暴姫さん? オレ遊んでくるから   作:フリードg

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9話

 

 

 夜。寮の消灯時間。

 

 

 黒犬の寮(ブラックドギーハウス)に白猫がやってきた。

 

 

 それは白猫の姫(シャル)

 勿論、忍び込んだ場所はハオのいる部屋で、部屋に窓から飛び込むなり、シャルはハオの胸に飛び込んだ。 たたらを踏んだが、ハオはしっかりとシャルを抱き留めた。 理由も言わず、何も打ち明けず、ただただハオにしがみ付いていた。

 

「おーいシャル? ここ黒犬だぞ。せめて白猫の方で、じゃ駄目だったか?」

「…………もうちょっと、もうちょっとだけ」

「ほいよ。……ったく、今回だけの特別サービスだぞ?」

 

 色々と犬塚を使ったワガママ放題だったシャルだったが、そのワガママはまさに暴姫(タイラント・プリンセス)そのものだったのだが、何があったのかパタリと止んだらしい。

 止んだのは止んだのだが、その影響は凄まじく、犬塚に対する周りの評価はガタ落ちになったのは当たり前な話。寮も追い出されたし。最終的には、シャルのワガママが止んだから、何とか寮に入るのを許してもらえた様だが。

 

 

「……ペルシアはハオと同じよ。だって、いつだって私の傍にいてくれたから。……こうやって、私に温もりをくれたから」

「だったよなー。ペルシアは曲がった事が大嫌いだったし、シャルのワガママを一緒になって止めた事だって、何度かあったしな? オレ以外でそんな事出来るのペルシアくらいだった」

「そうよ。……あなたたちは私の為に怒ってくれた。だから、私の理解者で、私の、たいせつな……人。なのに、なのに……」

 

 シャルの目元には涙が溢れていた。流さないように必死に頑張っていたのだが、それでも止められない。

 

「どうして!? よりによってあの犬塚!? 何で、何でよ……! 私の、大切な人が、犬塚なんかに…………ぅぅ」

 

 ハオの胸の中で嗚咽を漏らすシャル。ここまで弱さを見せるシャルは本当に久しぶりだった。そう、いつも寂しかったと言っていた最初の頃以来だ。

 

 

「………人の想いっていうのは、簡単には止められないもんだ。シャルだってわかってるだろ? 好いた惚れたは自由。黒だろうと白だろうと関係ない」

 

 

 後ろ髪を撫でながら、ハオは抱き寄せた。

 

「1つ聞くけど、ペルシアの事、シャルは信じられないのか?」

「っ……信じられない訳ないじゃない! ペルちゃんは、私の一番の親友。私の事をシャルちゃん、ってまた呼んでくれて、いつだって一緒にいる、って言ってくれたんだから。ペルちゃんの事、信じられない訳ないっ!」

 

 シャルは、ハオの胸から顔を離し 至近距離でハオを見つめながら断言した。ペルシアの事を信じてる、と。シャルの真剣な顔。いつも笑ってる顔ばかりだから、その真剣な顔も随分と久しぶりだった。

 そんな顔には、笑顔で応じるハオ。

 

「それだけ判ってんならじゅーぶん。そんなペルシアが選んだ相手が犬塚だ。なら、信じられるだろ? それに、間違いなくペルシアを変えたのも犬塚。ペルシアが一番の友達、親友なら、そんなペルシアに愛しい人が出来た事を祝福してやらなきゃだ」

「でもっ! 犬塚と一緒にいるって事は、ペルちゃんに危険が……!!」

「大丈夫だって」

 

 危険だという事はハオだってわかってる。東和とウエストの関係も。

 だが、それでもハオは笑顔を崩さなかった。

 

「この自分たちの世界を変えよう、って強く思ってりゃ変わってくもんだ。強い覚悟も決めたんだろうさ。それに、ペルシアと犬塚なら なんとなく大丈夫って思う。オレ信じれる。ほれ、経験者は語る、ってヤツだ」

「…………確かに、ハオは自分の国を変えることが出来た。でも、それはハオだから。ハオだったからで……」

「シャルも信じてやれって。犬塚はアレだと思うけど、ペルシアの事。止めるんじゃなくて、時には見守ってやるのも優しさだって思うぜ。……シャルの時だって、ペルシアが支えてくれただろ? 今度はシャルの番だ」

「………………………う、ん」

 

 シャルはハオの目を数秒だけ見つめて、そしてまた、胸に顔を埋めた。

 二度、三度とハオの胸に自分の頭をぶつけるシャル。そして、強く強く当てた。

 

 

「……今後、ペルちゃんが危険な目にあってたら、絶対、殺すわ。犬塚のヤツを」

「おう。その意気。一回殺られた位でヘコたれるヤツじゃねーってのはよく知ってる。バンバンやってやれシャル」

「勿論よ。……私はシャル姫。ウエストの暴姫。全身全霊でやるわよぉ。……って、ハオ?」

「おう?」

「ペルちゃんと犬塚の事……知ってたの?」

 

 あまりに自然に会話してて、気付くのが遅れてしまってた。

 知らないのであれば驚かない訳がない。天敵と言っていいし、毎日のように争って争って、その中心にいる2人なのだから。

 つまり、ペルシアと犬塚の関係について知っていなければ こんな反応はあり得ないから。

 

「ん? おう。知ってるゾ」

「知ってたのならもっと早くに教えなさいよぉ!!」

「ぐええええっ!! し、締まるしまるシマル!」

 

 胸倉をつかみ上げたが、ある程度すっきりしたのか直ぐに下した。

 

「けほっ…… ったくよぉ、元気になった途端コレかよー……」

「ハオが悪いんでしょぉ。ペルちゃんの事、黙ってたんだからぁ。こーんな大切な事、大事な事。とーぜんですっ」

 

 んべっ、と舌を出すシャル。

 いつものシャルに少しは戻ったとハオは感じた。

 

 

 

『シャルのお願い☆』 

 

 

 それを聞いた時。いつも飄々としているハオでも、シャルの事が心配だったりした。

 シャルがそう言うお願いをする時は、いわばワガママ宣言。

 あまりワガママを言い過ぎると駄目だ、とハオは小さいころ、シャルに言い続けていた。口で言うだけでなくハオは手を出した。それが笑顔でチョップの正体。

 

『ふつーな願いなら聞いてやるけど、シャルのお願い☆ はダーメ。ぜーったい無茶なこと要求するし? そーゆーのダメだー、って言っただろ?』

 

 そういってから、シャルは 少なくともハオに対しては言わなくなった。

 スコットなどお気に入りなペットたちには どんどん要求してるが、それは目を瞑っていた。皆楽しそうだったから。(スコットは結構しんどそうだったが)

 

 

 

 

 今回シャルは、神妙な顔で『……私がする事、暫く目を瞑ってて欲しい』とだけハオに言ったのだ。

 

 

 

 

 

「黙ってて悪かったな。と言うか、犬塚があーんなあからさまな態度見せてりゃ、普通に、バレると思うんだが(犬塚がペルシアを助けたトコ見たのが決定的だったけど)鈍感なヤツばっかだよなー。ここって」

「ハオが鈍感とかいう!? ってそれより、たとえ そーだとしても、白猫と黒犬の関係を見たら、何よりも不味い、ってわかるでしょぉ! いっくらハオが特別生だからってぇ!」

「わーってるわーーってる。郷に入れば郷に~だって事くらい弁えてるって。ただでさえダリア学園は、オレのワガママ聞いてくれてんだし」

「猫と犬の間を行ったり来たり、遊んだり楽しんだり、そんなの堂々と出来るのはハオだけぇ! ちゃーーーんと頭に叩き込んでなさいよぉ! 黙ってた罰として、今日は添い寝してもらうからぁ」

 

 

 ふふんっ、とシャル得意気になっていた。いつものペースを徐々に取り戻してる様だ。

 

 

「成る程ー。だから、寝間着で来てたのか。最初っから考えてたんだな? そーんな姿で外出るなんて、シャル? はしたないゾ~?」

「だいじょーぶ 誰にも見られてないわよぉ! 本気出した私を目で追いかけられると思ってるのぉ? と言うより、そもそも見られてたら大騒ぎになってるでしょぉ?」

「ストーキングスキルMax、って訳ね~」

「人聞き悪い言い方しちゃやぁよ」

 

 確かにその通り。白猫の姫が黒犬の寮(ブラックドギーハウス)に侵入したともなれば、警報装置が鳴り響きそうだ。黒犬の生徒たちの怒号と言う名の。

 

「んじゃあ、ハオには早速罰を~、ね?」

 

 シャルはにやりんっ! と目を光らせて両手を広げた。

 いつもなら、ここからハオとの追っかけっこの始まり始まり~。  

 

 

 

―――なのだが。

 

 

 

 

「よっしゃ、一緒に寝るか?」

「………へ?」

 

 広げた両手をさっと取ったハオは、そのまま抱き寄せて、ベッドへIN。

 まさかの行動にシャルは思いっきり動揺した。

 

 たま~に、ハオが色々としてくれる時はあるんだけど、不定期な完全ランダム。そして、起こった時、いつもいつも慣れない。

 

「うにゃぁっ!?」

「ほい、確保~ & 部屋消灯っ」

 

 いつの間にか、ばっちり部屋の灯も消した。

 

「は、はおっ!? きょ、今日は何でそんな積極的なのぉ!? そんな気分だったの!?」

 

 かぁぁ、と顔を真っ赤にするシャルを見て、ハオは優しく笑った。

 その頭を抱き寄せて、数回その頭を撫でる。シャルは 最初こそ慌てていたが、直ぐに気持ちよさそうに目をふにゃりと細めた。

 

 

 温かいハオの温もりと、落ち着けるハオの鼓動。子供の頃はよくこの温もりを感じて、鼓動は子守唄にしていた。シャルはそれを思い返していた。

 

 

 

 

「今日は一緒にいるよ。………それにまだ、無理してんの見え見えだぞ。シャルがオレを騙せると思わない事だなー?」

「っ………。もうっ。 でも、それでこそ 私の旦那様よね」

 

 

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