その日、私は夢を見た。暗くて何も見えなかったが、私の前の記憶であるような気がした。とても痛く、つらい夢だったような気がする。なんせ夢だからあんまり覚えていないのだ。まぁ悪い夢であることには変わりはなく、目覚めは最悪のものだった。
「おはよう。早かったな。」
魔理沙さんが話しかけてくる。そんなに早いかと思って時計を見ると、まだ早朝5時をまわってもいなかった。
「おはようございます、魔理沙さん。」
「あぁ、そういやなんだが。お前、記憶を失ってから自分の顔をまだ一度も見ていないんじゃないか?見たら何か思い出すかもしれないぞ?」
そういわれてはっと気づく。鏡の位置を教えてもらうと、私は早速確認した。が。そんなもので思い出せるはずなかった。全然誰なのかわからない。身体的感覚から女子であることはわかってたが、それ以外に新たに分かったのは髪の色が黒いこと、眼が金色で、服装がやたらと奇抜なことくらいだった。何とも言いようのない服装である。半袖にスカート。柄が付いているが何の模様なのかはわからない。
「なにかわかったことはあるか?」
「いえ、全然。」
「そうか……。今日は博麗神社へ行くぞ。用意が終わったらすぐに出る。用意しておいてくれ。」
「はい。」
そういえばそういう話になっていた。今日は博麗神社へ行くという予定があったのだ。
「博麗神社で何をするんですか?」
「宴の準備だ。今日は結構多くの……まぁいつもうるさいが、その手伝いをしにな。それと、」
魔理沙さんは私の方へ指をさし、
「お前のことを知っているかもしれない。」
といった。それから、私たちはテキパキと用意を済ませ、博麗神社まで向かった……箒で。
「死ぬかと思った……」
「なんだ、死ぬとは物騒じゃないか。私にかかればこれくらい普通だぜ。」
人生初めての魔法の箒は、最悪の乗り心地といってよかった。速すぎるわ、痛いわで話にならない。
「あら、魔理沙……と、誰?」
「私も知らん。彼女は記憶喪失なんだ。」
「へぇー、そう。あんた妖怪……じゃなさそうね。じゃあいいわ。」
彼女は私の方へ向き直り、
「私は博麗霊夢。ここ、博麗神社の巫女よ。よろしくね。」と告げた。成程。彼女が霊夢さんか。
「はい、よろしくお願いします。」
「うん、で、魔理沙がここへ連れてきたのは大体理由はわかるわ。けど、少女が失踪したという話は聞いていないわよ?どうしたの?この子。」
「再思の道に寝ていたといっているんだ。彼女。もしかしたら、向こうの世界から来たのかもしれない。」
霊夢はすこし驚いた様子で、
「生きているのが不思議だわ。あそこは妖怪に襲われても不思議じゃない。」
「なんか能力があるとも思えないしなぁ。」
なんだ。能力て。私を会話に混ぜてほしいが我慢しよう。
「のう、巫女よ!なんか面白い話をしていると思って聞いていたのじゃが。儂も会話にいれてはもらえんかの?」
振り向くと、狸のしっぽの生えた女性が立っていた。
「あら、マミゾウじゃない。どうしたの?」
「結界の先にある所に今いたのじゃが、人がいなくなったという話は聞いていないのじゃ。おそらく彼女は、こっちの世界の住民かと思われるぞい。」
「「えっ??」」
霊夢さんと魔理沙さんが同時に言葉を詰まらせる。その意味を、今の私は理解できずにいた。