年内に更新できてよかったです(^^)/
「…………むぅ。少々、やり過ぎた……かな。でも、良いか。……少しくらいなら」
ハオは、少々黄昏ていた。悶えていた、ともとれるかもしれない(疑)。
勿論原因はシャルに対してである。
そう、シャルに思い切って……結構思い切った事をしちゃった事だ。今まで一切なかった、とは言わない。でも、ピンからキリまである様に、額だったり 手の甲だったり……と王族の挨拶程度。シャルが頑張ったからご褒美を、と今まで強請られた事が幾度かあって、それにこたえる形でハオがしちゃってた。それも、10の歳から、である。
今でもまだ子供だが、更に更に子供だというのに……、つまり、マセマセだったという訳だ。
だから、今回が初めてだった。本当のキスをしたのは。
「多分過去最高レベルで喜んでたし、……喜ばれるのも ま、悪くないってな」
それで悶えに悶えて、くねくね~とするほど初心である訳ではないのがハオだ。
10秒ほどで顔の表情を元に戻した。きっと、シャルと一緒になったとしても、自然な対応が取れる事だろう。
今、どんな事件が起きたとしても、面白おかしく対応。黒犬の仮
「んでも、こーんな夜遅くに問題なんてある訳がn「待てこらーーーー!!」「落ち着けぇぇぇぇぇ!!」………無いとはいえんなぁ、なんせダリアだし」
夜の黒犬の家で大騒動が発生した。
声の主から考えて、蓮季、そして犬塚。
「はいOK、わかった。何が起きたのか分かった」
0.5秒で現状を理解した。
色々と大変だった一日だが……決してスルーする訳にはいかないだろう、それが仮
ハオは、身体を起こすと行動開始。騒動の方へと向かっていくと…… 変な光景が目の前に広がってた。
夜の闇を美しく照らすのは、星や月の光――――寮の廊下に佇むのは、2つの影。芸術的な絵になりそうなハダカ……。 男物だから 芸術と考えなければ吐き気が襲ってくる。そして、寮内でそんな芸術がある訳無いから、単純に気持ち悪くなってくるのは仕方ないだろう。
「っとと、それより寮内でも猥褻物陳列罪適用って出来るか、あいるたちに聞いとくかなぁ?」
「ま、まってくれハオ! 話せば判る!!」
「オイラ達なーーんも悪くないもーーん! って、丸く~ん! 開けてよーー!」
どうやら、部屋を閉め出された様だ。
部屋で何かをしたのだろうか、と少しだけハオは考えたが 今は兎も角 蓮季と犬塚だ。
「おーい。まる~。連帯責任って言われたくなきゃ、処理してくれー。後5秒な? いーち、にーー」
ハオは指折りカウントすると、渋々ながら 扉を解放した。
解放したと同時に、2人を部屋の中に、背中を押す感じで放り込む。
「「うげーー」」
「ぶわぁぁぁぁ!!!!!」
裸の男が2人、重なって1人の男に倒れこむ。
まさに地獄絵図っぽい状況になってるが、ハオはとりあえずそのまま扉を閉めた。
「これで良し」
背後で、『よくねぇぇぇ!』って悲鳴? 慟哭?? 咆哮??? が聞こえてきたが、聞こえなかった。
そして、夜の闇が包む森の中。
4人の男女が対峙していた。
それも中々衝撃的な光景だ。1人の女が真剣を振り、もう1人があろうことか、足でそれを受け止めている光景。其々の女たちの後ろに男と女がいる。
説明すると蓮季が剣を振るって、それをシャルが止めた。蓮季の狙いはペルシアだった。蓮季がペルシアを狙うのは別に珍しい事ではない。いや、剣を振るってるのは珍しい事極まれり、だ。
そう、これは珍しい事。心底蓮季が怒っている。その理由が ペルシアと犬塚の事。
つまり、2人の関係が蓮季にバレてしまったのだ。
「ごめんね、ペルちゃん。私はペルちゃんの事、知ってたんだ。勿論、バカ犬の事もね」
「なんだと!? あんた、許す気なのか……? この2人の関係」
「んっん~、しょーーーじき、とぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……っても、複雑なのよねぇぇぇ。ええ、すっごく、憎たらしい程に、バカ犬を血祭にあげてやりたい程にねぇぇ」
「ひぃっ!!?」
「……十分伝わったゾ。あんたが凄く複雑だって」
悶えるシャルの顔を、複雑そうにするシャルの顔を見れば誰だってわかる。
それは色んなモノを天秤にかけてる時の顔だ。そして、凄まじい怒気だけが犬塚に伝わり、震えていた。
「……いくら信じてやれ、って言われたとは言ってもねぇ……、だから、わたしはこうする事にしたのよぉ」
「こうすること?」
「勿論、ペルちゃんが危険な目に遭わないように、って。友達として、それだけは看破できないから。危ない目にあうペルちゃんだけは、ね。それ位はきっと許してくれるわぁ」
「王女のあんたが誰に許しを請うっていうんだ。……って、まさか」
ここで、蓮季もある事実にたどり着く。
この裏切り行為を知っている者がまだいるんだという事。
「まさか……、ハオも知っている、と言うのか? ペルシアと犬塚の事……」
「ま、そういうことね。幾らハオが言っても、わたしも譲れないから。ペルちゃんが危険に合ってる所を見逃すなんて」
「ハオまで、裏切ってるなんて……」
ぎりっ、と歯を食いしばる蓮季。でも、シャルも黙っていない。
「ちょっとぉ、待ちなさい。聞き捨てならないわねぇ。裏切りって何? ハオの事悪く言う気?」
シャルも怒る。
ペルシアの事と同じくらいに。
「っ……、ハオは、とくべつ、だった。でも、でも…… 黒犬でも、仲良くしてて……」
「それは白猫でもおんなじ。……ハオは特別なんのぉ。……わたしの、旦那様なんだからぁ」
「惚気なら他でやれ!!!」
「は、蓮季も落ち着いてくれ! もうそれ仕舞えって!」
「あ~~ あと、ハオはこうも言ってたわよぉ。『犬塚なら簡単に死なない』って『殺しても死なない』って。ハオが間違う訳ないしぃ……大丈夫よねぇ? だって、あれ程忠告した筈だしねぇ?」
色々な怒りが集約された。1人の男に向かって。ペルシアは護る。ハオの言いつけだって護る。……この中で、ハオに言われた事を反故にしない対象はただ1人、犬塚。制裁を与えてはならない、とは言われてないから。寧ろ、もっとやってやれ、と言わんばかりだった様な気がする。
「増えた…… くっそっ! ペルシア、すまん!」
「きゃっ!」
「戦術的撤退だーーー!」
「ちょ、ちょっと下ろしてよ!」
「「待て犬塚!!!」」
ペルシアをお姫様抱っこして、脱出した犬塚、そして追いかけるシャルと蓮季。
夜の静けさ等、欠片もない。ご近所迷惑。
凶器を持ち、全力ダッシュする2人の乙女の前に 樹の上から飛び降りた男が舞い降りた。
「別に夜の運動も悪くないって思うが、もーちょっとボリューム落とせよー。寮監にバレても知らねぇぞー」
「ああっっ、ハオっっ!!!」
「っっ、ハぉ……はぉ…… っっ~~~」
直ぐにハオだって分かった2人。
神出鬼没な出現なのだが、犬でも猫でもなれる男なので、慣れっこである。
シャルは、さっきまで部屋で悶えていた事を思い出したのだろう。ペルシアの事、犬塚への殺意、色んな感情が渦巻いていた筈なのに、今のハオを前にすると、どうしても顔が真っ赤になってしまう。頭の中がピンク色で染まってしまうのだ。
そんなシャルの頭をぽんっ、とひと撫ですると、ハオは蓮季に向き直った。
「ぐっ……そうだよな。ハオ。お前は今は仮とは言え、監督生だ。……夜、外に出るのは違反行為だゾ……」
「別に止めたりしねーし、罰したりとかもねーよ」
「え……?」
まさかの言葉に、蓮季は驚きを隠せない。
確かに、ハオも知っていて黙っていた事は辛かったし、裏切りだって思った。黒犬の掟も忘れたのか、って。でも、シャルの言う通り。このダリア学園で唯一無二の特別な存在がハオだ。
どっちの色にもなんら遜色なく染まるから、黒犬の所にいる時は黒犬の生徒で、白猫の所にいる時は白猫の生徒で。……違和感が全くないから。
「思いっきりやってやれ、蓮季」
「……なんだと?」
「何年犬塚と付き合ってんだ。アイツが本気でお前から逃げるって思ってるのか? ま、今逃げてるけど。このまま逃げっぱな訳ないだろ、アイツが」
ハオは、はぁ~ とため息をしたのちに、少しだけ声を大きくさせた。
「まっ、こーんなに言わなきゃ逃げるの止めない~ なんて、すげぇダッセーケドな~~」
「うるせっっ!! 悪かったな!!」
まるで判っていたかの様だった。
ハオは、犬塚がすぐ後ろまで戻ってきているのが判っているかの様に、挑発した。
蓮季は呆気にとられた様だが、直ぐに調子を戻した。
「……戻ってきたという事は、処罰を受ける覚悟をしたという事か?」
極めて冷静に勤める事にする蓮季。
全く冷静になれてないのは、蓮季を少しでも知る者ならだれにでもわかるだろう。だが、誰もそこには口出しはしなかった。
「あぁ。確かにメチャだせぇよ。ハオに言われなきゃこねーのか、って。でも、言い訳くせぇが言わせてくれ。ハオが言わなくても、オレは戻ってきた。……変えてやるって、オレは誓ったんだ。この世界を。大切な友達1人かえれねぇで、何が世界だよ」
「……聞く耳もたないゾ。ただ、掟に則り処罰を受け入れろ、犬塚」
ぐっ……と剣を上段に構える蓮季。
「いいぜ。全部受けてやる。もう 後退のネジは外した。……二度と下がらねぇ。思い切りこい。オレの
頭を指さす犬塚。
それと同時に、蓮季は駆け出す。
「オレは、ハオみてーに凄いヤツじゃねぇ!! 今だって蓮季を傷付けちまってる! 本当にどうしようもねぇ なんにも出来ねぇ情けない男だ! でもなぁ、でもなぁ、ぜってぇ譲れねぇんだ! ペルシアのことも……、お前のことも!!」
蓮季の勢いは止まらない。
犬塚の間合いを完璧につめ、そして剣をその勢いのままに振り下ろす。
「勝手だってわかってんだ! だがな、それでもお前とはずっと、友達でいてぇって、心の底から思ってんだ!!!」
ガッ! と鈍い音が響く。
それは剣で斬る様な物騒な音ではない。……何故なら、蓮季が手にしてるのは、ただの
「………やっぱレプリカか。オレの頭の堅さはレプリカなんかじゃ割れねぇぞ」
「う、うるさい……、はすきは、はすきは、いぬづかなんか、キライだ……」
「ごめんな……、オレは、おまえのこと………」
ふらっ、と身体が揺れる。幾ら犬塚とは言え 無防備の頭に強烈な一撃を受ければ仕方のない事だ。
――私の心を変えたのは犬塚じゃない!
――変えたいと言うのなら、道半ばで倒れるな。
この時、意識が混濁しかけた時、犬塚の耳に2人の声が届いた気がした。
もう一歩、足を前に出し踏ん張る。
「……何撃でも、うけいれて、やる。オレはたおれねぇ。ぜったいにたおれねぇ」
蓮季は 柄を握る力を上げた。
――裏切者に裁きを、報いを、罰を。
――違う、違う違う違う違う! 蓮季はそんな事したいんじゃないっ。
蓮季は何度も何度も自問自答を繰り返し、現実を直視できなくなってしまった。
でも、現実は変わらない。どれだけ自分が犬塚を想ってきたのか……、それが全く伝わってなかったどころか、敵国の
ずっと――一緒にいた筈なのに。
蓮季は ぐっ と流れ出る涙を何とか止めようとするのと同時に、犬塚を改めてみた。
「あ…… ぁ………」
頭から血を流している。レプリカの剣とは言えそれなりの硬度があり、そんなものを頭に思い切り振り下ろせば どんな頑丈な男でも怪我くらいする。思った以上に。多分、犬塚が迫ってくる勢いもあったんだろう。蓮季の握る手にも痛い程振動が伝わってきていたから。
ふらふらになりながらも、その目の奥は、……瞳だけは死んでなかった。強い強い意思がそこに見えた。
その目には、蓮季は映らない。友達として……であれば 犬塚が言う様にずっとずっと傍にいてくれるだろう。でも、蓮季が願った恋人としての未来は固く閉ざされた。
それを断定している。そんな瞳だった。
「わあああああああああぁぁぁ!」
蓮季は もう声を上げて泣くしか出来なかった。
「ん……、こればっかりはな。好いた惚れたは各々の心の問題。……誰が悪いとか悪くないとか無い」
「……ハオも言うのね」
「当たり前だろ? オレだってどっちとも長い付き合いだ。シャルともペルシアとも、犬塚とも蓮季とも。これは 一夫多妻制にでもならん限り無理だ。いや、なっても無理か?」
「当たり前でしょぉ! 言っときますけど、側室~とか認めてないからぁ!」
「一言もいってないっての。と言うか空気よめ」
「何が空気……嫁!?」
「違う違う。……あー、犬塚の方も多分大丈夫か」
シャルとハオが色々と言い合ってる間に、泣きじゃくってた筈なのにいつの間にか蓮季は犬塚を罵ってた。『あんぽんたん』や『格好つけ』、更に『ムッツリスケベ!!』と。
時間は掛かるかもしれないが、今日だけで終わる程……そんな薄っぺらい関係じゃない事を祈るしかない。勿論、ハオ自身も覚悟の上だ。ペルシアと犬塚の関係を知った日から、こういう事があり得るとずっと思っていた事だから。
「シャルちゃん……。ごめんね、わたし ずっと黙ってて……。シャルちゃん、私から言って欲しかったんだよね?」
「……良いのよ、ペルちゃん。ただ、さっきも言ったよーに、ペルちゃん泣かせるような真似したら、犬塚の顎骨引っこ抜くつもりだから。……ペルちゃん 私の心配はしないで。その、本当は止める方がいいって思ってるんだけど、ハオの事もあるし、可能性は0じゃないって思う。だからね、ペルちゃん」
シャルは、ペルシアの顔を見てほほ笑んだ。
「がんばってね」
「っ…… うんっ」
「行く手は茨の道、ってな感じだ。ペルシアがオレに勝つのが先か、ろみおが変えるのが先か……、それ位難しいぜ?」
「っ……、どっちも超えて見せるわよ。だって、1人じゃないから」
ペルシアは、犬塚と蓮季の方を見た。
正直――蓮季には思う所が無い訳ではない。あれだけ犬塚、犬塚、とくっついていたら、嫌でもわかると言うものだから。でも、だからと言って譲れる訳がない。犬塚の事が好きなのは、自分自身も同じなのだから。蓮季にだって負けるつもりは無いのだから。
その後――泣きじゃくる蓮季を何とか黒犬へと連れ帰った。あれだけ騒いでて 3バカ以外にバレてなかったのは本当に幸運と言えるだろう。犬塚はと言うと 蓮季を部屋まで連れ帰った後に、とうとう最後の気力を使い果たしたのだろうか、前のめりにぶっ倒れたので、しょうがなく ハオが介抱。
仮
そして翌朝。
皆がすっかり起床しているのだが、犬塚だけは遅れていた。怪我の所為か……、或いは蓮季の事か、判らない。だが、判るのは蓮季は誰にもバラしていない、と言う事実だ。
もしも、バレていたのなら、こんな静かな訳ない。
朝から過去最強クラスの盛大なパーティが開催されてしまうだろうから。
一先ず大丈夫、と言う訳でハオがやって来た。
「おーい、犬塚~ とっとと起きろ~ 点呼だ点呼」
『うぅ~む……今日から……顔し……えば……』
「昨日の啖呵はどこ行った? 良いから起きろーー」
数度ノックするけど、犬塚はなかなか出てこない。昨日は男気がそれなりにあふれ出てたというのに、女々塚になってしまっている様だ。
もう一度強めに扉を叩こうとしたその時だ。
「コラぁぁぁぁ!! 遅刻するなーー!!! さっさと起きてこい!!! 5秒だ!!」
『ふわぁぁっ!? は、はいぃ!!』
拡声器最大音量で、犬塚の部屋の前で叫ぶのは蓮季だ。
犬塚は5秒とかからず、部屋から出てきた。
「おう。おはよ~ もうおそよ~ だぞ。サボるな」
「す、すまん、ハオ。昨日は……。それと蓮季……」
「…………」
蓮季はギロッ、と犬塚を睨みつけると表情を少しだけ緩めた。
「合宿はまだ終わってないんだゾ! 悠長に寝てる暇などあるか!?」
「……っ」
「なんだ そのマヌケ面は! 友達でいろ、って言ったのはそっちだろ! それにあれだけ言っといて、もう落ち込んで立ち直れない、とか言うんじゃないだろうな!」
「っ……」
「あー、因みに蓮季せんせー? 犬塚くんは 蓮季を送っていった後~ 部屋までたどり着けずぶっ倒れてましたー」
「何だと!? 『二度とたおれねぇ!』とか言っといて何てザマだ!!」
「……うぐっっ」
ニッ、とハオは蓮季を見て笑った。少しだけ表情が緩んだとはいえ まだ昨日今日。そんな簡単に吹っ切れる訳も無いから、蓮季はそっぽ向くだけだった。
「ほら、行くゾ! 今日はハオにもビシバシやるからな! 仮監督生業務はお休みだと胡蝶先輩に聞いてるからナ!」
「OKOK。んで、犬塚はいかねーの?」
「行くに決まってるだろ? ハオにも負けねぇよ!」
「べんきょーで?? できんの~~??」
「うぐっっ…… ま、まけねーーよーー!」
「フンッ!」
3人は揃って移動開始した。
色々とあったが、収まる所に収まったのだろう。皆の絆はきっとこれからも――ー大丈夫だ。……多分。
「あっ! 言っておくが見逃した訳じゃないゾ! 蓮季の前でイチャついてみろ! 容赦なくブッた斬るからな!!」
「イ…… イェス マァム!!」
「二度とたおれねぇ~♬ 二度とたおれねぇ~~♪ ………ばたりっ」
「うるせぇっっ!!」