艦娘日和S1「軍隊と自衛隊」
アンドリューこと安藤龍。湊のニ年先輩で、今は准将。
運良く、虫垂炎放置の腹膜炎で倒れたため、ハワイの決戦に参加しておらず、降格を免れていた。
艦娘日和S1「湊ちゃん艦隊とアンドリュー見参(後編)」
湊「アンドリュー先輩。私は、常々貴方が
龍と不知火「Chapter7:命を賭けるということ―意地と責務と命―」
不知火「龍提督。私は、貴方を常々馬鹿だと思っていました。でも……」
不知火「これほどっっ!!!馬鹿だと…っ!!!思いませんでした!!!」
深海棲艦は、ハワイから出現して日本にやって来た。
そこに深海棲艦の巣がある、と考えた国防軍は、ハワイ出陣計画を立てていた。
この日は、呉での司令長官会議がある。
既に、出陣を見込んだ各部隊からは、参加志願の返事が多数返って来ている。
三笠が執務室で、どの部隊をどのように編成に加えるべきか考えていると、天城がやって来る。
「三笠様、そろそろ会議の時間ですが?」
「ああ、済まない。では行こうか?」
会議室には、錚々たるメンバーが集まっていた。
近年の功績により中将に昇進し、大湊警備府司令長官となった、『鉄壁の大垣城』大垣守。
更に、横須賀鎮守府司令長官の『老練の名将』山本八十六大将。
舞鶴鎮守府司令長官である中尾大将。
そして、佐世保鎮守府の
そこへ、元帥に昇進した三笠が、遅れてやって来た。
三笠が入室すると、全員立ち上がって敬礼する。
三笠が答礼し上座に着席すると、全員も着席する。
「大垣、久しいわね」
「あの時は大変失礼いたしました。
「私も、あの
「はっ、勿体無いお言葉です。まだまだ若輩の身、諸先輩方にご指導ご鞭撻を仰いでいるところであります」
この中で一番年若い大垣は、その大きな体を小さく丸めるように恐縮すると、
一同からどっと笑いが溢れる。
「黒井大将、明石がいろいろ迷惑を掛けたそうね?」
「いや、酷い目に遭いましたよ。
黒井大将は苦笑いを浮かべながら答えると、中尾大将も、
「いやいや、うちの綾波も迷惑を掛けたと聞いている。一度黒井君に詫びを入れておこうと思っていたのだよ」
「先輩、せっかくなら
この二人は士官学校の先輩後輩である。黒井が酒を飲む仕草をして中尾大将から「図々しいぞ」と笑いながらツッコミを入れられる。
「山本大将もお元気そうで何よりね」
「いや、三笠元帥に一つ借りを作ってしまったな。第13泊地の一件、わしの
「山本大将もご多忙の身、無理もありませんわ」
暫し談笑が行われると、各地の幕僚が資料を持って入室して来る。
大湊からは総秘書官大鳳、横須賀からは主席副官の大村恵一郎准将、舞鶴からは次席副官の上原麻衣少佐が、この会議に同行している。
佐世保からは未来が、
そして、呉鎮守府からは天城が同席する。
「それでは、早速だが会議を始めよう」
最年長者である山本の号令により、彼の副官である大村准将が立ち上がる。
副官達も、事前に打ち合わせを重ねて、今日に臨んでいるのである。
機器操作担当の上原麻衣少佐がプロジェクターを作動させると、天城が照明を暗くする。
「早速ですが、当作戦の概要からご説明します」
ゆっくりとした口調で、恵一郎が話し出す。ほんわかな雰囲気の士官が二人もいる為、ピリピリとした空気は少ない。
恵一郎の説明と共に、プロジェクターの画面も麻衣の操作で切り替わっていく。
「大垣中将・山本大将の合同北方掃討作戦の結果、北方からの深海棲艦勢力を大きく削いで、北方エリアを米露軍の連合艦娘部隊に引き渡すことが叶いました。よって防衛の手数を減らせた今、ハワイへ連合艦隊を派遣して直接攻撃、乃至は大規模な深海棲艦掃討戦を行えるだろう、との判断となりました。出撃を予定している艦隊は数十個艦隊、艦娘本部所属艦娘の凡そ半数を動員する計画となっております。但し各司令長官の意向で、
その恵一郎の言葉に、司令長官達は頷いた。
「布陣は二段構えで行います。まずはミッドウェー海域を主戦場に設定して、深海棲艦に攻撃を仕掛けます。この海域での海戦を、『第三次ミッドウェー海戦』と呼称しますが、主力を率いていただく連合艦隊司令長官には三笠元帥、副司令長官に黒井大将。また、海兵旅団にも量産試作型汎用艤装を配備して、艦上と海上から後方支援艦の護衛に当たらせます。海兵旅団の動員規模は一個連隊。中部・関東連隊を中心に、約千人規模での動員を予定しています。彼等も皆
その言葉に、三笠と黒井と大垣が頷いた。
「留守番部隊を山本大将・中尾大将に統括して頂き、太平洋側の防衛に当たりたいと思います」
その言葉に、山本と中尾も頷いた。
「また、日本海の方ですが、海賊と思しき輩が増えて来ています。『
その言葉で麻衣がパソコンを操作し、画面が作戦参加予定幕僚の陣容に移る
「参加艦娘は配布いたしました資料に載っています。主要幕僚として小官が主任作戦参謀として……」
恵一郎の説明が続く。
ここに居るメンバーでは、未来と麻衣は留守番部隊に回る事、と説明される。
また、横須賀第13泊地艦隊は未だ再建中の為、今回の参加は見送らせることも、全員の賛成で決定した。
その後、司令長官級で会議した内容が下に伝わり、現場レベルでの会議が行われる。
三笠も、夜遅くまで準備が続く生活になっていた。
そんなある日だった。
不知火から電話が入ったのだ。
その時三笠は、ミッドウェー海戦の布陣を考えるのに忙しかった。
「もしもし、済まないけど、今手が離せなくて……」
『三笠元帥!!不知火の!!不知火の落ち度です!!』
不知火の泣き声が聞こえて、只ならぬことだとは察知した。
「不知火、何があったか話しなさい」
『曙が……!安藤提督が倒れてるって!……息してなくって!!』
「何ですって!?」
安藤が倒れた。三笠には、何が起こったのか判らなかった。
『今、ドクターヘリで……広島総合病院に……今ヘリがくるところで!』
「分かったわ。広島総合病院ね。問い合わせるから、貴女達は任務に戻りなさい。ああいや、そっちに広島の海防艦娘を送るから、貴女達はそれと入れ替わりで、こっちに帰って来なさい。不知火、貴女はヘリに同乗しなさい」
『わ、わかりましたっ……』
遠くから瑞鶴の声で『ヘリ来たわよ―!』と言う声が聞こえると、電話が切れた。
「三笠様……?」
その電話で、血相を変えた三笠に、天城が心配そうに声を掛ける。
「いや。龍が倒れたそうで、息していなくてドクターヘリで運ぶそうよ」
「安藤提督が!?……もしや、この準備の疲れで持病が再発……」
天城のその言葉に、三笠は首を振る。
「いや、判らないわ。とにかく、私達はやることが多いわ。準備を続けましょう、天城、悪いけど広島港の海防艦四人姉妹に、室戸に行ってもらうよう連絡してもらえる?」
「はい。直ちに」
天城はすぐに退室して、命令を伝達しに行った。
それを見送ると、三笠は再び布陣図とのにらめっこに戻った。
その翌々日だった。三笠は、突然の来客を受けていた。
「三笠様、広島総合病院の平林副医長と言う方が、面会をご希望されていますが」
その
三笠が応接室に入ると、目のきつそうな女性が座っていた。
その女性、平林医師は立ち上がるとペコリと一礼する。
三笠はすぐにポケットから名刺を取り出すと、平林医師と名刺交換をする。
名刺には、《広島総合病院 消化器外科副医長 平林虎子》と書かれていた。
「ところで、本日のご用件を……」
「失礼ながら、これは閣下のご命令ですか?」
「何がです?」
虎子は、三笠の目をキッと睨み付けると、
「私の弟
「………はい?」
「………えっ?」
その
「………弟の独断だったのですね。申し訳ありません」
「……いや。まさか安藤がこんな事になってるなどとは露知らず、私の監督不行き届きでした。申し訳ありません」
お互い頭を下げてから、
「弟は今意識が戻っておりません。不知火さんから聞いたのですが、今度大規模な軍事作戦がある、と。
「分かってるわ。安藤を参加メンバーから外すわね。しかし……安藤も無茶なことを……」
「逆に、
「しかし……安藤准将は今後、
天城の言葉に、虎子も頷いて、
「
「そうね……ハワイの後になるけど、室戸には代わりの司令官を送るわ。龍には……退任が決まっている、横須賀の横澤少将の後釜で、主席監察官というのはどうかしら?」
「山本長官もいい人材を欲していましたし、回復し次第、安藤准将を少将へ昇進させてもらって送り込むよう、手配しましょう」
「宜しくお願いします。それでは私はこれで」
「ああ、少し待って貰えますか?」
三笠は耳打ちして、天城に何か伝えると、天城は一礼して部屋を出て行った。
「平林先生、安藤准将には不知火が付いてるのね?」
「はい。ずっと、自分が気づけなかったせいだ、と泣き続けていました。彼女にも精神安定剤を処方してあります。精神科の既往歴があることを聞いていましたので」
「重ね重ね申し訳ないわね。しかし、安藤はちょっと不器用なところがあるとは思っていたけど」
「
虎子の目が少し潤んでいる。その様子を見た三笠は、笑みを浮かべる。
「平林先生は、若くて優秀な消化器外科専門医、と噂は聞いていたわ。まさか安藤のお姉さんだとは思ってなかったけど、安藤を助けてくださって有難う」
「いえ。私など、まだまだ若手です。でも、本当に助けられてよかった……ごめんなさい」
そう言うと、虎子の目から涙が零れ、すぐに手で拭う。
「こんな良いお姉さんを心配させるとは、
「そうですね……」
漸く虎子の顔に笑みが戻ると、天城が袱紗を持って戻って来る。
それを受け取ると、《御見舞》と書かれた水引袋を取り出し、虎子の前に差し出す。
「これくらいしか出来なくて申し訳ないけど、これは私からのお見舞いよ」
「ご丁寧に申し訳ありません。弟には、閣下の分までしっかり叱っておきます」
「ええ。安藤には、顔を出せなくて申し訳ない、と伝えてもらえるかしら?」
「わかりました、それでは私は失礼します」
そう言うと、虎子は一礼して部屋を辞した。
それと入れ替わりに、今度は瑞鶴がやって来た。
「お忙しいところ申し訳ありません」
「瑞鶴ね。何用かしら?」
今度は執務室で、瑞鶴の来訪に応対する三笠。
「皆で話し合ったんですが、今度のハワイ作戦、安藤艦隊の不参加をお願いしに来ました」
「……分かったわ。貴女達には、差し当り室戸に行った海防艦四人娘の代わりに、広島の港湾警備を命令するわ。ハワイの戦闘が終わり次第、新たな任地を考えるわね」
「申し訳ありません」
「……いいのよ。安藤には、平林先生がしっかり叱ってくれるでしょうし。よく司令官を救ったわね。ありがとう」
「いえ、私達が准将の異変に気づいていれば……」
無念の臍を噛む瑞鶴に、少し苦笑を浮かべて、
「まったく。艦娘達に心配をかけるなんて、ダメな司令官ね」
「……まさか、あそこまで馬鹿なことをしているとは、思いませんでした」
「…不知火のことをお願いね。こっちはいいわ、早く広島に行ってあげなさい」
「はい!失礼します」
びしっと敬礼し、退室していく瑞鶴を見送ると、三笠はふぅと息を吐く。
「安藤もいい娘達を持ったわね。全く龍は……」
「不知火は、おそらく安藤准将に好意を持ってると思いますわ」
「そうなると、龍は何れは私の
ふふっと顔を見合わせて笑ったあと、ハワイ作戦の布陣作成に、夜遅くまで取り組む二人だった。
直前まで、三笠は最高の布陣を、と夜遅くまで頑張っている。
安藤や不知火等、不参加を決めた艦娘達の分まで……
智紀「男ってのはみんな馬鹿な生き物なんすよ」