三笠率いるハワイ
その中には、安藤龍もいた。
彼等に見送られつつ、呉軍港を出港して行った。
ハワイ攻撃連合艦隊は、後方支援艦や海兵旅団の高速艇だけではなく、艦娘も百を超すほどの参加があった。
その大勢力が瀬戸内海に集結したのだ。
そんな彼女達が、順次瀬戸内を出て太平洋に向かって行く。
「私自身も艤装を纏い出陣するわ。その時は黒井副長官、お願いするわね」
「分かってますよ。貴方も存分に戦って来てください」
三笠と黒井は、大型指揮艦である日本海軍艦娘本部総旗艦『みかさ』に搭乗している。
『みかさ』だけではなく、後方支援艦全てにカメラが搭載されており、
その様子は留守番部隊や各鎮守府の将官が閲覧できるようになっている。
「間もなく、ミッドウェー海域に近づきます」
副官の大村恵一郎准将が声をかけると、『みかさ』艦内の乗組員の様子が一変する。
唾を飲み込むものも現れる。此処から先は危険区域なのだ。
「米軍より入電。日本で研修中の多国籍軍艦娘艦隊、これより周辺海域の攻撃に入るそうです」
「了解した。『感謝する』、そう伝えてくれ」
国連安全保障理事会が、日本各地に練度向上の為に研修で派遣している、所謂
この作戦に参加させるべく、急遽理事会が開かれ、参加を満場一致で可決したのだ。
このお陰で日本艦隊は、ミッドウェー攻略とハワイ突入に専念できるのだ。
ミッドウェーに、天城以下空母艦娘達が次々と、偵察機を発進させて行く。
『敵艦見ゆ!敵艦、多数。姫、鬼計測不能!』
その天城からの通信に、艦内の士官達は騒然となる。
「狼狽えるな。汎用艤装部隊も出撃させろ、と伝えなさい」
三笠のその声で、動揺の声がピタリと止んで恵一郎の、
「了解しました。海兵旅団、各艦の護衛行動をお願いします」
通信を全艦に向けて発すると、手を背中に回して三笠の方を見る。
「では閣下」
「ええ、攻撃開始よ。行って来るわ」
三笠も、この艦の直掩を務める天城の元へと向かう。
三笠は海上で、陣頭指揮を執るのだ。
三笠が艤装を展開して海上に降り立ったのを確認すると、黒井が立ち上がり、声を上げる。
「全艦戦闘態勢を取れぃ!」
『全艦戦闘態勢を取れぃ!』
その黒井の言葉に、艦娘達の身が引き締まる。
迫って来る、
じりじりと、敵との距離が詰まって来る。
「天城」
「はい、先制攻撃をお見舞いしましょう!航空隊は、各自艦載機の発艦をお願いします!」
天城の号令で、各艦隊の艦載機が順次発艦され、魚雷と爆弾の嵐をお見舞いする。
その爆発は、こちらにも爆風が届くほどだった。
『では、砲雷撃戦用意!撃ちぃ方ぁ始め!』
黒井の号令に三笠も、
「全艦、撃ちぃ方ぁ始め!」
『撃ちぃ方ぁ始め!!』
そして艦娘達も復唱し、砲撃を開始する。
砲撃と共に飛来して来る敵艦載機は、防空艦が対処する。
向こうからも砲撃が飛んでくるのだ。砲撃を避けたりあるいは受け止めながら、砲撃を返す。
砲撃の中、接近して来る敵深海棲艦は、海兵旅団の男達が対応する。
「おっと、こっから先は抜かせねぇぜ!」
「ナンダト!?」
爆炎に紛れ、汎用艤装で距離を詰めると、大きな
「海兵旅団、出過ぎや!!下がりぃ!!」
同じく、ロングトマホークを持って周辺を薙ぎ払う龍驤が、突出し過ぎる海兵旅団を制す。
海兵旅団は、砲撃を食らったらその時点で
この段階で既に、何人もの海兵旅団の死傷者が発生している。
この先が、地獄だった…‥
敵主力艦隊は、鬼・姫クラスの大艦隊。ダブル
「此処から先は、地獄になるわね」
「…えぇ」
「閣下ぁ!」
右翼から、一隻の駆逐艦がざざっとやってきた。時雨改二である。
「僕が突出して、撹乱して来ます」
「分かったわ。
「はいっ!」
そう言うと、ショートトマホークを持って、敵陣へと突っ込んで行った。
「敵主力艦隊へ航空攻撃開始!」
「敵艦へ攻撃!駆逐艦隊は、その後敵に肉薄せよ!」
天城と三笠の号令に、再び大音響の、艦砲と艦載機の発進音が響き渡る。
時雨改二は艤装を赤熱させ、物凄い速さで敵陣を乱しにかかっている。
時には、
敵陣を横断し終えると、艤装の赤熱が終わり、ふしゅーと湯気が立ち込める。
それを合図に、駆逐艦隊が魚雷を叩き込みに進撃するのだ。
「アマイワ、コムスメドモメ」
戦艦棲姫が睨みを効かせた瞬間、駆逐艦娘達に集中砲火が直撃した。
「きゃああっ!!!」
戦場に、駆逐艦娘達の悲鳴が響き渡った。
「これは、不味いわね……」
三笠は、苦々しい顔で戦況を見る。
戦艦棲姫の駆逐艦への攻撃の際、既に何隻もの駆逐艦娘を失ってしまっていた。
何とか、後方支援艦に戻って来た艦娘達は、歯を食い縛り涙を流しながら、再出撃する。
巡洋艦や戦艦すら、突撃しては近距離からの艦砲を叩き込んで、傷つけば後退する。
後退できなかった艦娘達は、海の藻屑となるだけだ。
三笠も、何度も出撃しては破損し、後退しては緊急入渠を行い、再び出撃する。
『元帥!士気に関わるから、余り出過ぎないでください』
黒井大将に、そう窘められる一幕もあった。
周囲に絶望が蔓延しつつある、
時雨改二の様子がおかしい。
艤装がスパークし始めているのだ。三笠はすぐに時雨に通信を送った。
「時雨!戻りなさい!」
『お断りするよ、元帥。今から僕は特攻するよ。
「待ちなさい!各務原に、どう説明すればいいの!?」
『きっと彼は分かってくれるよ。僕が突っ込んだら、分断した敵をお願いね?』
「待ちなさい!時雨!やめて!!やめなさい!!!」
三笠の叫びの通信を一方的に切った時雨は、一気に加速して艤装をスパークさせたまま、
時雨は、スパークする
いや。既にスパークの前兆を感じながら、
真っ赤な艤装で、あり得ない速度を出して姫から撃ち込まれた砲弾が、時雨の頭を吹き飛ばした直後……
時雨の身体がその姫に体当りし……
「全艦衝撃に備え!!」
三笠の全方位通信の直後……
眩い閃光が、時雨の艤装を包み込み、体当りした姫共々大爆発を起こした。
「きゃああっ!!!」
近くにいた艦娘も、衝撃で吹き飛ばされる程の爆発力である。
爆風が晴れると、多数の姫・鬼クラスが木っ端微塵になっていた。
「………」
全員、何が起こったのか判らなかった。
全員が、時雨の散った場所を呆然と見ていた……
「時雨ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
三笠は、怒りと悲しみで主砲を乱射した。その砲弾は敵艦に命中して行く。
その隣にいた天城は、涙を流して爆発のあった場所を見ているだけだった。
『今やで!天城!』
「は、はい!航空隊、敵中枢部ががら空きです!航空攻撃!」
龍驤の叱咤に、天城が我に返って攻撃命令を下す。
「三笠さん、落ち着いて!!」
「はぁ……はぁ……ごめんなさい」
最上が、三笠の異変に気づき、後方まで下がって来てくれたのだ。
『全艦、呆けてる暇はないぞ!各艦の持ち場を死守せよ!』
黒井大将の檄に、艦娘達も我に返り、砲雷撃戦を再開する。
高梨艦隊の艦娘達が各々の場所で活躍している中、三笠は傷つき戻って来る艦娘達を励まし続けている。
「大丈夫よ、頑張りましょう」
「やはり前に出るわ」
『分かりました。無理はしないでください』
黒井にそう告げると、三笠は護衛の艦娘と共に、前線に向かって行った。
「ココマデダ」
「ぎゃっ!」
突然声が聞こえると、護衛の駆逐艦娘が一隻、真っ二つにされていた。
「何者!?」
振り向いた先には、義手をつけたレ級が、死神の鎌を持って立っていた。
「撃ち落とす!ファイア!」
三笠の号令と共に、護衛の駆逐艦娘や軽巡娘が砲撃を加える。
レ級は、その攻撃をバックステップで全て躱すと、三笠に向かって襲いかかる。
ガキィン!
三笠は軍刀を抜いて、死神の鎌を受け止め……
「ファイア!」
ズドォン!!!
「つうっ!!」
「グウッ!!」
砲撃の直撃を受けたレ級は、死神の鎌をズタズタに破壊され、何百
「オボエテロ!」
そう言い残すと、
周囲を見回すと、深海棲艦も段々と討ち減らされていっていた。
『三笠元帥、こちら大垣隊。間もなく戦場に到着します』
大垣からの通信が入って来た。
「了解。各艦、大垣隊と合流次第、後方支援艦で補給と補修を受けなさい。我々はハワイへ向かうわ」
『はいっ!!』
こうして、三笠の