僕が響になったから   作:灯火011

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2xxx年。僕は響に包まれて、そして、世界はheloに包まれた。


halo world / bolero / Anyway HEROs(:||))

 自衛隊にお世話になって数日。無事に件の会見を終え、改めて自衛隊員を交えての会議を行っている。ただ、ここで明らかにした事実もあったりして、例えばそれは元々の俺は完全に行方不明という点、そしてアルバイト先の情報など事細かに伝えた形だ。

 

「会見ご苦労様でした。ひとまず、スマートフォンの持ち主の男性の行方、そして現在働いていた場所などの説明、契約関係はこちらにお任せください」

 

「そこまでして頂いてよろしいのですか?」

 

 思わずそう唸る。なにせ私とレ級が出来ることなんてほとんどない。せいぜい水に浮くぐらいなもんだ。

 

「ええ。何せ二次元のキャラクターが現実に現れているという非常事態。響さん方ではほぼ何もできないでしょうし、もしここで放り出した場合、何が起こるかわかりません。ゆえに、国家としてあなた方にご協力させていただくことが内定しております。ただその代わり、こちらの指示通りにしばらくは動いていただきたいのです」

 

 レ級と私は顔を合わせる。レ級も流石に困惑しているようだけれど、お互いにため息を一つついて。

 

「まぁ、そのぐらいなら。レ級も構わないかい?」

「構わんよ」

 

 そう答えた。確かに私もこれ以上アルバイトで食いつなぐわけにもいかない。いい機会だ。私たちの答えを聞いた自衛隊員さんは、笑みを浮かべていた。

 

「ありがとうございます。それで、一つ確認なのですが」

 

 隊員さんはそう言いながらも、女の子が落ちた現場の写真と、船の図面をテーブルの上、私たちの眼前に広げる。

 

「件の救出劇。仮に女児落下事件、と言わせていただきますが、事件当時どのように動いていたのか、改めて詳細にお聞きしたいのです」

 

 テーブルの上には船の甲板の図面、レ級、響と書かれた紙。他にも数枚の白紙が用意された。

 

「害するつもりは一切ありません。単純に今後の警備や安全設備の更新のためにと思いまして」

「判りました」

「おうよ」

 

 私たちは指と尻尾で図面をなぞりながら、当日の動き、つまり駅についてからの、金剛さんたちレイヤーさんに会い、駆逐艦に搭乗し、と事細かに説明を行っていく。そして女児の異常を見つけたところになると、自衛隊員さんが口を挟んだ。

 

「――そこで女児がいることがわかりまして、急いで向かったんです」

「なるほど…しかし、解せないのは、あなた方が女の子を見つけた方法です。当時甲板上に多数の隊員と一般人がおりました」

 

 隊員はそう言いながら、図面を指さした。そして、トントンと図面を叩き言葉をつづけた。

 

「そのさなか、逆の甲板に居た貴女が、女の子を見つけることは不可能に思うのですが」

 

 確かにその通りである。実際、普通の人であれば全く気付かなかったであろう。だが、私は艦娘で、レ級はその体の使い方をよく心得ているアドバイザーだ。

 

 レ級はトントンと足で図面を蹴り、自衛隊員さんの指を尻尾で軽くはたく。

 

「どうされましたか、レ級さん」

 

 怪訝な顔をして自衛隊員さんがレ級へと声をかける。それを確認したレ級は、右手を自らの眼前にもっていくと、わざとらしく人差し指を立てた。

 

()()()()()で、普通に考えてしまっては無理な事でしょう、だが、()()()()()()()()()()

 

 レ級はそう言いなら尻尾で私を指している。

 

「艦娘だと、船に立っている人物の位置の把握ができる、とでも?」

「その通りです」

 

 自衛隊員さんの顔が思わず強張る。そして、レ級を見ていた瞳が、少しの驚愕と共に私へと向かった。視線にこたえるように、首を縦に小さく振る。

 

「確かに把握が出来ておりました。当時乗船人数が〇〇〇人、うち一般人〇〇人、隊員〇〇〇人」

「…確かに、こちらの資料と同じ人数です。しかし、それでは把握が出来るとは言えません」

 

 そう言った自衛隊員さんの目を見つめて、もう一つ付け加える。

 

「そして、管制の一部に不具合があり、目下修理の為にメーカーの人間が3人」

「…」

 

 自衛隊員さんは思わず自らの資料に目を落とし、そして言葉を失った。その姿に満足したのか、レ級は笑顔を浮かべて口を開く。

 

「お分かりになられましたか?護衛艦に乗艦した時点でこの響は、艦内の人員とシステムの一部把握ができていたのです」

「それが、艦娘の能力というのですか?」

「正確に言えば深海棲艦と艦娘の共通能力ですね。今回は状況把握だけでしたが、その気になれば、響一人で護衛艦を動かせるでしょう」

「…それは…なんと、まあ」

 

 自衛隊員さんはそういうと暫く考え事をしていたようだったけれど、はっとした顔をしたかと思うと

 

「申し訳ありません。急用を思い出したので、一旦失礼いたします。しばらくは基地の宿舎を引き続き使っていただければと思いますので、では!」

 

 矢継ぎ早にそう言って、部屋を出て行ってしまった。レ級と私は顔を合わせて困惑するのみだ。

 

 

 数日後、その困惑は更なる困惑を持って、私たちに襲い掛かった。ある日、日が沈み、満月が出たころ。

 突然如月さんに呼び出されて、横須賀のドッグにレ級と共に同行してみれば、何やら勲章をたくさんつけた方々や、制服の方々が、式典のように並んでいた。そして私の姿を確認するや否や、敬礼を送ってきたのだ。

 

「ええと、如月さん。これは…?」

 

 敬礼を返しながら、如月さんへと言葉を投げる。

 

「申し訳ありません。急な事でしたので連絡がおろそかになっていたのですが、護衛艦を操っていただきたいのです」

「護衛艦を操る?」

「はい。先日の事件の説明、同僚からの報告を更に上に報告したところ、『ならば、響にやらせてみよう』とのことで…」

「それで目の前に護衛艦があるってわけか。」

 

 レ級と私は、敬礼を続ける彼らを横目に、眼前に鎮座している護衛艦を見上げる。名前を見て、思わず目を見開いてしまった。

 

「護衛艦()()()()、ですか」

「はい、少しでも響さんとご縁があるほうがいいだろうと」

「いいねぇ、いやぁ、このちっさい身でまた船にのれるってのは」

 

 レ級はどうやら順応したようだ。というか、うずうずしていることが手に取るようにわかる。なにせ尻尾をぶんぶんと振っているし、体が揺れている。

 

「ええと、そうだ…そうですね。わかりました。ただ、ご説明したとおり、まだ完全に操れるかは不明です。それでもよろしいですか?」

「問題ありません。艦内の把握だけでも十分です」

「響に如月よ。いいから乗ろうぜ。いやぁ、こいつぁ楽しみだ!」

「昂りすぎだよ、レ級。まぁ、ここまでお膳立てして頂いてるのであれば、乗ってみようか」

 

 私はそういうと、如月さんへと視線を向ける。すると、如月さんはうなずき、どうぞこちらへと手でタラップを指した。

 

「…未だに困惑していますが、レ級さん、私はどうすれば?」

「言われた通りやりゃいい。害しようってわけじゃなさそうだし。あの総敬礼見てみろよ。未だに手を下ろしてねぇぞ」

「逆にプレッシャーがすごい」

「ははは、まぁ、気にすんな。とりあえずは前、こんごうでやったようにすりゃあいい。意識を船に潜らせろ」

「…わかったよ、やってみる」

 

 そうレ級と私は小声でやりとりをしながら、促されるままに私とレ級はいかづちへと歩みを進め、甲板へと足が到達した瞬間に、意識を船へと向ける。甲板の状況、主機の状態、主砲の状態、各種残弾、燃料。全てが感覚として把握できていく。

 

「そう、そうだ。響。ゆっくりと船を把握すればいい。ええと、そうだな。足りない部分は私が手伝おう」

 

 レ級がそういうと、更に深いところが繋がっていく感じがした。

 

 

LOADING exes() system---- "A KANMUSU-type" Ver32.0517

 

.........error

not system core file.

ships system cannot link.

ships system read only.

 

re2-a:/with "Deep sea type A" Ver19.421113/.

 

system----"Deep sea type A" Ver19.421113.............load completed.

no oooaaa ss t

correct

 sssssssssssssssss sss sya seaaaaaaaaam sn dagiasuiaia a aaaaasysysyysysysysysyys

 

re2-a:/Emergency sys exec file load "akatuki",with "Deep sea type A" Ver19.421113/.

:/reload start/.

 

eeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeerrrrrrrrrrorrrrrr

....system----"Deep sea type A" Ver19.421113

.

.

.

.

.

.

.

.

.............load completed................hybrid system on-line.

 

This sys is JPN and USA secret system.

...PW?

 

re2-a:/※※※※※※※※※※※※※※※※※※※/

 

WELCOM!OVERRIDE SYSTEMS!

 

"A KANMUSU-type" Ver32.0517 with "Deep sea type A" Ver19.421113 over "akatuki"

Welcome.................none,

Setting mode Auto search.....................................none ship.

default system cannot start.....................................manual start?

 

re2-a:/y/.

Manual Start mode........ship neme?

 

re2-a:/DD-107 "JS Ikazuchi" type murasame/.

 

.....ship system loading......not name ship.

.....not system start.

 

re2-a:/Main start up sys,["Deep sea type A"over "akatuki"]

 

eeeeeeeereeeeeeeeeeeeeeeeeee........................

.....SHIP SYS LOADING.

.

.

.

.

.

.

.DOWNLOADED

.SYS FORCIBLY BOOT UP

.WELCOM THIS IS DD-107 IKAZUCHI MAIN CONTROAL

re2-a:/Delegate system authority/.

/"A KANMUSU-type" Ver32.0517/.

 

.....system restart.

DD-107 "JS Ikazuchi" type murasame

main control system "A KANMUSU-type" Ver32.0517

 

 welcom!

       good bye sis .

re2-a://.

 

 

舵、スクリュープロペラ、主機へとつながる燃料のライン、レーダー、各種砲座のコントロール。レ級の言った通り、前回のこんごうとは比にならないぐらいの把握が出来ている。

 

「どうですか?響さん。船の状況など判りますか?」

 

「…弾薬が今、空砲がセットされていますね。燃料は半分。乗員は〇〇〇人。なるほど、前回よりはかなり少なめですね」

 

 そう私が言うと、私を見ていた彼らからどよめきが起こる。端々から聞こえる言葉は、いやまさか、とか、本物か、とか。

 

「本当に艦内の状況が判るのですね…」

 

 如月さんも驚愕の表情だ。うん、これはちょっと、気分がいいかも。

 

「状況はひとまず置いておきまして、それで、どうでしょう。船は動かせそうですか?」

「レ級、どうかな?」

 

 そして、さっきから黙っているレ級へと小さく声をかける。私の声に気づいたのか、目を開けたレ級は、にやりと口角を上げた。

 

「システム起動に連結に完了だ」

「…つまり、どういうことです?」

 

 私は首を傾げていた。いきなりそう言われても、理解がおいつかない。

 

「艦娘のリンクシステムが確立した。つまり、この船はお前の手足となったわけだ。進むも曲がるも撃つも探すも、思い通りってな!」

 

 レ級はそう言いながら両手を天に上げる。その言葉に、少し私も口角を上げた。

 

「いけそうです。如月さん」

「…本当に?ええと、では、判りました。それと、一つお願いがありまして」

 

 如月さんは何か一つ覚悟したような顔で、私へと言葉を投げていた。

 

「お願いですか?」

「ええ。実際に離岸していただいて、空砲を撃って頂きたいのです」

「それは、恐らく可能ですが、良いのですか?」

 

 ここは横須賀、比較的町中であるし、こんなところで普通は空砲を撃てない。しかも今は夜だ。苦情やら何やらすごいことになりそうである。だが。

 

「かまいません」

 

 そう如月さんは言い切った。それならば。

 

「…判りました。では出来るだけやってみます」

 

 私がそういうと、如月さんは船体から離れる。同時に、私たちを見ていた彼らは席を立ち、全員の目が私とレ級へと向く。

 

「撃てってか。響、どうだ?いけるか?」

 

 心配そうなレ級の声を聴いたが、不思議と不安はない。

 

 強く、うなずく。

 

「ならいい。細かいところは調整するわ。思い切りやってみな」

 

 これから進むであろう、月夜に光る海原を見ても、不思議と、恐怖は無い。

 

 

―主機は火が入っている。

それは心臓の鼓動のように

 

―タービンを回せ

制御は息を吸うように

 

―舵を取れ

それは歩くことと同じ

 

―レーダーを巡らせろ

美しい景色を見るが如く

 

 

 歩くように、補助もなく、タグボートもなく、いとも簡単に離岸する船体。不安は全くない。何せ、これは私の体なのだ。歩くことに何が不安があるというのか。ざざ、と波が切り裂かれる。レ級に視線を落とせば、爛々とその目は輝いていた。

 

「じゃあ、撃とうぜ」

「派手に一発」

「おうよ」

 

 

―砲を回せ

親指と、人差し指でピストルの形を作って

 

―撃鉄を起こせ

…それは、人間としての感情か。はたまた響としての本能か

 

「テェー!」

 答えは爆音の中に消え、砲身より吐き出された煙が月を覆い隠し月暈(halo)を作っていた。

 

 そして、見事に任務を果たした私は、また何の補助もなく、元居た場所に船体を休める。

 

「どうでしょうか、私一人いれば、まったく何も問題なく船を動かせるのです」

 

 おそらくこの時の私はどや顔をしていたことだろう。

 

「…これは、想像以上です。ええ、想像以上です。すいません、見くびっておりました」

 

 そういう如月さんの顔は、申し訳ないけれども老けていた。10歳ぐらい。

 

「わかればいいんだよ。わかれば。全く」

 

 レ級も私と同じようにどや顔だ。

 

「これは、革命であると同時に恐ろしい。何か対策を練らないといけませんね…」

 

 聞こえてますから。後ろの勲章を持った方々。そんな恐ろしいことは致しませんって。

 

 

 そして、その後。私は正式な自衛隊員となることが決定するのに、時間はさほどかからなかった。曰く。

 

 『一人で護衛艦を動かせる人物を放っておけないし、人手不足で活躍の場すごいあるんで給料とか出すんでこれからよろしく頼む。(レ級も)』

 

 ということである。

 

 その通達を如月さんから聞いたときは、またもレ級と大笑いしてしまっていた。現実感が無さ過ぎて、面白かったのだ。

 

 そして、その日の夜。如月さんに許可を貰い、横須賀の旧鎮守府の中を散策していた。月夜に照らされる鎮守府のレンガが、なんとも美しい。

 

「いや、まったく現実感がないね。艦娘になって、自衛隊に入って、護衛艦を操る。世界が夢うつつの幻みたいだよ」

「なんだ、胡蝶の夢ってか?詩的だな」

 

 クククとレ級が口を押えて笑う。私も自分の口角が上がっていることを自覚していた。

 

「そりゃあ。何も無ければ土方で人生終わってたからね。ここまで注目されるなんてさ」

「現実感がねぇってか」

「うん。なんか夢をみてて、目を覚ましたら響になる前の土方の自分に戻るんじゃないかって思うよ」

 

 うなずきながら自分の言葉を改めてかみしめる。だが、頬をつねっても目を覚める様子はないし、なんど目をこすっても、鏡に映る私は響だ。レ級も消えやしない。

 

「私も確かに、戦いから離れられたのは夢の如くだ。でも、安心しろ。現実だ。私も夢の中のようだが、これは現実だ」

「そっか」

「ま、ただ、確かに今は夢幻のような感じがするよ」

 

 レ級はそういうと、空を見上げる。 

 

「そうさな。"halo world"って感じ?」

「hello world ではないんですか?」

「だってよぉ」

 

―なんていうか、月にかかる白煙くらい、現実味が無くて、吹いたら消えそうな世界って感じがするだろ?―

 

―確かに―

 

水面にぼやけた月が落ちる。静かな水面が、月光に輝く。世界は、確かに美しい。

 

「レ級、そういえばこの後夕飯どうしようか?如月さん曰く言ってくれれば護衛つけて外もオッケーってことだけど」

「お?本当か?それなら、ドブ板でステーキを喰いたい」

「それはいいね。合点承知だよ」

 

 

「提督、今晩どこに行く?」

「そうだなー。ちょっとドブ板でも行くか?」

「いいね、賛成。ステーキを食べてビールでどうだい?」

「お、じゃあ良い店知ってるぜ。行こう」

 

 とある別世界。男二人が、闇夜に溶け込む。

 

「しかし響も順応しきったよな。完全に男じゃねーか」

「まぁ、彼女もいるしね。せっかくなら楽しみ切らないと」

「違いないが、しかしなぁ。後先考えてねぇよなそれ」

「ま、艦娘に戻ったらそれはそれ、これはこれ」

 

 そういいながら響と呼ばれた男は、ビールを煽る。

 

「響さんはクズだねぇ」

「艦隊に文字通り股をかけている提督ほどでも」

「痛いところを」

 

 提督と言われた男も、同じようにビールを煽る。

 

―はははははー

 

「クズどうし、もう一杯ずつ」

「乾杯!」

 

 他愛もない話をしながら、夜も更ける。そしてもうそろそろてっぺんを回ろうかと言う時である。店を追い出された響と提督は、のんびりと夜道を鎮守府へと帰っていた。

 

「にしてもまー、お前も本当順応したよなぁ」

「いやぁ、正直提督と対等に話せて、友達になれる。こんなこと艦娘じゃあり得なかったからね。楽しまなきゃ損ってね」

 

 2人が歩く、土埃舞う道路に、月明かりが優しく降りる。

 

「お、月が綺麗だな」

「それは誘っているのかい?提督そっちのケがあるのかい?」

「男相手に誘うかって。見てみろよ」

 

 提督に言われ、響は月を見る。おぼろげな雲がかかり、月がぼやけていた。

 

「お、見事な月暈だね」

「ああ。月暈に覆われる世界。常世は全て、"halo world"ってな」

「"hello world"を捩ったわけだね。確かに今の月、"ヘイロームーン"だけどさ」

「いいじゃねぇか。艦娘も深海棲艦も、正直言って月にかかる暈みたいな夢みたいなもんだしよ」

「提督がそれを言うのかい?」

「だってよぉ?」

 

―美女同士で敵味方に別れて戦うってさ、なんていうかどっかのアニメや小説の中の世界じゃねぇか。見てるこっちとしちゃあ最高だけどなー

 

―はは。確かにねー

 

世界にぼやけた月が落ちる。静かな街並みが、月光に輝く。世界は、かくも美しい。

 

「で、この後はどうする?2軒目?」

「あー。実はな。ちょっと極秘任務がな。一旦鎮守府に戻る」

「へー。珍しいね」

「お前も来るんだ」

「私も?なんでだい?」

 

 すっと提督の目が細くなる。そして、鋭く言葉を紡ぐ。

 

「明らかに今の技術じゃありえない船を捕縛した。高性能の電探がついて、明らかに重油のエンジンではない何かで動いている。砲門は一つだが、他にも多数の武装がありそうな奴さ」

「へぇ。出所は判っているのかい?」

「全く不明だ。お前と同じように。急に。横須賀に係留されていた」

 

 ほほう、と響は口角を上げる。 

 

「…なるほど、この体と一緒ってわけだね?諸々の手がかりって感じだね」

「そういうこった。深海棲艦以外にやっかいごとはこれ以上増えてほしくないんだがねぇ」

「ま、とりあえず私が船に乗って何か起きれば面白いんじゃないかな?リンクできたりしてね」

 

 うげ、と提督は唸る。

 

「やめてくれや。ただでさえお前の体で厄介事なのに、男で船動かせるとかよぉ…仕事が増えて仕方がねぇ」

 

 ククク、と響は口元を押えて笑う。

 

「そうしたら愚痴に一杯付き合ってあげるよ」

「…それなら、仕方ねぇかな」

 

 少しの矛盾を抱えながら、世界は、かくも回り続ける。艦娘と人間の争いは続くし、人間同士の争いも続く。しかしながら、世界は、かくも、美しい。




ここで、完結と相成ります。

これからも「僕」は響のままで、レ級はちいさいまま。

あっちの世界では深海棲艦と艦娘の戦いは続きます。

ですが、その未来は楽しいものになるでせう。


ご覧いただきまして、誠に感謝でございます。

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