最近ブランクでして今一執筆が乗らなくて遅れてしまいました。申し訳ないっす。
そのせいか今話…………雑な感じ、かも。作者的に。
…………さーせん
海兵共が慌ただしく私の目の前を走っている。
「所詮能力頼りか………この海で通じるとでも思ったのか?」
横たわる私の後ろからそう声を掛けてくる海軍の将校。
私を倒した男。
「まさかこんなガキにレゲータが殺されたとはな」
一瞬だった。
軍艦に乗り込んだ私の前にいきなりこの男が現れたと思ったら、身体の一部ではなく全身が黒く染まって私を攻撃してきたのだ。
吹っ飛ぶ私に空中で追い付いたと思ったら、私の腕に石で出来た無骨な手錠を掛けて 拘束されてた。
その手錠を掛けられてから一向に私の身体が動かない。力が出ないと言った方が正しいか。
兎に角この状況から逃げたいのに、私は逃げられないのだ。
「あの若造め………覇気を会得したからと調子に乗ったな。能力者も覇気使いも、己の力を過信した者の寿命は短い」
ハキってなんだ? どうして私は拘束されている?
「まあいい………このガキを天竜人に引き渡せば任務は終わりだ」
天竜人……天竜人ッ……天竜人ッ………!
また、あの地獄に戻るのか!? 嫌だ! ふざけるな! 冗談じゃない!
「離せ、離せッ!!」
「黙れ」
「あぎッ……!」
ここから脱出しないといけないのに身体が思うように動かない。手錠から伸びる鎖がガシャガシャと音を立てるだけで、何も出来ない。
今すぐにでも私の顔を踏みつけている男を殺してやりたいのに、それすら叶わない。
「な、ぜだ」
「………」
「答え……ろ。何故貴方達は私を襲う! 何故私を犯罪者に仕立てあげる!?」
そもそも何故私がこんな目に合わないといけないのか。
捕まった現実と この後に起こる未来から目を背けたくて、私は堪らず敵である海兵にそんなことを聞いてしまった。
だけどそれは純粋な気持ちである。何故私を捕まえるのか。
天竜人を殺したから?
馬鹿な、あいつは世界の人々にとって害でしかない。だから殺したんだ。私に危害を加えたから、だから殺した。
奴隷だから?
それこそふざけるな。奴隷から逃げることは罪なのか? 何も悪いことをしていないのに? 意味がわからない。
私は答えを待った。
この海兵がどのような返答をするのか。簡単に私を捕らえられる力を持って、『正義』を掲げるこの男がどう答えるのか。
聞かずには要られないのだ。
たがら男が次に吐いた言葉を聞いた時、私の耳がおかしくなったのかと思わずに要られなかった。
「政府の命令だからだ」
「…………は?」
…………セイフの、メイレイ?
何を…………何を言ってるんだこの男は。おかしい。私の頭が狂っているのか?
「聞こえなかったか? 上からの命令。つまり法こそが我々がお前を捕らえる理由だ」
「…………そんな、ばかな」
この男は単純に言葉が聞こえないと思ったらしい。御大層にも律儀に言葉返すコイツが キモチワルクテショウガナイ。
政府からの命令? なんだそれは……私は、そんな事のためだけで、犯罪者にされて…………両親に会うことすら許されないのか?
法だと? 法を犯した…………違う。ただ逃げただけだ。私に危害を加えたあの男に正統な罰を与えただけだ。それの何がダメだと言うのだ。
理解できない 理解できない リカイデキナイ
この男はナンダ? 正義と言う2文字を掲げる海兵は。私が先程殺した男達も、周りにいるコイツらも、あの時私を助けなかった海兵共も。
全てコイツのような存在なのか? 政府の命令を忠実に従う犬でしかないのか?
では正義とは? コイツらが御大層に掲げる正義とはナンダ? 政府の命令……天竜人の言葉が、その存在がコイツらの言う正義なのか?
…………違う。それは違う! 断じて許してなるものか!
たくさんの悲劇があった。たくさんの涙があった。たくさんの死があった。
そんなものを『正義』とは言わない。『悪』ですらない。
それはただの『地獄』だ。
「ふざけるな! 地獄を作り出すことが貴様らの言う正義なのか!? 貴様らが『悪』だと罵る海賊の方がよっぽど」
「ふん!」
「ガッ!?」
再び私を黙らせようと頭を踏みつけられる。
口の中は先程踏まれた時に口を切ったせいか、溢れた唾液が血で少し染まっている。
私を縛るこの海楼石とやらのせいで私の再生も発動しない。まだ治りかけだったせいか 左目も完全に見えない。
どうにかしなくては。この理不尽な現実をどうにかしなくては。
力がいる。ここから脱出する力が。敵に追われても撃退できる力が。
私の障害になる敵を殺せる力が、いる。
「あんな子供が海賊なんて、世も末だな」
俺が黙々と海に落ちた味方の救助にあたっていたら、隣から同僚が声を掛けてきた。
こいつが見る方向、銀色の髪に赤い瞳が特徴の少女が海楼石によって拘束されているのがわかる。
「見るからに歳の離れた俺の妹より歳下だぜ? 信じられるか?」
「馬鹿言ってんな。さっきの光景を見ただろ? 拳を叩き付けただけで船がオシャカになったんだ。加えて海兵の数十人とレゲータ大佐が殺された」
現実を理解していない同僚に懇切丁寧に教えてやるが、どうもこいつは納得しないらしい。
渋るような顔で犯罪者の少女を見続けている。
「だけどよぉ……」
「もういい加減お前は黙っとけ。無駄話をしていると少将にキレられちまう」
俺がそう言うと甘いこの同僚も黙々と作業を再開した。
それを確認した俺は一度だけ話題に出た少女をチラリと見て、作業を続ける。
……確かに、端から見ればあんな可愛らしい少女が『あの事件』を引き起こし、それを俺等が捕まえているのだから、世の中腐っているのかもしれない。
そんな考えが一瞬だけ頭の中を過った。
少女が軍艦の檻に入れられてからは、先程まで暴れていたのが嘘と思えるくらいに静かだった。ただそれは暴れているかいないかと言う違いで、彼女はボソボソと独り言を垂れ流しているのだ。
「力がいるんだ……ハキ………私の、能力……」
その様子がとても不気味で異様だ。
「ひでぇもんだ。あれが奴隷の末路だ……」
一緒に監視をしている上官の一人が彼女を見て呟いていた。
『奴隷』と言う言葉に、俺は無意識に肩を震わせる。
ああいうのを廃人と言うらしい。そんな人間を見るのはこれで二度目だ。
俺も海兵と言う立場上、奴隷を捕らえたことがある。それもつい最近。
だからこそ言えるが…………彼等は、何かに怯えていた。それが天竜人か、はたまた奴隷と言う境遇か、もしくはただ純粋な暴力か。わからないが、常に何かに怯えているのだ。
俺は『正義』を背負っている海兵の一人だが、別に正義感があってこの仕事に入った訳じゃない。周りの皆より力が強くて、家が貧乏で仕事が無かったからこの仕事に付いた。それだけだ。
彼等を見てそんな俺が思うのは、『自分が奴隷じゃなくて良かった。』そう思うことくらいだ。多少罪悪感が募るが、それだけ。
だから目の前で囚われている少女が奴隷解放を実行したことに、俺が心を痛めているなんてあり得ない。その筈なのだが。
「こんなところで…………終われ、ない」
傷を負いながら不気味に呟き続ける少女を見て、俺は何故か無力感に苛まれるのだ。
そうして暫く俺と上官の二人体制で監視に就いていたとき、突如地面が揺れた。
いや、地面が揺れたと言うのは正しくない。俺達が乗ってる軍艦が揺れたんだ。
「くっ……な、なんだ?」
『敵襲ぅー!!』
上官が疑問の声を上げた直後、味方による警報が艦内に鳴り響いた。
それを聞いて俺たちはすぐに武器を持って警戒態勢に入る。
敵襲とはつまり海賊が攻めてきたということだ。いくら中将がこの軍艦に乗っているとは言え、新世界と呼ばれるこの海で海軍の軍艦を襲う海賊はヤバい連中ばかり。
俺と上官の間で緊張感が高まった。
その直後、俺達の背後で爆音とともに全身を叩くような衝撃が襲ってくる。
「ガフぁッ!」
強烈な痛みと回る視界の中、最後に見たのは嵐のような雨が振り付ける空だった。
「ぁ……」
私があの海兵に負けて捕らわれてから数時間後。
見慣れたような独房に、見慣れたような拘束具。身体を壊し尽くされたように動かない感覚。
あの地獄を思い起こすような現状で、意外にも私は冷静でいられた。
それどころか、今目の前にはこの状況を打開できる光景が広がっている。
「海賊がこの船を襲っているのね………何故かわからないけど、これはチャンス」
嵐の海が破壊された壁から眺めながら、あとはこの拘束具をどうするべきかと私は悩んでいた。
私を縛る拘束具は壁と鎖で繋がった足枷と、先ほどから私の力が抜ける元凶らしき海楼石と呼ばれる手錠。
足枷はどうにでもなるにしても、手錠だけは鍵を探さなくてはならない。しかしその鍵を探すには足枷をどうにかしないとここから動けない。
「くそ…………何か無いのかしら」
私はこの状況を打開できる何かがないかキョロキョロ辺りに目を向ける。
しかし都合よく何かあるわけでも無い。むしろあったら罠じゃないかと疑うだろう。
「いっそ………さっきみたいに砲弾で私を粉々にしてくれたら、手錠も抜けられるのに……」
その場合常人ならば死ぬだろうけど、私は再生があるので大丈夫だろうし。
そんな少しアホのような思考を現実逃避気味に考えていれば、私はふとあるものが目に入った。
私は上手く力がでない身体を何とか動かし、視界に入った物に近付く。
それは降り敷ける大雨と雷、遠くには巨大な波が見える海………が見えるようになった壊れた壁。
破壊された壁は先端が荒く削ったように尖った木が露出している。
人を勢いよく突き刺せば貫通するんじゃないかと思うくらいには、鋭利に尖っていた。
「これなら……何とかすれば私の腕を切断できる……」
外せないなら私の腕ごと外せば良い。腕はどうせ後で再生するのだから。
そう考えた私は腕を高くあげるとその尖った木に目掛けて振り下ろした。
「………流石に一発じゃ駄目ね」
グチャッと、気味の悪い音が聴こえてくるようだ。
振り下ろした腕から鋭い痛みを感じながら、私はその結果を見て呟く。
壊された壁の先端が荒く削れたおかげで 両手首を満遍なく突き刺してはいるけど、今の私の力不足故か貫通することはなかった。
ジクジクと痛む手首から少量の血が壁に伝わるのを眺めながら、私は木から腕を引き抜く。
「何度か繰り返せば、その内この腕も千切れるかな?」
私は無心になってただただ機械のように痛む腕を振り下ろした。