続・みんなと艦娘日和   作:SAMICO

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中部警備府を出向した一同がたどり着いたのは呉鎮守府。
そこでのザ・デストロイヤーズとの再会。

綾波は新しい道を進み始めていた




呉での出来事

(シンギュラリティ)ハウンドの()()である、いずも改二(移動泊地)が呉港に接舷したのは、翌日のことだった。

この間は、深海棲艦等との遭遇はなく、接近情報は全て各泊地に通報して、各泊地の艦娘が対処を行う。

ブリッジは、他の先輩や吹雪達が船を降りて、補給物資や追加人員の受け入れを行ったり、

ザ・デストロイヤーズの面々との親交を温めている為、

残っているのは、艦長の智紀と、司令官の陽子、その護衛を兼ねる結有、そしてそれに付き従う、瑞希だけである。

そんな様子を見て、陽子が智紀に声をかける。

「艦長、ちょっと降りてきたらどうだ?それなら結有も()()()()で降りられるだろ?自分は代わりに、積み込み業務見てくるぞ」

陽子の、笑みを含んだその言葉に、ふっと笑顔を浮かべて、艦長席から立ち上がった。

「そっすね。すんません。結有、瑞希。そんな訳だから、付き合えや」

腰のホルスターに護身用の九ミリ自動拳銃を仕舞うと、結有と瑞希にも笑みが浮かぶ。

「そうだね。陽子さん(司令官)、ありがとう」

「感謝する」

二人の礼の言葉に、陽子は楽しく笑いながら、

「いいってことよ。まあそれより、草加長官によろしくな」

『はーい』

 

 

三人が軍港に降り立つと、『呉鎮守府教導隊』ザ・デストロイヤーズと艦娘達が、交流を温めていた。

綾波は、綾波型の制服で、その上にエプロンを身に着けている。

「お久しぶりです!中将」

結有が声をかけると、拓哉も軽く手を挙げる。

「よっす。聞いたぜ、また、いずもが活躍するときが来たな」

「はい。艦長として、身が引き締まる思いっす」

智紀が代わりに応える。

「お前には、()()()()()()塗り替えられちまったしな。()()()()()は、間に合わなくて済まんかったな」

「いや。あれは、まさか行方不明だった『駆逐艦薄雲』が、(新井田)だっただなんて思わなかったから、防ぎようがなかったっす。寧ろ、校長(本部長)が立て直したあの泊地を、廃墟にしてしまったのが申し訳ねえっす」

改めて、申し訳なさそうにする拓哉に、智紀は首を振る。

「ところで、相変わらず共同生活ですか?」

「そうだな。綾波が今、退()()()()して、鎮守府職員になってるだろ?ほいで、戸籍登録したのな、草加綾。恵奈ちゃんとの交流も大きかったのかもな。()()()()()()()は、びっくりしたけどな。今や俺達の()()()()だな」

結有の問いに、拓哉が答える。

 

綾波は二年ほど前、退()()して、()()()()()()()した。そのコアは、今はいずも改二に()()されている。

いずも改二は、そのコアと霊子結晶装甲で、対深海棲艦の防御性を高めている。

突然の退役だった。ある朝いきなり、『退役します。艤装を完全に解体したいです』と、言い出したのだ。

その頃には、()()()()()になっていたが、そこから先に進む為には、『()は要らない』と、判断したらしい。

それからの彼女は、鎮守府職員として、掃除等雑務を担当しながら、ザ・デストロイヤーズの()()もこなしている。

漸く妊娠が確認でき、もう少ししたら、お腹も大きくなるだろう。

退役した時に拓哉は、綾、という名前を与えた。それと同時に、()()()()()()をした。

もちろん、他のザ・デストロイヤーズの皆も同意の上で。

拓哉にも綾にも、そしてザ・デストロイヤーズの皆にも、『一つの()()』が訪れたのだ。

「綾さん、戦いのない生活はどうですか?」

デストロイヤーズの一番後ろで、綾波こと草加綾は、拓哉の横に静かに佇んでいた。

結有の問いかけに、ふんわりとした穏やかな笑顔を向ける。

「そうですね。よく……分からない。というのが、正直な気持ちです。まだ、主婦三年生ですから。でも、『ああ、もう死ななくていいし、()()()()()良くなった』、というのは私に安らぎを与えてくれます。ただ、()()()()()でこの情勢下、退役を願い出たことはやはり罪悪感がありますから、こうやって軍職員として残っています」

軍職員とは、戦闘に携わる軍人()()の、一般職員等である。

完全に退役してしまった今、艦娘として戻る(海上に浮く)事は、二度と出来ない。

そういった境遇の人間の積極採用は、艦娘基本法に明記されている。その採用枠で、呉鎮守府職員として、働いている。

「それも、出産までです。今四ヶ月目で、妊娠後期に入ったら、退職して、ザ・デストロイヤーズの家で皆さんに、『行ってらっしゃい』『おかえりなさい』を言って、送り迎えをしながら、子育て、家事、色々勉強しないといけないことは多いですが、()()()()()()()()()は役に立っています」

綾の心の底から幸せそうな笑顔に、結有はつい口にしてしまった。

「心の闇は、晴れましたか?」

「おい、結有」

隣りにいた智紀が肘で小突くと、ハッとした顔になる結有。

「ごめんなさい。僕、無神経でした」

綾は、ふっと笑顔のまま、首を横に振る。

「私の過去は消せません。()()()()()()()()()()()()()他無いんです。その為には、『銃は邪魔』だった。私の心の奥底にある()は晴らせないでしょう、生涯かけても。でもそれでいいんです。それを含めて、皆さんは愛してくださいます」

――そうだよ、過去は乗り越えるものだよ。

混じり合った、もう一人の自分(母・時雨)の声が聞こえる。結有は、時雨と融合した時に得た記憶で、()()()()と語り合うことが出来る。

「そうですね。拓哉さんは幸せものですね」

その言葉に、笑いを堪え切れずに、綾が笑い出す。かつての彼女には見られない、生の感情からの笑顔だ。

「何を言ってるんですか?結有さん。貴女にもいらっしゃるじゃないですか。吹雪さんに、杏奈さん、千里さんに瑞希さん」

「そうだぞ。このハーレム百合ップルめ」

綾の言葉に追い打ちをかけるように、ツッコミを入れる智紀。

「そ、それは、父さんが悪いんだ。あれだけ男を遠ざけてくれるから」

「それな」

結有は、その言葉に不貞腐れるように言って、そっぽを向いた。

その父は、陸軍に戻った。現在は、特殊作戦部隊の教官を務めている。

今でも、訓練の鬼は健在で、テロなどの非・深海棲艦事案に対して、強固な日本の国防を担う人材を、今も育成している。

おそらくは、ノンキャリア最高位である、准将に昇進できるだろう、とは安藤龍本部長の言である。

「よっしゃ。今夜は居酒屋鳳翔で飲むか!」

拓哉が楽しそうに言う。いずも改二は、()()()()()半自動航行装置により、少数での操船が可能で、艦娘綾波のコアにより、艦娘武装や電探も搭載している。そして、AI(ヘルズゲート・レプリカ)により、対深海棲艦への自律防衛砲撃も可能で、接舷中は()()()()にもできる。言うなれば、『巨大な母艦型艦娘』である。ただ、それが出来たのは、ザ・デストロイヤーズが長年住み着いて、色んな所に残された霊子(思い出)による奇跡で、もう二度と生み出せないであろう。

そんな訳で、何かあれば、すぐに戻ってこれるし、そもそもここ(呉鎮守府)には、()()()()()()()()がいる。

出国前の羽伸ばしに、司令官も呼んで飲もう、と拓哉は言ってくれているのだ。

 

居酒屋鳳翔・呉店には、もちろん鳳翔の姿はない。

というより、鳳翔は既に、現場から離れている。

名古屋の駅ビルに、本社を構えている持ち株会社、『鳳翔ホールディングス』の社長となっており、今は子会社を統括する企業の代表(CEO)として、新たなフィールドで活躍しているのだ。

清霜はその逆で、その頃に専務を退任。今も、BISTRO KIYOSIMOのオーナーバーテンダーとして、鳳翔HDグループの一員となり、中部地区に数店舗を構える、ビストロバー部門運営会社の社長として、現場にこだわり続けている。

今鳳翔は、居酒屋鳳翔を中心とした居酒屋や定食屋等、いろんなジャンルに挑戦し続けている、名古屋再生の象徴とも言える経営者となっている。

村上建設もそのグループの一員である。村上社長は、艦娘が多いこの会社を、鳳翔HDグループの傘下に入れる決断をしたのだ。

常務である最上や木曾も、その提案には大いに賛成した。

社会に戻った艦娘達は、好んでこの会社の傘下企業に集まった。

こうして鳳翔も、戦争から決別し、自分の為の人生を謳歌している。

時々『居酒屋鳳翔金城埠頭本店』の『()()店長』として、空いた時間にお店にやってくる。

彼女も現場を、思い出の地を、愛しているのだ。

 

「そうだ。恵海さん」

飲み会の席上、綾が思い出したように、ポケットからカードを取り出した。

『綾波改二零改二』の艤装カードである。

「私の艤装の()は、いずもに託しました。私の、()()()()()()()()は、貴女に預けます。貴女の霊子と技量なら、使いこなせる筈です。『()零距離格闘型艤装』、そして『対海賊用決戦兵器』、明石さんにパッケージングをお願いしました。私から、直接貴女に託したかったんです」

その、穏やかな表情の綾に、恵海は真剣な顔で受け取った。

「はい。綾波さんの『精神(ココロ)』、確かに、受け取りました。必ず役に立てます」

「……私は、この呉の地で、皆さんの無事を祈っていますから」

 

だが、この、しんみりとしたシーンの()では、カオスが繰り広げられていることは、()()()()()()()だろう。

「結有!脱ぐな!脱ぐ前に帰れ!」

「まだよってりゃへんよ(酔ってませんよ)

「結有!それは、()()()()()()()()()だぞ!智紀じゃない! というか、お前等(嫁ども)こいつを止めるんだ!」

羽交い締めされている結有へツッコむ智紀に、酔ってないと主張する結有。

そして、話しかけてる()()は入り口の鳳翔さん像で、結有を羽交い締めにしているのは、陽子である。

そんな様子を、にまにまと一頻り眺めると、吹雪と瑞希が立ち上がって、結有をお持ち帰りする。

 

「こりゃあ、結有には、()()()()を出すかね?」

「だな」

それを見送る、司令官(陽子)艦長(智紀)は、大きな溜め息を吐いた。

そう。ここで乗り込んだ人員の中には、『居酒屋鳳翔・いずも改二店』のスタッフも含まれている。

最前線に、民間人を送り込む訳には行かないので、『軍のフランチャイズ』と言う形で、軍人に居酒屋鳳翔の研修を受けさせて、居酒屋鳳翔の()()を受けたスタッフ達である。

そう。結有に酒を飲ませれば、()()カオスとなることは、明白である。

「あはは、そうですよね」

「それね」

その会話を聞いていた、杏奈と千里も苦笑いを浮かべる。

「大人になれば酒強くなると思ったけど、下戸だったな。ついでに酒癖悪い」

智紀の、毒の入った愚痴に二人も頷いた。

「まあ、楽しければそれで良し。厳しい戦いになるけど、明るさを忘れなければやっていけるさ」

そう。この寄港地(呉鎮守府)を最後に、この船(いずも改二)は、日本を旅立つのだ。

まずは、第二次世界大戦の激戦地、深海棲艦が寄り付きそうな場所で、遊撃を始める予定なのだ。

敵は、DSキラーだけではなく、通常の深海棲艦や、新井田率いる人工深海棲艦軍団もいるのだ。

此処から先は、『戦場』なのだ。

 

 

 




次回は数日空けるかも知れません。
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