺に興味はない。

 最低限、海鳴市が地図から消える危険さえどうにかしてくれれば、俺にとってはそれでいい。

 

 

「じゃあ、また明日ねー」

 

「ああ」

 

 

 そうこうしているうちに教室の掃除も終わり、佐倉とも別れた。

 そして、その学校からの帰り道―――

 

 

「クス」

 

 

 ―――俺はとんでもないイレギュラーに遭遇することになる。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 俺がそのイレギュラーと遭遇したのは下校途中の横断歩道で赤信号を待っている時だった。

 その時、横断歩道の向こう側には確かに誰も居なかったはずだ。だが、目の前を一台の自動車が通り過ぎた後、そこには二人の人間が突然に出現していた。

 

 

(……え? いつの間に…)

 

 

 一瞬、自分の見間違いかと思った。

 だが、俺の見間違いでないのなら、この二人はまるで瞬間移動したかの如く突然に現れた。

 二人のうちの一人は、ウサギの人形を抱いた『不思議の国のアリス』を思わせる少女。そして、もう一人は全身黒ずくめの長身の男。

 親子に見えなくもないが、何というか奇妙な雰囲気を感じる二人だ。

 

 

「クス…」

 

 

 二人の雰囲気を少し奇妙に感じていた俺だったが、ふと男の方と目が合った。

 そして、男の方と目が合った瞬間、俺はまるで金縛りにあったかのように、その場から一歩も動けなくなっていた。

 コイツが一体何者なのかは分からない。だが、俺はこの男を前にして最大級の命の危機を感じていた。

 

 

 ―――もしかしたら、俺はこの場で殺されるかもしれない。

 

 

 何の事前知識も無しに何故かそう確信出来た。出来てしまった。

 恐怖。そう、俺は今、生まれてからかつてない程の恐怖を感じ、ガチガチと歯を鳴らしていた。

 恐怖のあまり呼吸が止まる。指先一つ動かすことも、目を逸らすことも、そして、呼吸さえも許さない。

 しばらくして信号が青に変わり、信号が変わると同時にこちらへ向かって歩み出す二人。

 

 

(ヤバい! ヤベエって! 動けよ、俺の足!)

 

 

 本来なら、すぐにでもこの場から逃げるべきだ。

 本能ではそれが分かっているのに、どうしても足が動いてくれない。

 動けないでいる自分との距離がゆっくりと狭まる。この時の俺はまるで死刑を待つ囚人のような気持ちだった。

 そして、自分との距離があと数歩というところで、相手はその歩みを止める。相手はしばらく俺のことを冷めた視線で見つめていたが、やがて愉快そうな声で言った。

 

 

「クス、命拾いしましたね…。アナタは『対象外』だそうですよ」

 

 

 そう言い残し、その二人は俺の隣りを通り過ぎて行った。

 二人が立ち去った途端、俺はその場にヘナヘナと座り込んでしまう。

 

 

(一体、何だったんだよ、今の!?)

 

 

 この時の俺にはあの二人の正体が全く分からなかった。

 だが、後になって思えば、間違いなくあの二人がこの後に起こる『ある事件』の犯人だった。

 

 

 ―――海鳴市連続児童殺害事件。

 

 

 日本の犯罪史上で最悪と言われる凶悪事件であり、海鳴市を恐怖のどん底に陥れた連続殺人事件。

 世間一般には無差別殺人だったという認識がされているが、この事件の犯人が明確にターゲットを絞っていたのは間違いない。

 巻き込まれただけの第三者を除けば、この事件の被害者は全員が『特典持ちの転生者』であり、俺のような『特典を持たない転生者』は難を逃れたことがその事実を証明している。

 

 

 そして、この事件を通して俺は関わるつもりの無かった原作メンバーや、他の転生者たちとも関わることになってしまうのだった。

 

 

 

 

 




あとがき:

 赤屍と博士が殺害対象にしているのは、あくまで『アーカイバ』の力を分け与えられた転生者であって、力を持たない転生者は対象ではありません。よって、この場合は『特典持ちの転生者』が殺害対象になるわけです。
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