猫と犬。時々お馬。   作:奈々歌

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RIDDLE JOKERの発売日って、春から始まる新生活に向けての土日を有意義に過ごせるようになっているような気が……。何でもないです、はい。
皆さんの今作における、お気に入りキャラは誰なんでしょうかね(^^)

書ける内にカタカタと書きました。
それではどうぞ。


Chapter.0ー10

「芳乃様は隠れていて下さいっ!」

 

 潰された視界の中、そんな声がする。若く高い声、女の子のかな?

 その声と似たもう一つの返し声。どうやらこの部屋には二人の少女がいるらしい。今はそれくらいの情報しか分からなかった。

 

 白い景色から黒い景色に変わる。瞼の裏の色。足音がする。芳乃様と呼ばれた子が走る音かな? もう一人の動く音は聞こえない。見えない分には、それくらいのことしか分からなかった。

 

 兎に角、視力を回復させないと。

 真琴は腰に手を動かす。

 

 だが、その手が届く前に、首へ何か“冷たい物”を静かに当てられていた。同時に誰かの体が背中に密着する感触が伝わってくる。

 多分、もう一人が背後に回ったのだろう。……足音は全く聞こえなかったのが疑問だけど。

 

「動かないで下さい。ここが何処かお分かりの上で侵入したのですか?」

 

 少女は冷静に問い掛けてくる。

 耳の近くで聞こえる声。うーん、なんかどこかで聞き覚えのあるような……。忘れてはいけない、俺にとって大事なことのような気がするけど。

 

「えーっと、悪い。ここがどこだか分かっていないんだ。生憎、視界が戻っていないものでして……」

 

 真琴は両手を挙げて、無抵抗の意志をとりあえず示しながら答えていた。

 その言葉を聞いた少女は更に密着度を上げる。それに伴って、首に貼り付く冷たい感覚も僅かに強まった。

 

「冗談を言える程に余裕があるようですね。ここがどこなのか知らずに入ってくるなんて有り得ません。目的は何ですか、覗きですか? 次も誤魔化すようならば容赦はしませんよ?」

 

 “冷たい物”。当たる部分の細く鋭利な感覚――これの正体はおそらく刃物の類いかな。

 何でそんな物騒な物を持っているのか。という謎が浮かぶのだが、今は横に置いておこう。

 

「ここがどこなのか知らずに」って、見えないんだから本当に知らないんです。うーん、誤魔化すなと言われましても、ただお手洗いに行きたかっただけなんですが……。

 

 素直にそう答えたら、多分終わりなんだろうなぁ。なにがこの状況で正解になるのか。それだけが頭の中を巡っていた。

 

「答えることが出来ないということは、それが答えと受け取って宜しいでしょうか?」

 

「ああ、待ってくれ。……これから言うことは嘘偽りの無い本当のことだ。信じてもらえないかも知れないが、どうか信じて欲しい」

 

 考えても逃れる言い答えは見つからなかった。仕方がない、正直に答えるしかない。その結果がどうなるかは、この少女の慈悲次第だな。

 

「俺はこの家に安晴さんを訪ねて来た者だ。ついさっきまで、居間で話しをしていたんだが、お手洗いに向かう為、廊下を歩いたけど、場所が分からなくなってしまって……。だからとりあえずこの部屋の戸を開けてみたんだ、そしたらこの状況になってしまった。俺にはこれ以上の答えはない。どうにか信じて欲しい」

 

「……」

 

 少女から向けられる無言の鋭い視線が背に刺さっている……気がする。

 

 きっと、言葉の真偽を確かめているのかな。もう判断はあなたに任せています。俺にはもうどうにも出来ませんので、あ、あはは。つい、心の中で苦笑してしまう。

 

 暫しの間が空く。二人の間に沈黙が流れる。

 

 時計が秒針を刻む音。

 二人の呼吸する音。

 水がぽたぽたと滴る音。

 

 それらの音が、静かに小さく波紋のように広がるだけの時間……。うん? 水が滴る音だって? 何でだ?

 

「……。あ、あの……こんなことまでしてしまってからで大変申し訳ないのですが、一つ、お伺いしても宜しいでしょうか?」

 

 ふと、真琴が疑問を抱いた時とほぼ同じくして、少女が口を開いた。

 

 先の返答を聞いて、考えに何らかの変化があったのか、少女の声が優しくなっていた。

 今度は問い詰めてくるのではなく、こちらに自身の質問を尋ねるように声を掛けてくる。

 

「あ、はい。何でしょう?」

 

 少女の様子に少しの戸惑いを覚えていたが、真琴は承諾した。

 首に当たっていた感触が緩んでいくのが感じ取れる。どうやら警戒を解いてくれたようだった。まぁ、相変わらず、背中に密着されているのには変わりないんだけど。

 

「えーっとですね、冷静になって、お声を聞いて思ったのですが……。もしかして、千歳さん……でしょうか?」

 

 恐る恐るといった雰囲気で伝えられた質問。それに対して――。

 

「えっと……はい、そうですけど、どうして俺の名前を――」

 

 自分の名前が少女から出たことに驚く真琴。だけど、それが一つの答えに繋がった。

 

 穂織の町に来てから知り合った人はまだ数人。その中で、自己紹介をしている人となると更に限られてくる。

 そして、更に更にだ。少女という条件を満たす子は一人しかいないんだ。

 そう、あの少女しか――。

 

「――もしかして……常陸、さん?」

 

「は、はい、そうです。今朝ぶり……ですよね、千歳さん?」

 

 常陸茉子さん、正解だったようだ。

 また会えるといいなと、思ってはいたのだが、まさかこんな形で再会することになるとは。

 

 さて、どうしたものかな……。

 




評価、感想頂けると嬉しいです。
相変わらずの展開の雑さ(^^;) 何故、書くのが上手い人たちは、一場面であんなに長く、綺麗に描写出来るのだろうか?

RIDDLE JOKERの更新も頑張ります。
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