分かっている、これが滑稽な道だってことくらい。

※これは昔作者が自サイトで公開していた小説を加筆修正したものです。探せば今でも残っていますが、元サイトは既に更新出来ないですので思い切ってこっちにアップしました。
 これはエドTS(正確には半陰陽の一種)設定のSSです。短編読み切りですが、もしかしたら長編にするかもしれません。時間軸は原作初期です。
 尚、エドTS小説ですが、長編にする場合確実にノンカップリング作品になります。

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ばんははろ、EKAWARIです。
この作品はあらすじでも書いたように元は自サイトで発表していたハガレン短編小説を加筆修正したものです。
エドTS設定です。ばっちこいな方はどうぞ。


滑稽な道

 

 俺達は旅をしている。

 弟のアルフォンスと二人で。

 右手と左足、そして弟自身の肉体を失い、賢者の石を手に入れ元に戻ると彼に誓った。

 でも俺は怖いんだ、アル。

 俺の秘密にお前がいつか気付いてしまうんじゃないかって。

 

 

『滑稽な道』

 

 

「あれ、兄さんどうしたの?」

 久しぶりに東方司令部のロイ・マスタング大佐のところに寄った帰り道、弟は突然そんな疑問を兄へと投げかけた。

それに兄である少年……上着を脱いで、胸元に風を煽りながら歩いていた金髪金目の目立つ風貌をした15前後の子供……最年少国家錬金術師であるエドワード・エルリックだ。は、だるそうにうな垂れながら「何が?」と大きな鎧の姿をした少年……彼の実の弟であるアルフォンス・エルリックに質問を返す。

 それに不思議そうな声を上げながら、まだ少年特有のあどけない声でアルは言った。

「なんか胸元少し膨れてるけど、また喧嘩でもしたの?」

 瞬間、エドははっと目を見開いた。その顔色は気のせいだろうか、一瞬青ざめたようにさえ見えた。

「兄さん?」

 そんな兄を弟は不思議そうに見つめる。

 其の視線を前にエドは「なんでもねえよ」と呟くと、脱いでいた上着を勢いよく羽織って弟へと背を向けた

「兄さん?」

「わりぃ、アル。俺、大佐にまだ用件あるの思い出しちまった。先に宿に行っててくんないか?」

 言いながら、エドは下げ髪を揺らしながら、今まで歩いてきた道へと駆け戻っていった。

 

「いつまで弟に隠しておく気だね?鋼の」

 自分が庇護をしている子供の片割れを前に、黒髪、黒目の軍服を着た若作りの青年……ロイ・マスタングは廊下の角からそう金髪の下げ髪の主に話しかけた。

 そんな男を前にエドは不機嫌そうに眉間に縦皺を増やしながら言う。

「あんた、見てたのかよ」

 ったく、悪趣味とボヤきながらエドはそのまま目の前を通り過ぎようとする。

「待ちたまえ、鋼の」

 しかしそんなエドワードを前にして、男は壁に背をつけ、腕組みをしたままそうエドに待ったをかけた。けれどエドはそのままその言葉を無視をして通り過ぎようとする。

 そんなエドを前にロイは言った。

 

「いつまでも隠しておけるものではないだろう。それに……君の体はいずれ、完全な女になる」

 ぴたりと、その言葉を前にエドの足が止まった。

 

「今は微かな胸の膨らみもやがては「喧嘩で腫れました」では誤魔化せなくなる。現実を受け入れたまえ」

「うるせえよ、クソ大佐」

 そんなこと俺が一番よくわかってんだよ、という言葉を雰囲気だけで伝えながら、エドはロイをじろりとに睨み付ける。

 それにロイは聞き分けの無い子供を目の前にしたような表情でため息を一つ吐いた。

「女の体になることがそんなに気に食わないかね?」

「じゃああんたは女になりたいのかよ?」

 

「鋼の」

 ロイはキツめの口調で名を呼びながら、静かにエドワードへと近づいていった。

「君は元々女として生まれた筈だったのだから。女になるのが今だったというだけだろう」

「わかっている!」 

 その大佐の言葉を前に、エドは吐き捨てるように言いながら、俯いた。

「俺の体は細胞レベルなら「女」だ。科学的に判断すると女だ。何の手違いか「男」として生まれただけで本来の、この体の性別は女なんだ!だから今「女」に戻ろうとこの体は変化していっている。でも…」

 アルには知られたくない。

 ぽつりと蚊の鳴くような声でエドは呟いた。

 肩から先ほど羽織った上着が落ちる。

 そんなエドを前にどこか痛ましいような労るような眼差しを送りながら、エドワードより一回り年上の軍人は諭すような言葉をかけた。

「君は……それでいいのかね? 隠し通せると本気で思っているのかね? 彼は私よりも君の近くにいるのに?」

 それに、ずるりと座り込みながらエドはもう一度「わかっている」と呟いた。

「だけど、滑稽と笑われても、これが唯一の俺の道だ」 

 そうして泣きそうな顔でエドは笑った。

 

(何故君はそういう道ばかり取る、鋼の)

 

 辛いとわかっているのにそういう道ばかりとる。

 まだ15歳の小さな体の中に、外見を見てては考えられないほどの苦悩を抱えて。

 

「もう帰りたまえ、鋼の。人が来ないうちに弟の元へ」

 

 去っていく金髪。

 目に浮かぶ泣きそうな笑顔。

 何度この背中とこんな笑みを見ただろう。

 

「滑稽な道…か」

 ロイの心とは反対に、見上げた空は青く澄んでいた。

 

 

 




ご覧頂きありがとうございました。
因みにエドの設定。
歴史とか自体は原作と同じ。
ただ、男ではなく半陰陽設定の一種で、TS。
外観は男として産まれたため、男だと思われ育てられたが、国家資格を取った際に受けた精密検査で実は染色体がXY(男)ではなく、XX(女)だったことが判明した設定。
遺伝的には女であり、男性器だと思われていたものも実は巨大化したクリ○リスだった設定。(因みに実際そういう体の人間は実在します)
そのため、第二次性徴を切っ掛けに徐々に体が女性に近づいていってるが、エドはそのことをアルに隠したがっている。
あと作中で専門家じゃないのもあってロイやエドは誤解しているが、染色体は女性といっても半陰陽の一種なので、完全に女になることはないが染色体や遺伝的には女なので完全に女性に最終的になるものだと2人は思っている。実際は男に近い周期と女に近い周期を定期的に繰り返すことになり、女性周期の時は外見もかなり女に近づくことになる。
尚、子供を作ることは高確率で不可能。
因みに連載する場合は、カップリング無し(恋愛無し)で話は進むので悪しからず。何故か元サイトではロイエド希望の方がいたが、俺はあくまでTS萌えが基本なのでロイエドにする予定は微塵もありません。ロイはあくまでも全て知っている大人の保護者ポジです。


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