正直面白いかどうか判断がつかないので、また感想貰えたら話増やしてきます。
俺達奴隷に明日は無い。
────そう私に教えてくれた、数日前に知り合いになった奴隷の少年。彼は主人の命令により呆気なく死んでしまった。
────希望を失えば奴隷に未来は無い。抗わなきゃいけない。
そう言った奴隷の彼女は、主人となった貴族の人間に壊され先程自殺した。
────お腹が空いた。苦しい……助けて……
足を失ったまだ私よりも幼い子供はお腹を押さえながら、か細い声で最後まで助けを求めて、餓死してしまった。
奴隷とは地獄だ。今まで人として扱われていた自分が180°変わって物や玩具扱いになる。奴隷を可哀想だとは思っていても、まさか自分がそうなるとは思いもしなかった。
私は世界加盟国の小さな貴族の令嬢だった。私の一族はとある分野に秀でており、その役割から貴族へと乗し上がり王の、ひいては国の重大な役割を担っていた。
しかし貴族と言うものは敵が多い。常に他の家を蹴落とし自分の家が乗し上がることを考えなければ足下を掬われる。
私の家の他にももう一つ私達と同じ役割を持った貴族の家があった。その家は昔から私達の家を敵視していたらしい。
気付けば私達はその家に足下を掬われ、没落させられていた。
没落した貴族の娘に待っているのは最悪の結末だ。
貴族として生きてきた私を誰が雇おうか。面倒事以外持ち合わせていない没落貴族の私を誰が救ってくれるだろうか。
お金を稼ぐことも出来ず、しかし孤児になってもすぐに死ぬ。親は死んで、守ってくれる人がいない。
残った借金を返済するために、奴隷になる以外道は無かった。
「くひひ」
「いやッ……」
目の前には私を買った……私達の家を没落させた家の息子がいる。
オークションで別々に買われ、妹と離ればなれにさせられた私は数人の奴隷と一緒にこの男の家にやって来た。
そしてそこからは典型的で悲惨な奴隷と言う名の地獄が待っていた。最初の数ヶ月、私達を買った主人に対して反抗しない様に食事制限や労働で反抗する為の体力を削ぎ、暴力による責め苦で気力を失わせられた。
私は明確な目的の為に買われた為に死ぬ事は無かった。しかし最初から壊す事が目的でストレス発散に買われた奴隷や、単純な労働力として安く買われた奴隷達は簡単に死んでいった。
そして次は私の番だった。
私ももう16歳の年齢になった。だからそう言う知識もある程度知っている。だから、だから、だから…………これから我が身に起こることも察しが付いていて、それを拒絶する力が無いことも、この数ヶ月で嫌でもわかってしまっていた
「お父様ッ……お母様ぁ………!」
「もうお前の親はいねーんだよ。いい加減諦めなぁ」
目を凝らせば肌が見えるんじゃないかと思うほどに生地が薄いランジェリーを着せられた私は、目の前の男の部屋に連れていかれ、ベッドに押し倒される。
抵抗なんて出来なかった。初めて行われるだろう事に私は恐怖で動けなくて、泣いて助けを求めることしか出来ない。
「いや……イヤァ!」
「ひひひっ。可哀想になぁ……お前の両親は死に、お前と妹も奴隷に落ちちまった。そんな可哀想なお前は、俺が慰めてやるからよ」
私の家を無茶苦茶にしたのは目の前のこいつとその親なのに、好き勝手言われている現状に怒りが募った。
でもそれ以上に、実の親を殺した張本人達の一人であるこの男の慰みにされる自分が、好き勝手言われようとも何をされようとも、反論も抵抗もできない自分が、悲しくて仕方がなかった。
しょうがないと諦める自分がいる。
自分は今まで家の為に貴族としてのマナーと、家を継ぐための勉強しかしてこなかったのだ。貴族としてのメッキが剥がれれば、何も出来ない哀れな少女でしかない。
だけど、それでも。現状に抗う自分は確かにいた。
親を殺し、好き勝手するこの男に目に物を見せてやりたい。家を無茶苦茶にしたコイツらを絶望の淵に落としてやりたい。
でも現実はそうはいかない。だからせめて、私はこいつの思い通りになんかなってやらない。いつか絶対に私はこの男から逃げ出してやる!
「あぁ? なんだその目は?」
諦めきれない想いが表情に出ていたんだろう。
涙で視界が霞むけれども、それでも私はこの男に屈してなるものかと睨んでいた。
それが男には不服だったらしい。
「お前は! 奴隷の立場と言うものが! わかってないようだな!!」
「ッ! うァッ!」
男は声を荒げながら、何度も何度も私の頬を叩く。この数ヶ月で受けたトラウマがフラッシュバックすした。
熱く、鋭い痛みが私の頬を焼く。叩かれる度、目に溜まっていた涙が飛び散り、我慢していた口から苦痛の声が漏れる。
それでも私は屈したくなかった。負けてなるものかと、叩かれながらも男を睨み続けた。
「ハァッハァッ!!」
先に音を上げたのは男の方だった。
運動もろくにしてこなかったのだろう豊かな体型の男は汗だくになりながら肩を荒げている。
痛みの嵐に襲われていた私は、その暴威が止んだことでようやく休めると安心した。
だけどその結果が到底私の心休まる事ではないと気付かされる。
「ああ! もうウゼェなぁ!!」
「ッ!?」
いきなり男は私に腰の上に乗っかると、服を掴み強引に引き裂いたのだ。
元々透けるほど薄い生地でできたランジェリーだったとはいえ、確かに私の肌を守っていた鎧は簡単に失われてしまった。
「ひぅッ……」
「ひひっ! その怯える顔が見たかったんだよ」
もう己を護る布が下着のみとなった私の身体を男は厭らしい目付きで眺めていた。
視線が私の腰や胸を通る度に、蛇が肌を這うような気持ち悪い感覚に襲われる。
気持ち悪い! 気持ち悪い気持ち悪いッ!!
肌を隠そうにも手足が拘束されては何も出来ない。それどころか必死に隠そうとする私の姿が、男の欲情を更に加速させている気さえする。
男は私の首筋に手を伸ばすと、家族にしか触れる事を許さなかった自慢の緑色の髪を無造作に掴んだ。
「いッ」
「なぁ
掴んだ髪を強引に引っ張って耳許で囁く男に、私は無視を決め込もうとした。
だけど、次の男の言葉に無視できない現実を聞かされた。
「お前の妹…………どぉやら薄汚い海賊に買われたらしい」
「え……」
一瞬、言葉が理解できなくて私は男の方を振り向いた。
すると目の前にはニヤニヤした醜悪な顔をこれでもかと浮かべた男の表情。その口から妹の事について話された。
「可哀想になぁ。まだ七歳のガキが馬鹿な海賊に買われちまったんだ。お前以上に酷い目に…………いや、もう死んじまってるんじゃねぇか?」
「お前ッ!」
怒りで目の前が真っ赤になるというのはこう言うことを言うんだろう。
この男を殺したい。人を殺したこともない私だったけど、今は必然とそう思わずにいられない。
「安心しろ。俺はお前に快楽を与えてやる。一生、俺の玩具になるんだ!」
「やッ、ぁ」
男は私の胸を乱雑に掴むと、その脂肪が詰まった掌で揉んでくる。容赦なく揉まれて痛みしか感じないのに、男は私の顔が歪められたのを見て何を思ったのか、更に力が強くなる。
「んッ……っっ!」
痛い。気持ち悪い。吐き気がする。
どうしようも出来ない現実がここにあった。奴隷と言う立場に落ちた私には、もう妹を助ける力も、目の前の男に抵抗できる力すらない。ただ歯を食いしばって、この地獄を耐え抜く未来しか無かった。未来には絶望しかない。あまりにもわかりきっている事実がそこにある。
でも。
「許さない………絶対に許さない! 殺してやるッ!!」
奇跡は起こらない事を、両親が目の前で殺されたときに嫌でも気付かされた。
いるかもわからない神に祈りを捧げても、大切な妹すら護れない無意味な行いだと理解させられた。
わかっている。理解してる。願っても何も起きないと。行動しなければ、それができる力が無ければ何も変えられないと。
でもそれが出来ないから。ちっぽけな私ではいくら抗っても無意味な行いでしか無い。反抗したくてもそれが出来る力が無い。
だけど、心だけは絶対に屈してやるもんか。
「誰か…………」
救いが無いことを知っている。それでも。神でも悪魔でも誰でもいい。
何もできないままこの男に犯されて、生涯オモチャとして生きるくらいなら。舌を噛み切って死んでやる。
でも、この現実から私を解放してくれる誰かがいるのなら。この現状を打開する何かをくれるのなら。
何でもする。その人の為に私の人生を注ぐ。
だから、だから。
誰でもいい。化物でも、悪人でも構わない。
「私に力をッ!!!」
「あっ?」
真っ赤な血が私に降り注いだ。
何が起きたのかわからない。そう言いたげな声が聴こえた直後、私の横に丸い何かが落ちてきた。
次に私の上に乗っかっていた、首の無くなった脂まみれの巨体が横に吹き飛ぶ。
「その願い」
それは私が思っている以上に可愛らしい方であった。そして想像以上に残酷な人であった。
窓から射し込む月明かりに照らされた彼女は、染み一つない真っ白な手を私へと伸ばす。
「私が叶えてあげる」
真っ赤な瞳を妖しく光らせて、天使の様な見た目のその女の子は慈悲深いようで邪悪に微笑んでいた。
▽ ▽ ▽
リィルの計画。それは至極簡単で難しいモノだった。
人を集める。それには私の『奴隷の英雄』と言う知名度が必要。
そこから来る答えは…………まあ要するに、世界に散らばる奴隷を助け、政府と対立する組織に私達の名を知らしめ、あわよくばその組織と繋がりを持とうという話だった。
私はまったく聞いたことが無いのだけど、以前から政府に対抗する人達、『革命軍』と名乗る組織があるらしい。リィルも詳しくは知らないらしいが、少し前にそう名乗る組織が世界各地で小さな騒ぎを起こしるのだとか。
あまり信用できる組織では無いらしいが、それでも世界政府と明確に敵対している組織で、ソレが悪であれ正義であれ…………政府と敵対している行動を起こす私達の情報を知れば、私達を欲しがる可能性はあると判断した。
果たして私達が受け入れられるのかわからない。それでも、私達二人ではこの残酷な世界で生きる事さえ難しいのだから、協力してくれる人達を自らの手で手に入れるしかないのだ。
正直穴だらけの計画。本当にあるかどうかも、そんな連中が私達に接触してくれるかも、そもそも仲間になってくれるかもわからない。
そんなわからないことだらけの為に私達は自分から政府に喧嘩を売るような事をしようとするのだ。他人からすれば、自殺願望があるのかと疑われても仕方ないだろう。
それでも、私達はやるしかなかった。
私達が最初に目を付けたのは、今までいた島にある国だ。
町の人々にこの国に奴隷が売られているか、それとも誰かが奴隷を所持しているか、身分がバレないよう苦心しながらなんとか聞き込みを行った。
結果で言えばいなかった。
この国が平和であった訳ではない。むしろ世界政府非加盟国と言う貧困の国であった。
民は飢え、国はまともな軍隊も組織できず、何時海賊の脅威に晒されるともわからない貧困で小さい。海軍に頼りたくとも毎年払わなければならない莫大なお金、天上金を用意することすら出来ない。
そんな国に住む人々に、一体誰が奴隷を買う余裕があるかというと勿論無い。じゃあ無駄骨だったかと言われると、そうでもなかった。
非加盟国は犯罪者の隠れ家とも言える。リィルのような人も当然いる。
私達は奴隷を売る側。つまり人拐いの者達を見付けた。
「たす、けて………」
「女子供と甘く見ましたね」
「リィルは強いね。私の能力を使うまでも無かったよ」
寂れてはいるけど、それでも人が住めるくらいには整った大きな屋敷に奴等はいた。
本当に住めるだけの周りの家々とは違い、明らかに小綺麗で荒れていない。彼等がここらの地域では力のある人間達で、しかも人拐いという家業である程度の金を稼いでいる証拠だろう。
人拐いと呼ばれる彼等に、私は少しだけ恐怖があった。もしかしたらまた拐われてあの地獄に戻されるのではないかと言う懸念が、私には拭いきれなかった。
でもそんな懸念は吹き飛ばされた。
人拐い達は弱かった。
正面から突入した私達に何事か汚い言葉を投げ掛けたあと、襲い掛かってきた彼等は呆気なく死んだ。リィルが刀を振るえば男達は簡単には首が飛び、私が爪で切り裂けば簡単に真っ二つに分かれた。
人拐いのリーダー1人だけを残し、他の人達は死んだ。死んだ人間の内の半分を私が殺した。リィルにバレないよう血も少しだけど摂取できた。
もう私は人を殺してはいけない倫理観を完全に失っていた。リィルにバレたくないからこっそり血を啜っただけで、むしろ人を拐って自分達の食い物にしているこの人間達を殺せて嬉しくなったくらいだ。
「た、助けてくれ! 何でも言う! 何でもするから命だけは!!」
「貴方達はどこで拐った人達を売っているのですか? 正直に答えなさい。でないと………」
「ひぃ! 言う、言うから! 俺等はいつも『アローラ』の国のヒューマンショップで奴隷達を売っている!」
リィルが生かした男を尋問している間、私はそいつ等のアジトの中を散策する。
リィルが言うには、何処かの国のエターナルポースを見つける事が重要らしい。場所はとにかく何処でも良い。リィル曰く、グランドラインの海を指針無くしてさ迷えば命は無いらしい…………よく、私はベネッカの町に無傷で辿り着けた物だ。運が良いのか悪いのか……
そうして辺りを散策していると、私は砂時計のような入れ物に方位磁針が入った物を見つけた。多分これがエターナルポースなのだろう。
私はすぐにリィルがいる部屋に戻った。部屋にはリィルと、さっきまで生きていた人拐いのリーダーだった死体が他の死体と同じようにそこらに転がっていた。
「ああ、お帰りなさいルナ……どうやら、『アローラ』のエターナルポースは見つけたようですね……」
「うん。それでどうするの? もう移動する?」
「いえ………その前に私達の物を整理しましょう。この男達が使ってた船に私達の荷物を詰め込みますね………」
私達がやっていることは、多分だけど、さっき殺した人拐い達のやっていることと変わらないだろう。その人の善悪はどうあれ、人に危害を加えているのだから。
きっと前の私なら人間から離れていく価値観に悲しんでいた。
でも、私は今一人ではなかった。
まだ信じた訳じゃない。それでも私を少しでも肯定してくれて、一緒に同じ道を歩んでくれるリィルがとても心強く感じていた。
………だけどもし、また私が独りになってしまったら…………
私は耐えられるだろうか。
生きることを諦めないだろうか。
なぜか、もう顔も朧気にしか思い出せない両親の姿が脳裏にちらついた。