暴姫さん? オレ遊んでくるから   作:フリードg

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10話

 本当に幸せそうだと言えるだろう。

 

 

 シャルは、ハオの腕を、身体を。……ハオの全てを 抱き枕にしている。それは もう二度と離さない、と言わんばかりにだった。自分の腕を、足を、存分に絡ませ 時折 頬擦りさせている。

 

 その寝顔は、まるで日向ぼっこをしている猫の様に 気持ちよさそうだった。

 

 

 当のハオはと言うと……。

 

 

 この東和とウエスト、いがみ合ってる二国であったとしても、世の男であれば、誰もが天に上りそうな幸せ極まりないシチュエーションだというのにも関わらず、相変わらずな様子だった。

 

 目を覚ましたのはハオの方が早かったようで、ちらりと視線を部屋に備え付けられている時計へと向けた。

 

 

 

「ん――、そろそろ、か……」

 

 

 

 と小さく呟いた後、シャルの頭を撫でながら呼んだ。

 

 

「おーい、シャル~。起きろ~~」

「にゃむにゃむ~…… あと、3分~」

 

 

「おぉ~い、シャル~~。3分経ったぞ~」

「にゃむにゃむにゃむ~~……… あと、1分~」

 

 

「うぉ~~い、シャルル~~。1分経ったぞ~~」

「にゃむむ~~ あと、10分~」

 

 

 

 全然起きる気配の無いシャルは、更に時間延長を所望。

 

 いやいや、目を覚ましている様な気もしてきた。

 

 狸寝入りでもしているのか? と思える。ハオも大体わかっている様で きらんっ! と笑ったかと思えば 軽く咳払いをして続けた。

 

 

「こほんっ。あー、シャル~? 後5秒で起きないと実力行使だぞー」

「にゃむぅ~……。ハオのなら、良いよぉ~~…… ごーいん、でも。 むにゃ」

「よーし、言ったな? 言質取ったり~……、ってなわけで、はい、さん、にー、いちっ…… ぜろぉー うぉりゃ~~!」

「にゃああああ!!」

 

 ぐるぐるぐる~~~! と羽毛布団でシャルを簀巻きにした。ぐるぐると身体を巻かれた衝撃で、当然シャルは目を覚ます。いや、元々目を覚ましていた節があるが、今は良いだろう。

 

「ひゃおっ! にゃ、にゃにすんのよぉー」

「シャル~? 言質とったり~ って言ったぞー。って、言う前にここ 黒犬だってこと忘れてね? チョウちゃん達が来る前に シャルを届けないと 色々と面倒だ」

「だからって、ひっどーいじゃないっ! ……チョウちゃんたち、って 黒犬の監督生(プリフェクト)の子たちよねぇ~? 朝っぱらから、2人を連れ込んでたのぉ……? ハオって、そーんな趣味があったのかしらぁ?」

「連れ込む~、って2人が来るんだし、人聞き悪い言い方しちゃダーメ。それに一応、オレ仮監督生(プリフェクト)だろ? とと、それは置いといて、シャル。一先ず 白猫に帰るぞー」

 

 簀巻きにしたシャルを抱え上げた。

 一応、お姫様抱っこの要領で。肩に担ぎ上げるのも良いが、その辺りは空気読んだようだ。

 ……多分? ただの気まぐれ? 

 

 

「にゃあっ! だ、だから いきなりは、びっくりするじゃないっ! そ・れ・にぃー。お姫様抱っこするなら、これ解いてしてよぉー。直に抱いてよぉ~♪」

「シャルはふつーにお姫様だからなぁ~。どんな抱き方してもシャル様~抱っこになるんじゃね? つまり、これでもオールOKって事だな」

「そーいう話してるんじゃないわよぉー。昨夜は満点だったのに。ハオは やっぱりもーちょっと乙女心、お勉強ねぇ?」

「あっはは。それは兎も角、とりあえず さっさと白猫に戻るぞー。ペルシアも心配するだろーし」

 

 

 因みに、昨日の夜。ハオはペルシアにしっかり連絡を入れている。

 まさか、ウエストの第一王女であるシャル姫が帰ってこない!? な事があれば 冗談抜きで白猫の寮は厳戒態勢に入り、警報が鳴り響き、捜索に軍隊が出動しかねない。

 

 因みに、これらはシャルの命令でではあるが、一気に動いた事があるのだ。

 

 何でも ハオの事を悪く言われた~、から、『黒犬のスパイ!』や『白猫の回し者!』な扱いを受けていて、我慢しきれなくなったシャルの大暴走だった。当のハオ本人は全力で楽しんでるだけだっただけなのに~、と言うのはまた別の話。

 

『ハオと一緒だから、安心ね』

 

 と言っていたペルシアだが、やはり黒猫の寮にシャルがいる事が心配だという事だ。

 

『何か複雑……』 

 

 ぼそっ、と言っていたのは ハオも聞き逃していない。ペルシアも犬塚に会いに来ていたのだろう、と簡単に想像出来る。特に言ったりはしてないが。

 

「もうっ! いい加減コレ解いてよぉ!」

「どーどー、暴れたらダメ。夜じゃないんだし、見つかる可能性大だから。このまま連れてくー。オレがやった方がシャルより早いし、言い訳も出来るし。ってなわけで、ハオさん出発しまぁ~すっ」

「ひゃあっーー!」

 

 ハオは、シャルを担いだまま 窓からダイブ。ひょいひょい、と器用に木に飛び移り、あっという間に白猫の寮へ到着。

 

 シャルとペルシアの部屋の窓を軽くノックしたら、ペルシアがひょこっ、と顔を出してビックリ。

 笑顔のハオとげんなりとしてるシャルがいたから。

 

 

「は、ハオっ!? それに、シャルちゃんっっ!?」

「おは~ペルシア!」

「……おはよぉ、ペルちゃん」

 

 

 

 

 

 その後、色々と危ないでしょ!? と小一時間程、ペルシアに。そして 運び方にやっぱり不満だったシャルにも説教を受けた後、黒犬の方へと帰還したのだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その日の学業……もとい、監督生(プリフェクト)の仕事。

 

 主に胡蝶と手李亞の2人組と一緒に行動。黒犬の代表である藍瑠とは別行動。デスクワークが忙しい様だ。ハオが手伝うぞ? と言ったが残念ながら断られた。手は足りてるらしい。

 

「なんだヨ。私たちと一緒じゃ不満だとでもいうのかー!」

「……そーなの?」

 

 何だか不満顔の双子を見て、ニコっ、と笑ったハオは、そのまま2人を担ぎ上げた。

 

「不満も退屈も無いって。ダリア学園(ここ)は良いトコだし!」

「もーーー! だからって、何度も持ち上げるなー! 私たちのコト ガキ扱いしてるだろー!!」

「またまたー。チョウちゃん楽しんでる癖に~」

「誰がだヨ! こ、こんなの…… せ、生徒たちに示しが付かないゾ! 手李亞も何か言ってやってヨ!」

「……うん。ちょっと高い。もうちょっと動くのゆっくりだとありがたいかも……」

「もうっ 感想を求めたんじゃないヨ!!」

 

 文句は言いつつも、胡蝶も手李亞も楽しんでいるのは最早説明不要、である。

 こうまで対等に接してくれるハオの事はすごく感謝してるし、何よりも好意的だから。

 

「と、言うより 今ってテスト期間中で黒犬は勉強漬け、大勉強合宿じゃなかったっけ? ほれ、72時間耐久のヤツ」

「んん? そーだよ。白猫に負けるのだけは嫌だー、って感じで、普段べんきょーしない生徒もべんきょーしてて、ちょっと感心感心、な期間だね」

 

 ふむ、とハオは頷くと……。

 

「今日って別に見回らなくても良いんじゃない? だって、皆 大広間で勉強してるんだからさー。普段勉強サボるヤツも今回に限ってはいないし。 白猫に負けねー効果、蓮季せんせーの効果が抜群に出てて、出席率100%だ」

「うっ……」

 

 ギクリッ、と胡蝶は身体を震わせた。

 実の所、そのくらいは判っていた。監督生として生徒を導き、時には罰を下し~が主な仕事。他の業務も勿論あるけれど、一緒に(・・・)出来る仕事は限られてしまっているから。

 

「胡蝶姉さん?」

「な、なんでもないヨ。手李亞! ほら、万が一ってこともあるだろうし。油断大敵だヨ」

「ん~ それもそーだけど。……ほれ、せっかくの勉強合宿だ。オレ達も参加しようぜー。飛び級だし、物足りないかもしれんけど、監督するって意味じゃ出来るだろ? 学力向上に寄与。おー、優等生っぽく見えるかも?」

「……ハオは普通に優等生だヨ。非の打ち所がないとはこのことだし。苦難困難、ぜーーんぶ楽しんじゃうし」

「なんだよー、褒めても何も出ないぞー」

 

 わっしわっし、と胡蝶の頭を撫でるハオ。

 それを振り解こうとブンブン頭を振る胡蝶。

 そして、手李亞は何処か楽しそうに、2人を見ていたのだった。

 

 学園内のパトロールをしていたが、ハオの提案を聞いて3人で合宿場へ。

 

 

 ガチャリ、と扉を開いたその時。

 

 

「しゃっらーーーーっぷ!」

 

 

 非常に大きな声が聞こえてきた。思わず背筋が伸びてしまう様な感覚。頭の芯にまで響いてきて、眠気があったとしたら、はっきりと覚めるコト間違いない、と思えるもの。

 

 

「ブヒブヒ鳴くしか能の無い豚どもめ! 次許可なく鳴いたらローストにして晩餐に並べてやるゾ!」

 

 

 なかなか過激な発言が次に聞こえてくる。流石は黒犬……と言いたい所だが。

 

「おー、蓮季先生モードか。結構久しぶりかもだ」

「眼鏡かけた蓮季ねー。人格変わっちゃうって評判の」

「ちょっと怖い……」

 

 教壇に立つ蓮季は、びしっ! と教師眼鏡をかけ、目つきを鋭くさせて睨みをきかせている。私語の1つでもしようものなら 即座にチョーク攻撃が飛んでくるだろう。

 

「そこ―――! 遅刻はゆるさんゾ!!」

 

 チョーク攻撃、じゃなく参考書攻撃が飛んできた。中々の重量物が矢のように飛来してくる。これは当たれば、まさに頭が真っ白に冴えきってしまいそう……だが、かなり痛そうなので、甘んじて受けるコトはしない。

 

 

「べんきょー中に失礼~。混ざりに来たゾー」

「む。私の指導を受け止められて少々驚いたが、ハオだったか。貴様、監督生(プリフェクト)の仕事があるんじゃないのか?」

「ん? 今仕事中だぞ。ほれ、2人いるだろ?」

 

 ひょい、っと横にズレると やや引いてる手李亞と、苦笑いをしている胡蝶が目に入る。

 流石に年下であっても先輩な上に監督生(プリフェクト)。蓮季は 少し驚いた顔をしていたが、眼鏡モードに入っているからか、直ぐに立て直していた。

 

「これは、胡蝶先輩に手李亞先輩。どうも失礼しました。豚どもへの制裁中だったので。どうか、今は許していただきたい」

 

 言葉使いこそは、丁寧だけど、威圧感はバリバリに感じるから、やっぱり気圧される手李亞。

 

「ま、まぁ 勉強を頑張る事は良い事ネ。しっかり自力を付け、テストを乗り切るよーに」

 

 胡蝶も圧されそうになったが、しっかりと対応していた。

 でも、姉の陰に隠れてる手李亞はなかなか出てこれない様子だ。ハオはひょい、っと手李亞の横についた。

 

「ほれほれ、手李亞がんばれ」

「う、ぅぅ……」

「んー。手つないでてやろうか?」

「だ、大丈夫。私も監督生(プリフェクト)だから……」

 

 手李亞は、すっと前に出た。

 

 

「皆、頑張って」

 

 

 ビビってた手李亞だったが、必死で笑顔のエールを送る。

 

 それを 受けた黒犬生徒たちが一気にやる気を見せた。不器用で、ドジな所もあるけれど、普段から一生懸命だから 黒犬の皆は手李亞のコトが大好きだから。

 

 変な意味じゃないヨ?

 

 

「うぉーしっ、オレも今日は頑張っちゃおうかなー。と言うわけで、ペナルティクリップは任せとけ!」

 

 ハオはと言うと、いったい何処から取り出したのか、勉強中に寝る様な真似をした生徒に制裁を下すアイテム《特性クリップ》を無数に取り出していた。10~20はあるであろうクリップ。……まだまだ増えていき、最後には器用に両手でホイホイっ、とお手玉。

 

 

 先ほどまで、手李亞効果? でほのぼのとしていた空間が一気に冷めた気がする。

 

 

 

「特に露壬雄くんは重点的に行くからね~?」

 

 

 きらんっ! と目を光らせたハオ。その視線の先にとらえているのは犬塚。

 射貫かれたコトに気付いた犬塚は 身体を震わせた。武者震いだろう、きっと。

 

 

「特別サービス。しょっぱなから、クリップ×10から行くゾ?」

「なんでだよ!」

「いやいや。ほら、頼まれたし?」

「いや、誰に!?」

「……色々と思う所あるんじゃね?? ほれほれ、胸に手をじーーーっくり当てて~。考えてみ??」

 

 犬塚は、また身体を震わせた。思い起こすのは白猫の姫の事か、或いは黒犬の兄の事か……。

 

 

 そして、ハオは 意味深に犬塚に笑いかけると、その隣にいる黒犬の生徒? に視線を送った。

 ハオの視線に気づいたその生徒は、咄嗟に犬塚の後ろに隠れた。

 

 勿論、そんなので隠れきれる訳はない。 

 

 

 

「これもまた良い、とは思うけど、危ない遊びは程々にな? シャルも心配するしよ」

「ッ……」

 

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