ありふれた問題児(職業)が世界最強になるそうですよ? 作:きりがる
さて、いきなりぶっこみますが―――
―――ハジメきゅんの誕生だ! 祝え、野郎ども! 誕生日だぞ!
わーわー!ひゅーひゅー!
ま、これについては賛否両論あるでしょう。プロローグ前書き伏線回収完了(無理やり感)。
言いたいことは簡単にですが、活動報告に書いてますんで、そちらをどうぞ。批評批判等々は受け付けますが、お手柔らかにお願いします。
今回はそこまで深くないし、学校や仕事の休憩時間にささっとどうぞ。
まだあれがあれだから、ハジメきゅんって感じじゃないです。多分、これから。ユエが可愛い。可愛い。知ってる。
※あっぶねぇ…アレだけ言ってたのにタグ忘れてたぜ…皆さんありがとうございます。タグ付けておきました。
現在、十六夜とユエの二人は魔物を歯牙にもかけず、十六夜が辿ってきた迷宮の道筋を逆走していた。
ユエは十六夜の血を吸うことで身体能力を強化し、十六夜ほどではないにしろ、技能・縮地に迫るほどの速度を叩き出していた。愛の力なのだろうか。
一方、十六夜はと言えば、ユエの出せる最高速度と同速度で走っており、その背中には魔物の革で作られた風呂敷を背負っている。中には途中で収穫してきた大量の赤い実が詰まっており、これらはハジメのために持って帰っているものであった。
十六夜はハジメに約束した通り、食料が見つかったためにハジメの元へと戻っているのだ。例え、既にハジメが死んでいようが生きていようが、それでも追いついてきていないのであれば一度戻ることは考えていた。
途中で虫をユエに焼き払わせ、魔物を踏み台にし、血を吸うためにユエが抱きついてきて吸われながら走り、ユエを抱えて走ってユエが目を回し、魔物を乗り回し、ユエに血を吸われ…………。
流石に魔物にライドオンした時はロデオを楽しんでしまったが、ご愛嬌である。
そしてまた一つ、階層を登りきったとろこで足を止める。草原のような階層は実に見晴らしがよく、十六夜の並外れた視力があちこちに倒れている魔物を見つけたのだ。どの魔物も頭が吹き飛んでいたり、肉が引き千切られている。または、斜めからバッサリと切り落とされていた。
「魔物が死んでるな…ってことは、ここにハジメがいるかもしれねえな」
「ん…さっきの階層は荒らされてなかった」
「そういうことだ。まぁ、スニーキングで抜けたっつー可能性もあるかもしれねえが、ここの何処かに居るのが無難だろ」
ユエを降ろし、走ること無く歩き出す。魔物は全てユエの魔法で殺され、偶に十六夜がポケットから出した鉱石の粒を指で弾き、殺していく。
「十六夜…私、役に立ってる?」
「おう、雑魚相手に俺がわざわざ動かなくてもいいってところが、有り難いとこだな。接近戦も面白いが、遠距離も面白そうだ」
「魔法なら私が手取り足取り教える」
「呪文的なのを唱えるのが面倒だから却下。魔法を放つよりも俺が攻撃する方が確実に速いし」
「残念……」
シュン…と小さく落ち込むユエの頭を苦笑しながら撫でる。撫でられているユエは撫でられる心地よさと十六夜の手と暖かさに頬を緩ませ、頭を手に擦り付ける。普通なら気が狂いそうになるような環境で手も足も動かせない状況にて過ごしたユエは、ちょっとのスキンシップでも嬉しそうに受け入れている。血を吸う時に抱きついたり、その甘美なる味に酔いしれる際の一つの欲を抑えるのが大変なほどだ。
また一匹、魔物が第一宇宙速度により投石された鉱物によって胴体を吹き飛ばされたことで、頭部を地面に転がす。過剰に威力が込められた何かの鉱石は速度を落とすことなく、延長線上に居た魔物の頭部を消し去り、外壁に轟音とともにクレーターを作り出す。
「いないな」
「いない……」
「寝てるのか?」
「死んでるかも…」
「ここまで来たのならそう簡単に死なねえと思うが、というか、ここまでよく来たものだ。恐らく、錬成で武器を作り出したんだろうが、ステータスはどうしたのやら…」
この世界では技術も保有戦力も重要だが、ステータスの差は中々覆せない。初期ステータスと言ってもいいハジメが、奈落の底の強敵にどう立ち向かったのかを考える。一つ、方法を思いついたが、それは死ぬ確率が高いものだ。
十六夜がハジメのことについて少しばかり考えていると、腕と腕を組んでいたユエがくいくいっと引っ張ってくることに気づく。
「なんだ?」
「少し疲れた……」
「そういやそうか、ここまで休み無しに来し、そろそろ休んどくか」
「ん、賛成」
十六夜の提案にユエは頷きながらそう返答する。いくら十六夜にくっついていた時間があったとしても、サソリモドキを倒してからあまり時間も経たずに移動を開始したため、実質ユエが封印から解かれてそう時間は経ってはいない。
疲労は血液で回復するとしても、精神的な疲れは確実に蓄積しており、少し疲れを感じる程度まで溜まっていた。
流石の十六夜もそこら辺は考えていたのか、ユエの疲れたという宣言に間を開けずに休もうと提案。二人は座れそうな場所を探し出し、並んで座ることにする。
実を言うと、ハジメと十六夜達は背中合わせで座っているようなものだった。
十六夜が休憩場所として座っているのは、ユエが疲れたと言ったところから数百メートル離れた場所に生えている大樹の根っ子の部分。樹齢何万年と経っていそうな大樹の真反対にハジメは魔物の肉を食料として食べた後に、休憩がてら寝ている。
そのため、十六夜の視力でも大樹の裏に隠れていたので見つけることができなかった。
その大樹の根っ子に腰掛け、何十メートルと上空の枝葉を眺める。不思議なもので、地下の迷宮区だと言うのにこうも巨大な樹がジブリにでも出てきそうなほど育って尚、天井まで余裕がある。
十六夜は自然が嫌いではない。むしろ、感動するような光景には感動するくらいの心は持ち合わせている。とはいえ、善人だと言い切れるタイプではない。
ふと、隣のユエが同じように枝葉を眺めていたと思ったら、指を指して口を開いた。
「あれ…なんだろう…」
「うん? ああ、あの樹の実か。確かに、このサイズの大樹にしては出来ている実が小さすぎるし、純粋に種だけを含んだ実か? それにしては周りには木が生えていないようだが…食べれそうにはないな」
「採ってみる?」
「そうだな…俺も気になるし、ちょいと採ってみっかな。よし、少し離れろ」
「ん」
起き上がって大樹から離れる。十六夜のみ根の上に残って無造作に蹴りを放った。ズンッ!と重い音が鳴り響き、ちょっとしたビルの太さほどもありそうな大樹が揺れ、軋む。折らない程度に絶妙に加減されたため、樹を大きく揺らすだけに留まったが、枝葉はそうでもなかった。
衝撃が伝わったのか、わっさわっさと生い茂った葉を震わせ、葉とともに小さな樹の実もぽろぽろと雨のように落ちてくる。
その衝撃に飛び起きたのが、十六夜達がいることを知らないハジメだった。少し歩けば会えるだろう距離にいるが、根から転げ落ちるような衝撃に己の武器を引き抜きつつ起き上がる。警戒すると同時に……頭上からハジメの頭部を襲うものがあった。木の実である。
だが、それはハジメだけではなかった。
「きゃっ!? 痛っ…!? うにゅ……!!」
コンコンココンッとユエの小さな頭に小さな木の実がどんどんヒットしていき、その度に小さな悲鳴を上げる。それを十六夜は木の実をキャッチしながら苦笑して見ており、助ける気はさらさら無いようだ。
頭上から更に降ってきた木の実をキャッチしながら、既に持っていた木の実を観察する。実の大きさは十センチ程度であり、重さは小さなじゃがいもよりも軽いくらい。硬めであり、少し押しつぶしても凹まないので中の身質も硬いのだろう。もしかしたらココナツのようなものかもしれないが、この小ささでは余り期待もできない。
様々な仮設は思い浮かぶものの、それは地球の植物基準であり、異世界の不思議植物の実や種は流石に分からなかった。その木の実をバキリと砕くと中は白い実が詰まっている。
「う~…痛い……むぅ」
「ヤハハッ、まるで雨のようだったな。ほら、食ってみろ」
「……食べれるの?」
「毒ではないと思うぜ?」
「ちょっとだけ………」
十六夜に差し出され、少しだけ興味を持ったのか、受け取ってから小さく牙で削り取るようにして食べる。削られた身が口に入り、舌に触れたその瞬間、ユエは表情を歪ませた。
「ッ!? にぎゃっ…!? いじゃよぃ、ににゃっ……!!」
にぎゃっ、みにゃっ!? うみゃんっ!?と言葉にならない悲鳴を上げて涙目で口を押さえる。
「へー、苦いのか。毒はなさそうだが、苦いんだったら積極的に食う必要もねえな。口直しに赤い実でも食ってな」
「ん!」
苦すぎる実を放り投げ、十六夜の持ってきた赤い実を頬張る。口の周りを汚すのすら気にせずに貪っていところを見るに、余程苦かったのだろう。赤い実を渡した十六夜はまさに救世主であった。原因となったその苦味に苦しんでいる姿を見て笑っていたのが、実を渡した張本人であったが。
そんなユエを見ていた十六夜だが、突然、ユエを抱えて跳躍する。突然のことに食べかけの赤い実を落とし、瞬きする暇もなく気づけば枝の上。周りが突然葉で埋め尽くされ、十六夜に抱きしめられていることに気づき、ユエは頬を染めながらも小さく十六夜に問う。
「どうしたの…?」
「何かが警戒しながら動いていた気配を感じ取った。そこら辺の魔物よりも断然気配は強いが…」
静かにユエを太い枝の上に降ろし、身軽になる。数十メートルも上になる太い枝の上にいるため、下から見られても気づかれることはない。だが、下に居た何かは十六夜とユエのいた事に気づいたのか、それとも何か違和感を感じ取って攻撃したのか…突如、ドパンッという音と共に、枝を貫通して何かが飛び出してくる。
その貫通してきた小さな物体は偶然にも十六夜の顎下を狙っており、咄嗟に右手でそれをキャッチする。
小さく、熱く、硬い物体がサソリモドキの針よりも強い威力で手に衝撃を加える。その物体を受け止めた瞬間、十六夜は枝を蹴って眼下の攻撃してきた存在に向かって飛び出した。数十メートルという十六夜にとっては無いにも等しい距離を、コンマもかけずに消し去る。
そして、着地と同時に抜手を眼前の存在に放ち………喉を抉り取る寸前で停止させる。
「………ハジメか?」
「え…? ぁ……い、十六夜……なの…?」
手刀を止めた十六夜、異世界に存在しない武器である拳銃を所持している、姿の変わったハジメ。
こうして、両者は偶然にも再会を果たした。
◇ ◇ ◇
上空から降ってきたユエをキャッチした十六夜は、木の実を払って適当な場所に三人で座る。土産とばかりにハジメに赤い実を渡し、あまりの美味さと感動に無言で全てを平らげていく。その後に三人で話し合いが始まった。
話し合いとは言うが、ハジメの心境を聞いて武器をどうやって作ったのかということを聞いただけだ。十六夜はこの迷宮を走り抜けてサソリモドキを殺し、ユエを助けたことだけを簡潔に話す。それを赤い実を噛りながらハジメは聞いていた。
十六夜がなによりも驚いたのがハジメが魔物の肉を喰らい、神水により破壊と再生を繰り返し、魔物の力と技能を手に入れたことだった。この世界で魔物の肉というのは、猛毒どころの騒ぎではない。食べたら死ぬ、その一言で終わらせることが出来るほどだ。
そして、無視できないこともある。
「まさかの性転換からのハジメちゃん。流石異世界、本当に何があるのかわかんねえ…」
「あはは、だよねー……僕も女の子になるなんて思わなかったもん」
南雲ハジメくんがハジメちゃんになっているということだ。
骨格も女性よりの丸みを帯びた滑らかな造形になり、顔つきも元々中性的だったが完全に女の子である。ショートの白髪はストレスにより脱色してしまったのだろうか。だが、なり損なった部分があり、前髪が一房だけ黒いままだった。
服を押し上げる胸は特別大きいというわけではないが、強いて言うならDはあるだろう。男のときよりも括れが出来たことにより細くなった腹部と、そこから先の殿部はしっかりと大きく、腰つきは実に艶めかしいラインを描いている。治る際に最適化も行われたのか、女性でも羨むような抜群のスタイルとなっている。
さて、このようになった原因であるが、上記でも述べたように魔物の肉は喰らうことにより身体の崩壊を起こす毒物である。このことより、ハジメは仮説としてこのように考えている。
魔物の肉を食らったことにより破壊が始まるが、それは死を免れないほどのものであり、身体を破壊すると同時に細胞も死んでいるのはわかるだろう。その過程で細胞に含まれる核も破壊され、遺伝子情報が共に破壊された際に無理やり再生させ、何らかの条件により性染色体が変化したか。
だが、これはあまりないだろうとは考えている。ホルモン分泌の異常による男性化や女性化は疾患で見られるが、破壊されただけで完全な性転換するほどの異常が起きるとは考えにくい。
だからもう一つ。
もしかしたら――――
もしも、喰らった魔物が雌だった場合、破壊と再生の折に再生中の遺伝子に雌としてのXX染色体が混じり、ハジメが女になってしまったのではないか。
まだ、この仮説のほうが納得するには話として出来ている。
ハジメとしては性別が変わったことに特に思うことはない。マイナス方向に思うことはないが…プラスとしてなら、これで遠慮はしなくてもいいと思っている。
そう、壊れた精神が変わる際に心を占めたのは十六夜のこと。だからハジメは思う。男同士なら性別の壁からも、地球に帰った時の世間の反応や十六夜自身の男同士という忌避感を考えさせられたが、男と女であるならば、どれだけ十六夜に対して強い想いを抱いても問題はなのだから。
ユエという女が増えているが問題ない。私は/俺は/僕は、ただ十六夜だけいればいいのだから。
ヤンデレの道に踏み入れているような思考だが、それでも他の女を排除するなんていう考えをしていないのはいいことなのかもしれない。十六夜の嫌がることは行わないし、益になることを考える。
これが、デキるヤンデレなのだろうか…。
「そういやそうだったか…魔物の肉は毒だったな。それなら尋問や拷問の時に、目の前で魔物を捌いて肉を喰わせるようにしたら効果的じゃね?」
「十六夜ってば天才なの? 十六夜の敵が現れたら今度実験してみるね」
そんな話をしている二人に、傍らのユエはドン引きしていた。
話を戻そう。ハジメは極度の孤独感と、何よりも埋めることも満たすことも出来ない飢餓感についに精神は壊れ、似て非なるまるで別人格ではないかと言うほどの精神を作り出した。
敵は殺し、喰らう。
クラスメイトなんて関係ない。世界なんてどうでもいい。ただただ、十六夜に会いたい、会いに行きたい。そして、生き抜いて地球に、家に帰る。この2つの想いを胸に動き始めた。
魔物を喰らい、錬成で武器を作り、蹂躙しながら迷宮の最下層を目指す。その強さはもはやメルド団長なんて比べることの出来ないほどであった。これぞ、奈落生み出した化物。
だが……
「ドンナーを作り出して、力を手に入れても……十六夜にだけは勝てるビジョンが浮かばないなぁ…」
「へぇ…? 俺と戦おうと思ってんのか? いいぜ、殺さない程度に殺してやるぜ」
「それ普通に殺してるからね!? それに、絶対に十六夜と敵対することなんてないから!」
どうしても、ハジメは十六夜に勝てるとは思えなかった。勝てる云々の前に敵対しようとすら思っていないのだが、それを必死に十六夜に詰め寄りながら説明するハジメ。そのハジメに身を引きながらお、おう…としか言えない十六夜であった。
やはり、ハジメをみてドン引きするユエがいる。ついていけない。安心して欲しい、貴女もいずれそうなる。
元々、迷宮を脱出することを長期目標に、十六夜に会いに行くことを短期目標としていた。いや、ハジメとしては十六夜に会いに行くことがメインだったのだろう。
このハジメになる前のハジメが受けた絶望で、十六夜という存在は想像以上に大きかったのだ。そこに心の支えとして大半を占めていたため、依存心が見え隠れしていることに、この場にいる誰も気づくことはできない。本人のハジメですら気づいていないのだ。
絶望的状況からの心の拠り所に依存してしまうというのは、なにも女性のみ…詳しく言えば主人公に助けられたヒロインだけというわけではない。性差はあれど、人間の精神は等しく強く、平等に弱く脆い。それも、成熟しきっていない高校生ならそうなっても仕方ないだろう。
結論から言えば、ハジメの目には十六夜しか視えていない。
ユエのことも十六夜の害にならないし、殺せば十六夜が悲しむだろうと思って何もしないだけである。また、金髪ロリ吸血鬼というテンプレ的な存在に、だから美人設定なんじゃね?とか十六夜と同じようなことを考えてはいた。ファンタジーには心変われど抗えなかった。美人吸血鬼万歳。
そんなこんなで三人の話も終わり、この場所で休憩してから奈落を走破しようという話に落ち着いた。取り敢えず、ユエのいた五十階層まではハジメのレベリングをしながら進み、サソリモドキを喰らってから更に進むといった段取りとなっている。
バチリと、焚き火の中で燃えていた枝が音を立てて爆ぜる。その上に更に枯れ枝を放り投げながら、十六夜はハジメに話しかける。
「そう言えばよ、そろそろヘッドホンを返してくれ。どうも頭の上に何かないと落ち着かねえ」
「ああ、そうだったね、ありがとう。これがなかったら、きっと、僕は壊れ果ててたと思うから」
「大げさな…とはいい難いか。サンキュ。剣の方は要らねえから」
「そうなの? よかったー。剣の方は勝手に改造してガンブレードにしちゃったんだけどね。ブレード単体として使ってもよし、ドンナーに装着してもよし、って感じだよ」
「ほお? いいじゃねえか、まさに男のロマンってやつだ。心揺さぶられるってもんだ。俺もレールガン撃ってみてえなぁ…魔物の肉でも食ってみるか?」
「なら、余裕のある時に十六夜用の銃とレールガン用の雷撃を放てる装置を作ってあげるよ!」
「まじかよ、流石錬成師」
「えへへ。十六夜のために最高の代物を作ってみせるから!」
もし、十六夜が魔物肉を食ったとしても、その毒に侵されて死ぬなんてことはないだろうが、技能だけを奪うことは出来るのかは分からない。果たして、いいとこ取りだけして技能を奪えるのか、それとも何も変化を生じないのか。
むんっ、と拳を握って小さくガッツポーズをするようにして気合いを見せるハジメ。しかし、その目の中は本当に十六夜のために最高品質のものを作り出す、喜んでもらう、役に立ってみせるといった気持ちが見える。簡潔に言おう、ガチである。
ハジメが気合十分と見せながらも慌てて十六夜用に銃と装置を作ると言い出すと、十六夜はその提案を受け取ってくれた。
そのことに内心冷や汗を垂れ流しながら、十六夜が魔物の肉を食べることがなくて安堵する。十六夜なら食べそうだというのがハジメの考えであり、十六夜が食べても問題ないということを知らないため、あの地獄のような激痛を味合わせる訳にはいかないと、話を逸らすために別の話題を急いで出す。
「そ、それでさ、この奈落から脱出したらどうするの?」
「あ? そうだな…他の街に行ってみてもいいし、宛もなく歩いてみてもいいかもな。………いや、やっぱり街に行って情報でも収集するか? 面白そうなところがあればそこに行ってみてもいいかもしれねえ。ああ、金もいるか。なんか美味いものでもありゃ食ってみたいしな」
「ああ、いいなぁ、そういった異世界を満喫する感じ。ユエも?」
「だろうぜ? どうせついてくるだろうしな」
「そう……ねぇ、僕も、十六夜の傍にいても、いいかな…?」
恐る恐るといったように不安に揺れる目で、十六夜の太ももを枕に寝ているユエの頭を撫でていた十六夜にそう聞く。
「ついてくるってことか? おう、別に構わねえよ。というか、最初からついてくるものだと思ってたんだが?」
そう言われて、知らず知らずのうちに安堵の息を吐いていた。もし、ここで拒絶でもされれば、勝手についていこうかと考えていたが、十六夜のなんでもないかのように答えられた返答に安心する。
「それよりも、今のうちに寝ておけよ。これからはお前のレベリングも兼ねて探索していくんだから、万全とまでは言わねえが、問題ない程度までは回復しておけ」
「いや、十六夜の方が寝たほうがいいんじゃない? 最後に寝たのはいつ? 普段の十六夜の顔よりも眠そうな顔してる…」
「んー…オルクス大迷宮に来る前の、あの宿?」
「えぇ!? もう何週間も寝てないじゃん!?」
「あー、いや待て、何階層だか忘れちまったが、どこかで仮眠取ったからちげえわ」
「それでも何日も寝てないことには変わりないって! 駄目、駄目だよそれは! 硬くて寝づらいかもしれないけど、ぼ、僕の太もも使っていいから寝よう!? ねっ!?」
「ヤハハッ、問題ねーよ。あとで寝だめすれば大丈夫だっつーの」
いいから寝とけ、と十六夜は隣りにいたハジメの頭を押さえつけ、座位から臥位へと合気の要領でコテンと寝転がせる。何も抵抗できず、気づけば寝転んでいたハジメはその状況に驚くが、上から微笑んでいる十六夜をみる。その微笑みを見ただけで敵わないなぁと思いながらも、自分もいつの間にか微笑みながら目を瞑る。
目を瞑れば先程の十六夜の微笑みが現れ、少しばかり顔が熱くなる。
一人じゃない、誰かが側にいて、それが十六夜であり、近くで存在を感じる状況に久しぶりに心から休むことが出来ていた。
左腕を熊に喰われ、残った右手でいつの間にか十六夜の袖を掴んだまま眠ってしまったハジメ。
「ったく、男にされても嬉しくねえよ……おっと、今は女になったんだっけか? ヤハハ、面白いことがあるもんだな」
まだガキだし、仕方ねえか。と更に呟きながら、ユエの頭を肘置きに枝で焚き火をつつく。その小さな衝撃にユエが小さく呻きながら顔を顰める。
二人が起きるそのときまで、十六夜は警戒しながらも暇な時を過ごすのであった。
この階層は適当です。
ハジメのところは自分でもわーわーわんわん言いながら書いてました。私は一体何を書いているのだろう……でも満足。てな感じで。
魔物の肉を食って性転換的なことはかなり前から考えていました。無理やりかどうかは…。
可能性としてはありそうだよなー。的な感じで軽く考えて下さい。