『自称神(笑)』と『転生者(笑)』を赤屍さんに皆殺しにしてもらうだけの話   作:世紀末ドクター

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※今回は、ある銀髪オッドアイ転生者の人生のDIEジェストです。


第五話 『リリカルなのは』の世界で その4

 

 突然だがオレは前世というか前の世界というかそういったものの記憶がある。

 トラックに轢かれて死んだオレの前には、気が付けば超越的な力を持った何かが居て、転生についての話を持ちかけられていた。

 そして、奴はこう言った。

 

 

『転生するなら、特典をやろう』

 

 

 具体的な物でも、フィクションのキャラクターの持つ能力でも、あらゆる特典を与えてくれると。

 今にして思えば、いわゆるテンプレ的な展開にオレは舞い上がって、完全に思考停止していたと言って良い。

 転生先が『リリカルなのは』の世界だと知り、テンプレ展開に舞い上がっていたオレが選んだ特典は、これまたテンプレ通りの特典だった。

 まず、容姿は銀髪オッドアイのイケメン。保有魔力は当然Sランクオーバー。レアスキルとして『王の財宝』も保持している。もちろん中身もギルガメッシュの財宝と同じだ。

 

 

(これだけの特典を持ってれば、人生なんてイージーモードだぜ!)

 

 

 …と調子に乗っていたオレの二度目の人生は、実は生まれた直後から微妙に躓いていた。

 つまり、どういうことかと言うと、生まれてから即座に専門の高次医療機関へ搬送されたのだ。

 考えてみれば当たり前だ。普通の日本人の両親から生まれた赤ん坊が、こんな髪色・瞳をしていたら?

 最悪、父親は妻の不貞を疑うし、そうでなければ何らかの遺伝子の異常による先天性疾患を疑うのが普通だ。

 出産に立ち会った医師は、すぐに専門の高次医療機関に連絡を取って、オレは生まれてすぐ精査のために転院・入院することになった。

 転院した先の病院では、染色体の検査や遺伝子検査・他の奇形合併の有無の検査などの一通りの検査を受けることになったが、いずれの検査でも異常なし。

 しかし、奇形の病気は成長の過程で隠れていた症状が顕在化してくることも多いということで、退院してからも数か月に1回の頻度で病院の外来への定期通院は続けている。

 そして、今日はその定期通院の日だった。

 

 

「うん、やはり運動発達は全く問題ないです。むしろ同年代の平均と比べてもずっと優れてるくらいですよ」

 

 

 診察した医者がこの世界での母親に言う。

 オレは内心で「そんなの当たり前だろ、ヤブ医者め」と毒づくが口には出さない。

 転生特典で得たこの身体は運動能力だってチートクラスである。だが、医者も母親もそんな転生特典などという事情など知ってる訳もない。

 そのため、事情を知らない母親などは異常なしという診察結果に胸を撫で下ろしていた。

 

 

「良かった…」

 

 

 しかし、そんな母親のことをオレは冷めた視線で眺めていた。

 この世界でのオレの母親も父親も、まちがいなく一人の意志を持った人間。

 しかし、この時のオレはそんな当たり前のことすら分かっていなかったと言って良い。

 言い方は悪いが、オレはこの世界の両親は自分が活躍するための舞台装置の一つくらいにしか感じていなかった。

 ぶっちゃけた話、持って生まれたチート能力があれば親なんて居なくても暮らして行けるだろうし、この世界の親は自分にとっては煩わしいだけだった。

 

 

(あー…、早く自立できる歳になりてえ…)

 

 

 18歳…いや、せめて15歳くらいになったら、親の元を離れて生きて行こうとオレは考えていた。

 せめてバイトの出来る高校生くらいになれば、親の元を離れて暮らしても不自然ではないだろう。

 

 

(一人暮らしを始めたら…ぐふふ)

 

 

 そうしたら女性に囲まれた環境、所謂、ハーレムを目指す!

 この究極のイケメンであるこのオレに惚れない女などいない。どんな女だって、オレなら簡単に落とせる。

 しかし、オレに相応しい女は決まっている。原作キャラのカワイイ子達だけだ。なのはにフェイトにはやて、アリサにすずか。全員オレのハーレム候補だ。

 そんな欲望まみれの妄想に浸りながら、この『リリカルなのは』の世界に転生してから数年。オレは無事に私立聖祥大学付属小学校に入学できた。

 だが、そこでもオレは予想外な事態に見舞われる。

 

 

(なんぞこれぇぇ!?)

 

 

 小学校の入学式でオレは自分以外の転生者と初めて出会った。…というか、髪色の目立つ連中の大部分はあからさまに転生者だ。

 もちろん、向こうの連中もオレが転生者であることは気付いているだろう。あからさまに敵意の目をこちらに向けて来ている。

 そして、そんな敵意の目を向けて来る連中に負けじとオレも睨み返した。

 

 

(そうは行くか! ハーレムを作るのはこのオレだ!テメェらの出る幕じゃねえんだよ!)

 

 

 だが、そんなオレの意気込みは結果的にはただの空回りに終わった。

 まず最初のクラス分けからして違う。

 

 

(なんで、なのは達とクラスが違うんだよ!)

 

 

 心の中で地団駄を踏むが、決まってしまったものは仕方ない。昼休みに屋上にでも行けば、嫁達が昼飯食べてるだろうから、そこで仲良くなればいい。

 そう思っていた。思っていたのだが―――

 

 

「○○君達なんて、大っ嫌い!!」

 

 

 ある日、小競り合いを続けていたオレ達、転生者組みは原作メンバーから面と向かってそう言われた。

 だが、そう言われた時、オレは一瞬、何を言われたのか分からずに呆けていた。いや、少し冷えた頭で冷静に考えれば分かる。

 簡単に言えば、オレ達はやり過ぎたのだ。インターネット上によくある二次小説の地雷オリ主の性格を客観的に考えてみればすぐにわかるだろう。

 自己中で悪口ばかり、何でも上から目線。他人の都合などお構いなしに、自分の欲望だけを相手に押し付けようとする。普通に考えてそんな身勝手なヤツと仲良くなりたいか? 転生者同士で互いに互いを邪魔し合い、小競り合いを続けるような連中を好きになる要素が何処にある?

 チート能力を特典に貰って舞い上がっていた所為で、オレはそんな当たり前なことにすら思考が及んでいなかった。

 

 

「クソクソクソッ!! こんな、こんなの違う!」

 

 

 こんなことならいっその事、どこぞの『絶対遵守』のギアスの力でも特典に貰っておけば良かった。

 その力があれば、きっとこんな事態にはなっていない。今のオレ達はなのは達の視界に入っただけであからさまに嫌な顔をされるし、話し掛けても無視される。

 いつの間にかエロゲーやギャルゲーでいう所の好感度が最低な状態になってしまっていた。これがゲームであればリセットボタンで最初からやり直せば良いだけの話だが、残念ながらリセットボタンは存在しない。

 

 

「違う! こんなのオレが望んだ現実じゃない!!」

 

 

 オレは八つ当たりで手近な壁を殴りつけた。

 だが、こんな好感度が最低な状態から関係を修復する方法なんてオレには分からなかった。

 前世の死の直前、完全な引きこもりニートであったオレに友達と呼べるような相手は誰も居なかったし、友達の作り方なんて遥か昔に忘れてしまった。

 それは転生後の今の世界でだって同じで、本音で話せるような友人なんて今の世界でも皆無だ。

 だから、こんな状況でどうしたら良いのか、オレには尚更分からなかった。

 そして、そんなオレが考えた末に出した結論はこうだった。

 

 

(こうなったら原作の開始時期に介入して一発逆転を狙うしかない!!!)

 

 

 オレが持っている最大の長所とは何だ?

 そう、転生特典で貰ったチート能力だ。こうなったら嫁候補であるヒロインたちにオレが華麗に戦う姿を披露して、好感度を上げるしかない。

 華麗に戦うオレの姿を見てもらえば、あわよくば「素敵!抱いて!」なんて展開に持っていけるかもしれない。

 よし、ひとまず方針は決まった。けれど、そうすると居心地の悪くなった学校にこれ以上通う意味なんて無いな。

 オレは原作開始の時期まで引きこもって適当に時間を潰すことにした。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 そして、しばらくの月日が経ったある日。

 

 

 <<――助けて――>>

 

 <<――誰か……僕の声がきこえませんか――?>>

 

 

 遂にこの時がやって来た。

 エコーをかけながら囁かれたような感じの声。

 物語の開始を告げるフェレットの念話がオレの耳に届いた。

 

 

(よし、遂にオレの出番だな!)

 

 

 主人公である高町なのはが初めて魔法に目覚める場面。

 適当なタイミングで介入して、ジュエルシードの怪物を華麗に倒してやる。

 欲を言うなら、なのはがピンチになったところで介入出来るならもっと良い。

 ここ数年での引きこもり生活の中で繰り返したイメージトレーニングは完璧だ。オレは意気揚々とした気持ちで、念話の出所である夜の動物病院へと駆け出して行った。

 そして、オレが現場に辿り着いたとき、魔法少女に変身した高町なのはがまさにジュエルシードの怪物と戦っているところだった。しかもどうやら苦戦している。

 

 

(キタコレwwwwwww)

 

 

 登場するシチュエーションとしては最高だった。

 そして、オレが現場へ飛び出そうとしたまさにその瞬間だった。

 

 

「「「―――え?」」」

 

 

 思わず漏れた間抜けな声が唱和し、オレは動きを止めてしまった

 ふと周りを見回すと、オレ以外にも現場へと飛び込もうとしている連中が居る。よく見れば幾人かは学校でも見たことのある顔だ。

 どうも考えることは全く同じだったようで、どうやらコイツらも主人公である高町なのはが初めて魔法に目覚める場面に介入するつもりでいたらしい。

 

 

(ふっざけんな! どこまでオレの邪魔をすれば気がすむんだよ、テメェらは!?)

 

 

 自分のことを完全に棚上げして心の中で口汚く罵るオレ。

 だが、この状況は少しマズイ。

 

 

(今ここで抜け駆けしようとしたら、間違いなく周りの連中に袋叩きに遭う!!!)

 

 

 互いが互いを牽制し、迂闊に動けない膠着状態。

 お互いに動けないまま睨み合いを続けていると、いつの間にかなのは嬢はジュエルシードを封印し終わっていた。

 

 

(おいいいいいい!何でこうなるんだよ!?)

 

 

 結局、オレ達はなのはがジュエルシードを封印するのをただ眺めていただけだった。

 だが、今回のことではっきりした。オレがこの世界で理想のハーレムを築くためには、まずは他の転生者の連中を排除しないとならないらしい。

 こうなったら―――

 

 

(全員、ぶっ殺してやる!!)

 

 

 この時、オレは本気で『殺す覚悟』を決めた。

 オレが悪いんじゃない。コイツらが悪いんだ。オレの邪魔ばっかりするから――!

 宝具である『王の財宝』をいつでも展開できるように戦闘態勢を整える。どうやら相手側もこちらと同じつもりのようで既に臨戦態勢だ。

 上等だ。全員表に出ろ。テメェら全員まとめて殺してやる。周りが全員敵のバトルロイヤル形式だが構わない。本気で殺すつもりで戦うのなら、オレに敵う奴なんて存在する訳がない。

 完全に頭に血が上ったオレ達はまるで事前に示し合せていたかのように同時に表へと飛び出した。

 飛び出してきたオレ達にユーノとなのはは少し驚いた表情をしていたが今は関係ない。

 今はコイツらを始末することの方が先決だ。

 そして、まさにその瞬間だった。

 

 

「――結界!?」

 

 

 突然、辺り一帯が結界のような領域に囲まれた。

 封時結界か? 誰が結界を張ったかは知らないが好都合だ。これならいくら暴れても、周りにバレることも無い。

 そして、オレ達が互いに殺し合いを始めようとする一触即発な雰囲気の中、その二人はまるで夜の闇の底から浮かび上がる様に現れた。

 

 

「意外でしたよ。こういうことも出来たんですか?」

 

「キミに比べたら、手品のレベルだがね。『神の記述』というカードがあるが、あのカードの『領域(テリトリー)』を構築する技術を応用して作った結界だ」

 

 

 現れたのは『不思議の国のアリス』を思わせるウサギの人形を抱いた少女と全身黒ずくめの長身の男。

 その二人の姿を見た瞬間、オレは背筋がゾワリと沸き立つのを感じた。特にヤバい気配を感じるのは黒い男の方だ。

 

 

(何だ、コイツらっ!?)

 

 

 オレの本能が叫んでいた。

 コイツはヤバい。何がヤバいのかは明確には分からないが、とにかくヤバい。

 本来なら一秒でも早くここから逃げるべきだ。それが分かっているのに、オレ達は何故か一歩も動けないでいた。

 

 

「さて、この中に一人くらいは私を愉しませてくれる者が居てくれると良いのですが――…」

 

 

 言いながら、黒い男は手近な少年へと踏み出した。

 あの少年の顔は知っている。確か隣りのクラスだったヤツで、徹底的にオレの邪魔をしてくれた奴だ。

 

 

 ――スパァァン!

 

 

 全く見えなかった。

 爽快な音が響いた途端、少年は一瞬にしてバラバラに切り裂かれていた。

 

 

「なっ……」

 

 

 突然の出来事に唖然とするギャラリー達。

 一瞬、何が起こったのか理解できなかった。

 いや、目の前で起こったそれが余りにも現実離れしていたために、それを現実だと認識するのに時間が掛かった。

 それは周りの人間にとっても同じであり、数秒ほど遅れてようやく周囲が悲鳴に包まれる。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「何の迷いも無く殺しやがった!?」

 

「じ、冗談だろ!?」

 

 

 余りの事態にパニックに陥る面々。

 しかし、黒い男はそんな周囲の状況など興味もなさそうに溜め息を吐く。

 

 

「やれやれ…、今のに反応出来ないようでは望み薄ですねぇ…。周りの連中もパッと見では似たり寄ったりですし…」

 

 

 オレを含めた周りの人間を見渡しながら男は言った。

 もはや間違いなかった。この男がオレ達を殺すことを目的にしていることだけは間違いない。

 当然、転移魔法を使って逃げようと試みるヤツも居た。しかし、この妙な結界に阻まれて転移出来ない。つまり、どうやっても逃げられない。

 

 

(こ、こうなったら戦うしかねえ…!!!)

 

 

 逃げられないと分かった転生者の中には、自分のチートスキルを使って戦おうとする者。いや、実際に戦った者も居た。

 オレも『王の財宝』を展開し、一か八かの可能性に賭けて戦いに挑んだが現実は余りにも非情だった。気付いた時にはオレは全身をスライスされ、首だけになっても意識が少しだけあるというのが本当だということをオレは自分の身を以って知ることになった。

 

 

「一体何人目ですか? 『王の財宝』とかいう能力を使って来たのは…」

 

「これまで渡り歩いた別のセカイの分も合わせて、今ので124人目だな」

 

 

 刎ね飛ばされた首だけになり、意識が途切れる直前に聞こえた二人の会話。

 その会話がオレの二度目の人生の最後の記憶だった。

 

 

 

 

 

 

 




あとがき:

 ネット上に氾濫するチート転生者を見る度に、自分は『東京BABYLON』の桜塚星史郎の台詞を思い出します。
 社会の底辺のような前世だったのに転生した途端、好き勝手にTUEEE!している転生者どもに対して、自分は星史郎のこの言葉をぶつけたくて仕方ない。

 星史郎「この世で一番偉いのは、ちゃんと地に足がついて、一生懸命日々『普通』に『生活』している人たちです。毎日早起きして、毎日学校へ行って、毎日働いて、泣いて、笑って、悩んで、苦しんで、一生懸命『現実』を『生きて』いる……それほど『普通』の人たちを笑うのなら、貴方達はその『普通』の人たちと同じように『生きて』いけるんですか?」

 特に『元ニートが異世界でハーレム云々』とか、マジでふざけてんのかと言いたくなります。
 普通の人と同じように生きていくことすら出来ずに引きこもりニートになるような奴が、皆からチヤホヤされるような英雄になれる訳がないと思うんですが…。
 チート能力でTUEEEE!っていうのにも憧れない訳ではないですが、自分は彼のこの言葉で堅実・誠実に生きることの大切さを学びました。

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