RIDDLEJOKER、書き始めてます。
需要はある!……と思いたい。
今回は改行の仕方を変えてみました。試行版ですね。
見づらいと判断したら戻します。
「ごめんくださーい」
着いた診療所のドアを開け、声を掛ける。
すると、奥の部屋から眼鏡をかけた女性が姿を見せた。穂織では珍しく和装の服ではなく、赤いシャツに白衣。この人も“外”から来たのかな?
「どうしたんだい、こんな朝早くに診察はやってないよ?」
「あ、いえ。診察ではなくて、研修へ来た千歳です」
「ああー、君が千歳君か。もうこっちに着いていたんだね」
「昨日には着いたんですけど、日も落ちてしまったので今日お伺いしました」
本来であれば、昨日の時点で自分のやるべき研修内容を確認しに来ておきたかったのだが、まさかあんなにも交通手段が少ないとは思わなかったし、距離も甘く見ていた。
それに人助けもしていたからなぁ……木の上からの。
「全然問題はないよ。そもそも、研修が始まる期間にはまだ数日あるからね」
「早めの行動は大事ですから、これから先でも」
五分前行動ならぬ、数日前行動。
まぁ、場所が遠かったのと、早めに行動してもここに来るまでみたいなことになるからって理由があるからだけれど。
「ああ、自己紹介がまだだったね。既に知ってはいると思うが、改めて。私は駒川みづはだ、これからよろしく」
駒川先生はふと、気が付いたように話す。
「はい。こちらこそお世話になります、駒川先生」
真琴は軽く頭を下げる。
それを見た先生は微笑を見せた。
「どうかしましたか?」
「いや、ちょっと思い出してな。今回の件で連絡を受けた時、千歳君みたいに優秀な子がこんな小さな診療所で研修だなんて随分と変わった話だなって思ってしまったんだよ」
駒川先生の診療所を選んだのは自分。先生が変わった話を思ってしまうのは仕方ないことかも知れない。
俺が研修先として紹介された場所は、どこもこの業界で名の知れた人が勤める所。推薦だって来たんだぞ?
でも――。
「そこは特権を使いましたよ、てへっ」
満面の笑み。対する駒川先生は苦笑い。
「あ、あはは。そういうところは遠慮なく使うんだね」
「“目的”の為なら使えるものは何だって使いますよ」
そう。“目的”の為ならね。
実績が優秀だとある程度の融通は通るものだ。まぁ、この場所を研修に選んで正解だったようだし、良かったかな。
「それでなんだが……折角来て貰ったところ悪いんだけど、千歳君にお願いしたい仕事はまだないんだ。さっきも言ったけど、本来研修が始まるのは数日後からだからね」
数日といっても一日二日。
誤差の範囲だと思っていたんだが……。
「その時が来たら連絡するよ。それまではゆっくりと穂織での暮らしに慣れておいてくれ」
「はい、分かりました」
“仕事はまだ”というのが引っかかったが、駒川先生にも先生なりの意図があるのだろう。研修内容は先の担当が決めるもの。素直に従いますよ。
連絡の為、携帯の番号を伝える。
「……そういえば、駒川先生は常陸茉子さんって女の子、知ってますか?」
「君の口からその名前が出てくるなんて驚きだね」
「まぁ、偶々知り合う機会がありまして――」
その出会い方はとても希有なものだったけどな。
「駒川先生の診療所に研修に来たと話したら、先生にはよくお世話になっていると言っていたのが気になっていたんですよ。診察によく訪れるという訳ではなさそうでしたし――」
「そうだね。常陸さんというよりは、芳乃様の方かな」
「芳乃、様?」
「ああ、巫女姫様と言えば分かるかな? 千歳君に頼む仕事上で知り合うから覚えておいてほしい。勿論、常陸さんのこともね」
巫女姫様に関わる仕事か。一体どんなことをすることになるのかな。
常陸さんと会えるのはとても嬉しいことだけど。
疑問に小首を傾げる真琴の様子を見た駒川先生は話しを続ける。
「私の家は代々医者の家系でね、家の者から一人は必ず医者になるように決められていて、芳乃様の主治医になるんだよ」
「それで、何故に常陸さんが関係してくるのですか?」
「そこまでは聞いてなかったんだね。まぁ、私の口から話しても問題はないか……。常陸さんの家系も代々巫女姫様にお仕えているんだよ」
それは確かに初耳だった。
ああ、だから常陸さんは昨日神社に向かっていたのか。
巫女姫様が健実神社の方にある家で暮らしていることは知っていた、依頼の件で。
「その関係で私と常陸さんは昔から知っている仲なのさ」
「そうだったんですか、謎が解けましたよ」
つまり……。ここで研修していれば自然と常陸さんに会えるということか。それは嬉しい。仲良くなれれば尚更。
でも、仲良くなれても依頼と研修が終わったら穂織から帰ることになってしまうんだけどね。悲しいことだ、まぁ、思い出としてね。
「では、自分はこれで失礼します」
特にすることはないので、もう一度、駒川先生にお辞儀をすると、駒川先生に見送られながら診療所を後にして行くことに。
「常陸さんに会ったらよろしく言っておいてくれるかな」
「分かりました、伝えときますね」
これで連絡が来るまで、こっちの要件は暇になってしまったな。
†
「時間に空きが出来てしまったな……」
来た道を戻る途中。
何かしら手伝う仕事があると思い、時間には余裕を持たせて今日の予定を組んだんだけど――別に朝早く来る必要もなかったか。
人混みに飲まれたくないというのもあったのだが、ゆっくりできるならそれに越したことはないんだよ。
まぁ、早く出たから常陸さんに会えたんだけどね。
ああ。そういえば、常陸さんと言えば……。
「……そうだ。早めに済んだことだし、舞のイベントでも見に行こうかな」
なら、次は健実神社に向かおうか。今からならお昼前には着けるだろうし、近くに多くの出店もあるはず。そこでお昼の調達もしよう。うん、それがいい。
次の予定を変更しながら歩くこと、見覚えのある大きな通りまで戻って来た。
ここは昨日の道。そう、常陸さんと。
この道を通って行けば迷わず神社に辿り着ける。穂織の町並みからして、道筋は他にもあるのだろう。
けど、この際、近道遠回りとかは置いておく。迷うのは嫌だからさ。
通りの中心を流れる小川に沿うように進むと、小坂に差し掛かる。
ああ、そういえば、常陸さん神社で手伝いしているって言ってたっけか。何か手伝うことがあったら手を貸そうかな。
常陸さんには恩もあることだしな。
………。
……。
…。
暫くして、健実神社へ続く少し長めな石段が見えてくる。
続々と観光客や地元の人たちが上っていく中に混じり、真琴も石段に足を掛けていた。
「うわぁ……凄い数やな……」
人、人、人。見渡す限りの大勢な人たち。既に境内では人の海が完成していた。
とは言っても、都会の早朝の駅とかみたいな光景とはほど遠いが。
思わず、引きつったような笑みを浮かべてしまった。目元も引き攣る。
これは人酔いしないか不安になってくるぞ。
いくら都会で生活していたとはいえ、人が多いのは苦手なのだ。こればっかりは慣れないもの……。
人と人の隙間から境内の奥、現在地から遠くにある神楽殿の姿が何とか窺えた。でも、どうやらまだ舞は始まっていない様子。
巫女姫の姿もなければ、人が集まっているようでもなかった。
まだ時間ではないらしい。
「(何時から何だろう?)」
始まる時間が書かれた張り紙も辺りには見当たらないし……。
毎年開催しているなら、ここの住人に聞けば知っているだろうか? 昼食の調達がてらに尋ねてみよう。
「あの、巫女姫様の舞が始まるのって大体何時くらいからなんでしょうか?」
屋台で軽食を買いつつ聞いてみることに。
屋台のおじさんは袋に買った物を詰めながら教えてくれた。今の時間からして二時間後。どうやらまだまだ時間は余っているようだった。
人混みを避ける為、境内でもかなりの端に移動して木製のベンチに腰を下ろす。
隣に買った物を開き、わいわいと賑わう祭りの雰囲気を眺めながら口に運ぶ。
「(なんだか、懐かしいなぁ……)」
祭り……か。
暮らした実家や学業で通っていた都会でも大小と規模を問わずに祭りはあった。けど、こうして近くに来ることはあまりなかったな。
忙しいんだ――。
誘われても、そんな理由を付けて誤魔化していた。友人を、自分を。
皆には申し訳ないことをしてしまったな。折角、誘ってくれたのに。
行かなかったのは多分、思い出してしまうからだと思う。
きっと、泣きたくなってしまうから、思い出さないよう、傷つかないよう、自分を守る為に無意識の内で避けていたんだ。
「(……逃げているだけなのかな……。)」
そんな考えが過ぎる。
少し胸が締め付けられるような感覚があったが、頭を振って払う。
一度、大きく深呼吸をして気持ちを整えると、ベンチから立ち上がっていた。
食べ終えた容器を準備されていたゴミ箱に捨てる。ちゃんと分別してだぞ? お腹も満たされたことだし、時間もある。
なら今の内に神主さんに会っておこうかな。
日間、週間(その他原作)ランキングの力は凄い。
改めてそう思いました。投稿している第零以来です(笑
評価も感想も貰えて感激です。
赤バーを維持出来るよう頑張ります(^^)