進軍した三笠達が目にしたのは、ハワイ諸島
深海棲艦の女王のような
『どうします?』
黒井の通信に、三笠は思案の後、
「駆逐艦に威力偵察を行わせてみるわ」
そう答えて、自身の護衛に回っていた駆逐艦娘を一隻、向かわせた。
その直後、深海棲艦の女王が口を開いたと思ったら、
恐ろしいまでの艦砲…いや、
「えっ!?」
ズガァン と言う音と共に、駆逐艦娘は艤装に誘爆して木っ端微塵になり、消滅した。
肉片が、こちらにまで飛び散って来るほどの爆発だった。
『一旦後退して、作戦会議を開きましょう』
黒井の提案に、三笠は青い顔をして、
「えぇ……」
と答えるだけだった。
各指揮艦と日本の主要拠点を、カメラで繋いでの緊急作戦会議。
艦娘達は、ハワイ近辺にいる深海棲艦と、戦闘を始めている。
もちろん、深海棲艦の女王の射程に入らないように、惹き付けての戦闘の為、
主砲の射程範囲から出てこない相手とは、主砲の打ち合いに終始していたが……
「……という訳で、この深海棲艦の女王、便宜上
三笠はそう言うと、隣にいた黒井も、
「階級、職責に関係なく、意見を言って欲しい」
そう続けると、どこかの指揮艦の少佐が、発言を求めた。
三笠は、その少佐の映し出されたモニターに目を向ける。
『それでは、艦娘をオーバーロードさせ、艤装を暴走させて飛び込ませたらいかがでしょうか?』
「貴官、それは時雨のことですか?」
穏やかだが、不快感を滲ませた恵一郎の問い掛けに、少佐は自信満々で、
「はい」
と答えた。三笠が不快感を滲ませ立ち上がろうとしたその直後、別のモニターのスピーカーから、
『愚か者!艦娘は
会議場は、シーンと静まり返った。
発言者は、今広島で入院中の、特別に会議に参加している安藤准将だった。
「
黒井大将が
『彼は退出させました。申し訳ありませんでした』
と、謝罪の言葉が投げ掛けられる。
静まり返った会議場。
外からは、砲撃音のみが聞こえて来る。
『特攻やるんならよぉ、俺達に爆弾積んで突っ込ませるってのは?』
海兵旅団の、今回の遠征指揮官の大佐である、日下部海兵旅団中部連隊長が口を開くも、
「申し出はありがたいが、君達も、
黒井が、今度は労うような口調で日下部大佐に告げると、日下部大佐も、
『すまねえ。だが、まだ戦闘は終わっちゃいねえ。海兵旅団部隊残り約500名は、精一杯働かせてもらうぜ』
そう戦傷だらけの顔で、ニカッと笑った。
その沈黙を破ったのは、三笠だった。
「では、私の作戦を述べるわね。この作戦は、
三笠はそう言うと、静かに言葉を続けた。
「かつて
三笠はそう言うと、各モニターを見回した。
「
その言葉に、周囲の幕僚達の、唾を飲み込む音が聞こえる。
「これをオーバーロードさせるわ。そして、私の艤装と共にハワイに突っ込ませるの。その為には、
「私も、三笠長官にお供しようと思う。今まで数々の貧乏くじを引いて来たが、
黒井大将の冗談めかした発言の直後、次々と『残ります』と言う発言が飛び交う。
「申し訳ないわね。では作戦なのだけど、陽動が必要になるわ。そこで……」
そう言い終わる前に、通信が入った。
『その役目、僕と木曾でやらせてもらうよ。オーバーロードでなら、あの艦載砲は避けられそうだし』
最上からの通信だった。
『私と龍驤は、万が一の為に装備・艦載機をすべて降ろし、オーバーロードで二人の回収を行います』
これは、大和からの通信だった。
「わかったわ、よろしく頼むわね。こちらも、要塞主砲射程ギリギリで、援護射撃を行うわ」
『俺達も、要塞砲の射程スレスレに配置して、犠牲が増えねえように目を光らせておくぜ』
日下部大佐もそう言って、真っ先に指揮艦から退出する。
「では、私は準備するわ。各員よろしく頼むわね」
三笠は、艦の舳先に立って、戦場を注視していた。
メンテナンスモードで展開した艤装を取り外すと、同行していた明石に手渡す。
「いいのですか?」
「
「三笠様………私もお供いたしますね」
天城はそう言うと、メンテナンスモードにして艦載機妖精さんを退避させた状態の艤装を、明石の改造で
最上と木曾は、要塞砲射程距離内で、深海棲艦と激闘を繰り広げていた。
龍驤のロングトマホークを振り回す最上、
魚雷と砲撃の雨を降らせる木曾……
彼女等は、還る燃料すらも、ここで費やした……
そして、巨大要塞砲を最上達に向けて発射した直後だった。
「明石!」
『はい!』
遠隔コントローラーでリミッタを切った、海渡と天城の艤装が暴走し始めた。
「今よ!戦艦三笠!!征け!!忌まわしい記憶と、これからの希望と共に!」
その三笠の号令で、オーバーロードを開始した
常識では考えられない速度で、ハワイへ向かって突っ込んで行った。
「全艦、衝撃に備え!最上!木曾!!下がりなさい!!」
チュガッ!!
『きゃあっ!!!』
『おわああっ!?』
艦娘達や、海兵旅団の男達は、火の玉に包まれたハワイの爆風で、数十メートルは吹き飛ばされた。
沈むものは誰一人いなかったが、海兵旅団の面々は皆重傷だ。骨も折れているものも多数いる。
それを、周囲の艦娘達が救助し始めている。
「へへ、かわい子ちゃんに介抱されるなんて幸せだぜ」
なんて、冗談口を叩くものも居る。海兵旅団の男達は、
最上と木曾も、衝撃波の直撃を受けた。
吹き飛ばされた二人を、オーバーロードで駆け付けた龍驤と大和が回収したのだ。
『三笠様、大変です!最上と木曾の艤装が砕け散りました……!』
「なっ……?」
三笠は絶句した。
……彼女等は、退役もしくは、正式な軍人としての生を、余儀なくされたのだ。
そして、周辺の深海棲艦ごとオアフ島は消滅した。
その爆発の津波に耐えながら、艦娘達や参加した軍人達は、ずっとその様子を見つめていた……
戻ってきた木曾達は、すぐに緊急入渠が行われた。
せめて、身体だけでも回復させる必要があるのだ。
三笠は、その二人にずっと従いていた。
龍驤や大和、それに天城も、ずっと緊急入渠ドッグにいた。
「う……」
「いてて……何だ?皆、何悲しそうな顔してるんだ?」
意識を取り戻した最上と木曾に三笠は、
「二人共、聞いてほしいんだけど」
「艤装がだめになったんだろ?分かってるぜ」
「ボク達は退役するよ、この戦いが終わったら。
そう笑顔を浮かべる二人に、三笠は涙を零していた。
「なに、退役しても色々やることはあるだろう。名古屋の復興とか?」
「そういう力仕事に、ボク達
「そうね、有難う……二人のおかげよ」
涙を拭い、笑顔を浮かべると、
「軍はウチと大和に任せとき」
龍驤がそう言ってサムズアップして見せると、大和も隣で笑みを浮かべる。
こうしてハワイ総攻撃は、その作戦を全て完了したのであった。
戦争は終わった。
公式には『戦艦三笠が、
世間は賛否両論で分かれた。だが矢部晋太郎は、
艦娘三笠元帥の、艤装解体及び退役、退職金の全額返納。参加幕僚の1~2階級降格の上に給与カット、制服組トップの総辞職、防衛大臣の賞与全額返上、
総理大臣の報酬返上、退役艦娘の退役年金を、中尉から少尉に引き下げ……
ハワイ攻撃艦隊首脳部で言えば三笠、黒井、天城、最上、木曾が軍を退役することになった。
更に、黒井の総秘書官だった武蔵も、退役することになった。
曰く「黒井さんとは長い付き合いだったからな」とのことで、警察官に転職するらしい。
未だにはぐれ深海棲艦が現れている以上、艦娘本部は解体できないが、
三笠達にとって、それはもはや任せる他ないのだ。
三笠は残務処理を行い、呉へとやって来た山本に、仕事を引き継ぐと官舎を引き払い、
天城……戸籍名を天城由衣とした彼女は、身の回りのお世話をする、と従いて来てくれたのだ。
その言葉に、
「これからもよろしく頼むわね」
「……はい!」
それから数日後だった。あの大垣守が横須賀鎮守府司令長官となる式典に招待されている為、支度をしている所に湊がやって来たのは……
次回が最終回です