夜を統べる王女   作:ヘイ!タクシー!

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ルナのターン


脱出

 周りで警戒していたメザーネ達は最初、何があったのかわからなかった。

 その生物に近づいた仲間の首が、気付いたら無くなっていた事態に脳が付いていけなかったのだ。

 

 そして彼等が固まっているのを他所に、その生物は男の頭部を丸噛じりすると、ムシャムシャと咀嚼し始める。その間も、首がなくなった男の身体は手でしっかりと掴まれたまま、離れることを許されない。

 

 ゴクリと男の頭部だった物を呑み込む。次に、未だ血が溢れ出す首に口を持っていくと、そのままギラリと光る牙をその傷口に突き立てた。

 

 直後、辺りにジュルジュルと響く啜る音。

 その音に固まっていた男達は、目の前で起こっている現実をようやく理解した。

 

「ぅ、うわああああああ!!!?」

 

「こ、コイツ! 人を喰いやがった!?」

 

「血を…………血を啜ってやがるッ!」

 

 騒然とする海賊達。頭を丸ごと食べられた光景を間近で見た彼等はパニックを起こした。

 それらを無視して、物言わなくなった男の血を啜り続ける生物。それが逆に彼等を恐怖に染める。

 

 それでもこの海賊団の船長であるメザーネは何とか声を出して、周りの部下達に指示を飛ばした。

 

「お、落ち着け野郎共! 見ろ、奴は食事に夢中だ! 知能も無い上に、今は無防備な姿を俺等に晒している!」

 

 まるで自分に言い聞かせるように叫ぶメザーネは、ピストルをその生物に向けて構える。その怒鳴り声を聞いた仲間達も少しだけ冷静になり、ピストルを構えた。

 

「奴の土手っ腹に風穴空けてやれ! 撃てぇ!!!」

 

 メザーネの合図に、生物の周りを囲んでいた仲間達は一斉に射撃を始める。

 波の音をかき消す銃声が島を震わせ、鉛の弾が未だ啜り続ける生物の身体を貫いた。

 

 それを見た海賊達は銃弾が効くと考え、得体の知れない化物を確実に殺そうと躍起になり、ピストルを撃ち続ける。しばらくの間、鼓膜を破るような騒音が響き渡った。

 

 カチッとピストルから銃声以外の音が聴こえ、それによって銃声の余韻だけが辺りを支配する。

 

「ば…………バカな」

 

 その声を出したのは誰だったか。全弾撃ち尽くしたまま固まり続ける彼等は、目の前で起こる現実を受け入れられなかった。

 

 弾は確実にその生物を捉え、貫いていた。その身体は風穴だらけで、炭化して崩れている姿も相まって、すぐにでもバラバラに崩壊しそうだ。

 

 なのに未だその生物は動いている。死体の血を啜り、肉を貪り続けている。

 

 ようやく全ての血を吸い付くし、死体から得られる肉を食べ尽くしたのか、生物は人の形を失った死体から牙を離した。

 そして、グルリと首らしき部分を動かして、生物は一人の男に頭を向ける。

 

「■■ヒャッ」

 

「ひっ……」

 

 男はその生物と目が合った。

 焼けて無事な部分が見つからない筈なのに、だ。黒く変色した顔で一つだけ無事な、真っ赤に光るその瞳と眼が合ってしまった。

 

「ひぃぃいいいいい!!!?」

 

 その叫び声を聞いた海賊達は、ハッと正気を戻す。

 再び引き起こされた生物の食事が引き金になり、彼等は我先にとその場から逃げ出した。

 

 

 

 この日、メザーネ海賊団は新世界のとある島、イモータルフォレストで壊滅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気付いたら私は寝ていたらしい。

 

「ん……」

 

 重く感じてしまう瞼を開けて、ゆっくり体を持ち上げて起きてみる。

 すると、地面に着いた手からここ数日で慣れた土や木の感触が返ってこず、代わりに柔らかい砂の感触が…………

 

 ここは、どこだ?

 

「………私、いつの間に砂浜の上で寝ていたんだろう………あれ? すな、はま?」

 

 そんな馬鹿な。

 私はさっきまで森の中に居た筈。出れることはおろか、食べることすら死の危険が纏うあの森にいたんだ。それが今更、気付いたら外に出ていたなんて………こんな簡単に、何故?

 

「………あ、そういえば私。炎の中に飛び込んだんだった」

 

 そうだ。なんで忘れていたんだろう。あんなにも危険な目にあったのに。

 炎に飛び込んだら、熱が私を襲うまでは良かったんだ。いや、良くはないけど予想はしていた。問題はその火力と体内に残る熱が問題だったんだ。

 恐ろしいものだった。一瞬で私の肌を焼き尽くしたと思ったら、今度は肉を芯まで焼き尽くす勢いで熱が私の体まで浸透した。体内の水分が瞬時に蒸発する経験をしたのは、例え奴隷であっても私くらいだろう。多分蒸発する前に死ぬと思う。

 内臓は焼けて、骨は溶けて………瞼を開けることが辛いと思った時には、目なんて焦げて使い物にならなくなった。熱で息ができないと思った時には、口から熱気が入って肺を焼かれた。

 

 意識して行う早い再生(超再生と名付けた)を使ってすら、命を保つのにギリギリだった。

 いつ炎を抜けたのかすらわからなかったけど、焼ける翼を超再生させた上で限界まで酷使し続けて飛んでいたんだ。体内に残る熱のせいで再生した端から熱がすぐ伝わってくるし、鼬ごっこをさせられていた気分だ。途中なんか、焼かれ過ぎて上か下かもわからなくなった。

 

 超再生のし過ぎで最後は感覚が無くなったのは覚えているけど……

 

 私はなんとなく周りを見渡してみる。

 久しぶりの開けた視界に、地平線まで続く海。真っ青な空は暗くなっていた気分を爽快にさせてくれる。あの鬱陶しい光を放つ太陽ですら、今は許してやっても良いと思える。

 

 あの森から抜け出せたという事実が、周りの景色から嫌でも伝わってくる。

 

「ようやく………ようやく出られた!!」

 

 奴隷の時の方が辛い目に合ったのに、今は解放された時より気分がいい。日光を長い時間浴び続けたような体のダルさがあるけど、それすら吹き飛ばすような満腹感と充実感が私の中で占められている!

 

 あまりの気分の良さに、鼻唄が歌いたくなる。というかすでにしていた。

 

「ふんふん、ふふふーん!」

 

 なんだかおかしいくらい良い気分だ。これもやっとの思いで抜け出せた開放感から来るものなのかな。

 

 なんだかジッとしていられなくなって、てこてこその場を歩いてみる。足裏に感じる砂の感触を楽しい。ここに漂流した時も踏んだ筈なのに、なんだか別の砂を歩いている気分だ。

 クークーと可愛い渡り鳥の鳴き声が聴こえて、釣られて私は海に視線が行く。

 

 その時、海に漂う一つの船に気づいた。

 とても大きく存在感のある船だ。なんで今まで気づかなかったんだと思わなくもないけど、ひどく今更な感じがするし気付かなかったのだから仕方ない。

 

「大きい船………確か、ガレオン船て言うんだっけ?」

 

 その船に圧倒されたからなのか、初めて見た巨大な船をボーっと眺める。

 アレって何人の人手がいるんだろうなって考えていたら、私はあることに気付いた。

 

「そうだ。船があるってことは、人がいるってことだよね」

 

 その事実に気付いた私は、急いで船まで駆け寄ろうと走った。

 が、海に足を入れた瞬間足に力が入らなくなる。

 

「はうっ!」

 

 慌てて海から足を出すと、その力が無くなる感じが薄れる。

 

 ビックリした。なんで急に力が………この前も、海に落ちた時に力が抜けたような記憶があるけど………。

 ふと、昔教えられたことが頭の隅を横切る。そういえば、ハンコックお姉さんたちに悪魔の実の能力者は海に嫌われるって言っていたのを忘れてた。

 当時はハンコックお姉さんたちが悪魔の実を食べさせられたから教えてもらっただけで、その時は能力者じゃなかったからあんまり意識して無かったんだった。

 

「まあ、いいよ。飛べばいいのだし」

 

 翼をはためかせて勢いよく飛び上がる。そのまま船の甲板まで一直線に進んで、船の上に着地した。

 甲板の上には…………誰もいなさそうだ。なら中なのか? それとも島に上陸したのか…………。

 

「って、それはまずい!」

 

 私は慌てて島の方に目を向ける。

 あの森の中に入っていたらもう駄目だ。助けられないし、助かる見込みもない。人に会わないといけない訳ではないのだけど、どうせなら人に会いたい気持ちがある。

 遅いかもしれないけど、浜辺にいるかもしれないと期待を込めて船から体を乗り出して島を見る。

 

 そこで私はあるものを見かけた。それも私のいた近くの浜辺に、だ。

 浜辺周辺に、たくさんの衣服が落ちている。

 

「…………いつのまにあんな服が? それとも、私が気付かなかっただけ?」

 

 何故衣服がたくさん落ちているのか気になるのけど、それよりも状況確認だ。私はもう一度空に飛び上がって先程いた浜辺に着陸する。

 そのまま近くの落ちている服に近寄って、よくよく観察してみた。

 

 ……なんだろうか。人間が服を着たまま消え去ったような形で落ちてる。近くには干からびた人の肉片らしきものも落ちているし…………。

 

 他にも見て回ってみたけど、結局どれも同じだった。全て服を着た状態で、死んで細切れになった人間の死体がいっぱい落ちている。

 干からびていることから、結構昔からある物なのか。取り敢えず、肉片が渇き過ぎて食べる気が起きないくらいには時間が経った物だ。

 

 

 というか、だ。

 それよりも服を見ていて、私はとても重大なことに気付かされた。

 

 私、今。裸なのだ。下着すら身に付けていない状態だった。

 ……奴隷の時から馴れすぎていて、すっかり忘れてた。

 

 いつからだろうと過去を思い出して………首を切って逃げた後から服が無かった気がする…………。あの海軍に裸を見られなくてよかったと思う。馴れたとは言え、裸を見られて良い気持ちはしない。というか嫌だ。

 

「…………取り敢えず、この人達から衣服を剥ぎ取ろうかな。こんな格好で人に会うなんて嫌だし」

 

 私だってそこまで羞恥心を捨ててはいない。

 ただ、どの死体も上半身裸のものばかり。下は良くても上が見つからない…………。

 

 なんとなく、チラッと下に視線を向ける。見えるのは、ある程度成長した胸と少々大きくなった体。とは言えあの三姉妹に比べたら小さいし、身長も子供並みに低い……。

 

「……これから、伸びる筈…………」

 

 見下ろして少しばかり憂鬱な気分になってしまった。

 む…………タンクトップ。取り敢えずこれは回収して…………。

 

 そうやって服を探していると、一人だけしっかり服を着た死体らしき物を見つけた。

 ピッタリとした黒のパンツに、白のYシャツ。それに真っ赤なコート。デザインもいい感じだし、これを着ることに決めた。

 手足の長さが足りないので裾は爪で切って調節して、パンツは落ちないようベルトでしっかり固定する。

 

 最後に大きな帽子を被ってコートを羽織れば……

 

「うん。悪くない」

 

 自分の格好を見下ろしながらそう独り言ちた。太陽の光もなんだか緩和されたような気がするし、コートを羽織るだけなら翼の邪魔にもならなそうだし。ワイシャツは突き破ることになってしまうけど、そこはしょうがないだろう。

 

 衣服も見つかればここにもう用はない。少々勿体無いと思いつつも、ワイシャツの背中部分を突き破って翼を広げる。

 そうして、私はこの島から飛んで離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルナ

 年齢 13歳

 身長 145cm

 体重 40㎏

 好きな物 血、内臓、甘いもの

 苦手な物 太陽の光

 天敵 天竜人

 懸賞金 1億8千万ベリー

 3サイズ B77 / W53 / H76

 特徴 夜に光るルビーの瞳と、月明かりに輝く銀の髪

 

 性格 

 元は善良で無邪気な子供であったが、奴隷時代に虐待されたことが原因で冷徹な人間に。自分に害をなそうとする者、命を脅かそうとする者には容赦しない。

ただし、それは強気な態度から来るものではなく、虐待されたトラウマが影響で自己を保つための防衛反応が働き、他者を遠ざける性格に。

 それ故、自分と似た悲しい過去を持つ相手や、信頼できるとわかった人には、過剰に気を許してしまうこともある。

 

 悪魔の実

 動物系幻獣種、ヒトヒトの実(モデル・真祖)を食べた不老人間。

 実を食べた直後から老いることが無くなった体を持つことに。

 その身体は人間とは異なる生命体に変わり、傷を受けても再生し、鋭い爪や牙、飛ぶことができる翼が生え、霧に変化できる上に力も常人より圧倒的に増えた。

 能力は本人の意思で自在に駆使できる。ただし決して死なない訳ではなく、細胞が全て消滅すれば再生はできず、あまりの激痛に脳が耐えられずショック死などで死ぬことも。

 また新しい生命体に変わったことで、生命エネルギーのようなものを摂取しないと生きられない身体となった。そのため、摂取には血や内臓器官が必要となる上に能力にはエネルギーを消費する必要がある。

 他にも夜行性へと変わったことで、太陽の光が苦手になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 




終章!

ついでに現状はっきりしているルナのことについて書いておきます。これ以外にもまだまだ能力はありますが、現状ルナが使える能力はこれだけです
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