そこは、何も見えない暗闇の世界だった。どうやら感覚では水中にいるらしい。急に目の前が光った瞬間、身体に電流が走る。とても痛い。痛さで意識がだんだん遠のいていく…
気が付くと紅い花が咲き乱れる夜の花畑に寝ころんでいた。私は…誰なのだろう。まったく思い出せない。自分の顔を見たら思い出すかもしれないと考えた私はあたりに何か落ちていないかと探して歩きだした。花畑をしばらく歩くとそこに森が見えた。
森の中は案の定暗く、行った道は戻れそうになさそうだ。そんなことを考えながらふらふら歩いているうちに目が闇に慣れてきたようで見えるようになった。目の前に家があることにも気が付いた。今夜はもう暗い。この場所に泊めてもらおうと思って家に近づいたが、明かりがついていなくて、鍵がかかっている。おそらく留守なのだろう。
「おーなんだなんだ。私の家になんかようか?」
急に女の人に声を掛けられてびっくりしたが、言動からしてこの家の持ち主だろう。なら
「今夜、ここに泊めてくれませんか?」
私は尋ねた。
「私、自分が誰かわからないんです。目が覚めたら紅い花畑にいました。」
彼女は驚いた様子で、
「なら、向こうの世界から来たのか!?…って聞いてもわからないか。まぁ入ってくれ。部屋が汚いうえにお茶くらいしかでないが。」
「ありがとうございます!」
「あぁ…名前を言ってなかったな。私は魔理沙、普通の魔法使いだ。」
こうして、一夜目は魔理沙さんの家で宿泊させていただくことになった。よかったぁ…
「お前はなんか覚えていることはないのか?」
魔理沙さんは散らかっている部屋を片付けながら聞いてきた。
「いえ…何も覚えていないです…」
…うん。魔理沙さん。本当に魔法使いなんだ…ヘビとかクモとかいても気にしていないみたいだし…私はそういうのを気持ち悪いとは思わない性格らしかった。部屋が汚いのは気になるけど急に押し寄せたんだししょうがない。
「ここは何処なんですか?」
とりあえず疑問に思った事を聞いてみる。
「あぁ。言ってなかったか。ここは幻想郷だ。」
「幻想郷…」
どこかで聞いたことのある気がする。けど、思い出せない。片付けが終わったようで、魔理沙さんはベットに乗って聞いてきた。
「今度はこっちから質問させてもらうが、お前は焦っている様子も何もなかったが、私に会うまで誰とも会わなかったか?」
「はい、誰にも会っていないです。」
「そうか?再思の道からここまで、この時間帯だと妖怪の一匹二匹はいると思うんだけどな…」
「あれ?私何かおかしいこと言いましたか?」
「いや、何もおかしなことは言っていないよ。明日、当てがないなら一緒についてきてくれないか?」
「わかりました。どこへ行くんですか?」
「博麗神社だよ。今日はもう遅い。寝ようぜ。」
こうして、私と魔理沙さんは就寝についた。