それと、タグにも書いてありますがこの作品は残酷な描写があります。グロいです。なので、そう言うのダメな人は読まないでください。そういう作品だと諦めてください。
では続きをどうぞ。
「なん、ケホッケホッ………なんでよ…………」
私は霧化を維持し続ける体力も無くなり、強制的に身体が実体化されて膝が地面に付いた。
意識していなかったが、霧化は神経を磨り減らして集中しないと操作できない。霧化するだけで体力が削られていく。
さらに霧の状態で速く移動すると、その消耗具合はより顕著だ。
だとしても1日くらいは霧化し続けるくらい体力はあった。悪魔の実を食べたことで、私は驚くほど身体能力が向上したのだ。だから、こんな森簡単に抜けられると思っていた。
しかし、現実は非情だった。
今は霧化するどころか一歩も動くことすらできない。それほどまでに身体が疲れ、神経が消耗している。
それくらい移動した筈だ。なのに、未だに森の外に出られないなんてあるのだろうか。
直進して直進して直進した。ただ真っ直ぐ走った。
そして私は惨めにも外に出れず這いつくばるだけ。
奥歯を噛み締める。ギリギリと歯と歯の間から深夜の森に響く。それがまた、どうしようもなく自分が無力であると知らされているようで、とても苦しい。
「ゴホッ、かハっ…………」
実際、このままだとかなり危険だった。
立っているだけでも辛いほど体力を消耗させてしまった。ある程度休めば回復するだろうけど、その分私の何か。エネルギーのようなものが不足している気がするのだ。
とてもお腹が空く。疲労が酷い。休ませろ、何かを食べさせろと、心が叫んでいる。
しかし休憩はできても、初日以降この島で未だに動物を見つけることができていないのだ。
肉食動物も、草食動物も、虫すらいない。
見付かるのは地面から生えている毒々しい草と茸だけなのだが…………やはりとても怪しい。私の本能が食べるなと警告している気がする。
ヨロヨロと力の入らない体で四つん這いになり、木の傍まで近づいていく。時間を掛けながら辿り着いて、背中を木に預けて楽な体勢を取る。
そのまま荒くなっている息を整えれば、ようやく楽な体勢になれたおかげなのか、少しばかり余裕ができた。
未だ空腹の感覚が拭えないけど、そうは言っても仕方がない。無いものは無いのだ。まずは今後について考えなくては。
空腹を紛らわすためにも、わかっていることをまとめることにした。
まず、第一目標であった森の脱出が相当困難であることがわかった。
完全に方向も失い、道に迷った。どれ程の規模かわからないが、この森は相当広大な範囲に広がっている事はわかる。
今日寝て明日もまた同じように闇雲に移動するのはリスクが高い。
これ以上体力を消耗させることは得策ではないと考えれば、この目標は現状達成することが不可能に近いだろう。
第二目標が食料の確保だけど、それも現状難しい。
そもそも動物がいない。この世界に自分以外生きている物がいないんじゃないかと錯覚するくらい、命の気配を感じない。
それでも、初日の海辺にいた時は鳥が海を渡っている姿は捉えたし、砂浜近くの木で休んでいた鳥を狩ったのは自分だ。
わかった事実は、森の中で何故か動物が生存していなくて、この島周辺は普通に生物がいるということ。
つまり無事に食料確保を実現させるには、同時に第一目標も実現させなくてはいけないということだ。
そして、怪しい植物だけはそこら辺にたくさんある事はわかっている。
「ハァ…………やはり、飢えをしのぐにはこれを食べなきゃいけないのか」
傍に生えている茸を爪で切り裂いて手元に引き寄せる。改めて見て、とても怪しい見た目だ。
まじまじと見てみると、全体が紫色に染まり、白の斑点と黒の斑点が規則的に並んでいるのがわかる。
食糧確保はこれを食べれば成し遂げたことになるのだけど…………
「明らかに、毒キノコ…………」
茸というのには良い思い出が無い。
そもそも、私はあの男に暴力をただ加えられて生きてきたわけではないのだ。
私達奴隷を酷い目に遭わせてきたあの天竜人達は、余興とほざいて私達に毒キノコを食べさせようとしたのだ。
ある時、奴等は私やボア三姉妹を含む奴隷達を集めて、多種多様な茸を私達の前に放った。それを一人一つずつ食べさせられたのだ。
幸い、私とハンコックお姉さんとマリーゴールドお姉さんは大丈夫だったのだけど…………サンダーソニアお姉さんは茸を食べた直後、口から血を吐いてしまった。
そのまま症状が治まらなくて、2日掛けてようやく落ち着いたのだ。
でも彼女もまだ運が良い方だった。
他の奴隷なんかは全身から血を噴水のように出したり、口から泡を吹いてピクリとも動かなくなったり。体を爆散させて肉片になった人もいた。
その場で症状が発生しなくても、次の日の朝には死んでいた人もいっぱい出たってお姉さん達に聞いたから、私達もずっとそうならないか不安だった。
それからしばらくは茸を見るたびに胃液がせり上がって喉が痛くなった。
「とはいえ、食べなくてはなんだかおかしくなりそうだ…………」
思い返して嫌な記憶しか無いのだけど…………やはり空腹がとても気になってしまう。意識すればこの茸とて食べたくなってしまうのだ。
ゴクリと唾を飲む音が聴こえてくる。食べるだけで緊張するのはあの日以来か。
恐る恐る、まずは一噛み。
味はなんだか…………変な感じだ。無味と言っても良いくらい味がしない。やっぱり食用じゃないのかも。食感は普通に茸みたいな感じだ。
まあ総じて言うなら、奴隷時代に食べた物よりマ…………シ
「ゲホッゲホッ」
咳が急に出てきた…………なんだろうか? 心なしか腹が痛いような気がする。
…………いや、気がするではない。痛い。とてつもなく痛い。胃を握り締められたような鋭い痛みが私を襲ってくるッ。
「ゴホゴホッケホ…………カハッ!」
喉からせり上がって来た液体が私の口の中を満たす。堪らず吐き出せば、赤い液体が大量に出てくる。
それは何度も見た液体。生きているなかで嫌でも見馴れたモノ。
血だ。
「グッぁ……がフッ、うぇぁ…………」
血が止まらない。心なしか痛みもどんどん増していく気がする。
それどころではない。お腹が裂けるようなこの痛み…………!
「ごハぁ!!」
激痛に襲われた直後、私のお腹から勢いよく何が飛び出した。
赤く、ただ赤く濡れて染まったその異物は…………枝、だ。私の血で染まった枝が私の腹から飛び出したのだ。
「なんッ…………げぼぁ!!?」
腹だけじゃない。足からも、手からも、口からも。
色んな身体の部位から、大小さまざまな木の枝が、肉を喰い破り 肌を貫いて、飛び出してくる。
馴れていても、流石にこれは…………無視、できない、痛み だ。
頭、形容できない痛み。手足の感覚、ない。下半身が、何 感じな
くら、い。くらい。くらいくらい、くらい くらくてででででくらぐらあいいくらいくらいくらくくくぎぁがががががが■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
――――死にたくない
「ああああああああ!!!!」
ブチブチと体から吐き気のする音が聴こえる。バキバキと気味の悪い音が耳に届く。バシャバシャと不思議な音が聴覚を刺激する。グヂャグヂャと心地良い音が辺りに響く。
未だに私の頭は正常に動く。視界は真っ赤に染まれど良好で、耳は聴こえるし、口の中の血の味もしっかりわかる。地面の感覚はあるし、痛みもまだする。
――――私はまだ生きている。
身体の内から気が飛び出して来ようが、肉が抉れようが、肌が裂かれようが、私は生きている。
「あああああああああああああああ!!!!」
沸騰するように身体が熱い。血液が駆け回り、細胞一つ一つが知覚できるほど存在を主張してくる。
これは、あの地獄の底で体験した、あの感覚だ。手が生えて、目が治り、足が生み出される、あの感覚。
削れていく身体を修復していくかのように、無くなっていく身体をどんどん再生させていく。
だが、私の再生があってなお、それと同等の速度で木が成長していく。根っこのような細い何かが、私の内臓の各部を握るように囲んでいて、枝の増幅が止まらない。
そしてそれ以上に、私の何かが。私の源のような、エネルギーのような何かが、抜き取られていくような感覚に襲われるのだ。
枝に刺し貫かれては、何かを代償に枝の成長を上回る速度で再生していく。
しかしこれではまずい。この何かは霧化の時同様に疲労が蓄積されていく。お腹がとても空く。気を抜いては再生のスピードが落ちそうだ。
状況を打開するために、私は爪を鋭く伸ばして胃の中に突き刺した。原因が食べた茸なら、それを取り出せばこの木の成長も止まるだろうと考えての行為だ。
鋭い爪が私の肉を貫き、胃を囲んでいる木の根っこ簡単に切り裂いて奥へと進む。
そのまま背中まで爪が貫通し、胃袋を手で掴んだ。
そして力任せに勢いよく引っこ抜く。
肉が裂ける音と同時に、木が折れる音が耳に届く。すると手が体から抜けて、私の胃を取り出したのだ。
ビクビクと胎動する胃袋からは、どんどん枝が飛び出していくのがわかる。その度に肉片が辺りにバラ撒かれ、私は酷く不快にさせられたのだった。