と、言う訳でカタカタ書きました。
書き方が荒くなり、どうでもいい描写が増えていき、展開が遅くなってしまっているという問題多々の状態を反省しながらも、更新を頑張ります。
それではどうぞ!
「いただきます」
目の前に並ぶのは宿の板長さんが腕によりをかけ、用意してくれた朝食。
志那都荘に戻り、自室で出掛ける支度を終えた頃、昨日出迎えてくれた仲居さんが運んできてくれた。
窓から覗く穂織の町並みや山々を眺めながらとる食事は格別かな。小京都とも呼ばれるという和風の町。これから過ごす町。新しい生活――。
「なぁ、折角だし、お前も少し食べてみるか?」
『……』
視線を落とす。そこには何もなく、あるのは綺麗に目の整う畳のみ。傍から見れば変な人かもしれないが、この部屋には自分一人。気兼ねは無い。
「気分じゃない? そうかい」
『……』
視線が動いた。何かを追うように進み、やがて止まる。聞こえない声に対して、真琴は口元を小さく緩めていると、また声がした。
「散歩? はいよ、行ってらっしゃい」
真琴が一人で呟いた後、隣で小風が起きる。風は髪を揺らし、障子を揺らし、外へと抜け、流れるように去って行く。
やれやれと息をつくと、真琴は箸を手に取っていた。冷めてしまう前にいただくとしよう。
お椀を手に取る。料理は和食だ。白米のご飯と味噌汁は勿論のこと、鮭の塩焼きに目玉焼き。副菜の数々。どれも味付けが絶妙。流石、評判通りだ。
黙々と食べ進めること、最後の一口。椀をお膳に置き、箸を揃え、手を合わせる。美味しかったな、これを毎日食べられるのだ、これは贅沢というものに違いない。
「ご馳走様でした」
さてと、そろそろ出掛けようか。
今日の午前で駒川先生の所に顔を出しておきたい。春祭り本番なのだと散歩で出会った女性は言っていた。
つまりは、あまり遅く出掛けると、観光客で通りが混雑し出し、埋もれ、巻き込まれ、苦労することは必至となるのだろう。なら、その前に移動しておいて仕舞えばいいという考えの行動だ。
散歩に使った着物を脱いで、普段のラフな洋服へと着替え直す。予め準備していた荷物を持ち、部屋を後にしようとした時。
「朝早くにすまないが、入っても宜しいかな?」
襖を挟む向こう側。廊下の方から声を掛けられた。この声は宿の大旦那、玄十朗さんのもの。何の用だろうか?
「あ、はい。大丈夫です」
真琴の返答で、スッと戸が開けられる。そして真琴の姿を確認すると、口を開いた。
「これからお出掛けの所でしたかな?」
「ええ、駒川先生の診療所に挨拶に行こうかと。今朝の様子ですと、道も混みそうですし、早めの行動というやつですね」
「そうでしたか、いやいや、引き留めてしまい申し訳ない。実はちょっとしたお誘いがありましてな、本日に健実神社で春祭りがあるというのは……」
「はい、知ってますよ。と言っても今朝方にでしたが、あはは」
「なら話は早いですな。そのお誘いというのは、春祭りで行われる催し物の一つに、是非見て頂きたいのがありましての」
春祭りの催し物か。えっと……あの話だと、巫女姫の舞があるって言ってたかな? それ以外は練り歩きとかしか知らないけど、まだ何かあるのか。
「分かりました。元々、今日の午後に健実神社には伺う予定でしたので、その時に声を掛けさせて頂きます」
「おお、そうでしたか。では、お待ちしておりますぞ」
玄十朗さんは微笑を見せた後、部屋を後にして行った。
見て頂きたい、ねぇ……。何でしょうかね。ただ一つ確実な事は、“依頼”の内容に関係するということは確かだろうな。
「まぁ、今考えてもあれだな。行きますか」
とりあえずは置いておき、荷物を持ち直すと、部屋を出た。
†
「さて……と、だな」
事前に電話で聞き、書き置いていたメモを取り出す。現在の道は散歩に向かった方向とは反対側。志那都荘の塀に沿って暫く歩いて行く。
まずはメモに書いた道の開始地点となる目印を探そう。また迷子になるのは勘弁だからな。下手に時間を掛けると早くに出掛けた意味がなくなるし。
目印は学校だそうだ。大きいから目立つと言っていたが……どこだ? 近くにはそれらしい建物は見当たらない。うむ、仕方が無いな、人に尋ねることにしよう。
周囲を見渡すと、既に開店準備を始めているお店が何軒か目に入った。その内の一つ。朝早くから元気に勤しむ若者を見つける。まぁ、俺も若者だがな。
早速と真琴は声を掛けると、陽気な雰囲気の若者――お兄さんは快く丁寧に教えてくれた。これなら最初の目的を無事に達成することが出来そうだぞ、うん。
教えてもらった通りに歩いて行くと、無事に目印となる学校が見える位置にまで辿り着けた。
まぁ、単純な道と小道の説明が分かりやすかったからかもね。どうして迷ったのか、疑問に思うほど、通ってみると簡単過ぎて笑えてきた自分がいたけどね。
「後は……えーっと、ここから――」
後は書いてある通りに進むだけだ、問題はないはず。こんな簡単なことも出来ないのは恥ずかしいよね? もう俺、成人しているよ? こう見えてね?
………。
……。
…。
まぁ、そう思っていた時期も僕にはありましたよ、ええ。問題はないはず、なかったはずなのに……。ええ、予想も予想通りに、迷ったらしいですね、はい。
「小道多過ぎだろ……。これ、どの道のこと言ってんの? いや、書いてんのかが正しいのだけれども。……どうしようか」
志那都荘に初めて向かった時と同様、小道に行く手を阻まれました。
うむ、こうなったら一層のこと、空に“鴉”でも飛ばそうか? 空から現在地を確認すれば……いや、それは最終的手段だな。今の状況は、この方向音痴を直すいい練習の機会と思えばいいさ、うん。
前向きに捉えようか、そう意気込んだのも束の間か。
再びメモを確認しながら、元のスタート地点に戻っては迷い、戻っては迷い、迷い迷い迷い……と繰り返すこと繰り返すこと。ぐるぐると同じ道を回っている気がしてきたぞ? いや、実際にそうか。
「はぁ、これだから“都会”は困る」
都会――穂織の人からしたら、そう言わないほど田舎なのだろう。けど、俺からにしたら、この穂織の町は十二分に都会に見えるのだ。
俺が育ち住んでいた町はもっと建物が少なく、田畑が多くに広がる所だった。小道と言っても殆どがあぜ道。先がよく見えるから迷うことはないし、困ることもない。
だが、この穂織は建物が並ぶこと並ぶこと。連なる長屋や店の建ち並びは一種の壁のよう。更には碁盤の目のように整った町並みが、迷路を彷彿とさせてくる。迷子あるある、何処も同じ景色に見えてきたぞ? 壁伝いにでも歩けばいいのかい?
「仕方ない、また誰かに道聞くか……」
辺りを見渡すと人の姿が次第に増えてきていた。主に観光客。もうそんな時間なのか? 携帯で時間を確認すると、そろそろ半刻が経過する寸前。
小さく溜息をつくと、先ほどのお兄さんのような人がいないか探すことにしていた。
ああ、丁度がいい、あのお店の人に聞こう。そう思い、情けない自分に呆れながらも足を踏み出した時のこと。
「あの――。もしかして、千歳さん?」
不意に後ろから名前を呼ばれた。若い女の子の声。つい最近聞いたばかりの声だ。忘れるはずがない。期待を胸に秘めて振り返る。すると、そこにいたのは――。
「常陸……さん?」
訪れ初め。木から下りられなくなっていた、あの時の少女。アホ毛が一つ可愛らしく跳ねているのが印象的。翡翠の瞳と視線が重なる。
「やっぱり千歳さんでしたか、でもこんな朝早くに、こんな所で何をしているんです?」
少女が頬に指をあて、真琴の様子を不思議そうして立っていた。
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玄十朗さんの言葉使いが難しい。茉子ちゃんや芳乃さんに話すのを手本に書いておりますが、違和感がありましたら、教えて頂けると嬉しいです。