暴姫さん? オレ遊んでくるから   作:フリードg

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3話

 

 

 ハオが見たのは2人に襲われているペルシアの姿だった。

 

 普段のペルシアなら2~3人に襲われた所で十分返り討ちに出来る。それに見かけた相手は大したことがないで有名な2人だったから。どこか抜けている所があって、いつもいつも良い所でポカミスするから。

 

 当然それはペルシアを襲った時もそうだった。

 

 襲撃者である2人は、バレない様に顔を被り物で覆って襲おうとしたんだけど、全く穴の開いていない袋を頭からかぶって……、それでは前は見えないは息は出来ないはで良い所がない。おまけにそんな間抜けな事をするのは黒犬の《古羊》と《土佐》と簡単にバレて、もう最悪。

 

「くっそー! バレちまったからにはしゃーねぇ!!」

「予定通りにボコるぜ!!」

 

 と半ば自棄になって、完全に開き直って 袋を取っ払ってペルシアに攻撃をするが、そんな単純な攻撃がペルシアに通じる訳はない。

 

「攻撃が遅すぎるし、軌道も見え見え。そんなの眠ってても避けれるわ」

 

 ひょい、と屈んで躱し、水面蹴りで土佐を転ばした。

 

「2人組で奇襲しようだなんて、黒犬(ブラックドギー)ってほんと野蛮よね……」

「隙ありーーっ!」

 

 隙を見て後ろから攻撃を加えようとした古羊。

 だが、その攻撃も当然ながら読まれている。

 

「全然基礎がなってないじゃない。そんなんで私を倒そうだなんて10年早いわ」

 

 完全に2人をひっくり返した、ペルシアは一息を入れていた。

 圧勝だったと言えるのだが、勝ちを確信した時こそ、一番の油断が生まれてしまう事をペルシアは忘れてしまっていた。

 

 相手は、2人だけじゃなかった。

 

「残念。2人じゃねぇ。3人だ」

「っ!?」

 

 背後の茂みから向けられたのはスプレー缶。顔面に噴霧され、目が開けられなくなった。それは催涙スプレーだった。

 

 

 

 

 

 その場面をハオは見たから、シャルを置いて向かった。

 

 

 ペルシアの事を大切に思ってるシャルがもしも あのシーンを見てしまったら、王女としての権限を全て使って 3人を血祭に上げるだろう。軍用ヘリやらなんやらを持ち出してきて、大変な騒動になりそうだったから、ハオは教えなかった。

 

 そして 自分ひとりでも止めるのは全く問題ないとも思っていたから。

 

 確かに黒犬(ブラックドギー)白猫(ホワイトキャッツ)の関係は険悪。両国が一触即発だと言って良く、其々に過激派と呼べる者達がいて、小競り合いの類が街でも一向に絶えない。

 そんな情勢は理解しているけど、それでも両方の国に自由に行き来して、沢山の知識を得て、楽しみを得て、日々が充実しているところで、こういった形の争いは好ましくない。

 

 それを自分に向けられるのは、『また違った刺激だ!』とか『不意打ち、反則、卑怯な攻撃?? 全部バッチコイって感じだなっ!』とウキウキ出来るからOK! と言うのだが……。(どM?)

 

「婦女暴行は犯罪だぜー……っと ん? アレ? ろみお?」

 

 ひょいひょいと、並木を器用に伝って向かっている時、ペルシアに ろみお が突進していったのが見えた。

 

 ペルシアの事を助けたみたいだ。

 

「へへっ。良いトコ取りされちゃったかなぁ? ペルシアの事、助けたら怒りそうな気もするけど、今回は大目に見てもらえそうだったんだが」

 

 安心をしつつ、笑いながらハオは木の上から大ジャンプ。

 人が集まってきた……と言う理由で逃げようとしてる3人の所へと飛び込んだ。

 

「こ―――らぁぁぁーーー!」

 

 と、ジャンピング・キックの炸裂である。

 丁度土佐の背中に直撃し、『へぶんっ!!』と言う悲鳴を上げながら飛んでいった。

 

「うおあっ!? あ、テメぇ、ハオ!! いきなり何しやがる!」

「わーー、土佐くーーん!」

 

 古羊と丸流は突然飛び込んできたハオに当然怒る。それはもう、いきなり後ろから跳び蹴りをやられたら当然だと思うんだけど、ハオだって怒ってる。

 

「オレ達は学生だぞー! 幾らするにしても、もっともっと健全な喧嘩をしなさいよ! と言う訳で はーい、キミたち説教ですよー、説教の時間ですよーー」

「ふざけてんのか 真面目なのか 一体テメェどっちだよッ!」

 

 怒った様に見えたんだが、最後の方は手をぱちぱちと叩きながら集合を掛けるハオ。何だか妙に(・∀・)ニヤニヤしてる姿もいつもなら別に気にしなかったのに、何処か不気味だった。

 

「ってか、何が説教だコラ! オレに説教なんて100年はええってんだよ!」

「ほーん……これ見てもそーいえる??」

 

 ハオは、にんっ! と笑いながら腕に付けている腕章を見せびらかす様にした。

 丸流たち3人は胡散臭そうにしてたんだが…… 徐々に顔が青ざめていく。

 

「そ、それは……監督生(プリフェクト)の腕章……!❓ って、んな訳あるか!!」

 

 ハオの胸倉をぐっ! と掴み上げて怒鳴る丸流。

 

「定員オーバーっつーのを知らねぇのかよ! 黒犬の方も白猫の方もまだ解任も交代もされてねぇ! バカにしてやがんのか!」

「そーだそーだ。丸流くんだって 勉強するんだぞー! たまに話だってきく!」

「……たまには余計だ!」

 

 勝ち誇った様に言うのだが、更にドヤ顔になるのはハオだ。

 

「はっはーん。知らないんだなぁ? でも そりゃそっか。これ 白猫側の話題だし。 これ、ベルちゃんの雑務係(ファグ)ある程度やった後、監督生(プリフェクト)の仕事も体験してみたいー って言ったら二つ返事でOKが出たぞ? ひたむきに努力する人は好きですって。いやぁ 照れますなぁ。 ……あ、因みにこれ監督生(プリフェクト)(仮)でーす」

「……は?」

「ベル……、サイベル? 白猫のトコの監督生(プリフェクト)が? そんな訳……」

 

 ない、とはどうしても思えない。

 

 この学園では特例の類はあまり認められていない。世間的にも規則には厳しいので有名。だから、そんな仮の~などの職が付く様な事はある訳がない。監督生(プリフェクト)になる為にはしっかりとした下積みと言うものが必要だ。主に先程にもあった様に雑務係(ファグ)等で信頼関係を深め、適正かどうかを見極められ、そして選ばれる事が多い。

 秀でた才能の持ち主に加えて、大体がそうして選ばれる。普通は仮で付く様な役職ではない。

 

 そう――普通(・・)は、なのだ。

 

 目の前の男はどう見繕っても普通じゃない事くらい3人は知っている筈なんだ。

 なのに、今の今まで何故思い出さなかったのか、疑問に思う程に。

 

「はい。と言う訳で現行犯。婦女暴行罪で3人タイホーーー!」

「へ?」

「はーい。へ? じゃないない。土佐君。話は署の方で訊くから。さっさと3人で来る」

「署ってなんだーー!! ってか、オ、オレは別になんにも―――」

「オレ、上から見てたし。因みにシャルも一緒にいたから証人も有! ペルシア襲おうとしたろ? さあ大変だ。今のオレ、白猫側だから 弁護しねぇぞー」

「ッッええ!!」

 

 3人共が更に一気に青ざめた。

 

 先程ペルシアを襲撃したのを見られていたのだから。ただの生徒ならまだしも――腐っても監督生(プリフェクト)を名乗るのなら。

 

「あっ、そう言えば犬塚もいたよーな気がするなぁー。と言うか、犬塚が襲ってると思うがーー」

「話題逸らしダメ。ってな訳でGOー! 白猫寮へご招待だ。マッチョ君と一緒に尋問してあげるよ」

「いぃやぁぁぁ!?」

「ほれ、お前らも来いって」

「誰が来いと言って行くか!! んな地獄に!! 脱出だーー!」

「「ぷわっっ!?」」

 

 丸流が催涙スプレーを叩きつけた。破裂し、中身と共に周囲に四散したと同時に、顔をハンカチで押さえてた丸流が 古羊と土佐を引き摺る様に逃げていった。

 

 

「さーて。次は追いかけっこかな? よーし……」

 

 にやっ と笑う。まるで逃げるのがうれしい様に。

 

 

「にーがーさーなーいぞーーー!! (シャルに教えてたらぜーーったい酷い目にあってるし)ある意味 助かったなー? お前らー」

「助かってねぇよ!! だから逃げてるんだろうが!」

「丸流君いたいいたいいたいーーー!」

「うげげげ、首、首締まるっっ!!」

「だぁーー、お前ら自分の脚で走れや!」

 

 

 

 その鬼ごっこは暫く続いたそうな。

 流石に少しはペルシアと犬塚の事は気になった様だが、最終的には なるようになるという事で放っておいたのだった。

 

 


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