猫と犬。時々お馬。   作:奈々歌

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こちらでは久しぶりですね、書き方が迷走中です(^^;)
RIDDLEJOKERの更新を頑張っておりました、はい。
その間にも、お気に入りが増えていて嬉しいです。

それでは、どうぞ!


Chapter.0ー11

「あのー、俺はどうすればいいのでしょうか、常陸さん」

 

「あ、あは。そ、そうですね……千歳さんはどうしたいですか?」

 

 うーん。どうしたいか、ですか……。

 取り敢えずは現状を確認しないと、潰された視界では何も分からないし。そこで、必要な行動となると――。

 

「なら、少しだけ腕を動かしてもいいですか?」

 

「あ、はい。――あっ! で、でも、ワタシの体には決して触れないで下さいね!?」

 

「……? 大丈夫ですよ、分かってます」

 

 後ろに立っている、というよりは密着している常陸さん。親しい男ではない人物に触られたくないのは分からなくもない。

 まぁ、イケメンなら話は別なのだろうが……世の中、悲しいものだ。いやいや、今はそんなことを考えている場合ではない。

 

 真琴は腰から一枚の呪符を取り出す。

 これは治癒符というもの、効果は文字通り。それを開けない両目に貼り付けると呪力を流していき、回復に当てる。数秒もあれば視界は元の状態に戻っていた。

 

 ゆっくりと瞼を開いていく、最初がぼやけるのは仕方が無いこと。次第に鮮明になっていく目の前に光景に、段々と自分のやらかしてしまったことの重大さ、今に至った経緯がよくよくと理解出来てきた。

 

 一般的な家庭ではまず有り得ない広さのある部屋。籐で作られた床材。棚に並べ置かれた衣服をいれる籠。

 大きめな鏡に広々とした洗面台にドライヤーの線が解かれたまま。きっと、使おうとしていた所だったのだろう。

 

 以上の点から皆さんご察しの通り、ここは脱衣所と呼ばれるところだった。そして、ここにいるのは常陸さんにもう一人の女の子。そこに入ってしまったのが俺。

 

 男にとっては夢の展開なのかも知れないが、実際に起きてしまえばただの事案。常陸さんがいなければ、問答無用でこの両手にはお縄が巻かれていることになっていたはず。

 

「……かんっぜんにやらかしてますなぁ……」

 

「あ、あは……」

 

 先ほどまでの緊張感は既になく、俺の知っている調子に戻っている常陸さん。

 苦笑いをしているのが見えていなくともよく分かる。お互いの間がこんなにも近ければ当たり前か。

 

 さて、今の俺がしなければいけないことと言えば、この脱衣所から出て行くことと、二人への謝罪に、咎めを受けることの三点。

 

「まず、俺がここから出て行かないとどうしようもないですよね」

 

 一つ目、真琴が後ろを向こうとする。だが、体が動かない。正確には、動けなくさせられたと言うべきなのかな。

 

「だ、ダメです! 今はぜっーたいにワタシの方を見ないで下さい!」

 

 常陸さんが声を上げる。同時に腕の力が強くなる。体と体の密着度が上がる。

 すると、だ。むにゅっと、何やら柔らかいものが二つ、背中に押しつけられていた。とても、とても、とっても柔らかく、そして大きく、豊満な何かが。

 

 俺の背中、衣服を通して伝わる感触は、布と布とが合わさるものではなかった。少し、どちらかが動けば、擦れることなく服が引っ張られる。それに、人肌の程よい温もり。

 

 異様な状況を不思議に思いながらも、一つ一つの疑問を集めていく。

 

 脱衣所にいた二人の女の子、使用途中のドライヤーに謎に思っていた水の滴る音。

 常陸さんの足音を鳴らさない歩行術に刃物の類いの所持。そして、背中に当たる柔らかい何か。

 足音に刃物の疑問は後回し、今は関連が薄い。

 

「(そういえば――)」

 

 ここまで考えて、居間で安晴さんが言っていたことを思い出す。

 自分の娘が祭りの出番の為、禊をしているということを。

 

 脱衣所があるということは、ここは風呂場だ。

 常陸さんが芳乃様と呼んだ女の子。常陸さんは常陸さん。となると、芳乃様という子を巫女姫様と考えるのが自然だ。

 禊は川や湖、水を使用して行うことが多いが、お湯でも可能なことくらいは知っている。

 

 つまりはだ、常陸さんと巫女姫様が風呂に入り、禊をしていた。丁度その頃、俺は安晴さんを訪ねて朝武家に到着、居間で依頼内容の確認をする。

 

 禊を終え、二人がお風呂から上がり、着替えをしようとする。だが、そこでお手洗いと勘違いした俺が脱衣所に入ってしまい、二人に出会した。

 

 頭の中で整理し、一連の流れが繋がる。

 まさかとは思うのだが――。

 

「……ええっと、も、もしかして……裸、ですか?」

 

「あ、あは。はい、裸、です……」

 

 案の定、正解だった。

 では、この背中に当たっているものはというと、常陸さんの身長から考えて……あれしかない。そう、若い男の子が大好きな“果実”だ。

 何故かは分からないが、どうやら俺の後ろには一糸まとわずの常陸さんがいるらしい。

 

 緊張が弛緩したからこそ、気が付けたこと。首元に刃物なんて危ない物を当てられていたのだ、仕方が無いと思う。

 ここまで密着度が上がらなくとも、これ程の大きさなら余裕で当たっていたというのに……ああ、勿体ない。

 

 だが、こんな時こそ冷静に。慌てると童〇臭が丸出しだ。

 常陸さんの前、それだけは避けたい。

 

 必死に止めるのも無理はないか、これでは男である俺は後ろを振り向けない。

 もし、お構いなしに振り返れば、流石の常陸さんでも許してはくれないだろう。安晴さんからの依頼を完了するしない以前に、この場から生きて帰れるかが怪しくなる。

 

「でも、これだと廊下にどうやって出れば……」

 

「そうですよね、どうしましょうか……」

 

 二人の間に沈黙が訪れる。

 ちらちらと視界の隅に人影が映り込んでくる。出るタイミングがない巫女姫様がこちらの様子を窺っている。あれは、状況が理解出来てなさそうだ。

 

 時間もあまり使えない。

 この後、二人には祭りで出番がある。

 

「――では、こうしましょう」

 

 真琴の提案。また腰に手を持っていき、符を一枚手に取っていた。

 今度は何も書かれていない白紙の物。何も効力を持たない状態。それを両目が隠れるように貼り付けた。

 

 そう、これは目隠しとなる。透けて見えるとかそんな姑息な手段ではないから勘違いするなよ? というか、これ透けない仕様だし。

 

「……それって、本当に見えていないんですよね?」

 

「はい。まぁ、不安になるのも分かります。後は、常陸さんが俺をどこまで信用しているかによりますけど、今はどうか信じて欲しいところですね……」

 

「分かりました。千歳さんの言うことです、ワタシは信用していますよ」

 

 なんだろう、凄く嬉しかった。真琴の体に回されていた腕が解かれる。密着していた体が離れていく。男としての本音は隠す。

 背中から柔らかい感触がなくなる代わりに服の袖が掴まれる。そっと、優しく握られるように。

 

「では、こちらです」

 

 常陸さんが引っ張ってくれる。釣られるように数歩後ろに下がると、足場の感覚が変わったのが分かった。どうやら廊下に出られたらしい。

 

 背後で戸が閉まる音がする。それを合図に符を剥がしていた。見える景色は脱衣所から朝武家の綺麗なお庭へ。戸の向こう側からは、常陸さんが芳乃様と呼ぶ声がする。

 

 脱衣所から離れながら、真琴は大きく息を吐いた。

 

「(ああ、どうしたものか……)」

 

 背中に残る感触を思い出しながら、今度はしっかりとお手洗いに向かうのだった。

 




評価、感想頂けるとモチベ上がります。

GWですね。えっ? 連休? GWって、Golden・workingの略だよね? 稼ぎ時だよね? ……休みが欲しいです_(._.)_
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