過去編ですので多少の矛盾はご容赦ください。
久々の艦これっぽいお話。
原初の提督達と三笠Ⅰ~出会い~
それは、もう数十年前のお話である。
その日出会った二人は、世界の運命を大きく変えることとなった。
あの日、深海棲艦の侵攻が起こり、硫黄島の悲劇、更に小笠原での悲劇が起こり、東北・北海道
日々拡大していく危険区域、誰もが絶望を覚えている中、高梨道一三等海佐は記念艦として繋留されている《三笠》の傍の埠頭で、一人の女性が佇んでいるのに気づいた。
その女性は、戦艦の艦砲を身に纏い、光に包まれて険しい表情で海を見つめていた。
「海沿いは危ないよ、お逃げなさい」
そう声を掛けると、彼女は振り向いた。
「どうして皆、深海棲艦に何もしないの?」
その女性は、真っ直ぐに高梨三佐の顔を見据える。
30代後半の彼と、10代後半に見える彼女。
「人類には
「……私は三笠、戦艦三笠。深海棲艦を討つ為に現出した
高梨三佐は何故か、その突拍子もない言葉を信じる気になっていた。
「どうやって討つというんだい?」
高梨三佐の問い掛けに、三笠は自信に満ち溢れた表情を浮かべた。
「私は『艦娘』。今まで出会った軍人で、私の言葉を聞いてくれたのは貴方が初めてだ」
「自衛官、だけどね」
高梨三佐は苦笑いを浮かべて『軍人』を訂正するも、三笠は首を横に振った。
「国の為に身を捧げる人間は軍人だ。貴方を『提督』としてお仕えしたい」
「え?」
この会話で
「出撃を命令して欲しい。周辺の深海棲艦を片付けて来よう」
「ふむ……私でいいのかな?私はまだ、三等海佐……少佐でしかないけど」
「私の話を聞いてくれた。それだけで十分だ」
その、真っ直ぐな三笠の言葉に、高梨三佐は少し笑みを浮かべた。
「分かった。気をつけて、行っておいで」
「はい!」
海軍式の敬礼をした三笠は、埠頭からゆっくりと海に降り立った。
数時間後、三笠はもう一人の女性を伴って戻って来た。
「おかえり、三笠。その子も……艦娘のようだけど?」
「はい、彼女は明石といいます。艦娘の事に詳しい工作艦です」
「明石です、よろしくお願いします!」
こうして、高梨三佐の任務が深海棲艦対策に変わったのだった。
深海棲艦に対して艦娘が有効だった、それは周辺で深海棲艦の侵攻を食い止められずに居た軍艦からも多数目撃されていた。
その話を聞きつけた、横須賀地方隊の幕僚山本八十六二佐が周辺への調整を行い、「対深海棲艦対策分室」が設置された。
山本二佐が室長、そして、高梨三佐が副長という小さな組織である。
それに、三笠に明石の計四人である。
三笠は、高梨三佐と共に小型艇で出撃して、深海棲艦を一体でも倒していく。
深海棲艦を倒していくと、極稀に艦娘が現出する。
次に現れた艦娘は、正規空母天城だった。
「雲龍型航空母艦、天城と申します。提督、どうぞよろしくお願い致します。天城、精進致します」
「私は戦艦三笠だ、よろしく頼む」
「天城か。私は三等海佐高梨道一、よろしくお願いするよ」
天城の現出により、制空権が取りやすくなって、少しずつ有利に事を運べるようになっていった。
その間山本二佐と明石は、傷ついた三笠達の補給と修繕ができるような、入渠ドックを設置し始めていた。
次に現出したのは夕張だった。兵装実験軽巡だった彼女は、明石と協力して旧式化していた三笠の兵装を、近代化改修していった。
夕張には工廠を担当させた。高梨三佐は理解のある上官の山本二佐に運営業務を全て任せ、三笠と天城と共に出撃を繰り返す。
その次に現出したのは大淀だった。彼女には山本二佐の補佐を任せた。
山本二佐は、旧友であり高梨の先輩でもある大村一佐とも連携しながら、少しずつ予算を勝ち取っていく。
防衛省の矢部信介副大臣も、彼等の協力者だった。後にその地盤を受け継ぐ矢部晋太郎の父親でもある。
こうして運営体制が整っていく中、高梨三佐は前線で三笠や天城と共に、深海棲艦を一体でも沈めるべく出撃を繰り返していた。
次に現出したのは最上だった。元気のいいボクっ娘。
そして、二隻目の戦艦でもある武蔵。
武蔵には、新たな艦隊を立ち上げるべく別行動を任せた。
武蔵率いる関西方面分室は、後々様々な舞台となる室戸岬に本拠地を置き、深海棲艦に対抗し始める。
西のことを武蔵に任せた高梨三佐は、昇進して二佐になっていた。
その間、同じく昇進した山本一佐と大村海将補は、明石と夕張と共に、陸上で倒した深海棲艦のコアを用いた浄化建造術で、東北地方に艦娘を送り出していた。
こうしているうちに、防衛省は一つの大きな決断を行った。
即ち
それに伴い、改憲の動きが一段と強まり、憲法九条には対深海棲艦防衛等の為の国防軍、と言う条項が書き加えられた。
反対者もいたが、防衛大臣に昇格した矢部信介の「今は形振り構っている時ではない。
政府側から行われた大きな支援を元に、大村海将補改め大村少将の旗振りの元、艦娘本部が設置された。
そして「艦娘」という存在が世間に公表された。
だが未だ世間は、艦娘と言う存在は
お互い近寄らない夜明け前の時代、運用する士官に問題もあり、女性の姿をしている彼女等へ性的欲求をぶつける者も少なからず存在した。
それへのカウンターや、陸上防衛の専門家として海兵旅団が組織された。
大村少将は敢えて、この陸上防衛の海兵旅団を艦娘本部から遠ざけて組織させた。艦娘本部は海兵旅団を監視し、海兵旅団は艦娘本部を監視する。
相互監視の下、戦時下を乗り切ろうとしたこの政策は、結論から言うと失敗に終わった。
カウンターであるべき海兵旅団には、『色々なものを失った無頼の輩』が多数集まり、明日をも知れぬ愚連隊と化していたからだ。
そんな中、高梨も大佐に昇進し、麾下の艦隊は三笠に天城、最上に木曾、龍驤に不知火と、後に『
艦娘も漸く数が揃って、横須賀に初の鎮守府が設置された。
山本准将は敢えて裏方に回った。全国の艦娘の拠点への補給を確立させた。
高梨率いる高梨独立艦隊の戦果は、西の武蔵艦隊と拮抗するほどの成功を収めていた。
その頃には、三笠は高梨大佐に常に付き従い、
そんなある日だった。
「高梨大佐、お話がある」
執務を終えて官舎に戻ろうとした時、三笠が意を決した顔をして声を掛けた。
「ん、どうしたんだ?」
「提督は独身でいらっしゃる、間違いないか?」
その問い掛けに、高梨大佐は少し胸に痛みを感じた。
彼の妻子は、東北で深海棲艦侵攻に罹災し、亡くなっていたのだ。
「独身『になってしまった』というのが正解かな?妻子は東北で死んだよ」
「申し訳ありません。私が浅慮でした」
申し訳なさそうに頭を下げるも、決意の籠った表情は変わらなかった。
「敢えて申し上げる。提督、いいえ道一さん、あなたを愛している」
「………」
三笠は、出会った時から彼に一目惚れしていた。
そして共に戦っていくうちに、彼の実直さにますます惚れ込んでいった。
「……私で良ければ。私も君のことを好きだった。上司と部下では、こんなことはいけないと思っていたが……」
「それでも……」
「ああ、私も君のことを愛している」
その夜は、二人の生涯忘れ得ぬ夜になった……
「ゆうべはお楽しみだったようだね?」
翌朝、大村少将からの電話で、高梨大佐は一瞬で眠気が吹っ飛んでいた。
艦娘というものが、
「大村先輩め……謀ったな……」
「なにか仰ったか?提督」
ボソリと呟いたのを、聞き逃さずに問うてきた三笠に笑みを浮かべて、
「君にお仕置きをしようと思っていてね。今夜は徹夜を覚悟したまえ」
その言葉で、顔が赤くなっていく三笠に笑顔を向けてから、執務を再開する。
そして三笠が妊娠した、と発覚したのは、それから数ヵ月後だった。
「双子だそうだ。艦娘ハーフ……ということになるだろう」
発覚した時点で三笠を前線から遠ざけ、高梨艦隊には新たに大和を編入した。
こうして、出産の準備を三笠がむかえている間にも、高梨大佐は准将に昇進しつつ、日本近海の深海棲艦と戦い続けていた。
更に月日は流れ、三笠は二人の女の子を出産した。
高梨准将は、三笠と初めてデートに行った場所「みなとみらい」から肖って、
未来と湊という名前を付けた。
艦娘と提督の間に生まれた子供を、国民は驚きを持って迎えた。
その時には『第三世代艤装計画』という