需要があるかは分かりませんがね。
Chapter.0ー1
「さて、どうしたものか……」
「……あばばばばばばば……」
少し呆れ顔の青年。その原因は目の前の光景。大人一人より頭一個分ほどの高さの木。その上でがくがくと青ざめた表情の少女。
正直、飛んで降りても問題のない高さだと思うけどなぁ……。
「おじさん、お姉ちゃんを助けてあげて!」
足下では子猫を抱えた幼い少年と少女。てか、俺はまだおじさんという年ではないぞ? まぁいい。それはさておいてだ。
俺はこの子たちに呼ばれてここまで来た。
どうやら、この子猫が木から降りられなくなっていた所に、あの青ざめている少女が助けに来たのだが、今度は彼女が降りられなくなったということらしい。
けど、これ助けるほどなのか? あの高さを登れるのなら、降りるのも容易な身体能力はあるだろうに。
「自分じゃ降りられないのか?」
「あわわわわわわわわ、わ、わた、ワタシ、高い所は苦手でして――ひゃあ!?」
少しの突風が吹き、少女の体を揺らす。思わず短い悲鳴が漏れていた。
「はぁ、やれやれ」
青年はポケットに手を入れ、中から一枚の紙を取り出した。
†
時は遡り、数時間前のこと。
「やっと、着いたぞ。おいこら」
新幹線に乗り、三時間。都会の人工的なビルの山が、木々の生い茂る山々へ自然な景色に変わっていく。
目的地の駅に着いた頃には、既に面影は無く、劇的に変わっていた。うん、空気がおいしい。懐かしい感じがするな。
その後は電車に乗り換え、更に一時間。場所はどんどん山奥へ。到着したのはお年の駅員が一人だけ勤務する寂しい駅。
さてと、目的地まではバスが出ていると聞いたのだが……。
「……ええっ、この路線一本しかないのかよ」
駅を出てすぐのバス停で時刻表を確認する。自宅を早めに出発したのが幸いしてか、唯一バスが通る時刻には間に合っていたようだった。だが、来るのは二時間後。
一日一本しか走っていないとかありえないぞ、このご時世。俺が中学まで暮らしていた町外れの村でももっと走っていたものだ。
「って、ぶつぶつ言っていても意味ないか……」
仕方がないと、一旦駅まで戻ることに。所々に小さく錆びのついた自販機で飲み物を買い、バス亭に再び戻って来ると、ベンチに腰を下ろした。
缶を開け、一口。旅行用の大きめな革鞄からごそごそと一冊の小説を取り出すと、枝折りを取り、続きを読むことに。
ああ、夜○、可愛いよ、夜○。
二時間もあれば、この巻は読み終えそうだな。
………。
……。
…。
†
「……さん。お兄さん、乗るのかい?」
「えっ……。あ、ああ! 乗ります、乗ります!」
どうやらいつの間にか眠っていたらしい。目を開けると、バスが目の前に来ていた。運転手さんの声で目を覚まし、慌てて飛び乗る。
乗客を待たせて悪いと思ったが、乗客は自分一人だけだった。このまま知らないどこかに……とかいうホラーではないからな?
バスに揺られること一時間。森林、長いトンネル。田畑に挟まれた道路。山を三山ほど越えた頃、車窓から町が見えてきた。
温泉が有名な観光地、穂織の町。俺が目指してきた目的地。
バスは町の入り口付近に停車する。どうやら町の中までは入らないらしい。空気が抜けるような音が聞こえ、乗降口のドアが開く。料金を払い、バスを降りた。
乗客である俺が降りたのを確認すると、さっさと来た道を引き返して行く。少し、様子が可笑しかったが、まぁ、気にする程ではないかな。
さて、ここで深呼吸。自然の生み出す新鮮な空気が肺を満たす。ああ、長旅だったな……。体を伸ばすと、座っていた時間が長かったせいか、腰や背中が小さく鳴った。
「――さてと。では、行きますか」
鞄を持ち上げて、町に入る。これから始まる新生活。まだ見知らぬ町で上手く過ごせるか、少々の不安と期待を胸に歩き出す。そして――。
「おじさん、ちょっと来て!」
ここで声を掛けられたんだ。
早速、挫かれていた。
†
「道を開け、
手首を返して紙を投げる。ただの紙ならば、風に流され上手くは飛ばない。たが、青年の投げたのは、“ただの紙”では無い。真っ直ぐに飛び、狙い通りに木へ張り付く。
青年が呪文のように言葉を唱えると、紙が光り出し、張り付いた紙の周囲の木肌から枝が伸びていった。そして階段のような形を成す。
見た目としては、細い枝に見えるが、ただの枝ではない。「呪力」の籠もった枝だ。二人分の体重程度なら簡単に支えられるだろう。
青年は“階段”に足を掛け、次々に登っていく。そして、簡単に少女の所へと辿り着いていた。
「ほら、つかまれ」
「で、ですがぁ……あわわわ……」
差し出された手に自分の手を伸ばそうとするが、手を離すのが怖いのか躊躇している様子。このままでは事態が先に進まない。
「うーん、面倒だな。……恨むなよ?」
木の幹にしがみつき、動けない少女の体に手を伸ばして引っ剥がす。横抱きで少女を抱えると、ゆっくりと階段を下りていった。
「え、えぇぇぇ!?」
少女は現在の自分の状況に戸惑いを見せ、顔を赤面させていた。見事に耳の先まで真っ赤。おお、可愛らしいこと、可愛らしいこと。
地面まで下りると、少女を足から下ろす。
「おい、大丈夫か?」
「は、はぁ……はぁ……はぁ……」
心配の声を掛ける。少女は立てなかった。腰が抜けてしまっているらしい。
極度の高所恐怖症なのだろうか? あの高さで“こう”なってしまうのなら、それで合っているのだろうな。
ぺたんと座り込んでいるが、念の為。
怪我はないかと確認をしてみるが、あわあわと落ち着かない。まだ息は荒いが、特に問題はなさそうだ。後は、少し休ませてあげよう。
もう一つエ〇ゲー原作で書いてるので、更新は交互になってしまうかも知れません。亀更新とはならないよう努力していきます_(._.)_