猫と犬。時々お馬。   作:奈々歌

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一ヶ月過ぎていた……。
忙しいと毎日が光の速度のように過ぎていく。
今回も思いついた文をカタカタと打ち込んで書いたので、変な表現、文が存在すると思いますが、後々に時間を見つけて修正します。
誤字脱字の報告を貰えると助かります(笑

それではどうぞ!


Chapter.0-5

 静かな朝の町を二人は歩いて行く。隣の女性は穂織の住人だ。なら先の疑問を尋ねてみようかな、話の話題にもなるだろうし。

 

「そういえば、ここに来る途中で出店の部品……? みたいな物を運んでいる人たちを見掛けたんですけど、何か催し物でもあるんですか?」

 

 真琴が声を掛けたことで、女性の顔がこちらに向く。可愛らしく、そして、不思議そうに小首を傾げながら。

 

「あれ、知らないの? あ、もしかして穂織には初めて来たのかな?」

 

「はい、昨日着いたばかりでして……」

 

「そうだったんだぁ。てっきり“お祭り”目当てで来たものだと思ってたよ。見た所、着物もちゃんと着慣れているし、アタシったら常連の人なのかと、つい―――」

 

 あはは、と苦笑。

 

 まぁ、着物とかは家や仕事で何回か着たこともあるし、この土地に暮らし、普段から身に着けている人から言われると、自信を持ってもいいのかなと思えてくる。

 

 というか、あれは祭りの準備で間違いなかったのか。でも、穂織に来る前に調べたが、“お祭り”についてなんて書いてなかったような……。

 

「それって、何のお祭り……ですか?」

 

「うん。明日はね、“春祭り”っていうのがあるんだよ。穂織の土地では毎年この時期にやっていてね、町の男の人たちが甲冑を着て、馬に跨り練り歩くの。聞いたことなかった?」

 

「うーん……。一応、一通りは来る前に調べていたんですけどね……」

 

 今度はこちらが苦笑する。

 

「まぁ、穂織の土地のことについては雑誌とかで取り上げることがあまりないのかもね、あはは……。はぁ、このお祭りって結構有名な方だと思っていたんだけどなぁ」

 

 聞けば、海外の口コミサイトなどには、事詳しく書き込まれているらしい。

 

 何故に調べが出来なかったのか? それは至極単純なこと。俺が機械音痴でネットたるものを基本的に扱わない、扱えないからだ。ほら、笑えよ。

 

 じゃあ何処で調べたかって? はい、図書館で調べましたよ? 通っていた学校の図書館はとても大きいのでしてね。卒業生の特権で使いました。

 

 書籍の貯蔵量は国内でも有数、何でもある。古い文献とかもね。学校がその手の専門であるのも理由の一つなのだが、それはまたの話。

 

 それは現代人として、どうなのかって? すみませんね、最近の若者にはどうしても付いて行けていなくてさ。一応携帯は持っているけど、仕事用のだし。

 

「穴場の温泉地として、観光のお客さんは多いんだけど、殆どが欧米のお客さんで、“外”からのお客さんは少ないんだよね。交通手段が少ないっていうのも痛いところだし……」

 

 それも気になる所だった。昨日、バスで訪れた時もそう。これだけ繁盛している土地なのに交通手段が余りにも少なすぎる。バスは一日一本。電車も数本。タクシーはまだ見掛けていないな。

 

「何か……避けられている? ような印象でしたね。乗ってきたバスの運転手も俺を降ろしたら、さっさと引き返して行きましたし……」

 

 ダイヤが乱れる、という雰囲気ではなかった。何かを避けるよりは“近づきたくない”という感覚に近かしいような気がする。

 

「他の交通機関もそんな感じなんだよ。苦情がお客さんから寄せられて来るくらいだし……。本数を増やす為の申請をする以前にそっちをどうにかしないとねぇ」

 

「……イヌツキの土地?」

 

 真琴が不意に言葉を漏らした。

 

「……。君は穂織の土地に伝わる伝承は知っているみたいだね」

 

「確か、妖怪を倒したとかっていう……」

 

 その辺りは調べてきた。というか、今回の案件は“それ”がメインなのだから。あの言葉も調べていれば自然と知り得る情報の一つ。

 

「うん、そうだね。事のあらましはそんな感じで合ってるよ」

 

「では、その話の中に事情が?」

 

 こくっと女性は頷いた。その後、間を少し置くと、一度軽く咳払いをする。

 

「ではでは、――コホン。その昔、野望を抱く者たちが乱立する戦乱の世に、とある怪しげな女がおりました」

 

 何かが始まった。まるで、芝居屋の大人が子供に読み聞かせをするかのような感じ……。まぁ、とりあえず、静聴していよう。

 

「その女の正体はなんと、権力を持つ者にすり寄り、寵愛を得て、男を狂わすと戦を起こさせる悪しき妖怪だったのです。そして、その妖怪に唆されてしまったのが、穂織の隣国に住まう大名。なんと、我が野望の為に穂織の土地へと攻め込んでくるではありませんか!」

 

 この辺も調べで知っている。何処まで話すのかな? まぁ、何か楽しそうだから見届けて置くけど、可愛いし。

 

 話し方も単調過ぎず、要所と要所で語調の強調も変化させている。減り張りがしっかりしていて、話す速度も調子が良い。とても上手だなと関心。

 

「妖術を使う相手に兵たちは皆、大苦戦を強いられます。しかし、落城を寸前とする時、諦めにも似た思いで祈祷を行うと、あら不思議。なんと、悪しき妖怪に対抗し得る刀“叢雨丸”を授かることが出来たのです」

 

「その刀で妖怪を退治すると、隣国の兵たちは敗走。こうして穂織の土地に平和が訪れましたとさ。ちゃん、ちゃん♪」

 

 妖怪に対抗出来る刀――。それもこの話の気になる部分。おそらく祈祷を行い、授かったのならば、神力を宿す“呪具”の一種だろう。“呪具”という点で、良し悪し関係なく、無視は出来ない。

 

「そして、その勝利を祝ったのが“春祭り”の元。だから、戦に勝利して戻ってきた兵たちを模して、甲冑武者の練り歩きを行うの。そして最後には巫女姫様が、神社で舞を奉納するんだよ。凄く綺麗……と言うよりは美しい、かな?」

 

 こういう分かりやすい話は重要、外国のお客さんに良く受ける。最後にそう後付けをすると、話しはそこで一旦締められた。

 

 確かに、似たような言い伝えを残す観光地は少なくないな。あそことか……あそことかね? 具体的な名は出しませんけども。

 

「神秘の国オリエンタル日本、万歳、だよ? あ、ちなみに、その戦いの余波で大地が割れて温泉が湧き出したとも言われているんだけど……」

 

「いや、流石にそれは……」

 

「あはは、まぁね。確かにやり過ぎ感は否めないけど、そんな尾鰭を付けてでも、この引っかかりを活かさなきゃ。折角なんだし、勿体ないよ」

 

 観光客が主な収入源となっている穂織では重要なこと。活かせるものは活かす。別に悪いことではないと思う。それがこの町を存続させる道なのだから、か。

 

「でもね、この話も良いことばかりじゃないんだよね……。妖怪を退治したってことで、穂織の土地には呪いがある、あの土地に近づくと祟られるって」

 

 迷信による偏見。それが原因で、周囲の人間は穂織の土地を敬遠しているとのこと。通りで変な対応をされる訳だな。

 

 それが“イヌツキの土地”と呼ばれる原因か。“何か”に祟られ、憑かれるという意味から来ているのだろう。

 

「でも、そのお蔭でお客さん沢山来てますよね。昨日の様子を見る限りでしか知らない俺が言うのも何ですけども」

 

「うん、この時期は繁忙期だからお客さんはかなり多いよ。稼ぎ時ってやつかな。アタシのお店も大忙しなんだよ?」

 

 それで、本来以上の買い出しを頼んだら足りなかった、という訳か。手に持つこの荷物もそれなりに重いし。繁盛するのは良いことだが、大変だな。お店の経営もお手伝いも経験は無いから想像でしかないのだけど。

 

「ねぇ、そういえば、君は観光目的で穂織に来た訳じゃないんだったよね? それ以外の用事で来たってことは……親戚の家にでも遊びに来たとか?」

 

 そもそも“外”――国内から人が来ること自体、珍しいことだという土地。疑問を持たれても仕方が無いか。特に隠すことでもないので、真琴は目的の一つを話す。

 

「いえ、ただの研修ですよ。駒川先生の所に」

 

「駒川先生? えーっと、じゃあ、もしかしてだけど……お医者さんの?」

 

 真琴は頷く。すると、女性は驚きの色を表わした。“意外”という意味も含まれていたかも知れないのだけれど。

 

「へぇ、凄いなぁ……。お医者さんかぁ……」

 

「まだですけどね、研修期間が無事に終わっても、それから更に色々ありますから。見習いも見習いという感じですよ」

 

「それでも凄いと思うよ。風邪とか引いたら診てもらおうかな、なんてね? あはは」

 

 是非に、と言いたい所だが、自分はまだ本物ではない。流石にちゃんとした医者に診てもらって下さいと、惜しむように微笑む。

 

「じゃあ、暫くはこの町で暮らすことになるんだね。でも、空き家とかあったかなぁ……。寝泊まりする場所はどうしてるの? 知り合いの家に泊めて貰うとか?」

 

「ああ、志那都荘に泊まることにしているんです」

 

「志那都荘に? でも、あそこは穂織でも高級な方の宿だよ?」

 

 昨日の常陸さんと同じ反応。まぁ、それが普通か。前回は金銭感覚で引かれたから、今回はその話はなるべく伏せておこう。

 

「大旦那さんによくしてもらえて、料金の方はかなり安くして頂いてますから、あまり問題はないですよ」

 

「へぇ、あの玄十郎さんがねぇ……」

 

「知っているんですか?」

 

「まぁね。玄十郎さんのお孫さん、三人いるんだけどね、皆とアタシは幼馴染みなの。小さい頃とか一緒に遊んだし、個人的にも面識はあるんだよ」

 

「意外な繋がりですね、偶然に出会った人がお知り合いだったなんて」

 

「確かにそうかもね、偶然だね、偶然。これも何かの縁だよ、きっと」

 

 頬に手を添えて、女性は笑みを浮かべる。偶然だが、縁と言われてドキッとした。男なら当然の反応か。そりゃあ美人ですもの、この女性。

 

 話題の切り出しとしては成功だったと思う。その後も会話は途切れることはなく続いていった。時間の進みも早く感じたしな。楽しかったからか、久しぶりだからか。

 

 そして、暫く歩くこと数十分が経った頃。女性が一件の店の前で足を止めた。

 

「ここがワタシのお店、甘味処だよ。今度もし良かったら来てくれると嬉しいかな。今日のお礼にサービスしちゃうよ」

 

「ありがとうございます。甘い物は好きですから後で必ず来ますね」

 

「ホントに色々とありがとうね、それじゃ、また今度」

 

 女性は微笑むと荷物を受け取り、店の横に続く小道へ入って行く。多分、店の裏口へと回ったのだろう。開店している時間ではないし。

 

「ああ、名前、聞いておけば良かったかな?」

 

 せっかく知り合えたんだ。この土地にも暫くいるだろうし、友人となれるなら、嬉しい。可愛いし。さっきからそればかりだな、おい。

 

「考えても今更……か。さて、戻ろう」

 

 携帯で時間を確認。そろそろ志那都荘に向かおう。朝ご飯の準備が終わっている時間が近づいていた。今日は寄る所も多いし、帰りに開いていたら顔を出してもいいかもな。

 




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