今作品はアニメ終了時の場面までは頑張って、それ以降は様子を見ながら考えたいと思ってます。
突然の転生
青年は元々弱病だったことが原因で短い人生の幕を閉じたはずだった。
「はいはい、お疲れ~。まぁ、こっちの手違いとはいえ、良くこれまで生きれたもんだ。うんうん、感心、感心。」
「誰?」
突然の状況に青年は何も飲み込めず、咄嗟に純粋な疑問をその少年へと投げかけた。
「ごめんね~。ちょっとそういった問答はいちいち構っていられないから。それではいきま~す!転生チャンスルーレット、スタート!!」
突如、黒枠が青年の頭上に現れ文字が騒がしいメロディーと共に回転し始めた。
「さあ!
っ!………………願い?
そう尋ねる少年の瞳は全てを見通すかの如く見開かれていた。
空は驚いたものの、自然にこれまで何度となく考えた願いを呟く。
「僕は自由に生きたかった。何の
少年の瞳から目を逸らすこと無く、空はそう言いきった。
少年は少しの静寂の後、ニヤリと笑い手を叩いた。
「おめでと~!見事君は転生権利を手に入れた!」
あっさりとした発表に空は呆然としていた。
そしてハッとして頭上を見上げ、黒枠を確認する。そこには『健康状態を維持』という文字が浮かんでいた。
「それが転生する君に与えられる力だ。普通ならここですぐに転生してもらうんだけど、最初言った通り、君は僕達の手違いで身体と
「ちょっと、ちょっと待ってください!それじゃあ僕は死んだんですか?」
捲し立てるような話を遮り、空は確認するように尋ねる。
「それに違う世界ってどういうことなんですか!?」
「………君は死んだ。結果、生まれ直す。死んだ世界ではなく、君が生まれるべきだった世界へ。これ以上は話せない。その質問に答えられなくて残念だが、それがルールなんだよ。」
空はその雰囲気からこの問答が無駄だと察したのだろう。
「そう…ですか。」と溢し、足下に視線を落とした。
「こっちの話はまだ終わっていないよ。君の人生を鑑みた結果、願いを3つ叶えることになった。」
「………願いはあれ以上ありません。」
「知ってる。だからこっちで決めておいたよ。1つ目はそのままの年齢で転生させよう。これは君の願いを最速で叶えるため。
そして2つ目は身体能力の莫大な上昇。これも君の願いのサポートだよ。向こうの世界は危険が多いからね。」
その言葉に空はピクリと反応したが、少年は発言を阻止するように続けた。
「3つ目は君の想像した物質、事象、能力を現実へ生み出し、発生させ、発現させる力。まぁ、これはサービスの様なものだよ。君は動けない事が多かったから、こういう力があった方が楽しめるでしょ?」
空は何とも言えない表情であったが、ふと気が付いた。
………あれっ?この子は何て言った?動けない事が多かった?……僕は死んだ。転生?じゃあ、目の前の少年は?
何故今更そんな事を考えていたのか?
いや、空からしてみれば、突然の事で整理できなかったのだろう。
だが、ここへきてそれに気付いた。
この子………神様?
空の思考を見抜いた少年は再び口角を上げ、告げた。
「これで準備は整った!新しい人生の始まりだ!生まれる世界は危険だ。しかし、君は新しい身体と力を手に入れた。危険でありながら、イージーモードとなった世界で君は自由に生きると良い。」
少年は大げさに手を広げ、空の周囲が光に包まれていく。
「待って下さい!他に説明は!?」
視界が光で溢れていく中、空が最後に見たのは優しく慈愛に満ちた少年の微笑みだった。
空は気付くと、廃墟と化した街中に佇んでいた。
崩れ落ちたビル、赤く錆び付いた工場、得体の知れない植物。
そして何より、所々に見える血痕がこの世界が危険だということを物語っていた。
あの少年が言っていた言葉が空の中で繰り返される。
僕が生まれるべきだった世界………。
しかしそんな時に激しい目眩と頭痛が襲った。
「クッ!………アァ…。」
空はあまりの激痛に頭を押さえ、膝を着いた。
次に起こったのは感覚の鋭敏化。視界では光が明滅し、耳では複数の音が騒音となり響き、嗅覚で様々な物が混ざり合った何とも形容しがたい臭いを、そして全身には複数の視線を感じ、それが数分間続いた。
結果、空はその小さな者達の視線に晒されたまま倒れ、意識を失った。
「ごめんね、お母さん。また体調悪くなっちゃって。」
「しょうがないわ。身体が弱いんだもの。」
『また、仕事を途中で止めて来ちゃったわ。何でこの子はこんなにも弱いの。』
ああ、知っている。今まで何度も見てきた表情。お母さんが何を思っているか、僕をどう思っているか。
「じゃあ、私は仕事があるから、また明日来るわ。」
『これ以上仕事を休めない。もう、お金も限界よ。』
できないことが多い代わりに、気付いてしまう小さな変化。それは日に日に大きくなり、知りたくなかった事まで僕は自然と理解する。
「うん、分かった。…………………………ごめんね。」
僕が、僕という存在が周囲には迷惑なのだと理解した………。
「…………………ッ!?……ここは?」
空は目覚めるとベッドの上にいた。
起こそうとした身体は倦怠感ですぐにはうまく動かせず、目だけを周囲に向けた。
どうやらどこかの一室に運び込まれたらしい。
しかし、ベッド以外は机と椅子が二脚、机の上にはランプが灯っており、どうも寂れた場所だと空は感じていた。
すると、ベッドで寝ている足の方からコツコツと床を叩く音が聞こえてきて、一人の男性がやって来た。
なんとか身体を起こし、その男性を視界に収める。
背は低く、杖を突き、それでいて背は曲がっていない。もしかしたら足が悪いのかもしれないと空は考えた。眼鏡をかけ、白髪で柔和な笑みを浮かべていた。
「まだ身体を起こさない方が良いですよ。」
「大丈夫です。それより貴方が僕を?」
「いえ、私は貴方がここへ運び込まれてきたので様子を見ていただけです。」
「いえ、それでも有り難う御座いました。」
空は軽く頭を下げ、感謝を述べた。
「いえいえ、私は
「僕は神代です。えっと、外周区とは?」
彼は少し目を見開くと少し考えて口を開いた。
「失礼ですが、貴方はどこから?」
空にとっては非常に困る質問だった。
それを読み取ったのだろう、彼は「申し訳ない。」と言って詮索するのを止めた。
「すみません。正直、分からないんです。自分がどこから、どうやって来たのか。」
「それはもしや記憶が?」
「少なくとも外周区や、この街のことも全く分かりません。」
彼は空の事を純粋に心配していた。それだけでなく、既に神代空という名前を病院服から見つけ、確認をとっていた。
しかし、その結果は『該当無し』。神代空と言う名前、神代という苗字さえ登録されていなかった。
だから、本人の口から聞くしかないと考えていたのだ。
「フム、君はこれからどうするのですか?」
「まだ、決めてません。」
どっちにしろ、行き当たりばったりだろうな。
彼はそんな空をしげしげと見つめた後、うんと頷いた。
「であれば、私の手伝いをお願いしても良いでしょうか?勿論、話を聞いた後に決めて頂いて構いません。」
「それは、どういう?」
空は彼の言葉に戸惑っていた。
話をして数分。ただそれだけの時間で手伝いを頼まれるとは流石に想像できないだろう。
「簡単な話です。私が貴方を気に入ってしまった。きっと貴方ならあの
柔らかな笑みを再び浮かべた。
「これも何かの縁です。とにかく、今はゆっくり休んで下さい。もう夜も遅い、続きは明日話しましょう。」
「有り難う御座います。」
そう言って空は素直に瞼を閉じ、眠りに就いた。
それを確認した松崎は感慨深いという様に何度も頷く。
「まさか、あの子達が他人を連れて来るとは。それにとても彼を気にかけている。彼には何かあるのかも知れない。」
そう呟き、彼は部屋の奥へと姿を消した。
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