深海棲艦の襲撃を受ける…。
そして、政治組にも大きな変化が現れていた。
今回はバトル要素は少なめです。
いずも改二は、
事前連絡・事後連絡は必要だが、国連加盟国及び艦娘基本条約加盟国への
ミャンマーに向かうには、マラッカ海峡・シンガポール海峡を通らなくてはならないが、
その通行の際、スムーズに事が運ぶようになっている。
そんないずも改二は南シナ海と東シナ海と、フィリピン海との中間点、台湾に近づいているところだった。
敵の接近はいずものレーダーで教えてくれるので、普段は皆ブリッジかラウンジに集まっている。
艦内のラウンジには、80型4Kテレビが設置されている。ちなみに
それで、MeTube等動画サイトも見られる為、そういった動画で楽しむことも多い。
呉出航前後に投稿されている、エナツキの妊娠ドッキリや、その後のヨウ素とアルミニウム粉末を中に仕込んだ『突然燃えだす呪いの日本人形』ドッキリで、驚き過ぎた暁が、美雪共々泣き出す動画等も、艦内の一同が見ている。
ヨウ素とアルミニウム粉末を混ぜた粉末に、水を加えると化学反応を起こし、紫の煙を出して燃えるのだ。
日本人形内部で、小さい注射器に入った水を、スイッチでヨウ素とアルミニウム粉末に垂らす装置を、夕張と制作していたのだった。
基本ブリッジに誰もいなくても、
何かあったら、艦長のいる場所にホログラフで現れる事ができる。
……なのだが、普段ミナのホログラフは、智紀の側に現れてることが多い。
「奥方様から、若い女に目移りしないように見張っているよう、依頼されています」
とのことであるが、人格設定のモチーフの一人が智子だから、その影響を受けた
今日は、主要メンバーはラウンジで、女子会を開いている。
以前と変わったのが、大井も北上も恵海に向かう矢印の度合いが増えた、ということだ。
恵海を中心に、寄り添う形である。
日向と智紀は、側の畳の座敷席で将棋を打っている。
智紀も日向も、アマ五段という腕前で、出港してからの勝敗は五勝五敗である。
ちなみにミナにもやらせたが、何を思ったのか、膨大な棋譜データを取り寄せ、演算解析して臨んだ為、日向も智紀も勝てなかった。
さすがは、未だに常勝を誇る地獄の門番の
よってミナは、観戦しながら将棋を始めたばかりで、将棋を勉強中の明石に、
ミナ曰く、メキメキと腕を上げている、とのことである。
そんな中、ミナが何かに気づいた。
「対局中すみません、キャプテン」
「ん?」
着手を終えて、チェスクロックを押した智紀が、ミナの方に顔を向ける。
「台湾の海軍から通信です。是非寄っていただきたい、と。以前大侵攻より守って頂いたお礼をしたい、と」
「んー……そういう外交
頭をぼりぼり掻きながら、智紀は溜め息を吐くと、ミナに指示をする。
「はい。
ミナは、台湾海軍に返信をしながら、智紀の端末から防衛省大臣室の直通電話に、回線を繋いだ。
――――
防衛大臣大垣守は、三年前の第五次矢部改造内閣で抜擢された、若い防衛大臣である。
その為、国防軍を退役して、軍服を脱いで背広に着替え、国防軍のトップに立っている。
退役時、元帥への昇進が決定した。これは、山本元帥に次ぐ三人目の元帥である。
また、その山本は元帥の特権である
大淀は、次回の総選挙に不出馬・政界引退を表明している総理大臣矢部の、後継者有力候補でもある。
大淀内閣が組閣されたら、艦娘基本法担当大臣には、大垣が防衛相兼任でなるだろう、とは政界通の予想である。
矢部は夕張との結婚を発表したが、夕張は未だに現役を貫いている。
一緒に暮らせるのは、来年の総選挙が過ぎてからになるだろう。
ひょうきんな彼のことだ。多分エナツキハウスに転がり込むことも、十分有りうるだろう。
そうなった時、エナツキは
その前後、大鳳は退役の希望が叶って、大湊警備府は、別の准将が司令官を務めている。
現在は、大垣守の政策秘書として、公私共に支えている。
そんな大鳳が、鳴り出す電話に出る。
「はい、もしもし。防衛省大臣室です。……高天原艦長ですか?大臣は在席されております。少々お待ちください」
そう言って、保留ボタンを押すと守に声をかける。
「大臣、いずも改二の高天原艦長からです。『外交案件』のご相談です」
「分かった」
いつもの重低音の渋い声で応えると、受話器を取った。
「大垣だ、どうした?……台湾寄港か、分かった。こっちで外務省に根回ししておく。……ああ、わかってると思うが、必要最小限の饗応を受けるだけに留めてくれ。ああ、わかった。よろしく頼む」
電話を切った守は、直ぐに外務省へと連絡を繋ぐ。
「もしもし、防衛省の大垣だ。すぐに大臣に繋いでもらいたい……」
――――
そして、再びいずも改二艦内。
「という訳で、寄港の許可が出たぜ?」
「……それより先に、案件が増えました」
深刻そうな表情を浮かべて、ミナが智紀に顔を向ける。
「どうした?」
「人工深海棲艦部隊の動きをキャッチ。狙いは台湾の模様。人工戦艦型と人工ル級・人工ヲ級・人工駆逐型三です」
人工深海棲艦には、二種類ある。一つは、
智紀は腕を組んで思案に耽ると、私室にいる陽子に連絡を取る。
「司令官、敵艦を発見しました。艦娘部隊の出撃を具申します」
『了解したぞ。ブリッジに上がる、艦娘達には出撃指示を出すぞ』
その直後、艦内にサイレンが鳴った。
艦娘達は艦内の発艦口へ、士官達はブリッジへ向かう。
「艦長、これは続きは後だな」
「そうだな」
日向と智紀もそれぞれ向かっていく。明石も、その日向の後について向かう。
発艦口では、艦娘部隊長でもある吹雪中尉が、陽子の指示を受けながら、
艦娘達の編成を考えている。
「取り敢えず今回は、初期配属の六名を出します。大井と北上は、私と共に本艦直庵隊として周辺警戒を。では出撃!」
『はい!!』
吹雪も吹雪
一番バランスのいい艤装、と言われている。
――――――
艦娘達を出撃させた頃、ブリッジには明石の着任から、いずも改二副長へと配置換えされた杏奈を含め、吹雪以外の士官が集まっている。
CICはコンピュータルームと化している為、
ブリッジが、CICの性質も持っているのだ。
Sハウンドの戦い方は、通常の相手にはオーソドックスな戦い方を好む。
ほっぽと恵海改二航の航空攻撃から始まり、次に榛名改二Gの
その後は、砲撃戦が始まる。
そしてトドメに、島風改二速改二、駆逐水鬼、恵奈改二航の雷撃攻撃をお見舞いする。
今回の敵は、然程強い個体ではなかったので、その頃には海の藻屑となっていた。
「あっけなさ過ぎたな……」
「そうですね……」
日向と恵海が、ぽつりと呟く。
「……っ!!いずも改二がル級の群れと交戦中!」
電探範囲の一番広い榛名が、サッといずも改二の方を振り返った。
―――――――
その頃、海中に隠されていた人工ル級が浮上して来て、いずも改二に襲い掛かって来た。
「キャプテン、アドミラル。伏兵に襲撃を受けました!」
「だろうな」
「だな」
そのミナの言葉に、予想していたかのように、ニヤリと口元を歪ませる智紀。
アレが、陽動だということを気づいていて、敢えて艦娘部隊を向かわせたのだ。
「直庵部隊、
『はいっ!』
陽子の指示に、通信機から元気よく聞こえる吹雪の声に、ふっと笑みを浮かべた智紀は、ミナに顔を向ける。
「ミナ、対深海棲艦戦闘用意」
『かしこまりました。対水上迎撃を行います』
智紀の命令に、ミナのホログラフは敬礼して応える。
吹雪と大井と北上は、大量のル級の群れと戦っている。
数的には五倍以上の敵だが、安心感から余裕の笑みを浮かべている。
いずも改二の側面から砲台が出て来て、ル級に砲撃を加える。
この砲台は、一つ一つが重巡主砲に匹敵するもので、
これも、明石驚異のメカニック技術に依るものである。
次々沈められていくル級が、残り一体になったところで、ル級は周囲に浮いている残骸を取り込んで
一部の人工深海棲艦には『取り込み』の能力が有り、他の人工深海棲艦の残骸を取り込んで、巨大化するのだ。
それに対する切り札が、日向の超電磁砲
「吹雪、撤退だ。後部から着艦してくれ。
『了解!』
巨大ル級を見ながら、智紀はミナに指示を出す。
「主砲発射用意!」
『対深海棲艦主砲、発射用意します』
艦首から出てきたのは、そう。
4.8トン榴弾を誇り、硫黄島も焼け野原に変えた、
遠くから迫って来る、巨大ル級に向けて照準を合わせる。
「ファイア!」
ズッガァァァァン!!
いずもを少し後退させながら、巨大ル級に向けて発射され、
その砲弾は巨大ル級の横を掠め……
チュガッ
その瞬間、砲弾が炸裂して、辺り一面を火の玉に変え、小さなきのこ雲が発生した。
そう、近接信管を持ち、中身は最新鋭の高性能爆薬。
そして、艦娘装備である為、都市区画を木っ端微塵に吹き飛ばすような威力が、
巨大ル級を直撃することになる。
爆炎と黒煙が晴れた時には、巨大ル級は影も形もなくなっていた。
『敵艦消滅』
「うん。こういう時だけしか使えないからな」
智紀が生暖かい目で、巨大ル級のあったところを見ている。
この、いずも改二の最強兵器の主砲は、周囲を敵艦に囲まれた時の突破用か、今回のように巨大化した相手にしか、使えないのだ。
しかも、砲弾は手動装填の為、ほぼ一戦闘に一発しか使えない、文字通りの
更にはコストが、
まさに、『波動砲』のような代物、と言っていいかもしれない。
今回発射したのは、新井田に『陽動で、いずもを狙っても無駄だぞ』という、ある意味
その頃には、台湾海軍の軍艦もやって来て、先方にも事情を説明する。
そして、その軍艦と共に艦娘部隊を収容しながら、台湾へと向かういずも改二だった。
その遥か遠い沖で、
姉妹艦の叢雲のような白い髪と頭部艤装、磯波のような三つ編み、そして吹雪型の制服……
「いずもにも武装を積んでいるか……まあいい。やりようはあるというものだ」
陽子達
多分本年最終投稿です
皆さん良いお年を