続・みんなと艦娘日和   作:SAMICO

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名古屋の悲劇とそれに対抗する策とは……?

そして運命が高梨提督に迫る…


原初の提督達と三笠Ⅵ~名古屋の悲劇~

高梨艦隊は、海軍幕僚監部直属の独立艦隊として、自由裁量権を任されるに至っていた。

 

未来も大佐に昇進し、佐世保鎮守府司令長官直属の遊撃隊指揮官に就任し、

湊も卒業と同時に、現場に戻って来た山本少将の次席副官・少尉、

更に功績により、中尉に昇進していた。

 

高梨艦隊は、関東の防衛の要として日夜出撃していた。

そんな、ある日だった。

「高梨!大変だ!名古屋が抜かれた!うちの娘達が名古屋旅行に行ってて、連絡が取れなくなった!」

帰投してきた高梨中将に、海軍幕僚監部参事官に昇進していた大村大将が慌てて、凶報を伝える。

「なんですって!?」

 

横須賀鎮守府と呉鎮守府は、その中間点である中部の防衛に手を抜く傾向があった。

元々の所管である横須賀鎮守府は、戦力がそこまで配備できず、呉鎮守府がその防衛力補助の為にバックアップを担っていたが、

横須賀鎮守府と呉鎮守府の司令長官は、同格の大将という事情もあり、著しく仲が悪く、道一も連携に不安を感じていた。

何度も、両長官に意見具申をしていたが、容れられないまま月日が流れていたのだ。

 

「名古屋には、陸路から山本を送ってる。お前の()も一緒だ。海の方は頼んだ。これは幕僚監部の指示だ」

「わかりました。湊は、戦略において私を凌ぐ素質を持っている。我々は、期待して名古屋に向かおう。なに、先輩の娘達も()()()()()()()()()()()()()でしょう」

「すまん、頼む……」

ポンと大村大将の肩を叩き、高梨は執務室を後にした。

 

出撃前、名古屋に向かう直前の湊が面会に訪れていた。

士官学校に入学して以来の再会だった。

「お久しぶりです、父さん、母さん。いえ、()()()()()()殿()

「ああ、久しぶりだな、湊」

「久しぶりね、元気だった?」

「はい。お陰様で、元気にやっています」

「この忙しい時に面会とは、名古屋の一件か?」

きっちりとした敬礼を返すと、道一は湊に先を促す。

「はい。この際、()()()()()()()()()()

努めて冷酷な声色で言う湊に、二人は言葉を失った。

「なっ……!?」

「どういうつもり!?」

二人の詰問に、冷静に湊は続ける。

「私達の作戦案を、()()お伝えします。名古屋を中心とした伊勢湾岸地域を艦娘・空軍混成部隊の絨毯爆撃(カーペット・ボミング)で焼き払います。今、山本閣下の手配で航空機動艦隊の編成を進めています。高梨艦隊から天城、龍驤をお貸し頂いて、天城に航空機動艦隊の指揮をお願いしたく思います」

湊が胃を擦りながら言うと、高梨中将は娘の異変に気づいた。

「大丈夫か?」

「いやぁ……ちょっと胃がキリキリしてまして……あなた方の娘は、とうとう『大量殺人者(ヒトゴロシ)』になってしまいますよ。軍に入ればそういう事もあり得るだろう、と思いましたが、今中部を分断されたら、犠牲者はそれ以上になります。よって、エリア封鎖を行って逃げられない人に犠牲になってもらうしかない、との結論に至りました。無論足止めにエリアに立ち入る軍人達も、()()()となります」

「湊……」

娘も、強いストレスと戦っていたのだ、と実感していた。

「幸い、佐世保の遊撃隊の姉さんも向かってくれています。高梨艦隊は、海から現状を維持してもらう横須賀・呉の艦隊を指揮して、深海棲艦を封じ込めていただければ幸いです」

「分かったわ。私達は、海から陸へ砲撃を行えばいいのね?」

「そういうことですね。あとは、増え続ける増援部隊の処理もお願いします」

「了解した」

道一の返答に、湊はコホンと咳払いをすると、

「父さん。これは娘としての忠告ですが、父さんは()()()()()()()()()()をなさってください」

湊はそう慮って言うも、道一は首を横に降った。

「ありがたい言葉だが、辞退させてもらうよ」

その言葉に、湊は解っていたと言わんばかりに、溜め息を吐いた。

「でしょうね……母さん、父さんをよろしくお願いします」

「分かったわ。湊も気をつけなさいね?」

「いやあ。私は、()()()()()()()と言われるほどの、白兵戦技の苦手な士官ですから。前線に出たくても、()()()()()()()()でしょう」

皮肉たっぷりに言う湊に、二人も苦笑いを浮かべる。

五歳までは元気に動き回っていたが、今では運動苦手の頭脳明晰になってしまった湊……

姉妹共に毒舌家になっており、時たま発する辛辣な言葉は、二人の心を抉ることも多々あったのだ。

「山本さんにもよろしく伝えておいてくれ。なに、あっちにはあの横須賀の鬼神(各務原少尉)も着いている。決して無理はせぬように」

「はい。それでは私も、あちらで足止めをしてくれている間に、作戦会議と足止めの為の武器の準備を行わないといけないので、失礼します」

そう言って敬礼をしてから、急ぎ足で立ち去った。

 

それを見送ると、待機中の高梨艦隊の元へ向かった。

「皆、聞いたと思うが、深海棲艦が名古屋へ大侵攻を行った」

その言葉に、艦娘達の表情が険しくなる。

「作戦部の作戦を伝える。名古屋を、()()()()()()()()

その言葉に、天城の顔が青くなる。龍驤の顔も苦々しくなる。

「提督、もしかして……私達が名古屋を……」

「提督の言い方やと、()()()()こっちゃな」

大規模侵攻の深刻さを、改めて伝えられた他の艦娘達の顔色も悪くなる。

「今、陸上部隊が足止めをして、エリア封鎖の準備が始まっている。我々も出撃しよう」

「提督はどうなさるのですか?」

「私も後方支援艦に乗艦して指揮をする。()()()()()()()()()()

天城の心情を察して、道一が全ての指揮を執ると告げると、天城もそれを断ることは出来なかった。

「では、機動部隊は私が指揮しよう」

高梨若奈の本名を得て、准将の階級で任官した三笠も、崩壊した戦線の立て直しを明言する。

 

現場に到着した高梨艦隊は、海での大惨事を目の当たりにしていた。

沈んだ艦娘の死骸(残骸)が浮かぶ、地獄の戦場。

それを見て恐怖に慄く不知火。奥歯を食い縛り、近くの深海棲艦を倒す最上と木曾。

長距離砲撃で、上陸した深海棲艦を潰す大和。

天城と龍驤は、他の空母艦娘と合流して、陸上からの合図を待っている。

「この戦場()は……地獄だな」

「……ええ」

 

道一は首を振ると、全方位に向けて通信を送る。

「全艦娘に告げる。私は、高梨艦隊司令官の高梨中将である。現刻を以て(たった今より)、海軍幕僚監部の指示により、私が全ての指揮を執る。差し当たり各艦は各個撃破に専念してくれ……なぁに、心配するな。我々は今の所負け続けているが、最後の最後で勝てばよいのだ。各艦次の指示を待ちながら現状を死守せよ。以上だ」

その通信は、急行していた佐世保鎮守府増援部隊を率いる、高梨未来大佐もキャッチしていた。

「さあ、あの高梨中将(名将)が指揮を執るなら勝ったも同然よ。急ぎましょう」

『はい!』

未来も、父親のことを信頼していたのだった。

 

高梨艦隊は、常に戦場の最前線に立っていた。

直掩には不知火が就いて、近づく深海棲艦達を沈めて行く。

三笠率いる機動部隊は、増援を断ち切るべく、外海へ進軍を始める。

未来率いる増援部隊は、呉からの増援も加えて、伊勢湾の海上の掃除を始める。

『撤退!撤退!』

全方位通信で撤退命令が発令されると、高梨提督は天城に命令を伝える。

「爆撃開始!」

『は、はい……!爆撃を開始します!』

その命令と共に、上空で旋回待機していた空軍爆撃隊が、名古屋の街を爆撃し始める。

その衝撃で動けなくなったところに、艦娘部隊の艦爆隊が深海棲艦に攻撃を加えるのだ。

燃え上がっていく伊勢湾湾岸圏を見ながら、艦娘達は涙を流していた。

深海棲艦達も、もう殆どが爆撃と海上艦隊の攻撃で打ち減らされ、()()()()()()()()()()()()

 

その時だった。()()()()()()()()()()が、高梨提督の乗る後方支援艦に直撃した……

「提督!!」

船の機関部が爆発し、その爆発に巻き込まれ、上空に吹き飛ばされた高梨中将の身体を、不知火が抱きとめる。

爆発の傷は深く、助かりそうもない、と不知火は解ってしまっていた。

「三笠さん!未来大佐!提督の後方支援艦が流れ弾の直撃を受けて……提督は重体です!すぐに来て!!!」

急報を受けた未来は、急いでそちらの方に後方支援艦で向かい、湊はその悲報に、ストレスが極限に達して血を吐き、意識を失い倒れた。

高梨艦隊の面々も現状の敵を薙ぎ払い、すぐに提督の元に向かった。

今、戦場は金剛と時雨が、場を統括している。

未来の乗艦する後方支援艦に乗せられると、すぐに乗務していた軍医の診断が行われるも、軍医は首を横に振る。

「現状では、もう手が尽くせません……大きく動かせば、大出血で即死です」

「そんな!?」

「…不知火の落ち度です……不知火がもっとしっかりしていれば……」

三笠が絶句して、不知火は自分を責めるように慟哭する。

「そんな事ありませんよ」

「そうだぜ。もし落ち度があるなら、俺達()()()()()()()だ」

「……うん」

そんな不知火を、大和が優しく抱き締め、最上と木曾が慰める。

「父さん……」

「未来か……湊にも伝えてくれ……『すまなかった』と……」

「バカね……二人共恨んでなんかいないのに……」

その言葉に、ふっと笑顔になると、泣き続けている不知火に手を伸ばした。

頭をぽんと撫でられると、不知火は道一に縋り付いて、更に泣き続ける。

「申し訳ありません」と謝り続ける不知火に、

()()()()()()()()んだ……お前の落ち度ではないよ」

そう優しく頭を撫で続ける。

「最上……明るく元気なお前にもずいぶん助けられた……ありがとう」

「提督……そんな死ぬような人の言うセリフ、ボクはやだよ……」

最上も、現実を受け入れられない。

「木曾……お前がいてくれたおかげで助かった場面もあったな。次姉()として」

「オレも、提督のことは本当のおやっさんだと思ってたんだぜ?」

木曾は涙を零しながらも、努めて元気に答える。

「天城……龍驤…辛い役を押し付けてしまったな。すまない」

「いえ、天城は提督のお役に立てるなら……」

「提督…苦しいだけやからあんまりもう喋らんとき。見てて……辛いわ」

二人共、涙を零している。

「大和……お前にも苦労をかけたな……高梨艦隊のお姉ちゃんとして助けられた……」

「嫌……提督……死なないでください!!!」

大和も、道一に縋り付いて泣き始める。

「三笠……いや、()()。……ありがとう」

「……提督、愛しているわ……永遠に」

「私もだ……若奈……」

 

『高梨提督ぅぅぅ!!!!!』

「お父さん!!!!」

「道一さん!!!!」

こうして、高梨道一は息を引き取った。

後方支援艦から、艦娘達の慟哭が響き渡った……

 

葬儀は軍部葬で行われた。

高梨提督(中将)は、二階級特進で元帥となり、名誉職である『海軍最高司令長官』が追贈され、艦娘達の守り神の象徴となった。

湊は、入院中の身を押して参列した。酷い胃潰瘍の状態で、看護師同伴で通夜から葬儀までしっかり出席し、再び倒れた。

高梨艦隊の皆は泣き続け、不知火に至っては自らを責め続け、鬱症状を発症していた。自殺企図も何度か行い、危険だと精神科の軍医に診断された為、三笠は不知火を常に側に置いた。

高梨艦隊の『()』達も、でき得る限り不知火の側にいた。24時間体制で不知火に付きっきりになった。

未来は、そんな状態の三笠に代わり喪主を務め、()()()()()()()()()()

 

高梨元帥の初七日を終えた後、政府・海軍の異動人事が発令された。

この(名古屋大侵攻の)責任を取って辞任した総理大臣に代わり、総理になった矢部晋太郎は、内閣を()()()()()()()()()させ、全ての国務大臣を兼任した。『()()()()()()()()()()()()』という、明文規定を盾に取り、横須賀・呉鎮守府両司令長官の階級を剥奪して罷免(不名誉除隊・懲戒免職処分)し、

三笠を中将に特進させて呉鎮守府の司令長官に、山本を中将に昇進させて、横須賀鎮守府司令長官に補職(任命)したのだ。

三笠は、もちろん不知火を伴っての赴任だ。高梨艦隊の艦娘達も、各地に配属されていった。

矢部はその次に、解散総選挙を行った。

たった数日間で、第一次矢部内閣の終焉となる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』政権である。

政権与党も、第三世代艤装計画時の総理派閥が一掃され、()()()が行われていた。

水面下で『あの計画(第三世代艤装計画)』を持ち出し、離党を迫ったのだ。嫌なら公表すると。

彼等は与党を追われ、新党を結成したが、その殆どが矢部の差し向けた刺客候補に敗れていった。

それだけ、矢部晋太郎という男の世論操作術が卓越していたのだ。

彼は『世論』すら味方に付け、マスコミを巧みに操作し、国民の敵愾心を罷免した前両司令長官と『党を出ていった抵抗勢力(第三世代艤装計画推進勢力=艦娘兵器派)』にぶつけることに成功した。

当時の前首相率いる新党も、今や泡沫野党と成り果て、当時の()()()()()()()()()()()()()()という散々な結果で、()()()()()()()政界を追われていった。

政権与党は、矢部率いる矢部派とそれに従う勢力で占められ、首班指名を受けた矢部晋太郎は、総理大臣に再任して、第二次矢部政権を発足させることになる。

後に『艦娘時代政権』と呼ばれる、矢部から大淀に至る長期政権の幕開け、とも言える日だった。

 

こうして、高梨提督や三笠の無念と政界に背を向けざるを得なくなった父親の無念を晴らし、艦娘基本法の夢、そして義兄の名誉を挽回(汚名を返上)し、全てを手に入れた『政界史上清廉な男(綺麗な独裁者)』、矢部晋太郎の伝説に残る『不敗の女神様』演説が行われることになった。

曰く『我々は深海棲艦に負けることは決してあり得ない。民間人を全滅させなかった女神様がついている』と、

曰く『名古屋を、()()()()命を賭して救った『軍神』と『原初の提督』の功績も忘れてはならぬ』と。

こうして病床の湊は、英雄の末席に加えられることとなった。

そして、三笠もまた『軍神』として、矢部により英雄と称されるようになり、亡くなった高梨提督は『原初の提督』として、伝説となった。

 

こうして新たな潮流が生まれる中、

『不敗の女神様』高梨湊伝説(サーガ)プロローグ(序章)、室戸泊地事件の発端となる二人(不知火と龍)が出会うこととなる。

 




次回から残された三笠と娘たちの日々が始まります。
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