立ち絵の部分の表情とかも書きますから……。
まぁ、かと言って、表現は下手なんですけどね(苦笑
「落ち着いたかい?」
「は、はい……。申し訳ありません」
五分ほど経っただろうか? 少女は立てるまでに回復。息もすでに整っている。
腰を抜かした彼女を介抱する為、一度、近くの青果商に「水を一杯下さい」と行ったのだが、いきなり“外”から来た人に頼まれたのだから変に思われてしまった。
事情――座り込む少女の話をすると、簡単な特徴を伝えただけで、その子が誰なのか理解したらしく、快く手渡してくれたのは幸いだったか。
少し深めな翡翠の瞳。長い横髪と肩までかかる黒髪。そして一つのアホ毛。……本当にそれしか伝えてないぞ? はて、この子はこの辺りでは顔が広いのだろうか?
そんなことを考えつつも、少女の下へ戻り、水を飲ませる。一息つかせると、だいぶ落ち着いた様子。そして現在に至る訳となるのだ。
少女はゆっくりと立った。ふらついたりしないか気に掛かったが、どうやら杞憂だったようで、しっかりとした足取りで先の木の根元に向かって行く。
そこには一つの買い物袋があった。少女はそれを手に取る。どうやら夕飯の買い物帰りだったよう。時間的にもそろそろ日暮れだしな。
流石にあの後ともなると、放って置くことは出来ない。遠慮はされたが、念の為。途中まで送ると、並び歩くことにしていた。
†
「袋、持とうか? 大きいし」
「いえ、大丈夫ですよ。こう見えてワタシ、鍛えていますので」
少女の手元でガサッガサッと、歩く動きに合わせ、擦れる音が鳴る袋。華奢な腕の割には確かに難なく持っている。大丈夫だと言うのは本当のことらしい。
そう横目で隣を歩く少女を見ていると、視線に気が付いたのか、顔をこちらに向けてきた。そして口元にクスッと笑みを浮かべ、話題を振ってくる。
「この穂織には観光でいらしたのですか?」
「いや、観光じゃないよ。暫くはここに暮らすことになるんだ。研修の一環でね」
「研修……ですか?」
少女は顎に人差し指を当て、小首を傾げる。無意識な行動にも見えたが、“それ”は癖なのかな? こうして観察してしまうのは悪い俺の癖なのだけど。
「医者を目指していてね。まぁ、少し特殊な分野のだけど」
「す、凄いじゃないですかっ!? お医者様なんて……」
「この研修が無事に終われば、の話だけどな。それでこの町の先生の所に行くんだ」
「この町の先生となると……駒川先生ですか?」
この町の医者は一人しかいない。それは事前の調べで知っている。となると、その名を知らない人はまずいないはず。この子が知っているのも当たり前か。
「そうそう。明日からその人の下で勉強なんだ」
「なら、近い内にまたお会いするかも知れませんね。先生には良くお世話になっていますから。それに、駒川先生はワタシが通っている学院で養護教諭の先生でもありますので」
学校の先生までやっているのか、それは随分多忙な身ですな。
まさか俺まで連れて行かないよな? 電話でしか接点がないけど、話し方から人柄を察するに――うん、凄く有り得そうだな、うん。電話の会話は敢えて伏せて置くけど。
想像し、乾いた笑いが口から零れる。そんな真琴へ少女が思い出したかのように、あることを尋ねて来た。
「そういえば、今晩泊まる宿はもうお決まりなのですか?」
「ああ、志那都荘って所に暫く泊めて貰うことにしているよ。ちと、料金が高いけどな……」
「あ、あは。あの宿は穂織でも有名な高級宿ですからね。もう少し安い宿もありますが、お教えしましょうか?」
「いや、あの宿が一番研修場所に近いからさ。お金に余裕はまだあるし、まぁ何とかな」
「そう……ですか。なら、良いのですが、あはは」
真琴の楽観的な金銭感覚に少女は苦笑い。というか二人して苦笑い。
志那都荘は、観光客にも評判が良い。料理も美味しい。サービスが充実。接客が丁寧。古風な外観と内装が、外国人のお客さんに大人気。シーズンに入ると予約を取るのも一苦労。
そんな宿に長期間泊めて貰うのだ。相応の料金が掛かるのは仕方が無い。
その後は、たわいのない会話。歩くこと数分。
遂に日が落ちる手前まで来ていた。和風な町並みがその景色を鮮やかな茜色に染め変える。昼と夜のどちらでもない時間、黄昏時。
和が作り出す、古来の神秘的な光景。外ではまずお目にかかれない。
そんな町に見惚れていると、長い石段が見えて来た。この上には何があるのかを尋ねると、神社があるとのこと。ここが「建実神社」か、探す手間が省けたな。
「では、ワタシはここで」
少女は階段に向かう。神社に何か用事があるのだろうか? 今時の子としては珍しいかな。俺も今時の子だけど……まぁ、それは置いておく。
一度手を振り、少女を見送ると、宿へ向かって歩き出す。場所はメモがあるから何とかなるでしょう。多分だけど。念の為に教えて貰えば良かったかな?
「あの――」
そんな背に声が掛けられる。振り返ると、数段登った所で少女が立ち止まっていた。視線が合う。少女は目を細め、微笑んだ。微かに頬を染めながら。
「自己紹介を忘れていました。ワタシは常陸茉子と言います。本当に先ほどはありがとうございました」
「ああ、そういえば、そうだったな。俺は千歳真琴。よろしく、常陸さん。あの程度の事、気にしなくて良いからね」
行儀正しくペコリと軽いお辞儀をすると、常陸さんは踵を返して、石段を再び登って行った。頬の色はきっと夕日の色だな。
少しだけ、常陸さんの後ろ姿を見た後、今度こそと宿へと歩を進めて行った。知らない町で、最初に出会ったのが、あんな可愛い子で良かったかな、俺にはそう思えた。
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早めに芦花姉さまを出したい。お酒を飲ませたい……。